水曜は癖になる

矢島玖美子の川柳と短文 Copyright©KUMIKO YAJIMA All Rights Reserved.

〜つながる心 つながる力〜みんなでつくる復興コンサート

■演奏    仙台フィルハーモニー管弦楽団
■指揮    川瀬賢太郎
■実施日   2012年3月31日(土)14:30開場/15:00開演
■実施場所 仙台市青年文化センターコンサートホール

くわしくはこちら
http://ottava.jp/sendai/index.html
http://www.tbc-sendai.co.jp/tc_event/special/ottava/index.html

忘年会

 幼馴染二人と新宿で忘年会をした。
 一人は埼玉在住。一人は札幌で看護師をしているのだが、半年間の研修で東京にいるので、会おうということになったのだ。
 前回会ったのは、彼女が東京に出張に来たときだった。一年以上会っていなくても、話し始めるとすぐに時間が戻るのが、幼馴染のいいところだ。
 会わないでいる間に、札幌の友人は五歳年上の兄を急な病気で亡くしていた。自分もいつどうなるかわからないから、今回受験生の娘を置いて、ステップアップのための研修を受けることを決心したのだという。
 埼玉の友人は、離婚して離れて暮らしている息子の就職が決まったという。忙しいなりに、新しいパートナーと充実した生活をしているようだ。
 彼女が、大学時代、わたしと新宿に来たことがあると言い出した。吉野家に入ってみたかったのだが、一人では入りにくいので、二人で行こうということになったのだという。そんなことあったっけ。まったく覚えていない。
「誰か別の友達なんじゃないの?」
「あんた以外の誰と行くって」
 どうしてそんな答えが返ってくるのかわからない。そして、どうでもいいことだとはいえ、自分がしたらしいことを思い出せないことに驚く。
 年に一度しか会わなくても、思い出話がかみ合わなくなっても、いなくなったらきっと寂しいだろう。なるべく長く、元気でいてもらいたい。

  泣いてくれる泣かないでいてくれる   久保田 紺
                      (「川柳びわこ」2012年1月号)

11歳

 年末にめいっこが怪我をしたという連絡が入った。
 体育の時間に三点倒立をしているとき、隣の子が倒れてきて右の手首に力がかかり、全治一か月の亀裂骨折をしたというのだ。痛みはそれほどでもないようだが、ギプスをしているため、服の脱ぎ着が大変で、妹の服を着せているという。食事やノートは左手でがんばっているらしい。右脳が発達するかも。めいっこ天才化計画。
 怪我をするのも困るが、怪我をさせたらもっと大変だ。子どもを持つというのは、心配の連続だと思う。子どもがいないわたしには、親の役目を果たしているすべての人が尊敬に値する。
 最近は妹との電話に割り込んでくることもなくなってきためいっこと、電話を代わってもらった。
「大丈夫?」
「うん」
「何してたの?」
「DS」
「えっ? ゲームできるの?」
「うん」
 テンションが低い。ゲームのことは、からきしわからないので会話も弾まない。
 義弟から、包帯を巻いためいっこの写真が送られてきた。不機嫌そうな顔をしている。
 11歳。春には六年生だ。

   まだ子供 母が誰かに言っていた  深川さゑ
           (「川柳びわこ」2012年1月号)

川柳近作

ひとつ諦めて足取り軽くなる
何もかもひっくり返し日に晒す
大切でしたと過去形にしてしまう
行きなさい そして帰っていらっしゃい
わたしだけが見ている月だ わたしの月だ
咲き誇る境界線を乗り越えて
(「川柳びわこ」2012年1月号)

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(リンク先より引用)
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今日の一句

星を見る 誰かを思うふりをして

今日の一句

おともだちごっこ飴玉転がして

今日の一句

真実を刻み込むには薄い胸

今日の一句

再会の友の口紅赤過ぎる

今日の一句

三月の海のむこうに注ぐ酒

今日の一句

わたしだけが見ている 朝の空の月 

今日の一句

いい子になりますと雪空を見上げ

今日の一句

雨の声聴きつつ一日を閉じる

今日の一句

おまえずっとそこにいたのねこむらさき

今日の一句

新しい手帳に描く悪だくみ

今日の一句

十一日の雲のむこうに月はある

仙台から・仙台へ

 仙台に拠点を置く川柳誌「杜人」230号を、少しずつ読んでいる。

   ことごとく破片になった風景は           広瀬ちえみ
   なにもかも失くしましたと笑っている        加藤久子
   いつものようにいつもを買って煮て食べる    佐藤みさ子

 川柳作品とともに、震災から約一か月後に書かれたと思われる文章が綴られている。一人一人の「あの時」が、4か月の時間と距離を飛び越えて迫ってくる。
 「川柳を書くときの頭で考える非日常なんてなんとちっぽけなものだろう。想像をはるかに越える非日常が、何の前触れもなくやってきた」
 そう広瀬ちえみさんは書く。
 先日、仙台へ行ってきた関東在住の友人からメールをもらった。
 仙台空港から海のほうへ歩いてみたという。

「数歩あるいて足元に、なにか光るものがあったのでなんだろうとよくみたら、おなべのふたが埋まってました。すこし先には電子レンジの取っ手のようなのも埋まってました。そこでようやくわたしは、だれかのおうちがあった場所に入ってることに気づきました。
 土足でずかずかと。だれかのおうちがあった場所に。
 ぐらっと足元がゆらぐような感覚におそわれてあわててそこから降りました。
 よくみたら区画されている、ここがたぶん、玄関で台所がこのあたりで、と想像ができる。
 一旦想像できたら、そこからは、見たこともない街を、人々のことを想って、ここにあったはずの、人々の日常のことを想って、くるしくてたまらなくなりました。
 かってにあがりこんでごめんなさい、という気持ちでいっぱいでした」

 一瞬にしてもぎ取られた日常。それを全身で感じ取ってきた人の痛み。
 目をそらしてはいけないものが、そこにある。

    納得のできない春のからだなり    広瀬ちえみ

長電話

 妹と電話で話していたら、めいっこが割り込んできた。
「ねえねえ、どんぐりころころの歌詞の続きを作ったよ」
「へえ、じゃあメールで送って」
 そう、こいつは最近メールをやるようになったのだ。送られてきたのがこれだ。

(前略)
ここからつくったかしだよ〜
3 どんぐりころころそれではと どじょうはなかまによびかけて
  おいけのなかからどんぐりを みんなできしべにはこんだよ
4 どんぐりころころそこからは もりのうさぎがみちあんない
  おやまのふるさとかえりつき みんなでたのしくくらしたよ
でんわでかんそうをきかせてね〜

 自分が小学校5年生だったとき、記憶ではもう少し大人だったような気がするのだが。まあ、そのほうがこちらの「おばちゃん欲」も満たされるというものだ。それにしても、なぜ覚えたばかりのメールではなくて電話で、なのだろう。そうヒマでもないわたしは、とりあえず短いメールを返しておいて、後日電話をしてみた。
「どうして続きを考えようと思ったの?」
「お山が恋しいって泣いててかわいそうだから」
「かわいい歌詞だね。全部自分で考えたの?」
「お母さんといっしょに」
「ふーん。みんなで岸辺に運んだっていうのは誰?」
「お母さん」
「森のうさぎが道案内は?」
「お母さん」
 おいおい、おまえはどこを考えたんだい?
 そのあと、妹としばらく話していたら、めいっこに言われてしまった。
「ねえ、どうしてあんたたち電話が長いの?」
「仲良しだからだよ」
 そう答えたあとではっとした。ひとりっ子のこいつには、大人になって長話するきょうだいはいないのだ。
 もしかしたらわたしは、めいっこにとって伯母であると同時に、年の離れた姉のような存在でもあるのかもしれない。だが、伯母と姉は違う。やがて、その役割を求められなくなる日がくるだろう。その日までは、相手をさせてもらおうと思っている。

  覚悟を決めて介護 妹はいない   泉 明日香
                 (「川柳びわこ」2011年7月号)

被災地の春〜キボウの種はきっとある〜写真展

オンライン写真展
http://www.facebook.com/311exhibition?sk=photos
赤坂サカス・赤坂ギャラリー(東京都港区赤坂5-3)
期間:2011年6月2日(木)〜6月17日(金)
時間:11:00〜17:00

川柳近作

圏外と告げる掌の中の小鳥
できることのひとつ葉書を書いている
まっすぐ届く 無事を知らせる人の声
春を待つほかに何かを待っている
月は照らす うた詠みはうたを詠む
気づいても気づかなくても花は咲く

(「川柳びわこ」2011年5月号)
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