桜草の品種名の由来を私なりに解釈して、浪華の会誌およびこのブログで発表している。
 品種名がどんな意図で名付けられたのか、命名者による記録はほとんど残されてはいない。そのため後の人間がその名に接して類推するしかない。そんな時目安となるのが、先輩諸氏によって残された分類表がある。おおまかに分けると、【色、見立、地名、音楽、文学、社会事象、故事来歴、組み合わせ、使い回し、その他】のようになる。どれかに当てはめながら推量するのは楽しいものである。頭のボケ防止に極めて良し。

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 私はいままで数品種について考察してきたのだが、さらに手を広げようとしたとき、ふと思いついたのは鳥居恒夫氏の『色分け花図鑑 桜草』である。この書は出版されてから10年も経つのだが、美しい写真が万載なので、私は時にそれを眺めるだけであった。本の表紙に「名前の由来がわかる」と表示されているのだが、品種の解説文についてはあまり注意を払うことはなかった。
 今回しっかり読ませてもらったところ、私と意見のあわない品種名が散見したので、今さらではあるが、その違いを公表しようと思う。

[小笹の雪]…この品種は少し黄緑的な発色をするので、『桜草作伝法』の「井出の里」を引用されたようである。
 ちなみに「井出の里」は京都府綴喜郡井手町で、橘諸兄の別荘があったところ。山吹の名所なので、「井出の里」といえば黄色が連想され、黄色い花が咲いたので「井出の里」と名付けられたものなのである。
 なお「小笹の雪」にはもう一系統あるようで、東京萬花園の明治40年の銘鑑にも出ている。
 *鳥居氏の説明文を読み誤ったので上記のように訂正する。

[青葉の笛]…「緑色の斑を青葉に見立てた名であろう」とされる。青葉とくれば「目に青葉山ホトトギス初鰹」と、少し淡い緑色の清新さを表わす言葉であろう。小輪細弁の単純な花形にウィルスによる緑斑が入るとさらに清々しく爽やかな印象となるので、うら若き悲劇の公達敦盛に重ね合わせての命名であろう。

[朝日]…「日露戦争に参加した戦艦の名から名づけ」たもので、鹿島、八雲、出雲なども同様、花容とは全く関係はない。
 にもかかわらず「切れ込んだ花弁から、軍艦旗を連想したものか」と妙な思いつきを述べられる。

[十六夜]…「十六夜とは十五夜の翌日の月で〜ためらう意味をこめた〜趣のある言葉で、花容をその月に見立てたものか」とされる。「ためらう思い」を形あるものに表現するのはいかにも難しく、ここは「十六夜」という語感を利用しただけではないだろうか。       
                                      ー続くー