姫路の美術館から博物館に回る。今回は大変珍しい展覧会である。

    特別企画展

       『ミニチュアの世界』

           ー小林礫斎と手のひらの宇宙ー


 いま雛人形が各地で飾られている。これは文字通り「雛」=ミニチュアであり、いろんな小さな道具

が飾られる。一般に嫁入り道具を模したものといわれるが、関西の御殿飾りに付属するのは台所や生活

什器の模型である。女の子のままごと遊びそのものである。

 このように小型模型=ミニチュアは子どもの遊びから出発するが、これが大人の愛玩物に成り上がる。

早くには洋の東西で豆本が作られたが、それがさらに日常の諸道具に及び、これでもかというくらいに

小さく小さく作られることになる。それを掌中の珠として楽しんだのである。

 今回の出展物のほとんどは東京渋谷の「たばこと塩の博物館」の蔵品である。

 これらの品は、田中実氏が収集された超小型の模型のコレクションである。田中氏が亡くなられたあ

と長く西宮市で保存されていたのだが、近年くだんの「たばこと塩の博物館」に寄贈され、今ここに里

帰り展示となったのである。

 恐ろしいまでの小型化であるが、素材は本物で、ほとんどは象牙や唐木が使われている。これらをど

のように仕上げたのか、製品が小さい分それを作る道具も小さくなければならない。そこから工夫が始

まる。しかも物が小さい分、それだけ誤差も小さくなる。これはもう大人のマニアの世界ということが

出来る。

 これらを作ったのは小林礫斎をはじめ様々な工芸家が参加している。それぞれに普通の大きさの物で

も一流の職人がミニに取り組んだのである。特に感心するのは画家の小林立堂である。1センチ2セン

チの小さな画面に山水や花鳥を描いている。しかもそれなりの出来である。

 ところで彼らは小さいけれどあくまで本物を志向した。そのための手本も本物であったという。なん

とここに京都国立博物館の国宝「芦手下絵和漢朗詠集」がお出ましである。こんな所で再会するとは

思っても見なかった。

 とにかく驚くべき小ささである。今日では再現は不可能であろう。普通の大きさの物を作るよりはる

かに高価につきそうである。