私は多分パリに行くことはないので、もう一度見ておこうと思ったが、最終日に

なってしまった。大型連休も済み、京都駅周辺の混雑も緩和されている。しかし美術

館につくと、すでに入館待ち65分となっている。迷ったが、取り敢えず並ぶことにす

る。列は動いているので何とかなると高をくくっていたら、建物の北側まで来てびっ

くり、30メートルほどの列がつづら折り、五重になっている。やっと玄関から中に

入ったと思ったら、ここでも列が何重にも重なっていて、結局65分かかってしまっ

た。入場制限しているとはいえ、中は人でいっぱい、ゆっくり見ていられないので、

めぼしいものだけ駆け足で見て歩く。

 レンブラント「自画像」1633…私はついこの間、デューラーの「自伝」と「ネー

     デルラント旅日記」(ともに岩波文庫)を読んだのだが、そこにある挿絵

     の凄さからすれば、レンブラントはいかにも生温い感が否めない。

 フランス・プルビュス「マリー・ド・メレディスの肖像」1610…マリーはイタリ

     アの名門メディチ家の出で、フランス王アンリー四世に嫁いだ女性。夫の

     死後摂政として政治の世界に手を染める。この絵はその頃、彼女が37才の

     女盛りの肖像。まことに豪華な衣装ー大きな真珠が全体につけられてい

     るーにを身にまとっている。

 ヨハネス・フェルメール「レース編みの女」…みんなこれがお目当てなのか、人だ

     かりで近づけない。ただ遠くからでもその可愛らしさ、繊細さが見て取れ

     る。

 ヤン・ブリューゲル「火」…ヨーロッパのおどろしい世界を細密で垣間見せてくれ

     る。

 ジョルジュ・ド・ラトゥール「大工ヨセフ」…蝋燭の火の当り具合を、少し誇張が

     あるようだが微妙に捉える。光の意味を考えさせられる。

 その他17世紀のヨーロッパ絵画というものはこんなものだということを知らしめて

くれる。一体に大画面が多いのだが、どこに飾ったのだろうか、王侯貴族の館であろ

うか。


 結局私が美術館の中にいたのは10分足らず。群衆に圧倒されてほうほうの体で退

場。

 かっての「ミロのヴィーナス像」以来、ルーヴル美術館と聞けば、猫も杓子も押し

掛ける。社会現象になってしまっているのだろうか。この何十分の一の鑑賞者でも他

の美術館に回ればと思わずにはいられない。多分同じ建物で催されている「コレク

ション展」は閑散としているに違いない。