琳派に親しむものにとっては見逃せない展覧会なので、初日に出かける。その前に前後2回入場出来る前売券を手に入れておく。姫路は私の所からJR直通で2時間余かかるので、JR夏の1デイパスを使う。
 早く出かけるつもりが、結局ついたのが11時をまわってしまう。姫路は酒井家が藩主であったことで、この展覧会を記念して姫路の和菓子屋さんが入場者先着150名に生菓子を提供されているのだが、こんな時間だったが私もその数のなかに入ったのであった。

    生誕250年記念展

        『酒井抱一と江戸琳派の全貌』

 酒井抱一は藩主の次男として江戸で生まれる。長男が家督を継ぐのだが子どもがなかったので、彼が兄の養子となる予定であった。ところがその兄に子がうまれたことから、彼の人生が方向転換することになる。真面目な青年であった彼が、一転吉原の悪所通いにはまることになる。旗本の次三男の部屋住では何ともならなかったろうが、藩主の弟である小遣に不自由しなかったのであろう。といって今どきのどら息子と違って、遊びも一流、大文字屋の上客として名を馳せている。そして出家して市井の一人として生き、この大文字屋の太夫を身請けして妻としている。
 彼の遊び仲間はこの当時流行した狂歌連中である。上流人士は自らの狂歌を摺物にして、配っている。また狂歌集もたくさん編まれている。酒井抱一も「尻焼猿人」という名で『狂歌三十六人撰』の第一葉に登場している。
    長月の夜も長文のふうしめを あくれはかよふ神無月なり
 また今まで指摘されなかったので私は知らなかったのだが、喜多川歌麿の『画本虫撰』の「毛虫に蜂巣」に記された狂歌
    こハごはにとる蜂の巣のあなにえや うましをとめをみつのあぢはひ
は尻焼猿人つまり酒井抱一の作品だったのである。絵ではなく狂歌で彼は世に出ている。

 「松風村雨図」…細見美術館で何度も拝見したもの。25歳の作、肉筆浮世絵であ 

     り、手本を写したもの。

 「桐図屏風 六曲一隻」…宗達に倣ったのであろう、垂らし込みによる桐。

 「観音図」「瓶花図」…光琳百回忌を記念して描かれたもの。立葵、白百合、紫 

     陽花、仙翁、撫子の五種が組み合わされている。

   *今橋理子著『江戸絵画と文学』に

       「荘厳の夏草ー酒井抱一筆観音図と瓶花」がある。

 「風神雷神図」…著名な宗達の国宝があり、それを写した光琳の重文があり、抱 

     一は光琳を臨模している。この三作を並べた企画があったような気がす 

     るが。見事な模写だが、時代が新しいせいで古びがなく平板に見える。

 光琳「飛鴨図」…抱一による折紙がつく。

 「版本 光琳百図」…光琳に私淑した抱一は、百回忌に江戸で大規模な回顧展を行い、「光琳百図」
を出版している。私のところにも現代の復刻本がある。

 「紅梅図」…身請けして妻とした小鸞との初春の合作。さすがにもと太夫ともな 

     れば高い教養の持ち主である。細見で何度も拝見。 

 「富峯・吉野花・武蔵野月 三幅」…珍しく描表装。

 「秋草花卉図」…抱一にしては大きな作品。

 「雀児図 倣徐崇嗣」…勉強のためか宋画の模写もしている。

 「四季草花金銀泥下絵和歌巻」…光悦・宗達の和歌巻に倣って作ったもの。

 「集外三十六歌仙図画帖」…小さい作品だが、品よく丁寧に作られている。

◯「十二ヶ月花鳥図屏風 六曲一双」…花鳥図ではこれが一番見応えがあった。

 原羊遊斎銘「草花高蒔絵御側簞笥」…左側面に桜草が描かれる。2茎5花づつ。

     さすがに見事な写生。

 *たくさんの酒井抱一の作品を見たのだが、何かちょっと物足りない感がなきに 
  しもあらず。