kaeru2_sこんばんは、管理人のゴゴです。
この世には決して太陽の輝きが届かない暗黒大陸があります。
53回は早見純先生の『純のはらわた―血みどろ怪奇作品集』です。 

 
satiko_tere_001嫌な予感がします、久々にとっても嫌な予感がします。

kaeru2_s前にも言ったけど三条友美先生、駕籠真太郎先生、早見純先生で三大エログロホラー漫画家だと思ってる。あとは大越孝太郎先生と丸尾末広先生と花輪和一先生とか。異論は認める。

satiko_tahaha_001このブログを最近読んでくれるようになったご新規さんがものすごい勢いで去っていく音が聞こえます!

kaeru2_s
去る者追わず! ページビュー気にしてブログなんてやってられるか! 生まれたところや皮膚や目の色やエロ漫画家かどうかでいったい早見先生の何がわかると言うのだろう!

satiko_teheわたし、ちょっと次回までお休みをいただいていいですか?

kaeru2_s駄目よ。それに女の子一人で帰ったら早見作品のヒロインみたいな目にあうよ。
    
satiko_kohon_001なんですか、それ? 読んだことないからわからないですけど。

kaeru2_s例えば、そうだね。 何の落ち度もない少女が突然さらわれて暴力的に×××された挙句■■■を△△△されて殺害されてぇ、その様子を一部始終録画したビデオが親元に届けられたり。

satiko_ueltuひっ。伏字多すぎ!

kaeru2_s
幸せの絶頂にあった少女が何の前触れもなく車に轢かれて上半身と下半身を切断されてぇ、愛する人にもさらけ出すこともなかったグロテスクな体の中身を衆目に晒して死んだりぃ。
「長い夜」はかなり好きな作品です。
008
satiko_akire3_001ひぃ!

kaeru2_s狂人に拉致された少女が、目と鼻と耳とを糸で縫われて感覚を奪われてぇ、男の欲望のままに◆◆◆を蹂躙されて▼▼▼扱いされたりぃ。

satiko_sadness_001も、も、も、もももも・・・・・・

kaeru2_s
もも? 暴漢に拉致されたお嬢様が目と口をやっぱり糸で縫われてぇ、抵抗するもんだから手と足を〆〆〆されて●●●にされて、□□□に詰められて放置されたりぃ。

satiko_yubisashiもーいいです! 勘弁してください!

kaeru2_s
まだまだたっぷりあるから楽しみにしてて。さて、著者紹介です。早見純先生はジャンル的に言うとエロ漫画家。エロ劇画という昭和が生んだ混沌の担い手の一人です。

satiko_ho_001昭和ってほんとにおそろしいですね。平成バンザイ。

kaeru2_s
デビューは1978年、別名義で応募した「少年サンデー」の新人賞に『雪山の対決』が佳作入選して漫画道を歩み始めます。同じ年、同じ賞を高橋留美子先生が受賞してデビューしています

satiko_memo_001高橋留美子先生のるーみっくワールドが始まった裏でそんな歴史が・・・。高橋先生が本誌「週刊少年サンデー」掲載で、早見先生が「増刊少年サンデー」に掲載なんですね。ある意味裏サンデーだわ。

kaeru2_s
少年誌の編集方針が肌に合わないと感じた早見先生は、アシスタント業のかたわら1983年に久保書店に作品を持ち込み、晴れてエロ漫画家デビューを果たします。その異質なエロ描写はだんだんとコアなファンを生んで行きました。
この辺の作品はほとんど後に再収録された本が出ています。
009
satiko_001どんなのですか?なんて聞きませんからね。

kaeru2_s
勝手にしゃべるよ!その当時ほとんどなかった残酷・かつ変態的なエロ描写に、作品によっては若い編集者に素直な気持ちをぶつけられたこともあると言います。いわく「なんなんですか、これ。ふざけてんじゃねーすよ。」

satiko_awaremi_001もうご勝手にどうぞ。

kaeru2_s後年、その作品群は私小説のような独特の読後感と世界観により、前衛アートにも似た評価を受けます。『暗黒大陸』『暗黒抒情』などと早見作品はサブカルチャー世界で一定の評価を得ることになるのです。
1999年に来た恐怖の大王は早見先生だったかもしれません。
012
satiko_nayamu_001サブカルってほんと、サブどころかベンチ入りも危ういもの多い気がします。

kaeru2_s
その特徴は残酷! 汚辱! 惨美! 早見作品の少女達は肉体だけではなく人間の尊厳まで徹底的に貶められ、たいてい死にます。エロ漫画だというのに、可憐な少女たちの酷薄なる人生の終焉を描いたものがほとんどです。

satiko_nayami_001うーん、人様の嗜好に異を唱えるほどわたしも出来た人間ではないですけど、そういう話を好む嗜好ってなんかいやだなぁ。

kaeru2_s
意外と女性のファンが多いから。さて、エロ漫画家デビューを果たした早見先生ですが、90年頃突然断筆して漫画家をやめ、久保書店の編集者に転職しました。

satiko_sinken_001とーとつですね。編集者から漫画原作者とかになるのはよく聞きますけど、逆のパターンは珍しい気がします。

kaeru2_s
そうだね。断筆して1999年、復刻本が盛り上がっていた頃、大西祥平先生を中心に、「伝説の猟奇エロ漫画家」として再び脚光を浴びます。そこで『自薦最低作品集 純にも抜かりはある』が出されました。これは名作。
010
satiko_point_00118禁ですけどね。あ、見てないと思うけど、ちっちゃなお子様は注意してくださいね。

kaeru2_s
大西氏との交流を経て、早見先生は漫画家に戻る決意をされました。この頃からホラー漫画を描こうという意思表示をされていますが、連載の決まっていたホラー漫画雑誌が出版社ごと倒産廃刊して行く宛をなくします。

satiko_memo_0012000年前後ってホラー漫画雑誌が軒並み潰れたりした頃でしたっけ? ちょうど小泉政権が樹立する頃ですね。早見先生はじゃあ、どこで作品を発表したんですか?

kaeru2_s
先生がたどり着いたのは21世紀に残された最後の砦『ホラーM』でした。2000年半ばごろからいくつかの読み切り作品を誌面で発表します。が、単行本は出されませんでした。

satiko_matta_001『ホラーM』ってあれですよね、小学生も読むような少女ホラー誌を名乗りながら⚪︎⚪︎⚪︎で〆〆〆な作品をいっぱい載せてたっていう、あの『ホラーM』ですよね。

kaeru2_s
そう、2000年代以降もがんばり続けたホラー漫画誌『ホラーM』です。当ブログでは頻出ワードですよ。

satiko_haa_001三条友美先生もここで描いてましたっけ? ほんと、どこからこういう描き手を見つけて来るのかしら?

kaeru2_s
向こうから集まってくるんだと思うよ。後年、古巣の久保書店から『ホラーM』掲載分を中心に出されたのがこの『純のはらわた』です。

satiko_egao3_001じゃあ中身はほとんどホラーM掲載分ということですね。成人雑誌とかではなかったので一安心しました。

kaeru2_s
安心するのはまだ早い! 確かに明らかに18禁な描写はないですが、その残酷なる世界観は健在です。では、いい加減中身を見ていこう。

satiko_awaremi2_001はーい。えーっと、「人面瘡狩り」 いきなりすごいタイトルです。


kaeru2_s
しのぶには誰にも言えない秘密がありました。彼女の太ももには大きなできものがいつからかあり、日に日に大きくなるそのできものはいつしかこぶし大の大きさにまで膨らんでいたのです。
001

satiko_tere4_001また急な出だしですね。思春期の女の子にはできものとかニキビとか、いつの時代も悩みの種ですけど。

kaeru2_s
そうだね。さて、放課後の学校の屋上で、しのぶは意を決して友人の香代にその巨大なできもののことを告白します。それだけではなく、カッターを差し出すと「できものを切り取って欲しい」とお願いしました。

satiko_haa_001ええっ! わざわざ友達に頼まなくても整形外科とか皮膚科とか専門医に頼めばいいじゃないですか!

kaeru2_s
はぁー。さっちゃんにはわからないかねー。

satiko_egao_001なんですか、この世の終わりみたいな深いため息ついて。

kaeru2_s
年頃の清純可憐な少女が、内腿にできたグロテスクなできものなんて、知らない人に見せられないし告白したくないでしょうよ。わからないかなー、この乙女な恥じらい。

satiko_ikari2_001マンガの読みすぎですよ。そんな時代錯誤な清純可憐な少女、今の時代フィクションですよ。制服が好きなおじさん達の頭の中にしかいません。

kaeru2_s
信じない、そんな現実認めない。でね、香代は親友の白い肌に刃を立てる不安と興奮にとまどいながらも、なんとかしのぶのできものを切り取ります。不思議としのぶに痛みはありませんでした。
002
satiko_tere2_001カッターで切り取るって生々しくってやだなぁ。

kaeru2_s
無事に切除が済んでほっとする二人は、ふと、ずっと学校を休んでいる少女・かおりのことを思い出します。確か彼女もできものができてから学校を休むようになっていたのでした。

satiko_tere4_001あ、このパターン。よくあるあのパターンかしら。

kaeru2_s
焦らない焦らない。かおりの家を訪ねた二人はそこで信じられない光景を目にします。かおりの内腿で肥大化したできものは赤黒く隆起し、そのいびつな表面には目や口のような彫りができて、まるで人間の顔のようでした。

satiko_haa_001うえっ! 何気に人面瘡ものってうちのブログでは初めての取り扱いです。イヤーな感じ。

kaeru2_s
それだけではありません。食事をすくった匙を近づけると、人面のそれは口のような凹凸を動かして食事を食べているではありませんか。ですが、食べ物を運ぶかおりは我が子に授乳をする母親のように朗らかな顔でした。

satiko_akire3_001いやー! そんなの太ももにできたら間違いなく切り取りますよ!

kaeru2_s
そうだね。しのぶも自分がしたように切り取るよう進めますが、かおりはこれを断ります。彼女の中ではすでに母性愛に似た感情が生まれていたのです。
003

satiko_nayami_001もうちょっと愛を向ける対象を考えても良さそうな気がします。

kaeru2_s
そこでしのぶは香代にかおりを取り押さえさせ、無理矢理そのできものを切り取ることにしました。この時のセリフ「女の子がそんなものをくっつけてちゃいけないわ」が象徴的でとてもいいね。

satiko_eeltu_001無理矢理やるのはどうなんだろうなぁ。

kaeru2_s
人面瘡はジロリと睨み返してきたのでしのぶはその眼にカッターの刃を突き立て、眼と口を抉り取り・・・というところでここまで。

satiko_ee-_001もうちょっとで痛い痛い!って叫ぶところでした。急に残酷ですねぇ。

kaeru2_s
処女って残酷じゃん。男を知らない女ほど残酷になれるものはないぜ。

satiko_yubisashiやだ、キザっぽいけどセクハラだし、何より現実に言ってる人がいたら引いてしまうようなセリフですし、⚪︎⚪︎な女は★★ってレッテル付けも甚だしいです!

kaeru2_s
そう、怒りなさんなよ。いいかい、古くはギリシア神話の月と狩猟の女神アルテミスのように、潔癖なる処女はその高潔さゆえに残酷なことを平気でするのさ。ラッキースケベで水浴びを覗いた男を容赦なく殺したりね。
ティツィアーノ・ヴェチェッリオ「アクタイオンの死」
ラッキースケベでアルテミスの水浴びを覗いたアクタイオンは、鹿に変えられて自分の猟犬に食べられてしまいます。 
011
satiko_ueltuギリシア神話にラッキースケベですか。ゴゴさんの口からギリシア神話なんてワードが出てくるとは思いませんでした。

kaeru2_s
少女は少女であるがゆえに自らの体に根づいた醜い異物を取り除こうとしたのです。異物を受け入れようとしていた少女は、慈愛ゆえに女になろうとしていたのです。彼女たちは少女であるべきか女になるべきか、これはそういう話。

satiko_tahaha_001そんな話だったかなぁ。また勝手な解釈ってやつですね。でも最初に拉致監禁的な話をされたんで心配したんですけど、話自体はすごいオーソドックスで安心しました。

kaeru2_s
でしょう。早見純先生のホラー漫画は骨組みがかなりオーソドックスなんですね。そこに早見流の何かがトッピングされて奇跡の一品に仕上がってるんです。人面瘡って言ったら「人こぶ少女」や「チチチ」だね。

satiko_kohon_001チチチ? なんか昔に聞いたような。

kaeru2_s
『のろいの顔がチチチとまた呼ぶ』 まあ、人面瘡自体はもっと古く、江戸期の文献や中国の文献にも見られる伝統的な怪奇談です。こぶがしゃべるとか素敵だよね。岩明均先生の『寄生獣』みたいな。

satiko_akire相変わらず素敵ポイントが全然伝わってこないです!

kaeru2_s
そう? あと、早見純作品の心得その1「美少女」! 早見純先生の作品世界は清らかな乙女と、その純潔の血潮によって彩られています。少女たちへの容赦ない描写は圧巻です!

satiko_001まあ、さっきの話も人面瘡を除くと女の子しか出てませんでしたしね。

kaeru2_s
じゃあ、そろそろ次へ行こうか。「久美が泣いている」 美緒の親友であった少女久美が、無惨な遺体となって発見されたのは町外れにあるトンネルの中でした。
007
satiko_sinken_001短編だからぐっといきなり内容に入りますね。

kaeru2_s
小さな町で起きた凶悪な事件に、町中は噂でもちきりでした。なにせ少女の遺体は身体中を刃物で滅多刺しにされており、身体はあちこちバラバラで、犯人が持ち去ったのか首から上の頭部がなかったのです。

satiko_ee-_001うう、猟奇的。ワイドショーなら1週間は続報が出る事件だわ。

kaeru2_s
噂では犯行時刻近くに大きな駕籠を担いでほっかむりで顔を隠した老婆が目撃されたと言われており、首はそのおばあさんが持ち去ったのではないかと言います。しかし、美緒はそれは真実でないと知っていました。

satiko_sinken_001ぞくり。

kaeru2_s
美緒の兄は以前から久美に恋い焦がれて付きまとっていました。ある夜、彼女は自室にこもる兄が一人で何事かを囁いている声を耳にします。そっと部屋を覗いて目にしたのは、久美の生首に愛の言葉を囁く兄の姿だったのです。
印象的なシーンで瞳を血管まで象徴的に描き込むのが早見先生流の手法
006
satiko_akire3_001ぞぉ~。生首やだぁ。

kaeru2_s
だから美緒は久美の頭を持ち去ったのが噂の老婆でないとは知っていたのです。美緒は犯行現場を訪れ、かわいそうな美しかった久美のことを思いました。高ぶった感情が久美の気持ちに同調したその時・・・と、ここまで。

satiko_nayami_001起承転結しっかりしてそうな話ですね。オチが気になるなぁ。

kaeru2_s
まあ、まるまる結末まで話すのは野暮だから言わないけどね。この後素敵な惨殺シーンがあります。

satiko_egao_001その素敵ポイントにも共感ゼロです。 

kaeru2_s
素敵な⚪︎⚪︎っていうと何にでも応用が効いて便利な言葉なんだよね。素敵な白骨死体とか素敵な嘔吐とか素敵な地獄めぐりとか、こう、素敵ってつけるだけでぐっと来る気が・・・

satiko_ee-_001しません! 適当にもほどがあります。

kaeru2_s
ですよねぇ。さて、純のはらわたと題されるように、この話には素敵なはらわたボロンシーンがあるのですが、早見純の心得その2「人間はただの肉塊である」!

satiko_memo_001今回のサブタイトルになってる言葉ですね。どこかの偉人さんの言葉ですか? 「人間は考える葦である」みたいな。

kaeru2_s
ええ、これぞまさしく至言。早見純先生が言った言葉です。乙女も青年も老人も子供も、一皮むけばただの肉塊。我々は知性の皮でつくられた肉袋なのだ。

人間はただの肉塊である、みたいなことを見せられると安心するんです。どんなに美しい少女でも、飾りが全然なくなっちゃうみたいな。そこが好きなだけです。」

青林工藝社『アックス』VOL.26 「特集 暗黒大陸早見純」
satiko_haa_001そりゃまあ、そうですけど。そんなこと言われたって困ります。

kaeru2_s
綺麗な作り事ばかり見てると忘れてしまうことがあるんだよね。残酷!と言われがちな早見純作品ですが、色んなインタビューで先生は「私ほど良識のある人間はいない」「私の作品は常識的」とおっしゃってます。

satiko_ueltuええーっ、って言っちゃうと失礼かな? ここまで話を聞くと全然そんな気しないです。

kaeru2_sだろうね。作品だけ読むと早見純先生は圧倒的にヤバイ人と思われがちです。よくインタビュー記事も、インタビュアー側から「2ショットでの対談は怖い」って言われて複数での対談にされたりしてます。
 
satiko_tahaha_001業界人からも警戒されるって相当ですね。まぁ、ちょっとそういう扱いにして遊んでいるところもあるのかな?

kaeru2_s
現実ってさ、否定しようがないから恐ろしいじゃん。子供が滅多刺しにされて殺されたりとか、スナッフビデオが被害者に送り届けらたりなんてこと、今の世の中フィクションでもなんでもなくて、ふつーに起こり得るじゃん。

satiko_egao3_001そういう極端な例をあげて話をするのはどうかと思いますけど、0か100かで言ったら可能性はないわけじゃないですね。

kaeru2_s
でも平和な日常の中ではそんなこと忘れてしまうのよ。腹を裂かれれば腸が飛び出すし夜道を歩いてりゃハイエースされることあるし、それもまた現実なの。光の差さない暗黒大陸が確かにこの世にはあるんです。

satiko_nayami_001言いたいことはわかりますけど、そんなことをわざわざ漫画にして伝える必要があるんですか?

kaeru2_s
あるよ!大アリ!普段日の目を見ないようなそんなことだからこそ、改めて見つめることで自分の周りの世界が浮き彫りになるの。忘れてはいけない、人間はただの肉塊なのだ。

satiko_awaremi_001なんかあやしーなー。本当にそんなこと考えながら読んでます?

kaeru2_s
全然! 血しぶきたまらん! 血まみれの美少女たまらん! 白い肌に浮かぶ静脈の色たまらん!それしか考えてない!

satiko_egao4_001うわぁ、ドン引きです。血の気が引くとはこのことですね。できれば永遠に日の光の差さない世界に埋もれててください。

kaeru2_s
ふひひ! じゃあめげずに次行こうか「老婆の予言」 奈美とミサの二人は連れ添って歩く深夜の道で、年老いた占い師の女から声をかけられました。

satiko_memo_001ホラー漫画って結構占い師出しますよね。超常的なものがいいのかしら?

kaeru2_s
かもね。未来を予言できるとうそぶく占い師の誘いにのり、奈美は占いをしてもらいます。結果はありきたりなものでしたが、次に老婆はミサの手を取って予想外のことを言ってきました。

satiko_nayamu_001何ですか?

kaeru2_s
今日の日付が変わる12時ちょうどにミサは死ぬというのです。日付変更まであと数時間。言わば、彼女の寿命はあと数時間限りだと予言しました。
004
satiko_dame「あんた地獄に落ちるわよ」みたいですね。あ、誰のこととは言いませんよ。

kaeru2_s
世の中には興味を引くために不愉快なネガティブなことをいう占い師もいます。奈美は不吉な予言に憤慨し、その場をあとにしようとしましたが、ミサはその手を掴んで彼女を引きとどめました。

satiko_eeltu_001場面転換とかなくてずっと立ち話なんですね。不思議な感じ。

kaeru2_s
死がやってくる、だとしたら私はどうやって死ぬのか。飛行機が落ちるのか、通り魔に刺されるのか、本当に死がやってくるのであれば見届けようというのです。二人は手をつないで、佇む老婆の前でじっとその時を待ちました。
005
satiko_egao_001どきどき。

kaeru2_s
刻一刻と着実にその時は近づいていき、ついに12時!というところでここまで。

satiko_yubisashiだと思ったぁ! 絶対そこで終わりにするんだと思いました。でも続きが気になります。

kaeru2_s
野暮なネタバレはしません。特徴的でしょう。数ページにわたって、三人の会話だけで物語が進みます。絵面が地味だから、構図とか台詞回しに配慮しないと淡々とつまらなくなってしまうんだけど、そこはさすがに早見先生です。

satiko_tere2_001そういうの得意な方なんですか?

kaeru2_s
エロ漫画ってさあ、男女が絡み合ってるだけのセッ⚪︎⚪︎シーンを色んなカットで描くしセリフにも気を使うじゃん。そういうところじゃない? ほら、実際の男女の営みなんて地味なもんで、天井のシミを数えてる間に終わるでしょ?

satiko_ikari_001知りません!聞いたわたしが馬鹿でした。セクハラなカエルは潰されてしまえばいいです。あと言い回しが昭和!

kaeru2_s
おー怖い怖い。ま、話に戻るけど非常に読ませる作品になってます。こういう体裁、小劇団の芝居みたいで結構好きです。他に巻末の短編「ファミリー」がこういう体裁です。

satiko_ho_001へー。

kaeru2_s
そこで、最後に早見純作品の心得その3「性と生と死」 早見作品にはとにかく死がまとわりつきます。突然の死、不条理な死、健康的な生命力溢れる少女たちは、その死によって美しさを永遠とするのです。

satiko_haa_001だんだん危ない発言が増えてきたわ、このカエル。

kaeru2_s
死! かつて楳図かずお先生は人間は死ぬと真実の姿が現れるというテーマを何本も描きました。「真」という漢字は逆さ吊りにされた生首が元です。では、美しい少女たちの真実の姿は本当に美しいのか?

satiko_ee-_001あーもう、なんか暴走始めてるし!

kaeru2_s
否! 彼女たちの純潔な魂は死によってこの世を去り、瑞々しい肉体はやがて屍肉となって腐り落ちます。だとしたら、その美しさの頂点は死の間際、その瞬間にしかない刹那的なものなのではないでしょうか!

satiko_tere_001知らないですよ。もー、終わりにしたいー。

kaeru2_s
早見先生の作品群は、その少女たちの死に携わる瞬間をストロボ撮影のように切り取って紙面の中に閉じ込めた、永遠の美と言える作品群なのです。どっちかというと、成人向けエロ漫画作品の方がそんな傾向です。

satiko_ikari2_001あ、ちょっと落ち着きましたね。落ち着いたところでもう一回聞きますよ。ほんとにそんなこと考えながら読んでます?

kaeru2_s
全然! 純くんシリーズは今日も健全に変態だなぁ、とかそんな程度。

satiko_awaremi2_001とりあえず真面目に読んでくれた人に謝りましょうか。ふざけてんじゃねーすよ。

kaeru2_s
すいません。解説は以上です。早見純先生は常に新しい趣向で作品を作ろうとする方で、この作品集以降ホラーの単行本は出されていません。っていうかぶっちゃけエロ漫画の方がある意味怖いです。

satiko_memo_001狂気じみてますもんね。早見純先生の自伝的な話なんて作品もあるみたいですけど、どこまでネタでどこからほんとなんですか。

kaeru2_s
そんな野暮なことは考えずに作品そのものを楽しみなさいな。先生が変態だろうと、変態の皮を被った聖人だろうと、作品の質は変わらないから。ひとつ言えることは、変態だとしたら並大抵の変態ではないということだ。

satiko_tahaha_001ぁはは、怒られますよ。

kaeru2_s
再びすいません。早見純先生、またホラー漫画を描いてくれる日を楽しみにしています。が、俗人の言葉は気にせず、お好きな作品をもって世を震撼させてください。

satiko_annai_001えー、久保書店発行の『純のはらわた―血みどろ怪奇作品集』は絶版です。例によって中古書店かAmazonを探してください。電子化も今の所されていません。

kaeru2_s
かたや、先生のR18作品は結構電子化されたりしています。DMMの電子アダルト本コーナーには並んでいるので、本棚に置いておけない人は是非どうぞ。


satiko_point_001またたまたま更新のタイミングがあいましたが、この更新の一月前の2015年8月に早見先生の新刊『性なる死想』が発売されました。なにげにゴゴさんの中の人はサイン本で持ってたりするそうです。

kaeru2_s新刊は再録が多かったですが、早見作品初心者には素敵なラインナップだと思います。是非! 血みどろ怪奇作品集2も出してください!!