日本の桜草と美術

桜草の栽培と美術鑑賞

2008年11月

醍醐寺ー霊宝館

 醍醐寺三宝院からやっと霊宝館にたどり着く。新しい展示館の前には、MIHO MUSEUMに

も植わっていた美し松(赤松の変種で、幹が叢生する)がある。周辺には醍醐寺名物の大き

な枝垂桜がでんと構える。

 秋季特別公開

   ドイツ・ボン「醍醐寺展」〜聖なる山の寺宝 醍醐寺・日本密教僧院〜帰国展

 私の眼についたものを紹介する。

 「大元帥法本尊像ー四臂・八臂・三十六臂」…赤を基本色とすること奈良博『美麗展』で

     の「五大力菩薩像」に似る。形は小さいが迫力十分。

 国宝「訶梨帝母像」…これも『美麗展』に出ていたもの。優しくふくよかな女性として描

     かれる。そのほほえむ顔は美しい。

 重文「大日金輪像二点」…ともに鎌倉時代の精緻で品格の高い描き振り。桃色の輪郭線が

     柔らかい。

 国宝「薬師三尊」…醍醐寺創建以来の本尊。

 重文「如意輪観音坐像」…ポスターにもなっている、丸く眠ったようなポーズ。

 「十一面観音立像」…檀像か、彫の線が鋭く良く残る。

 重文 俵屋宗達「扇面散図」…こんなところでといったら失礼に当るが、宗達に出会える

     とは夢にもおもわなかった。

 その他書跡・工芸は省略。


 同時開催 「姚小全 中国書画の世界」


 姚小全氏は現代の中国書画家で、日本で活動されている。水墨淡彩画が主である。

 人物画そして山水画は、近代を承けながらそれを脱して、現代のものである。また墨の滲

みを生かした抽象に限りなく近い山水もある。さすがに中国の人である、対聯の字もいい

し、篆刻もたくさんものされている。

 古い仏教文化財のなかに、ほっと現代にかえる空間が用意されている。(11.28)

醍醐寺

 京都河原町四条上るにある「ギャラリーにしかわ」には小粋な焼物などの工芸品が置かれ

ている。案内が来るので、この界隈に来た時には時々寄る。最近では、清水哲さんの水滴を

買うた。幾何学模様に区切った中にさまざまな色の釉が入るもの。

 またここにはささきようこさんの干支の置物を取り扱っていて,数年前から毎年手に入れ

ている。今年も注文していた丑が入荷したとの連絡があり、京都に出かける。

 せっかく京都に行くのでどこか展覧会と思ったけれど、めぼしい所は行ったので、いまま

で気になってはいたが、足が向かなかった醍醐寺の宝物に会いにいくことにする。

 醍醐寺といえば秀吉の醍醐の花見として著名であるが、いままで一度も行ったことがな

い。このお寺の宝物は京都国立博物館などで拝見するばかりであった。

 京都の地下鉄醍醐駅から山に向かう。遊歩道が美しく整備され、桜・楓が植えられて、な

かに見事な紅葉を見ることが出来た。この地は寺を中心とした鄙びた地であったであろう

が、近年高層住宅が建ち並び、京・大阪のベッドタウンとなっている。

 醍醐寺到着、さすがに真言の名刹の風格十分。霊宝館に行く予定がまずは伽藍拝見。黄色

く色付いた紅葉のトンネルを抜けると金堂がある。和歌山から遷されたという国宝の建物。

中には薬師三尊と四天王が居られる七躰だけのあっさりした内容。薬師三尊は眼を見開いた

お姿、四天王は首がない。堂内の床は50センチ巾の節のない見事な檜の板が敷きつめられて

いる。

 不動堂には降三世夜叉明王その他四躰が置かれ、前に護摩壇三つがしつらえられてある。

 五重塔も国宝、大きくて立派。ただ塔を囲む木柵に透明のアクリル板が取り付けられてあ

る、雨除けか雪よけか。

 近年の建造にかかる真如三昧耶堂には涅槃像が居ます。その左右には、これを寄進したと

思しき男女の胸像が配されている。これも礼拝の対象となっているようであるが、疑問なし

としない。

 醍醐寺三宝院ー特別史跡・特別名勝

 金堂その他の建物は信仰のためのものであるのに対し、三宝院は僧侶の住まいする所、ま

た天皇・貴人などの来訪者の休憩.宿泊する場所である。そのためにそれなりの建物であ

り、調度が備えられている。

 葵の間・秋草の間・勅使の間の襖絵は剥落などで見るかげもない。表書院は国宝。寺社や

城以外の建物で国宝に指定されているのに出会うのは初めてである。

 そして一段高い純浄観、庭を愛でる一番の場所。なかの襖は、平成になって浜田泰介画伯

によって桜・楓が描かれた。

 さらに奥には三宝院の本堂がある。普段に礼拝する所であろうが、快慶作の弥勒菩薩が居

ます。

 庭園はさすがに見事。この庭はそこを歩いてみるというより、眺めるためのものであろ

う。中央の亀島にある姫小松は天下の銘木といわれるでけに風格十分。島に架かる小さな橋

は丸太を敷き並べ、土を載せ芝を生やしている。木々はよく手入れされていて美しい。ただ

一つ、今頃椿が剪定されている、如何。

 今回は下醍醐だけを拝見したが、なかなか風情のあるお寺さんであった。どちらかという

と、奈良の古寺と京都の寺の中間というところか。次は上醍醐をめざそう。

今年の植替えー続々

 ボチボチと鉢明けを続けている。今年の根茎がどのくらい育っているか期待をこめて鉢明

けをしているのだが、一喜一憂どころか、一喜二憂、一喜三憂の状態である。大和神風が思

いがけず良い芽が出来ていると思ったのもつかの間、一芽から一芽とれれば上等、せっかく

の一番芽の芽先が一鉢分みな欠けてしまったり、根腐センチュウに侵されて根茎にまで被害

が及んでいるものなど、思わず溜息が出てしまう。黄金虫の幼虫が出てきたりすればガック

リするが、ただ一匹くらいなら少し根がかじられたくらいでほっと一安心。

 桜草は良い芽さえあれば、うまく咲かせることはそんなに難しくはない。花の咲いている

時から土の中では新根茎が成長をはじめており、六月一杯でそれを終える頃まではほとんど

故障はない。それが夏越しの間に、さまざまな問題が発生して新芽を痛め傷つけることにな

る。こんなことは承知しているのだが、うまい対策もとらずに、放っておいたつけである、

次年度は何か手だてを考えねば。

 鉢明けでもう一つ気がついたことがある。鉢やポットの中でキノコが生えていたのであ

る。開けると鉢の中で白い菌糸が走っている、白絹病のことが頭をよぎり、新芽がやられた

かと思ったのだが、キノコは役目の終わった古い根茎に取り付いていて新根茎は大丈夫であ

った。

滋賀の文化財講座・打出のコヅチ5

 滋賀の文化財の最新情報を伝え、琵琶湖文化館の存在をもアピールするために始まった講

座。

   打出のコヅチ第5回

      『ヴェールを脱いだ仏像』

             滋賀県立琵琶湖文化館   榊 拓敏


 今回は仏像修理にまつわる話である。守山市吉身にある住吉山慈眼寺の薬師如来坐像が主

人公。このお寺の薬師堂が台風などの影響で建物が傾き、建替えが決まったことでそこにま

つられていた薬師如来坐像が琵琶湖文化館に寄託されたのであった。

 この仏像かなり破損・剥落などが多かったため修理が行われることになった。解体清掃さ

れる中で、意外なことが分って来たのである。表面に施されていた漆箔が二層あり、しかも

その下の生地に口髭が描かれていることが見つかった。つまりこの坐像の元の姿は素地彩色

像であったのである。そこですっかり漆箔が落とされ、欠損部分などが補われ、もともとの

姿、まことにすっきりとした顔立ちの仏さんに甦ったのであった。こんなに修理によって別

の仏像のようになったものはあまり例がないという。

 漆箔のやり方など詳しく説明があった。

 またこの修理から珍しい木の使い方もわかって来たという。もともとの本体部分の木材は

木心を残して用いられ、しかもあちこちに節がある。普通の造仏材とは違う,何かいわれの

ある木が使われたらしい。このような木は神像に用いられる例が多いという。

 新たに生まれ変わったこの仏像をどう位置づけるか。榊さんの推論が続く。

 慈眼寺が住吉山という山号をもつのだが、この寺の南東に住吉神社がある。住吉神社一帯

が山門焼打ちの余波からここも焼かれて後、慈眼寺がいまの地に移ったらしいというので、

慈眼寺はかって住吉神社の神宮寺あったのではないかと。さらに大阪堺の住吉神社は航海安

全の神であるのだが、この慈眼寺の本尊は十一面観音で帆柱観音とも呼ばれて海難救護の仏

として崇められ、その共通性がうかがわれる。

 つまりこの薬師如来坐像は住吉神社の本地仏ではなかろうかと推測される。そして何らか

の理由で漆箔されることによって神性を失い、金色に輝く仏の姿として信仰されることにな

ったようであると。

 守山の地元の方も来られてて盛況であり、なかなかに奥深い話を無料で聞けるとは何と有

難いことか。

 あきつブログ参照。

大阪市立東洋陶磁美術館ー酒器に酔う

 前回の特別展は「鼻煙壷」であったが、何か行きそびれて見逃してしまった。今回の企画

展は長堀に行ったついでに寄ることにする。この美術館の北隣の遊歩道はバラ園になってい

るのだが、すでに時機を失して閉まっていた。

   企画展

     『酒器に酔うー東アジアの酒文化』

 ◯曹操 短歌行 対酒当歌 人生幾何……

 ◯李白 月下独酌 花間一壼酒,獨酌無相親。舉杯邀明月,對影成三人。

   「五代北宋水注」…研ぎ澄ませれたような美しいフォルム。

     ※「韓煕載夜宴図巻」の絵が出ている。そこにこの水注と全く同じものが描かれ

               ている。

   「梅瓶」がたくさん出ている。そして「酒温器」も。

     ※「張化口宣化県 遼張世卿墓壁画」に、酒が満たされた梅瓶とそこから酒を移

               して温める酒温器をもった男性が描かれている。

 ◯ルバイヤートの酒の詩

        身の内に酒がなくては生きてはおれぬ

        葡萄酒なくては身の重さにも絶えられぬ

        酒姫がもう一杯と差し出す瞬間の

        われは奴隷だ それが忘れられぬ……

   「五彩金襴手徳利」…瓢箪形の特大のもの。

 ◯李圭報 一盃美酒如丹液 坐使衰顔作少年 若向新豊長酔倒 人間何日不神仙

   「徳利」が多数ある。朝鮮のものもよく整ったものが選ばれてある。

   「五彩金襴手婦女型水注」

     →“酒器に対して 当に歌うべし 人生幾何ぞ”と締めくくられる。

 私は酒を嗜むというほどでないので、特別な酒器はない。しかしちょっといいのが欲しく

なった。


 平常展でいままで気づかなかったものを記しておこう。

 「李朝青花 宝相華唐草文盤」…10数センチ一面に文様が描かれ、元染付を思わせる。

 「青花 窓絵草花文面取壷」…現存するものが二つながらに見ることが出来る。絶品。

 「青花辰砂 牡丹文瓶」…大変艶やかな赤の発色がさえる。

 その他省略。


 鼻煙壷のコーナーが出来ていた。寄贈および特別展を記念して作られたものか。鼻煙壷展

を見逃したことを情けなく思っていたが、いつも見られるようになって有難い。

 鼻煙壷とは嗅ぎ煙草入れで、手のひらに入る小さなものであるが、中国でたくさん作られ

た。小さいけれどそこに職人の粋が凝らされて美術品ともなっている。

 素材は、陶磁では染付、五彩、粉彩。ガラスでは赤、青、緑、黄、黒、桃色など。

   「白ガラス桃被せ白菜形」では小さな小さな青虫が葉の上にのっている。

 金属、七宝、貴石ー瑪瑙、青玉、水晶、トルコ石。貝、鼈甲、象牙、木、果核など。

 日本の根付や印籠の類いに当るものであろう。             (11.22) 


 

大阪市立近代美術館(仮称)ー女性画家の大阪・後半

 大幅な展示替えがあるということなので後半に出向く。

 相変わらずの美人画は、いつまで美術館を飾るのであろうか、もう寿命が来ていると思う

のだが。

 島成園「伽羅の薫」…今回の目玉である。島原の年とって厚化粧した花魁を、別世界の人

     物として描いている。異様なほど細い体つき。表を飾る白に妖艶な赤、と人を欺

     く黒が交錯する。それまでにない異質な人物像は、これが発表されたとき人々を

     びっくりさせたことだろう。いまでもこの前に立つと、媚惑の目に引き寄せられ

     るようである。これは近代人物画の最高峰に列するものといっていいだろう。

 木谷千種「浄瑠璃舟」…語る人、三味線を弾く人、それを聞く人、舟に船頭と、全面に平

          面的に展開して、我々を異空間に誘う風俗画。

     「芳沢あやめ」…「伽羅の薫」にも似て、妖婉さ溢れる作品。

 三露千鈴「殉教者の娘」…はかない美しさがこの世のものでない。

 星加雪乃「初夏」…水に遊ぶ童子二人。修復がなって久方ぶりの展示という。


 油絵の方は前回に同じ。具体美術協会の作品を見ることが多いが、そこに大阪の女性画家

が混じるのはうれしいことである。

 前半の展示はこのブログ10月21日に記載。

大阪歴史博物館ー江戸と明治の華

 明治のお雇い外国人の中で最も日本の社会に貢献した人として知られるのがベルツ博士で

ある。東大医学部で30年近きにわたって講義を担当し、日本人女性を妻とした。そんな日本

に心寄せた人であってみれば、ときあたかも自国の文化を否定するような廃仏毀釈のなか

で、日本の美術工芸の良さを見出し・魅かれて蒐集している。これらのベルツコレクション

6000点は、現在ドイツのリンデン民族博物館に収蔵されている。それらの100年振りの里帰

りである。


  特別展 皇室侍医ベルツ博士の眼

     『江戸と明治の華』


 [序章 いにしえの江戸の美を求めて]

      ー17世紀から19世紀にかけての日本画ー

 松村景文「四季花鳥図」六曲一双…麦の緑に郭公、薄に四十柄。爽やかな近代的な絵であ

     る。呉春の弟。

 谷文晁「倣日観葡萄図」…スピード感のある線、好まれた図柄を自在にこなす。

    「青緑山水図」…大きな戸袋2面。右に丸い大きな山と奇抜な構図。広重と比べら

            れるほど。


 [第一章 同時代絵画蒐集家 ベルツの眼]

 取り敢えず江戸狩野の代表者の正統なものを入手している。

  狩野探信「近江八景」 

  狩野伊川院栄信「琴棋書画図双幅」 

  狩野勝川院雅信「韃靼人」

  狩野洞春「蘭亭曲水図」

  橋本雅邦「七福神」…狩野派として勉強中のものか。

 その他

  山本梅逸「松鶴図」「紅蓮華図」…琵琶湖文化館で何点も拝見している。

  池田弧村「蓮地図」…江戸琳派。清涼感・透明感のある白蓮。上々。


 [第二章 工芸国・ニッポン]

      ードイツを魅了した江戸・明治の手わざー

 根付各種。「鶏籠」ー象牙彫で、籠の中に鶏がいる。

 印籠20種。銘のあるものが大半。

  小川破笠「鍬に里芋昼顔蒔絵象嵌印籠」…里芋葉=陶器、鍬=錫、昼顔=螺鈿

       根付ー黄楊台に、陶器の蚫

     ※明治期に作られた破笠細工であろうか。

  柴田是真「藪柑子蒔絵丸印籠・饅頭根付」

      黒漆ではなく透き漆を使っている、根付はカタバミ

 着物六領

  一般に西洋人には全面に模様の入ったものが好まれたようである。白綸子に綾・花文様

  を散らしたもの3領、これはよくガウンとして使われ、マネの絵にも出てくる、たくさ

  ん輸出されたという。ただ一領、藍鼠地の帷子は裾に模様があるだけの地味なもの、こ

  れは妻女が選ばれたか。

 焼物

  薩摩の金襴がたくさん出ている。輸出用あるいは来日外国人向けに作られたもののよう

  である。しかし手間と金を使った優品が多い。

 金工

  鋳金・彫金の花瓶が並ぶ。「大根鼠置物」…見事な細工だが、これは香炉であろう。

 七宝

  私もあまり見たこともない「磁胎塗七宝」なるものが出ている。これも輸出向けに作ら

  れたものであろう。


 [第三章 麗しの国うるし]

        ー江戸、明治の漆器のさまざまー

 京都でjapan展があり、その眼で見ると少し気の毒ではあるがしかたがない。

  「竹に雀蒔絵提重」…は面白い意匠であった。徳利が筍形、取手も節のある竹に作られ

            てある。

  有線填漆板絵、磁胎漆塗工芸品など、日本ではついぞ見ることが出来ないものがある。

  主に輸出用であったのであろう。


 [終章 懐かしき日本の思いで]

        ー愛し続けた河鍋暁斎、そして皇室への敬愛ー

 先の河鍋暁斎展には出ていないものばかり。

 「鴉」の軸2点。よほどたくさん描いたと見える。

 「魚売り水売り」…“魚心あれば水ごころいろいろ”とある。女の水売り、男の魚売り。

 「美人の袖を引く骸骨図」…荒い筆致で、席画のようである。

 「死骸の衰頽図」…九相図の一部を描いたもの。京博にも九相図が出ていた。異常な世界

          へのこだわりが強かったようである。

 「生臭坊主図」…滑らかな線が生きる。

 「インディアン襲撃図」…翻案劇の宣伝用。


 ベルツの日記の紹介。娘ウタの病死を知らせる本国への手紙と、それを載せた日記。雛祭

りの直前に腹膜炎で亡くしたという。 

「菊紋付花鳥図花瓶一対」…ベルツの帰国に際して下賜されたもの。


 ベルツの日本美術愛好家としてのコレクションはなかなかたいしたものである。明治の変

革期によくぞ集めておいてくれたものである。今回はその一部しか来ていないが、全貌を知

りたいと思う(コレクションの図録が出ているという)。

京都市美術館ーコレクション展第三期

 この美術館のコレクション展は、ときに不思議な主題もあるが、いつも楽しく見させても

らっている。今回は少し中身が想像できるだけに待ち遠しかった。

    京都市博物館コレクション展第三期

        『ふたつで一つ』


 [対の表現1] 一対として作られたもの

 森寛斎「山水図屏風」六曲一双…幕末ながら金砂子を散らした穏やかな山水。

 鈴木松年「春秋風物山水之図」六曲一双…寛斎のものより約30年後の作品だが、具体的な

     写生が進み、近代的に。

 今尾景年「蕉陰双鶏図」六曲一双…これもやはり鶏は粉本を写したものでなく、しっかり

     した写生の結果であろう。

 川端玉章「葡萄に栗鼠・芭蕉に狗子の図」六曲一双…20世紀に入ってからの作だが、狗子

     はなお宗達・応挙をそのまま受けている。

 清水六兵衛(五代六和)「青華牡丹花瓶一対」…金で縁取りされた深緋と紅色の牡丹があ

     ざやか。


 [二人で一つ]

 出展されるであろうと予想したものが多く出ている。

 土田麦僊「平床」…朝鮮の若い娘が二人。チマチョゴリの線が流れるように美しい。淡く

     静か。

 北野恒富「いとさんこいさん」…絵の中から大阪の娘さんの声が聞こえてきそう。

    “あんた何かええことあったん、言いよし” “うんう 何もあらしまへん”

 梶原緋沙子「よもやま話」…少しやつれた若年増二人、何を話すか。美人画でない故に個

     性的な顔立ち。大正5年でこんな絵は売れたのであろうか。

 上村松園「人生の花」…婚礼向かう母娘という同じ図柄が二幅並ぶ。松園初期(24才)の

     代表作。


 [対の表現2]

 上村松園「春日長」対幅…舞の稽古であろうか、速筆であっさりと。

 鈴木松年「戦勝萬歳図」対幅…日露戦争の戦勝記念提灯行列。その提灯や日の丸を見る

や、松年の落款印を使っている、お遊び。

 上村松篁「水魚二題」対幅…出目金匹、その下に朽ちた蓮の葉。

              水をはった水田あとに鯉一匹、泥鰌2匹。品格高し。

 富岡鉄齋「万歳舞図・安楽祭図」対幅…50歳代の穏やかで伸びやかな風俗画。 

 竹内栖鳳「雄風」2曲一双…虎2匹。

 榊原紫峰「獅子」2曲一双…獅子雌雄。

   →この2点はそれぞれが対であるとともに、虎と獅子を対比させる心憎い展示。

 六代清水六兵衛「三彩人物煙草具一双」…頭が後に伸びた宇宙人が跪く姿。こんなものが

     昭和5年に作られている。

 やなぎみお「案内嬢の部屋1F」写真2点組…左右にショウウインドウで真ん中に歩く歩

     道、一点は案内嬢がウインドウに並ぶ、もう一点は案内嬢が歩道に転け、ウイン

     ドウには花がある。


 [対と見立てる]

 玉城末一「籐椅子によれる少女」「宇吉」→男女一対に

 菊池契月「少女」、菊池隆志「爽夏」→同じモデルを親子で描いているのか。これもまた

     共に魅力的な美人画。

 麻田浩「悲の地、黒・赤」…繊細な心の奥底を覗き、神経質なまでに細部にこだわる。

 菊池隆志「交響詩画2面」…渦巻く怒濤の海面を、薄墨を重ねて。

 八木一夫「方」「円」→禅画円相を見るよう。

 その他省略。


 いつもと同様大変楽しめた。何度も見ている絵が多いが、何度見ても飽きない。

 また配布されるパンフレットには作品リストだけでなく、小さいながら写真も載せられて

いることである。実物を思い出すよすがとなって、まことに便利でうれしい。

これは所蔵作品だから出来るのであろう。

兵庫県立美術館ーブラジル×日本

 神戸市立博物館に行った足で県立美術館にむかう。

 ことしは日本からの移民100年ということ、また兵庫県がブラジルのパラナ州と姉妹提携

を結んでいることで、彼の地のオスカー・ニーマイヤ美術館との美術交流が実現された。先

にブラジルで展覧会が行われ、今回はその帰国展である。

 私が美術館で入場券を買おうとしたとき、人品卑しからざる御婦人が招待券をくれられ

た。有難く頂く。

   日本ブラジル交流年

     『ブラジル×日本 旅が結ぶアート』

         兵庫県立美術館+オスカー・ニーマイヤ美術館交流展


 [三人のブラジルを代表する現代作家]

 ジョゼ・アントニオ Jose Antonio  17点

   線を生かした抽象画、優しい雰囲気。オブジェもあり。

 フランシスコ・ファリャ Francisco Faria  約30点

   アマゾン川流域の写真と見紛う鉛筆画で、まことに精細。1.5mの画面もあり。

   鉛筆画と言えば日本では木下晋の人物画がよく知られているが。

 マゼ・メンデス Maze Mendes  19点

  絵画から抜け出た前衛。模様のような抽象の中に人の顔がおぼろに。

   古壁に人の顔ーそれを写真に

   壊れた家・壁に手を加えーそれを写真に

    →初めてブラジル人の作品を見る。もっとエネルギッシュでギトギトしているかと

     思いきや、以外とあっさりしている。また現代美術には国や民族の垣根などない


 [日本の近代美術 明治から平成へ] ブラジルに紹介されたもの

 本田錦吉郎「羽衣天女」…翼を付けた東西融合の天女

 斉藤与里「春」…桃色を基調に、裸の二人、ヴィオリン弾き、笛吹き。

    →日本の油絵受容の姿を示すか

 大橋了介…佐伯祐三とそっくり。とくれば佐伯のものを出展すればよかったのだが、兵庫

     には佐伯の作品はないか。

 小磯良平 4点

    「桃とクルミの静物」…丁寧で質量感あり。

    「室内のバレリーナ」…肌色が黄土色で私にはなじめない。肌色が変色したのだろ

               うか。これをブラジル人がどう評価したであろうか。

 横尾忠則「アンリ・ルソーの変奏」   
  
     眠れるジプシー…ライオンに喰われている姿に。

     静物…机の上に乳房が置かれている。


 鴨居玲「トランプ」…何ということのない主題だが、色合いが秀抜。

 高松九郎「影」…白地に淡い影があるだけ。


 [日本の風景画] もう一つ

 [日本の前衛 具体美術協会]

 白髪一雄、田中敦子、鷲見康夫、村上三郎と続く。

 元永定正「作品1962」…宇宙の生成のよう、色が散りばめられている。薄緑に赤が美しい

 吉原治良「作品1966」…赤地に青の円相。 

    →その他省略するが、具体美術協会で生まれた作品はやはり日本を代表するもので

     あろう。向うの人にも高く評価されたに違いない。


 [日系ブラジル人画家の作品]

 日系三世のリカルド・タケシ・赤川氏から県立美術館に、日系ブラジル人画家の作品51点

が寄贈された。そのうちの11点が展示される。


 初めて見るものが多く楽しめた。ただ日本紹介の絵としては前衛を除いて少し偏りがある

ようである。これに京都が一枚噛んでいたら面白かったろうに。


  ※この美術館の図書室(レファランスルーム)を覗く。吃驚するほどの図録がならんで

いる。一日いても飽きないであろう。これは利用しないてはない。後日を期すことに。

                                 (11.16)


神戸市立博物館ーコロー展

 久し振りに神戸に出かける。コロー展が来ていることは分っていたが、2ヶ月にも及ぶ期

間なので、こちらもゆっくり構えてやっと足が向いた。日曜日ということもあるのだけれ

ど、こんなに長丁場なのに人の出が多い。コローというのは日本でそんなに好まれているの

であろうか。

   『コロー 光と追憶の変奏曲』

 コローはバルビゾン派のミレー、トロワイヨンそしてクールベなどとともに、見近な自

然・風景を描いた画家として日本でもよく知られた存在である。今回の展覧会は、その彼の

作品を纏めてみる機会となった。

 しかし誰がこんな企画を考えたのであろうか、世界中からコローの絵を集めたのであろう

か。出展交渉も大変な労をを要したろうに。日本では東京と神戸だけであるが、ヨーロッ

パ.アメリカと、世界を回るのであろう。

 さてこの展覧会がコローの更なる評価につながるか。


 [第一章 初期の作品とイタリア]

 イタリア遊学中の作品が並ぶ。明るいイタリアの空の色は、他の画家とも共通する。

 「ローマ郊外の水道橋」…淡い色で平面的な手法、浮世絵はまだ入って来てはいないとお

     もうのだが。

 「パピーニョの河岸」「チヴィタ・カステラーナの岩々」…岩の描写がなかなかうまい。


 [第2章 フランス各地の田園風景とアトリエでの制作]

 彼は春夏に各地を回って写生に励み、秋冬にアトリエでそれをもとに描いたという。

 「フォンテーヌブローの風景」…光と陰を巧妙に生かした林の姿、光の画家にふさわしい

 「ヴィル=ダヴレーの池」を描いたものが4点。シニャックの点描の「風景」もほぼ同じ

     場所からのものらしい。

 「ホメロスと牧人たち」…風景画家と思われている人が、こんな古代の寓話を描いてい

     る。1845年の作で、古典への回帰なのかわからない。


 [第三章 フレーミングと空間 パノラマ風景と遠近法的風景]

 建物の描写がある。ユトリロの先達を思わせる白壁の色。 

 セザンヌ「オヴェール村の道」…セザンヌらしい色と構図だが、暗い。


 [第4章 樹木のカーテン・舞台の幕]

 「葉むら越しに見たヴィル=ダヴレーの池」…手前に大きな木、奥に広がる池という構図

     の妙、そして煙るような枝先。これは広重や北斎も使っている技法である。

 「マルセルの柳」…葉を落とした並木。手に入った木の写生。

 ピサロ「夏の木かげの小道」 

 ルノアール「木かげ」…抽象のよう。

 ゴーガン「ノルマンディーの風景」 

   さすがにこの三人のものは良い。


 [第五章 ミューズとニンフたち、そして音楽]

 人物像がまとめて展示されている。そのなかでやはり次の2点が飛び抜けている。

 「青い服の婦人」…二の腕の豊かさと蒼い服が魅力的。

 「真珠の女」…遠くを見つめる眼が印象的。

   この2点に共通するのは、顔や目がしっかり描けていることである。その他の作はど

   うということもなし。

 マンドリンに係わって、

  「マンドリンを手に夢想する女」

  ブラック「マンドリンを持つ女、コローに基ずく自由な習作」

  マティス「マンドリンを持つ女」

    私はマティスの彼独特の色合いを好む。


 [第六章 「思い出(スヴニール)と変想]

 手の内に入った風景画が続く。大画面より小さい方が緊張感がある。彼の風景画は前代の

画家と同じように同じことの繰返し、職人技である。


 しかしこの展覧会を2ヶ月も続ける意義があるのだろうか。

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