「滋賀の文化財講座」打出のコヅチ4は

    『滋賀に根づいたモダン建築の魅力』

        教育委員会文化財保護課 課長補佐  池野 保

 滋賀と言えば文化財建造物の多さでも知られている。国指定のものは全国3位の数

と言う。一方近代に入ってからは、大都会のビル建築に眼が行きがちであるが、地方

にも近代の息吹を伝える建築物がたくさん残されている。滋賀には名高いヴォーリズ

の遺産だけでなくその他にも貴重なものがある。

 さて日本の開国とともに、外国人居留地には洋風の建物が建てられるようになる。

それを真似て、日本の大工の棟梁が洋風建築(疑洋風建築)を建て始める。伝統的な

工法の上に洋風の意匠を取り入れたものである。新しい時代の息吹を伝えるべき学校

や役場など行われた。

 本格的な西洋建築は、若いイギリス人ジョサイア・コンドルの招聘により、工部大

学校での建築の講座開設に始まる。彼は鹿鳴館の設計者でもあるが、その指導を受け

た俊秀の卒業とともに西洋建築が日本に根付いていく。このコンドルは日本文化に心

酔し、河鍋暁斎の弟子でもあった人でもある。

 滋賀では、本格的に洋風建築を学んだ建築家が活躍することになる。田中松三郎・

亀太郎親子により、多数の公共建築物がものされた。その後裔はなお田中建築事務所

として現在も続いている。

 ウィリアム・メレル・ヴォーリズが宣教のため滋賀にやって来たが、八幡商業学校

での英語教師の継続を許されなかったため、生活のため建築事務所を構えることにな

る。その規模は大きくなり、彼のもとで1500件もの建物が建てられたという。大阪

などではビルの設計なども手掛けているが、個人住宅から教会、銀行、郵便局、学

校、大学と幅広い。

 とくにヴォーリズの家屋は、住む人の生活に根ざした優しさが基調となっていると

言われ、多くの住宅が今日でも住まわれ使われている。多くの近代建築の中で、何ら

かの文化財指定を受けたものに、ヴォーリズを冠したものが飛び抜けて多いという。

  参考書 

    石田潤一郎・吉見静子・池野保

      『故国のモダン建築』 京都新聞出版センター ¥1470



 ※豊郷町立豊郷小学校旧校舎が建替えのため壊されかけた時、住民などによる反対

運動,裁判訴訟によって保存されることになったのは記憶に新しい。それは公共の用

に供されるようになったが、もう教室として使われることはない。古くても豊かな情

操を育むであろう場は失われた。

 来月3日から11月3日まで、『ヴォーリズ展 in 近江八幡』が開かれる。ヴォー

リズ顕彰の大きな機会なのだが、建築は外部のみならず内部空間を知らねば彼の意図

を知ることは難しかろう。どこまで肉薄できるか。