【日 程】2016年8月15~16日(月、火)
【山 域】朝日連峰
【山 名】天狗角力取山(1376m)
【天 候】曇り
【メンバ】単独
【コース】バカ平から天狗小屋ピストン
8/15駐車場(7:30)---(8:34)焼峰(8:45)---(9:54)猟師の水場(10:10)---(11:30)雨量ロボット(11:55)---(12:30)天狗小屋
いつかは行かなきゃと考えていた天狗行、お盆休みの終盤に上手く時間が取れたので決行した。
天気予報はあまり芳しいものではなかったが、行くと決めたら行くのが我がスタイル、なるべく早い内に上に登りたかったので、6時過ぎには車上の人となる。
実を言えば前日、前々日と地区のビアガーデンが連チャンであり、あまり体調がよろしくなく、そんな心配もあったので誰にも声を掛けずに、ひっそりと向かった次第である。
もちろん体調管理の怠りは、自分の気持ちの緩みの結果なので、ひどい結果になったとしても自己責任である。
十分分かってはいるのだが、一生治らないだろうな(汗)
やれやれ…
大井沢は、まだ微睡みの中のようで人通りもほとんどない。順調に登山口の駐車場に着いたら、山岳会のK彅さんが準備中で挨拶する。颯爽と短パン姿で先行していった。
実を申せばこのコース、焼峰までの間、害虫がもの凄く、過去に何度も痛い目に会っている。その対策と言っては何だが、今回通常の短パンスタイルは止め、会社の作業ズボンを流用し、それに腕カバーを併用しての完全防備の出発とした。防虫ネットも持参したのだが、なんか間抜けな銀行強盗の姿が浮かんだのでやめた。
出発時の天気は陽も差して良かったが、上界は雲に隠れて見えず風もほとんどない。こんな日は、とおっても暑い日になるのは分かりきっているのだが、重荷が初めから肩に食い込み先が思いやられる。しかしせっかく来たのだからと気合いを入れ直し、ゆっくりを意識して出発した。
最初の急登を終えると暫くは、なだらかな登山路をゆっくり登る。木漏れ日がきれいで、山に入るんだぞと言う気持ちが高揚してくる。しかしルンルン気分も長くは続かない。焼峰までの急登が、汗を真空ポンプのように搾り取る。心臓の鼓動がドクンドクンと早打ち、喉から飛び出しそうな勢いだ。すぐに立ち止まり息を整えようとするが、なかなか鼓動は収まらない。早くも全身濡れ鼠状態で、このままあの世に行きそうで、もう本気で帰ろうかと思った。

バカ平の緩やかな登山道
去年来た時も、大層しんどい思いをした筈なのだが、そう言う嫌な記憶は蘇ってこないのが不思議なところ、本当のことを言えば、そんなことを考えることが出来ないほど、バテていたのだ。
尺取り虫のようなスピードでも、いつかは目的地に辿り着くのがこの世界、ひたすら足を前に踏み出すことに意識を集中する。すると突然視界が開け、焼峰のビューポイントに到着した。下ばかり見ていた顔を上げると、先行していたK彅さんが休んでいた。互いにこの日の暑さを嘆き合い、彼は先行し、オラは荷を下ろしての大休止となった。水の何と美味いことよ…
そう言えば登山道のあちこちに、バケツで水を撒いたような跡が…
オラの汗止めに巻いたタオルには、ゾウキン水のような大量の汗が…
完全に飽和状態のタオルを絞ると…
う~む、多分同じ事していたんだろうなぁ…
ここから峰伝いに緩やかに登ると、山岳会のF施さんが軽やかな足取りで下ってきた。すれ違いざま「ずいぶん背負って来たんでねが?」とからかわれた。
もちろん今回の主目的は管理人氏の慰問なのだが、皆考えることは同じようで、山岳会の仲間や岳友は、それぞれ食料や燃料(内燃料も含めて)をボッカしているようだった。
尾根道の分岐までやっと辿り着き一服、ここから道は大きく下り、まるで奈落の底へ落ちていくような恐怖を感じる。(笑)

奈落の底へ伸びる道が…
下りは登りの序章、片斜面に付けられた道は滑りやすく気を遣う。この辺は小沢の横断が何カ所かあり水を拾える。でも何となく飲む気になれず漁師の水場まで我慢する。
何年か前に、この辺の草原がロードローラーが走ったみたいに、一面潰れていた光景を見たことがある。それは熊の仕業に100%違いなく当時肝を冷やした。今回はそんなこともなく這々の体で水場に到着、ザックを放りだし冷たい流れで喉を潤す。これが何とも言えぬ美味しさなのだ。しかしながら晴天が続いたためか、流れがかなり細く、潰れかけたカップで何度もすくい、ペットボトルを満たすのが実にもどかしい。やっと溜まったキンキンの水を、一瓶一気に飲み干す快感を何に喩えようか…
ここでは軽食を取り、ゆっくり休憩する。

救われた猟師の水場 冷たい流れが嬉しい
少しだけ楽になった体に再度鞭を入れ、急登を一頑張りすれば風の通る稜線へ出る。ここは晴れていれば、朝日の主稜線を一望できるのだが、残念ながらこの日は全て雲に隠れていた。しかしながら、かろうじて小朝日が霞んで見える程度の視界でも、気分はすこぶる良く、いつもの休み場で暫し、そよ風に身を任せた。
ここから雨量ロボットのある広場まで、毎度感じるのだが結構の距離だ。少しの登りで息が上がり、もう既に我が体力が限界に近いのが体感できた。
10歩歩いては立ち止まり、5歩歩いて深呼吸、またまた3歩歩いて水を飲む、それでも何とかロボット前広場に辿り着く頃には、ゾンビのようにヨレヨレだ。老齢の哀愁漂う姿は、羞恥心の欠片すら無く、荷物を下ろすとすぐに地べたに座り込み、大きく水を煽る。震える手で取り出したおにぎりに貪り付く姿は、鬼気迫るものがあったのだろう。それまでかすかにあった風も凪ぎ、魑魅魍魎さえも恐れおののいた様子…。
ぜいぜい、暑(あず)い…

雨量ロボット前から、最後の登りを見上げる
それでも意識の底にあったキリリと冷えた朝日ビールのイメージが、幻覚にも似た魅惑となり、骸に等しい我が身を立ち上がらせ、粟畑への登りに立ち向かわせるのだった。
粟畑新道手前のピークでは、天狗小屋前のベンチで、魅惑のビアタイムを満喫している諸氏の姿が見え、たまらず地鳴りのような声と共に大きく手を振る。第4コーナーを抜けた駿馬に鞭を入れるかのように、我が老体に最後の鞭打つ姿は、傍から見たら実に怪しげなな光景であったろう。いつの間に腕にとまったトンボが、恐怖で固まってしまい離れない。

トンボさんと竜ヶ岳
粟畑ピークから眺める天狗小屋方面
もう既に始まっている様子…(汗)
粟畑のピークから一気に小屋めがけてダイブしたい衝動を堪え、最後の登りを過ぎる。そしてまずは天狗角力取場へ向かうと、嬉しいことに綺麗に咲いたマツムシソウが迎えてくれた。
ここでやっと我が家に帰ったような喜びが、ジワジワと湧き上がる。それに励まされたのではないが、少しは楽になった気がした足取りで小屋まで駆け下ると、管理人のI川さんが握手で迎えてくれた。およそ山では一年振りの再開だ。
万歳…万歳…

粟畑ピークの道標と、以東岳方面
天狗の角力取場
マツムシソウが迎えてくれた
その後必死の思いで辿り着いた小屋で荷を解き、何はともあれ感動の朝日ビールで乾杯、一気に流し込む美味さったら、何と表現して良いのやら…(嬉)
それは登りの苦痛が、喜びへと昇華する瞬間でもあるのだ。それと裏腹に、登りの最遅タイムを更新した悲しさも実は存在する。その時だけは「鍛えなければ!」という思いはあるのだが…(汗)
この後、仙台からのお客さんも交え4人で楽しく呑んだ。いつものことではあるが、就寝時間はもちろん不明である。夜は雨が降ったような記憶も少しは残っているが、満点に煌めく星を見た記憶は一切無い。しかし美味しい料理を肴に楽しく呑んだ記憶は残っている。
-------*******-------*******-------*******
8/16天狗小屋(10:03)---(11:14)猟師の水場---(12:15)焼峰(12:23)---(12:51)駐車場

小屋から望む日の出
日頃の習慣とは恐ろしいもので、あんなに呑んだくれた次の朝でも、4時半には目が覚めた。しかし起き上がるまで半時、視界が定まるまで少々、会話が成立するまで頭を数回叩く、それでも記憶が完全に戻ることはないのだった。
皆さん早々に準備し出発していくが、オラはマッタリと朝の時間を楽しむ。管理人氏から教育的指導を受けても、明日には忘れてしまう空頭を振りながらコーヒーを飲み、山の朝を楽しむ。
管理人氏にはもう完全に行動パターンを読まれ、完全に呆れているのであろうが、そんなことなどお構いなく、我が家のようにマッタリ過ごしていると、時間なんてあっという間に過ぎてしまうのだ。
たった2日の山遊びでも、何人かとの出会いと別れはあり、それはそれで不思議といつまでも心に残っている。
色んな人が山に来て、色んな出会いや体験を繰り返し下界へ戻っていくが、その人達が山で得たものを知りたければ、直接言葉で教えて貰うしかない。しかし、山小屋でもし一晩一緒に語り合うことが出来たなら、その思いの全部ではないが、ある程度は共有できるのではなかろうか。そしてその思いは間違いなく、虚飾のない純粋で美しいものだと思う。少なくとも私には、そのように感じられる。それ故、山人はまたそこに、激流を遡る鮭のように何度も戻ってくるのだろう。
長期管理の慰問に行ったつもりが、かえってこっちの気持ちが癒されることになり、これを「ミイラ取りがミイラになる」なんて言うのかな? 恥ずかしくて、穴があったら入りたくなりますがね…(笑)
最後に、K彅さんすっかりご馳走になりありがとうございました。
またご迷惑をお掛けした管理人氏にも、お詫びと共に深く感謝申し上げます。
それから、食材の準備やパッキングに協力してくれた家人の心遣いがなければ、多分行けませんでした。心から感謝します。
朝日はやっぱり良いねぇ…
帰路、粟畑から雲湧く竜ヶ岳を望む
K彅さん、ありがとうございました。









よほど大変だったみたいで、こっちまで汗が出そうだよ。
冷えたビールは格別な美味しさだったことでしょう。
4人での小屋呑み、ウラヤマだなあ~。
竜門行きから1ヶ月休んでから新山、七高山に3度だけで
お盆前後は、どっぷりと下界に浸っているこの頃です。