【日 程】2017年6月17~18日(土、日)
【山 域】朝日連峰
【山 名】天狗角力取山(1376m)
【天 候】曇り
【メンバ】3人
【コース】バカ平から天狗小屋ピストン



9/17駐車場(8:00)---(8:57)焼峰---(10:04)猟師の水場---(11:31)雨量ロボット---(12:11)天狗小屋



春の農作業も一段落し山へ行きたい気持がうずき出した頃に岳友からお誘いのメールが入った。みなさん多忙なようで、この日程でないと都合が付かない様子、幸いこちらもここだけ穴があいたように何も予定がなかったのが幸いであった。
年明けから何かと忙しない日々が続いて、山遊びなど全然出来ない環境がとても辛かったので、何が何でも行きたいと心に決めたのだ。


集合場所から大井沢に入り、天狗の登山基地に向かおうとしたその時に先頭車が停車、一体何が起こったのかと思い聞いてみたら、自宅冷蔵庫に酒を忘れてきたので酒屋はないかと言っている…???
そんなこと急に言われても…
しかしねぇ…
そんな大事な物を忘れると天狗様のお怒りの方が心配だ…(笑)


翌日の日曜は鳥原山で山開きの神事が予定されており、大方の山人はそっちに行く筈との目論見はあった。が、いざ登山口に着いてみたら
「お、お、お…」
満車である。誰かさんが交通整理をしていた。おやまあ、ほとんどが県外ナンバーである。


山歩きは去年以来の身を盛んに案じていただき出発、今回はお荷物確定とあらかじめお詫びをしていたので、遅れてもそう怒られはしまい…(汗)
バカ平の緩やかな登りは何とかこなしたが、ここから焼峰までは急登が続く。密かに気合いを入れ必死に食らいつく。とは言っても視線は定まらない。




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着いていくのがやっとです。




山は新緑を通り越し既に夏色に染まっている。エゾハルゼミの鳴き声がうるさいくらいだったが気分はすこぶる良い。同行者に引っ張り上げられる格好だが、朝日に帰れた喜びの方が大きく、顔は終始笑顔だったと思う。それでもやはり急登では苦しくて汗が噴き出してくるが、下界で溜まったストレスが何処かへ飛んでいくようで気分的には最高だった。やはり山に帰ってこないと死んでしまう体質なんだろう…(汗)


焼峰と猟師の水場で休憩を取り、水分補給と栄養補給に努め、稜線への最後の急登に向かうと、あれ? 残雪がかなり多いことに気付く。と同時にシラネアオイの幻想的な花弁に心が震えた。イワカガミやイワウチワ、カタクリなどが登山道沿いに咲き乱れている。サラサドウタンも終盤に近いがまだ咲いていた。





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雪の消え際にはカタクリなどが…





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こちらはサラサドウタン





喘ぎながら急登を詰めるとポンと稜線に飛び出す。木々の梢の向こうに連峰の主稜線が見えたら心が躍った。竜門山から上の名山は残念ながら雲の中に入り見えないが、最近視力が極端に落ちた目で、必死に龍門小屋を探したら何とか見つけることが出来た。ここから雨量ロボットまでの道が結構辛いのだ。





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龍門小屋が見えた。





この日の障子ヶ岳の展望はとてもクリアだった。しかし主稜線の雲は切れそうでなかなか切れない。粟畑に這々の体で登り着いたらこの日の宿が眼下に見えた。空身で障子往復などと言う妄想も浮かぶが、冷たい朝日ビールの誘惑が勝ったのは言うまでもない。それでも角力取場を越え、天狗角力取山まで足を伸ばし連峰の展望を堪能する。
ちなみにこの山は「やまがた百名山」の一つに本年選定されたのだ。朝日連峰では他に小朝日岳、鳥原山、障子ヶ岳、以東岳、大朝日岳が選定されている。広義では祝瓶山や長井葉山も含むのだろうが…





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雨量ロボットからの障子ヶ岳





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やまがた百名山




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どっしりと以東岳




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こちらは二ッ石コース





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ここからの障子はより鋭角に見える





小屋に着いたらやることは決まっている。それでも、理性的に午後1時開始との意見を尊重しようと努力はしたのだが、冷たい朝日ビールの誘惑に勝てなかったのは言うまでもない。
12時半に始まった宴が何時終わったのか、いつもの通り全く記憶にない…(汗)





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おつまみの一品






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9/18天狗小屋(10:00)---(13:20)駐車場




ゴオ~っという音が複数遠くに聞こえる。
だめだ、目を開くことが出来ない。
それにしてもここは何処だろう?
思考回路が所々切れているようで何も考えられない。


フェードアウト…


人の話し声で再度意識が戻る。
閉じた瞼越しに陽の光を感じた。
それでもまだ瞼は閉じたままだ。
一体どうしてしまったのだろう…


自分は宇宙空間にいるのだろうか?
体がくるくる回っているようだが、重力を感じることができない。
体を反転させようと試しにもがいたら、猛烈な痛みが脳の中枢から吹き出してきた。
深呼吸、深呼吸…


これは夢なんだろうか?






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過去の記憶が妙にはっきりとした映像と共に残っている事に気付く時がある。それらの時間軸は止まったままだ。当然人の顔も当時のままで残っている。
景色もしかり、半分以上かすれてはいるが、何となく記憶に残っている場合がある。それらの景色の場所に後年訪れることが出来た場合は、タイムスリップしたような気分になるのだろうか。


答えは否だ。人は時間の経過を当たり前のこととして受け入れ、時間の経過と比例した変化の度合いに驚くことは希であろう。しかし短時間での大きな変化を目の当たりにすれば驚く場合もある。またある程度の変化を想像し予測することも可能だ。


人は今を生きる動物なので、過去を消したり未来を変えることは、基本的に出来ない。他の動物と違うのは予測ができることだろう。そう、予測こそが人に付与された能力なのだ。これには当然個人差があり競争社会の根源ともなる。もちろん他の動物や植物にも予測能力はある。しかし人と比べれば圧倒的に小さいものだと思う。


SF作家が未来の事を考えたり、プロの棋士が何百手も先を読んだり、音楽家が交響曲を作曲したり、科学者が理論を組み立てたりする行為は、未来を予測することに他ならない。
山を登る人が山行の予測をすることは、ほとんどの登山者が行っている筈だ。
目的の山を選び、ルートを決め、時間を読み、天気概況を調べ、日帰りか宿泊かを決め、食料を考え装備を整える。
人がこれをやるのは、そんなに困難なことではないが、他の動物にしてみたらちょっと難しいのではないかと考える。もちろん、例外はあるだろうが…


登山の上級者が高所登山を計画するときは、あらゆる状況を想定するだろう。それでも山に入れば何らかのトラブルは発生する。予測できない何かは確実に存在するからだ。その時点で生命の危険を予測できたら、常識的には撤退するだろうし、何とか切り抜けることができると判断すれば登山は継続する。


山の装備なのかどうかは個人に依るところが大きい物に酒がある。体質的に受け付けない人や習慣のない人はもちろん装備に含めないと思う。しかし多くの場合は最優先する物であろう(笑)
例えば、ほろ酔いの自分と、長い時間飲み続けた後の自分の比較を、他人の目では行えても、自身の視覚で捉えることは困難だ。やるとすれば映像に残すのが手っ取り早い。しかしある程度予測はできる。


もっとも予測の範疇を遙かに超える場合もある。所謂酩酊状態に陥る場合だ。こういう状況は、体内に取り込んだ質量が、その人の許容値を超えた場合に発生するが、第三者が無理矢理体内に注入した場合を除き--現実的にはあまり考えられないが--自身の意志で液体を口から吸収する訳なので、いくら苦しくても誰も責めることなど出来ないのだ。けれども、酩酊の度合いを誰かのせいにしたがる傾向は、なんとなく理解出来る。


でもこれはこれでとても恐ろしいことなのだが、山はもちろん里でも、素面の時には予測できない、もっと恐ろしいものがある。
それは山に来なければ存在を知ることさえ不可能なのだ。
その恐ろしさは、ただ単に山に登るだけでは決して分かるものでもない。


その襲撃を予測できる人はいないし、その存在を知っている人などもっと少ない。
それはある条件がそろった時に突然現れ、登山者を恐怖のどん底に引き込むのだ。
もちろん、その正体を知る手だては無い訳でもないが、多くの犠牲を伴う物だと認識すべきだ。


そして一番困るのは、酩酊状態に陥らないと彼らは決して現れないことだ。しかし常に隙あらばと襲撃体制を整えていることは分かっている。
こっそりと教えよう…


その正体は、


「カニ星人」なのだ…


パチン!
と突然目が覚める。


そうだ、自分は山にいるのだった…(汗)