独り身じゃなくて友情優先なだけだから。

彼氏いない歴=年齢の女子高生三人のお話。 女子力上げるくらいなら戦闘力を上げたがる女子高生と、将来はラオウと結婚が夢というどことなくズレている女子高生に、現実を直視出来ない女子高生の現実直視ストーリー。

これは、彼氏いない歴=年齢の女子高生三人組が現実に苦悩する物語。

二人がここまで落ち込むなんて……だから自分から恋愛の話を一切しなかったんだ。


「かっこいい人、ね~……アンタ、それ本気で言ってる?」


「えっ? うん」


「いるわけないでしょ~が! こんなクラスの男子なんて芋カスだっての!」


奏音は、机の上に拳を置くと、そのまま勢いよく叩きつけた。


「ちょっと奏音!? おっ落ち着いて、落ち着いて! 凛子も奏音を沈めるのに協力し……」



「私、『北斗の拳』のラオウと結婚するんだ……」


凛子の目が死んでる!?


駄目だ、このままじゃ二人が死んでしまう!


「そっそうだ! 二人の好きなタイプ教えてよ!」


これでどうだ。少し、マシな質問だと思うんだけど……。


「タイプゥ~? えっえっえぇ~? 聞きた~い?」


奏音は突然、下に向けていた顔を上げ、巻いてある毛先を指でくるくると回した。


「う、うん」


なんだろう、すっごい態度でかくなった。そして、ウザいな……。


「えぇ~と、まずはイケメン! これ重要。それとムダ毛があんまりなくて、色白で、笑顔が素敵で、アタシの素顔を受け入れて~……とにかくイケメン!」



「へぇ、そうなんだ」


理想が高い人ほど、彼氏が出来ないって聞くけど……まさにこのことかも。



「凛子は?」



「私は筋肉かな」


「えっ」


「えっ?」


「いや、その……筋肉って……」


全然意味が分からないんだけど。


「ごめんね、説明不足だったかも。私はゴッツゴツの筋肉の人がタイプかな。その腕で腕枕してもらいたい……なんて」


凛子は両頬に手を当て、ポッと顔を赤らめながら、話した。


「いいよ、すんごい! 今の凛子、超乙女だったぁ~!」



「今日のお題は~……はい、アンタ! 美穂が決めて!」


「えっ、私?」


「そっ! 早く早く~!」



「うーん……」


自称、『女の作戦会議』のルールは簡単。


三人の中で一人が今日の話のお題を決めて、そのお題について熱く語るというルール。

この前出たテーマは『お味噌汁で最強の具』という、なんともくだらないテーマだった(結局なめこ最強説)。


「テーマ、テーマ……そうだ!」

恋愛、をテーマにすればいいんだ!


そういえば、この二人とは、恋愛話なんてしたことがなかったっけ。


二人のタイプとかも聞いてみたいし、何より女子高生っぽい。


「どんなの? ま、アンタが決めるテーマなんて真面目な感じなんだろうけど~」


「真面目な話なんかじゃないって。ただの『恋愛』をテーマにしようと思って!」


私がそう言うと、二人は同時に顔を下に向けた。


「え……あ、あれ?」


おかしいな、どうして二人揃って黙り込んだんだろう。


数十秒の沈黙が続いた後、先に口を開いたのは凛子だった。


「美穂ちゃん……それ、禁句ワードだよ……私と奏音ちゃんで恋愛の話はずっと避けてたのに……」


「えっ!? ええええぇ!?」


恋愛が禁句ワードって、なにそれ? 聞いてないよ。


「アンタ、よく口に出来たね。この彼氏いない歴=年齢の三人組にどう恋愛の話をさせろと?」


「そ、それはですね……ほら! クラスの男子とか? かっこいい人いない?」



「美穂ちゃん、お菓子どうぞ」

そう言いながらポッキーを差し出したのは、宮本凛子。

凛子は、中学校三年生の春、私と奏音のいるクラスに転校してきた。

身長はかなり小さく、顔も童顔で、とても高校生には見えない容姿をしている。


性格はおっとりだが、先ほど奏音の言葉にも顔色ひとつ変えず、あんな返事をしているので、かなり不思議ちゃんレベルが高い。もちろん彼氏いない歴=年齢だ。


「ありがとう、凛子。そういえば、また漫画読んでいるの? 今日は何?」


「ん、とね……『デビルマン』」


「渋っ!」


そして、かなりの漫画好きらしい。休み時間でも漫画を読んでいるが、主に渋い。


一昨日は『北斗の拳』だったし、この前なんか『ゴルゴ13』だったような……。


「面白いんだよ! 今度貸してあげるね」


「う、うん。ありがとう」


貸してなんて一言も言ってないんだけど、凛子の勧めてくる漫画は高確率で面白いし、いっか。



「はい、じゃあ第157回『女の作戦会議』始めよっか!」


奏音って、テスト勉強とかやる気ないくせに、こうゆうのにやる気出すんだよなぁ~……。


「あれぇ? 145回じゃなかったっけ?」



「えっ? そうだっけ? ねぇ美穂、どっち?」



「どっちでもいいから、始めよう……」


四月九日、午後四時三四分。



私達の『女の作戦会議』が始まった。






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