2007年01月31日

目が覚めたら人が消えていた

 星空を見ていた。
街灯の無い海岸線の砂浜で空を見上げていた。
僕の背後には月が浮かんでいるが、地上の闇を照らすほどではない。
僕は、自分の足元も見えない暗闇に立っている。
完全に闇と一体になり、自分の体がそこに存在するのか曖昧になる。
空には数えきれない星が暗闇全体に広がっている。
星の海の中を走る人工衛生を見つけてそれを目で追った。
海のある場所に視線を落とす。
波打ち際が薄い緑色に光っていた
海中のプランクトンが刺激を受けて光っている。
僕は、小さな生物達から発せられるその淡い光に心を奪われる
僕は、空に視線を戻す。
人工衛生は消えていた。
僕は、目を閉じる。

目が覚めたら人が消えていた

 お湯を沸かしながら考える。
なぜ人は居なくなったんだろう? 車を運転してたのは誰だった?
お湯が沸騰した音が鳴り出した。
その音で思考は中断されてお湯を入れ終わった時には、どこまで考えてたのかわからなくなった。
覚えてるところから思考の順序をたどってみたけど思い出せない、いつもなら思い出せるのに、疲れてるのかな?

 やきそば弁当を半分食べたところで食欲は完全に無くなった。
窓を開けて何も考えないように集中しながらタバコを吸う。
空は限りなく黒に近い紫色をしている。
星はまったく見えないが、満月がいつもより明るく光っているような気がする。
満月を見上げてると、頭の奥が妙な感覚になった。
歌のフレーズは覚えてるけど歌手や曲名が思い出せなくて、記憶の端つかんであと少しで思い出せそうな時の感覚に似ていた。

目が覚めたら人が消えていた

 それから1分後くらいに自宅の電話が鳴った。
 掲示板に書き込んでいた>>1は、内藤という名前で東京(正確には千葉県市川市)に
住んでる二十三歳ニートだという。
 内藤は年のわりに幼い印象を受ける高い声をしていた。
 「昼過ぎに起きたら、母さん居なくて、買い物でも行ったかなぁ、って思ったんだけど。VIPに全然書き込み無いし、テレビ映らないし、外が妙に静かだったから、おかしいと思ったんよ」 その後、近所を見て回ったけど人の気配は無かったそうだ。
 それからこっちの街を見て回ってきた事、車を見かけた事、追いかけたけど見つからなかった事を話した。

 話し合った結果、東京で合流することになった。
北海道から東京への移動は時間がかかるが、行けない事もないだろう。
生き残ってる人がいたとしたら、やはり東京に集まるとも思う。

2007年01月13日

目が覚めたら人が消えていた

1 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 200X/XX/XX(月) 13:44:59 ID:hSRzpQe0

 ちょwwwww家族も街にも人いないんだけどwwwwww
 誰かいる??????????

2 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 200X/XX/XX(月) 16:12:07 ID:hSRzpQe0

 VIPPER全滅ワロスwwwwwwwww

3 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 200X/XX/XX(月) 17:27:48 ID:hSRzpQe0

 まじ誰か返事してくれよ・・・・

4 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 200X/XX/XX(月) 18:44:59 ID:xNFlkjb90

 うはwwwwww
 ここに生き残りいるぞwwwww
 >>1はどこに住んでる???
 こっちは北海道で街を見て回ったけど人が全然いなかったwwww
 1台車が通り過ぎたのを見て追いかけたけど見失ったwwww
 このレス見たら連絡してくれ!
 090-XXXX-XXXX
 XXXXX@ezweb.ne.jp

5 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 200X/XX/XX(月) 19:03:22 ID:hSRzpQe0

 >>4
 うはwwwwwwwwおkwwwwwwwww
 俺一人かと思ってたwwwww
 こっち東京に住んでる!
 北海道って遠すぎwwww
 携帯使えないみたいなんだけど・・・
 車見たってことは俺ら以外にも生きてる人はいるってことだよな???

6 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 200X/XX/XX(月) 19:10:32 ID:xNFlkjb90

 まじかwwwwwwwww
 携帯使えないのテラヤバスwwwww
 家電はどうだろ?
 016X-XX-XXXX
 固定電話なら停電時とかでも使えるようになってるはずだしwwww

目が覚めたら人が消えていた

『ニュー速VIP』

1:生きている人、いますか?              3
2:平日の昼間から2chかよwwwww      45
3:エロゲ実況 竹島より愛をこめて        653
4:魔少年ちょっとこいwwww           134

目が覚めたら人が消えていた

 家族の居なくなった自宅。
 薄暗い玄関で靴を脱ぎ、居間の電気を点ける。いつもなら夕食を作っている母親がオープンキッチンの向こうから『おかえり』と、声を掛けてくるはずだった。
灰皿には、俺の吸殻だけが残っていて、飴状になったコーヒーがこびりついたマグカップが昼間と同じ位置に残されていた。
 マグカップに水を入れてシンクの中に残して、新しいコップにジュースを注いで一気に飲み干した。
 
 自室へ戻る途中、兄の部屋を覗いてみる。
 漫画や小説、お菓子の袋、どす黒く変色しているペットボトルのお茶などが散乱する室内、タバコのヤニ臭さと、何かが腐った様な、すえた臭いが交じり合って、嗅覚が『今すぐドアを閉めろ!』と、警告してくる。
 この部屋に数時間いるだけで俺は気が狂ってしまうだろうな。
軽い頭痛を覚えながら自室に入る、昼に出た時と当然何も変わっていない、この世で一番好きな場所で、一番安心出来るいつもの部屋だ。

 パソコンの電源を入れる、『Windows2000』のロゴが表示されてデスクトップが表示される、2chブラウザを起動させる。

2007年01月10日

目が覚めたら人が消えていた

 空は地平線にいくほど、青から赤へグラデーションに染まる、西の空には一番星が輝き、月は明るさを増し存在を主張し始め、人の消えてしまった世界で最初の夜を迎えようとしていた。
 コンビニの前に車を停めて、月を見上げながらタバコを吸う。
 この世界に、残ってるのは俺だけじゃないみたいだ。 車を運転していた人は誰だろう。よく考えてみれば、人を見つけたからと、安易に接触するべきじゃないかもしれない。
突然こんな世界に放り出されたら、精神不安定になっているかもしれない。自分以外の人間が居なくなれば倫理感なんて、あってないようなものだし。世の中には善意の人々が沢山います! ラブアンドピース! なんて甘い事を考えていたら、この世界で生きていけないだろうな。
俺は、こんな世界に一人ぼっちで、不安定になってるか? いや、普段通りだろう。

 自分以外の人間も存在するって事がわかっただけでも収穫はあった。
 腹も減ったし、一度家に帰ることにする。
 信号機も、街灯も、普段通り機能しているから、電気はまだ使えるみたいだし、もしかしたらインターネットが出来るかもしれない。

目が覚めたら人が消えていた

 病院前の道路を加速したまま横切り、路地を走り抜ける。
 路地を抜けて国道に合流する。数百メートル先のカーブに消えていく、ブレーキランプが見えた。
 すぐに、車は見えなくなったが、見間違いではなく、車はそこに存在していた。
アクセルを踏み込み加速する、赤信号も無視して、さっきの車が消えたカーブに差し掛かる、タイヤが軋み悲鳴を上げる、カーブを抜けて片側3車線の見通しのいい道へ合流する、車の姿は無かった。

 ここはメインストリート、ここから街の中なら、どこにだって繋がっている。
 どっちに曲がった?
 左に曲がれば港方面、右に曲がれば病院方向に抜けて中心部だ。港方向に行っても倉庫や漁業関係の会社があるくらいだから、街の中心部の方に向かった。
二時間くらい、町の中を走り回ったが、車の姿は、どこにも見つからなかった。


2007年01月09日

目が覚めたら人が消えていた

 売店、食堂、待合室、診察室、検査室、ナースステーション、病棟、屋上、どこにも人なんているわけでもなく、ここまでくれば人がいなかろうが何も驚く事が無い。
 病院内のすべてを見て回ったわけじゃないが、この病院内には俺以外いないだろう、勘だけど間違いない。
 逆に、ここで人が目の前に現れても、おまえは本当に人間か? と、疑ってしまいたくなるくらい、俺は、この世界に適応してきていた。
 タバコに火を点けてロビーから外へ出る、デパートを出た時と比べると太陽は確実に地平線に向かって落ちていたが、雲ひとつない晴天で、まだまだ日差しは強かった。
 母親が消えたのに、なんて親不孝な子供なんだろうと自虐的に考えながら、短くなったタバコを指で弾いて、放物線を描きながら地面に落ちていくタバコと、病院の向かいにある路地に視線が重なった瞬間、黒っぽい車が一台通り過ぎた。
 「――あっ!」
と、思った時には、すでに駆け出して車に飛び乗っていた。

目が覚めたら人が消えていた

 外来の入り口から入ると、ロビーに置いてあるテレビから砂嵐の音が流れ続けている。
 ロビーの椅子には松葉杖が立てかけてあり、鞄や処方されたばかりの薬袋が放置されていた。
 テレビの電源を切るとロビーは静寂に包まれた、処方箋待ちの電光掲示板に数字が表示されたままになっている。
 母親は、この病院と契約している清掃会社のパートタイマーとし勤務していて、シーツの交換や院内の掃除をしていたはずだ。 会社名は忘れたし、詰所がどこにあるのかもわかるわけもない。
 俺が最後に病院に来たのは中学生の時で、この病院内のどこに何があるのか見当もつかない。
 一階から順番に回ってみるしかないな。


目が覚めたら人が消えていた

 サイレンを鳴らし続ける救急車へと近づく、車内に人の気配は無く、無人の喧しい救急車があるだけだ。
 車内のボタンを適当に押してサイレンを止める。
 辺りは、しんと静まり返り、耳の奥でサイレンの余韻が繰り返された。
 深呼吸をして、あたりの気配を窺い救急車のドアを勢いよく閉める。
 あと少しで救急センターだったのに、消えてしまったんだろうか? 風の音しか聞こえない世界で病院を見上げる。
 昼間だと言うのに、不気味だ。

目が覚めたら人が消えていた

 建物と建物の隙間に病院の看板が見えてくる。
 サイレンの音が次第にに大きくなる、放置された車をぬうように加速していく。
事故を起こしても処置出来る医者が残っているかもわからないのに、どうかしていると思う。
 でも、その時は冷静に考えている暇なんて無かったんだ、もしかしたら俺以外にも残された人がいるかもしれないのだから。 
 減速をほとんどしないまま、左折をして病院の駐車場に入る。
 けたたましく、サイレンを轟かせる救急車が視界に入る。 ほんの数メートル前方に。
 慌ててブレーキを踏み込んでも間に合わず、右にハンドルを切る、タイヤが悲鳴を上げる、車道と駐車スペースを区切る三角コーンを巻き込み、駐車してあった車の運転席に突っ込んだ。
 震える手で額の汗を拭い、体を点検する。
幸いなことに、大した怪我もなく無事だ。


目が覚めたら人が消えていた

 消防署の目の前にある、私立病院へ続く立体交差へ斜線を変更する。
 坂道を登りきった所で車外から何か小さく聞こえた。
 窓を開け、オーディオのボリュームを下げて、アクセルを緩め耳を澄ませてみる。
 遠くの方から、救急車のサイレンが聞こえる。
 もしかしたら、俺以外にも残された人がいるのだろうか。
 アクセルを踏んで加速する、病院までは数分で着く距離だ。

2007年01月08日

目が覚めたら人が消えていた

 片道二車線の国道を、北に向かって走る。
 そこら中に持ち主が消えてしまい、蝉の抜け殻の様な車が放置されている。
 その車達を避けながら、ガソリンスタンドのある交差点が赤信号に変わったので、減速をして交差点に近づく。
 俺以外、車を運転する人間も、歩行者すらいないのに無意識に停まってしまっていた。
 いつか、テレビで見た信号機をコンピューターで自動制御しているのは本当らしい。
 人が消えてしまった今となっては、道路交通法なんて守る必要ないだろう。
 信号は赤のままだけど、アクセルを踏んで発進する。
 警察署の前を信号無視する時は、少し緊張した。

目が覚めたら人が消えていた

 田舎町とはいえ、徒歩で市内を回るとなると一日ではとても回れそうにもない。
 どうせ、そこら中に持ち主が消えた車がゴロゴロあるのだから、一台や二台借りたって問題ないだろう。
 吹抜けのある広場から屋上まで続く螺旋階段を登り、三階のエントランスにたどり着く。
 店内に続く扉を開けると、エンジンのアイドリング音が聞こえた。
 音のする方向へ視線を動かすと、すぐ近くに、白い軽自動車がヘッドライトを光らせたまま、まるで俺を待っていたかの様に停車していた。
 買い物に来た主婦が持ち主だろうか、車内には特別な装飾などは無く、コラムシフトのレバーに交通安全祈願の御守がぶら下がっていた。
 扉を開けると、今年の夏中、テレビやアルバイト先の有線放送で何度も耳にした女性シンガーのセカンドシングルが流れていた。
 道を塞ぐように停まっている車を避けながら、出口の案内に従って進み、外へ通じる暗い坂道を下り終えると、真夏の日差しの様な眩しさに目を細めた。
 そういえば、家を出る時、母親の車が無かったが、仕事には行ったのだろうか。
 母親の勤務先は、この町では唯一の総合病院で、当然朝早くから人が集まる場所だ。
 行くも無い俺は病院のある方向へハンドルを切った。


目が覚めたら人が消えていた

 一通り店内を見て回った後、吹抜けの広場に戻った。
 ベンチに座ってタバコに火を点ける。
 普段なら買い物客で賑やかな店内は、どこにも人の気配は無く、BGMだけが無人のデパート内を淋しく盛り上げていた。
 さて、これからどうするべきか。
 タバコの火を灰皿に押し付けて立ち上がった。
 人が居ないのであれば、このデパートには用無しだ。
 とりあえずはもっと街を見てみようと思いつき、三階の駐車場へ続く階段に向かって歩きだした。

2007年01月07日

目が覚めたら人が消えていた

 人口、約2万人の田舎町にある唯一のデパート。
 売り場は一階と二階だけで、三階と屋上は駐車場になっている、デパートと呼ぶには少し物足りない感じ。
 一階には食料品、若い女の子向けの衣類、雑貨屋、宝石店、ファーストフード。
 二階には本屋、紳士服、おもちゃ売り場、ゲームセンター、ファミリーレストラン。
 ありがちな田舎の自称デパートだ。
 既に開店した後なのか、入り口のガラス戸に鍵は掛かっていなかった。
 3階まで吹抜けになっている広場に立ってみたけど、人の気配は感じられなかった。
 空しく店内放送のBGMだけが流れていた。

目が覚めたら人が消えていた

 無人のガソリンスタンド、無人の中古車販売店、暖簾が下げられたままの居酒屋、無人の銀行、無人の本屋。
 中心部に近づくにほど、車道や路肩に放置されている車が増えてくる。
 まるで、運転をしている瞬間にドライバーが消えてしまったかの様に。

目が覚めたら人が消えていた

 交差点の中央で煙を出していた車が、爆発する音で我に返った。
 どれくらい呆然としていたのだろう、爆発した車からはさっきとは比べ物にならない真っ黒な煙が立ち昇り、煙の隙間からは真っ赤な炎が見えていた。

 交差点の角にあるコンビニに入って、ジュースとサンドイッチをレジに持っていったが、店員の姿は無く、レジにお金を置いて新しいタバコも持っていくことにした。
 人の気配の消えた街を眺めながらサンドイッチを食べる。
 俺が寝てる間に何か事件でもあったのか? 戦争でも始まったか? 北朝鮮の弾道ミサイルが、今まさにこの街に向かってるとか? この街が、テロの標的にされて街の人間丸ごと逃げたとか?
 馬鹿馬鹿しい。
 考えれば考えるほど、冷静に考えられないような気がした。
 なんにしても情報が少なすぎる。
 サンドイッチのゴミと飲みかけのジュースをゴミ箱に捨てて、街の中心部の方へ行ってみる事にした。

目が覚めたら人が消えていた

 交差点に近づくと、何かが燃える匂い、ガソリンの匂いが強くなってくる。
 交差点の中央に三台の車が重なるように止まっていて、ボンネットから黒い煙が溢れ出していた。
 道の向こう側には、電信柱に正面からぶつかっている車が、交差点の出口でひっくり返っている車もあった。
 あまりにひどい光景にとても現実とは思えなくて、一瞬呆然としていた。
我に返った俺はひっくり返っている車まで走り運転席の中を覗き込んだ。
 ――誰もいない。
 電信柱にぶつかった車にも、誰も乗っていなかった。
 もう、救急車で運ばれたのか? そもそも警察はまだ来てないのか? これだけの事故があって野次馬一人いないなんて。
 国道の道に沿って視線を移動させると、何台もの車が路肩や分離帯にぶつかって止まっていた。
 今この交差点には俺一人しかいなかった。
 あぁ、違和感の正体がやっとわかった…。
ここに着くまでに車一台、人間ですら一人も見ていない。

 ――目が覚めたら世界から人が消えていたんだ。