日本の桜草と美術

桜草の栽培と美術鑑賞

2009年10月

大坂歴史博物館ー伊勢神宮と神々の美術

 府庁に行く用事があったので、せっかくここまで来たので博物館に寄道。

    第六十二回式年遷宮記念特別展

     『伊勢神宮と神々の美術』

 今日の神宮のあり方は、明治以降の廃仏毀釈・神道純化の流れのなかで生じたもので、長い神宮の歴

史のなかでは異質のようである。これは一般の神社でも同じ。神宮もかってはもっと身近で、賑やかで

猥雑な存在であったらしいのだが、それをどこまで見せてもらえるか。


 [1章 神宮の歴史と信仰]

 平安時代の儀式の様子を記した資料が出ているが、全く分らず。

 「続日本紀巻第十三」…天平十年九月 丁亥広嗣遂起丘反〜」の項に続いて、伊勢神宮への奉弊の記

     事がでてくる。

 「伊勢両宮曼荼羅」…曼荼羅といいながら、お宮の配置案内図のようなもの。また四周には仏教の四

     天王が配されてある。

 国宝「銅経筒・法華経など一括」…元治元年八月十五日、尼真妙により、四ヶ月前に没した祢宜の度

     会雅彦のために埋納されたもの。習合の具体的なあり方である。

 「大神宮御正体」…外宮=金剛界と御正体鏡

          内宮=胎蔵界と御正体鏡 密教と一体化が進む。


 [2章 遷宮と古神宝]

 200年に一回の遷宮がこんなに続いているのは世界的にも希有のことだろう。神のいます社を新しく

するだけでなく、神に捧げる文物も新しく作り替えられる。

 重文太刀「吉信」「次家」…ともに徳川家からのもので、家光から嘉信まで66口が奉納された。

 重文「古神宝 玉纏横刀」…鎌倉・室町の二振り。役目を終えた奉納物は後に汚れることのないよう

     に密かに埋められたという。これらは刀身1.3メートルはあろうかという長大なもの、半分

     朽ちている。

 重文「古神宝 雑作太刀」…室町期のもの。腐朽せず元の姿を伝える。長大。

 重文「古神宝 機のミニチュア」色々。

   ※「神都名勝記」…明治28年京都芸艸堂から出版された伊勢案内。版木もでている。


 [3章 今に伝える神宝]

 今日では遷宮に際し新しく調進されるものは

     御装束 525種 1085点

     神宝  189種  491点 にのぼる。 

 すでに役割を終えたものは今日では取り置かれ、後の参考に供される。それらが一部展覧されてい

る。

 「玉纏御太刀」…昭和4年のもの。

 「須賀利御太刀」…柄の上下に朱鷺の羽2枚が、緋の撚り糸で纏ってある。

 「御櫛筥」…黒漆に銀平文、簡素だが重厚。

 「御白珠・付楊筥」…白珠は真珠のこと。81丸で4匁3分。かっても真珠というのは小さいものしか

     なかったのである。楊筥は三角形の棒を校倉風に仕上げたもの。

 「鶴斑毛御彫馬」…馬の模型で、「鶴斑毛」とは、頭、首前、胸、前足が黒で、首後、脊、後ろ足が

     白という鮮やかな色合い。ただすでに絶種という。
 

 神々の為にだけこんなにも大変な資金と労力を費やすのである。技術の継承とは言いながら、人に役

に立つものでもないことにここまでするのである。宗教なのだが、民族の習俗・習慣となってしまって

いるのだろうか。

神戸市立博物館ー美しきアジアの玉手箱

 明治以降、日本の文物はたくさん海外に渡っている。輸出振興の新しい工芸品だけでなく、旧物とし

て顧みられなくなったものも大量に輸出された。また敗戦による社会変動にあって、多くの文物が旧家

から放出され、それらが戦勝国によって買い漁られもした。今や膨大な美術品が欧米の美術館に蔵され

ている。これらの中には今日でも見るべきものがたくさんあり、ときどき日本への里帰り展示が企画さ

れて我々の目を楽しませてくれる。今回はアメリカからである。


  シアトル美術館所蔵 日本・東洋美術名品展

      『美しきアジアの玉手箱』


 早くから始まっていたが、長丁場なのでゆっくり構えていた。

 1回ロビーのケースの中に

  狩野重信「竹に芥子図屏風六曲一双」が飾られている。柔らかい雌竹が見事に表現されている。そ

れに引替え芥子は類型的で著しく劣る。別の手が入っているのだろうか。

 私の目についたものをいくつか挙げておく。

 「土偶」…こんなものまで収集の対象になっているとは。

 「灰釉蓋付短頸壷」…猿投窯。こんな地味なものまで収集している。しかも世界的な標準からすれば

     かなり高価な焼物であったろうと想像されるのだが。

◎「兜跋毘沙門天立像」…先頃教王護国寺(東寺)で国宝の毘沙門天を見て来たばかりで、また出会え

     たことになる。やはり足の間に女人の顔が見える。

◯「線刻馬頭観音磚」…このように手で彫った磚に初めてお目にかかる。

 「二河白道図…白道が斜めに描かれているのを見るのは初めて。繊細。

◯「駿牛図」…薄墨で輪郭を描き、それを残して黒く塗りつぶしている。生き生き。

◯「高野明神像(影向明神像)」…白装束に烏帽子姿を大きく。 

 「竹に月図屏風」…室町期の作というが、後に手が入って作落ち。

◎「烏図六曲一双」…今回の展覧会の目玉の一つ。黒々とした烏の群だけが描かれている。

 「琴棋書画図」…伝狩野孝信作。紺碧障壁画。談山神社旧蔵。

 「囲碁図」…紺碧障壁画。龍安寺方丈旧蔵品、廃仏毀釈で流失したもの。個人では維持管理の難しい

     ものが外国に流れていったようである。

 「古伊万里ー染付雲割樹鳥文皿三点」…明の滅亡で日本に流寓した陶工が手をかしたものかといわれ

     る。緻密さと手慣れた手技。

 「志野草花文鉢」 

 「色絵草花文八角小鉢」…型抜きで拵えられたもの、歪みが全くない。

◯光悦・宗達「鹿下絵和歌卷」…京国博の「鶴下絵三十六歌仙和歌卷」と双璧をなすものであろう。

     「鶴」は先年博物館で卷子を全面展開して見せてくれられた。この「鹿」は残念ながら切断

     の憂き目に遭っている。益田孝という人はこれ以外にも巻物の裁断をしている。自身の所有

     物であったとはいいえ、文化財をかってに裁るとは。

◯尾形光琳「山水図」…金地水墨。ダイナミックな山容。

 「酒井抱一像」…初めて見る抱一の肖像。

◯葛飾北斎「五美人図」…細見美術館にも「五美人図」があるが、こちらの五人はどういう組合せなの

     であろうか。

◯与謝蕪村「寒林野行図」…中国画を学んだ成果か。  

 紀楳亭「山水図」…近江蕪村といわれ、よく似ているが、少しよわいか。

 都路華香「波千鳥六曲一双」…水平線まで続き、繰返される波のリズム感が心地よい。新しい波の表

     現。

 文字通り玉手箱をひっくり返したような様々な名品を拝見できた。


 他の中国・朝鮮などは省略。
 

芦屋市立美術博物館ーうまいもんと大坂画壇

 “食と大阪文化について、絵画作品をもとに考えてみようという大胆な企画です”、

“料理屋や飲食店などの紹介は「なにわ名所めぐり」に直結する”と説明された、


   『うまいもんと大坂画壇』

      〜浪速くいだおれの系譜〜

が芦屋の地で開催されている。

 曰く“大坂画壇の展覧会がご当地大阪で開催されない今日”と皮肉の一言。ほんとに

大阪市立美術館や大阪歴史博物館は何をしているのやら?


 [花外楼と大坂画壇]

 花外楼は大阪を代表する料亭である。かって淀川下りの舟のつくところに立地し、

幕末から明治にかけて活躍した人々が贔屓にしたところとして知られている。その縁

でたくさんの書画を所蔵している。それが今回紹介される。

 「花外楼模型」…戦後建替えに際し、もとの木造家屋が大阪市に寄贈され、部材が

     保管されていたのであるが、結局再建はならなかったという。

 「当座帳」…お客の名前・人数・献立などが記されたものが残されている。

 著名人の書がある。木戸孝允、伊藤博文、犬養毅など。

 柴山雪山「漢詩」…“今宵有酒今宵酔 明日愁来明日愁”

 当然ながら菅楯彦がある「団爐談古」

            「澱江納涼」「夏夜店」…夜の人物を隈取りだけで。

 富岡鉄齋・大田垣蓮月「梅と和歌」

 竹内栖鳳「柳鷺」…平面的だが、柳に爽やかな風が吹く。

 下村観山「寿星」…薄墨で線描、淡彩で品よく。

 谷文晁「恵比寿天」

◎深田直城「魚介図」…見事の写生図。江戸後期の博物学の成果を遺憾なく発揮。

 庭山耕園は未見の人で「白甘鯛図」「朝顔図」


 その他花外楼以外からの出展品

   菅楯彦「淀川のすすみ船」「郊高春光」

   庭山耕園、西山完瑛、川端玉章、生田花朝、耳鳥齋など。

   「住吉社頭図屏風」…茶店で児に乳をやる女、浜での宴会の様子など……


 [花の下影ー大坂のうまいもん]

 『花の下影』は大坂のうまいもん店を一軒一軒訪ね写し取ったもの。雪月花の三冊

で316図。その中に今でも続いている店がいくつもある、福鮓、翁昆布、大黒岩おこ

し、大源味噌、剣菱、沢の鶴などなど。VTRで放映されていた。

 西山完瑛「大坂名産図」…ごく小さい画面ながら精細。

 蕉風子「紅吹雪」…絵日記録ともいうべきものか。このなかの昭和22年2月の個所

     が開けられていた。これがまことに面白い記録なので再録してみよう。高

     島屋の飯田社長が主催した京都画壇の面々を集めた「如月会」の宴会風景

     である。

  出席者ー上村松園、上村松篁、森守明、池田遙邨、宇田荻邨、小野竹喬、

     西山翠嶂、榊原紫峰、福田平八郎、金島桂華、徳岡神泉、松本一洋、孝陽

  会場ー京木屋町 大千賀 北斗町の一流どころ華やかに

  余興ー三千歳…西崎緑師匠、竹喬、社長

     落語一席…春団治事

     福田先生秘芸

  福引ー翠嶂…カルタ 松園…白サトウ 契月…牛肉 平八郎…白米2升

     桂華…別染羽織女もの 神泉…ライター 守明…さつま芋2貫メ

     外大当り

       →食料不足の折柄につき一同驚異大満足です。


 「明治広告帳」…チラシを集めて貼付けたもの。

     “近江名産紅かぶら漬

     ビワコ名産鮒寿し

         近江米原停車場前 井筒屋事 宮川利八啓白

           (彦根楽々園にて求む 随分美味であった)”



 [芦屋の文学と美術「富田砕花」]

    省略 

教王護国寺ー秋季特別公開

 仏教美術の宝庫である教王護国寺=東寺に、ほんとに久し振りに出かける。

 [宝物館ー東寺曼荼羅の美] マンダラワールド

 たくさんの曼荼羅が出展されている。ただ曼荼羅は密教の世界観を表すものである

だけに、その複雑で煩瑣な姿は私の手に余る。静に拝見するのみ。

 国宝「両界曼荼羅図ー金剛界(伝真言院)」…空海が中国より請来したものの忠実

     な写しで、日本最古の曼荼羅という。平安時代の作らしく、仏像は紅で線

     描きし、桃色で隈取りしてあり大変華やか。特に中央上段の仏の顔は美し

     い。

 重文「千手観音立像」…巨大な観音像である。火災で焼けただれたものを修復した

     もの、もとはさぞやと思わせる。 

 国宝「兜跋毘沙門天立像」…法隆寺の国宝兜跋毘沙門像と同じ系統のもの。こちら

     は体躯をS字にくねらせている。さすがに迫力が違う。足もとには女性が

     二人の邪鬼を押さえている。


 [観智院]

 特別公開されているので拝観する。

 「五大の庭」…砂利の上に石が配される石庭である。石の組合せで龍神や神亀を現

     している。右奥の築山は中国を、左奥は日本を示しているという。現代に

     作られたものであろう。

 「客殿」…宮本武蔵が描いたという床の間の「鷲図」、襖の「竹林図」がある。吉

     岡道場の追手を避けてこの院に3年間籠った間に出来たものという。ただ

     紙の表面が風化して絵の内容がかすれつつある。

 「五大虚空蔵菩薩像」…中国唐末の請来されたもので、やはり異国の風を漂わせて

     いる。獅子、象、馬、孔雀、鳳凰の脊に菩薩が乗る姿。

 「書院」…浜田泰介による艶やかな「四季の図」が部屋の床の間・襖を飾る。

 「楓泉観」…室町期の書院風の茶室である。ただ過渡期というべきか、入口や天井

     が低くしつらえられている。

 観智院は僧侶の生活の場であったのだが、今日では客間に人を迎えることもなかろ

うし、書院での生活も出来なかろう。このような建物は結局観光資源として生きなが

らえるしか無いようである。一方、観智院のお向かいの洛南高校の体育館からは若人

の元気な声が聞こえて来た。


 [講堂]

 大日如来を中心とする二十一躰が立体曼荼羅を構成しているという。室町期の火災

を免れた創建当初の仏像はなるほど見事な国宝で、均整がとれて顔つきも爽やかであ

る。「帝釈天」など現代のイケメンと行ってもいいほどのお顔立ち。これだけの仏教

彫刻がひしめいているのは壮観といっていい。興福寺の北円堂を思い出す。


 [金堂]

 講堂と違い、広い空間を薬師三尊だけが占める。ゆったりとした祈りの世界。


 [食堂]

 観瀾齋の作品場となっている。大きな百観音は圧巻、2×28メートルのパネルが天

井から吊るされている。四国八十八ヶ寺の版画も楽しい。


 お寺の雰囲気は奈良の興福寺とよく似ている。建材も中世以後の欅ではなく、檜の

大木が使われている。

五重塔の公開時にもう一度来ようと思う。

大山崎山荘美術館ー民藝と仏教美術

 入館してメモを取る用意をしていると、筆記具を忘れたことに気がついた。そこで

受付で鉛筆の借用を願ったところ、この美術館では筆記具の使用を認めていないとの

返事。なるほど新館では、モネの絵などそのままに展示してあることで、筆記具の使

用は出来ないと掲示してある。ただあの狭い部屋に警備員が常に駐在して目を光らせ

ているのである。そこまでしなければならないのだろうか。

 まして旧館では、ほとんどの作品はガラスケースの中に納まっていて、鉛筆でどう

こうできるものではない。

 美術館は鑑賞の場であるとともに学びの場である。説明文や絵のなかの文字などす

べて記憶することなど不可能である。メモを取ることで展示物の内容理解を一層深め

ることが出来る。

 どうも大山崎山荘美術館は作品保護に神経質になるあまり、美術館としてのあり方

を踏み外しているように見える。といって、旧館の方には監視員がいないので、私は

今まで自由にメモを取っていたのだが。


  アサヒビール創業120年記念

    『民藝と仏教美術』

       ー柳宗悦のこころうたー


 柳宗悦似よる民藝運動のなかで収集された、あるいは収集対象となったたぐいの作

品が展示されている。

 円空仏が6躰来られている。内4躰は鳥取県からで、県外初公開である。

 「秋葉大権現像」…火炎の中に、嘴・頭巾そして羽根を負った天狗の異相がいる。

 「恵比寿像」「大黒像」…一対で白い木肌。所在地でたった1週間弱で彫り上げら

     れたもの。協力者がいたのか、それとも鋭利な道具を駆使したか。

 「虚空蔵菩薩像」「如意輪観世音菩薩像」…もともと円空生国に帰ったみぎり、縁

     者の要望で四国八十八ヶ所霊場の観音像八十八体を彫りあげ、四国堂に納

     められていたもの。四国堂が衰退して散逸したうちのもの。堅い木で彫ら

     れたか、木肌がつやつやしている。

 「善導大師像」…上半身は黒の着物で、下半は金色(菩薩と見なされる)の特異な

     姿。

 棟方志功「心偈屏風」…文字の板画に、色鮮やかな手彩色。文字を写したかったが

     出来ず。

 大津絵が4幅でている。内2点は大津からお出まし。


 [新館展示]

 棟方志功「華厳譜屏風」…若々しく溌剌としている。

 その他省略。

近江日野商人館ー旧山中邸

 滋賀の南部ー日野で桟敷窓アートの催しがあった。春には日野祭にあわせて行われ

るのだが、秋は町起こしの一環としてあるようだ。このところ秋はあまり盛り上がら

なかったのだが、今回はてこ入れされたか新聞その他にニュースとして載せられてい

た。私は何度も来ているので、取り立てて見たいものがあるわけではないのだが、秋

の一時天気もよく、散歩がてら覗きにくる。ちょうど昼時だったので、地元の女性に

よる名物“鯛そうめん”の弁当をいただく。

 もう一つの目的は、日野椀の注文のためである。日野椀は堅牢な漆器として、江戸

時代に日野商人によって全国に売り広められたものであった。しかし輪島塗の台頭と

ともに消えていった。それを現代に復活させたもので、北川木工で作られている。こ

の日野椀は使い勝手がよく丈夫なので我家でも使い、子ども達にも持たせてやり、今

また祝い物として注文しに来たのである。その北川さんがこの桟敷窓アートで、日野

椀の宣伝かたがた喫茶店を出されているのであった。

 北川木工では、何年か前に文机を作ってもらった。花梨の葡萄杢の材で斬新な意匠

であり、私はかってに“普賢象”と銘をつけている。そのうちこのブログでも紹介しょ

うと思う。

 [近江日野商人館ー山中兵右衛門邸]

 近江には商人集団がいくつもある。近江八幡、五個荘、そして日野などである。近

江商人はこの地を地元として、全国に商売の地を拡げていった。日野商人は薬の販

売、さらに各地で醸造業を営んでいる。

 近江日野商人館は山中兵右衛門が昭和11年に本宅として建てた屋敷である。その後

山中家から日野町に寄贈され、それが資料館として利用されている。

 近代に金に糸目を付けずに建てられた日本家屋には、見事な材が使われている例が

多い。ここもその例に漏れない。

 居間ではタガヤサン(鉄刀木)が床柱として使われている。床材は1メートルを超

える巾の欅の一枚板。

 奥座敷では、杉の三方柾の床柱、欅の床板、さらに違棚と付書院の机には玉杢の欅

で、泡が所々に浮かんでくるような見事な木目。天井は細かい柾目の部屋と一方は笹

杢が使われている。部屋を仕切る欄間はあっさりと桐の透し彫り。襖の把手は七宝。

まわりの廊下は赤松の柾目材で継ぎ目無し。

 2階への階段の踏板も分厚い欅の一枚板で、踏み心地よし。

 庭はまことに簡素で、木が所々にあるだけ。

 何とも贅沢な家だが、ここに実際住むとなると二の足を踏みそうである。

滋賀県立近代美術館ー再興院展の輝き

 大正期の新しい日本画の動きを捉える企画展示である。滋賀県の文化財行政が先細

りになりそうななか、他の美術館との共同作業を通しての意欲的な活動に拍手を送り

たい。それはこの美術館にも優れた近代がのコレクションがあるから実現したのだろ

う。


  開館25周年記念

   ー日本画想像の苦悩と歓喜ー

      『大正期 再興院展の輝き』

        〜大観、観山、靫彦、古径、御舟〜


 私は近代日本画の動きに疎いので、絵そのものに則して見ていこうと思う。

 横山大観「秋色」…蔦の葉の紅葉が鮮やか、装飾性が追求されたものか。大観の人

          物や動物は何か滑稽の風が見える。

     「不二の高嶺」…頭を落とした菱形の青色で富士山を象徴している手法。

     「八幡緑雨」…緑の竹が鮮やかに映える。

 下村観山「烏果」「俊徳丸」「維摩黙然」が並ぶ。それぞれ違う画法が模索され

     る。「維摩」は繊細で淡い色がのり、堂本印象の維摩と通じ合うものがあ

     る。
 
 今村紫紅の風景は、外国(インド)の風物を日本画で表したもの。

 速水御舟「洛北修学院村」…何度も見ているが、青緑色の静寂の世界に引き込まれ

              そうになる。

     「比叡山」

 川端龍子「佳人好在」…京の町家で、座敷から庭を見たもの。こんな主題もなかっ

     たか。

 富田渓仙「列仙」…南画の楽しさが溢れる新しい世界を構築したというべきか。

 北野恒富「暖か」…舞妓の普段の顔を捉える。

     「淀君」…折り目正しい女性像。

 前田青邨「京名所八題」「雨の蘇州」

 近藤浩一路「京洛十題」…水墨の新しい展開。

◎日本美術院同人合作 画帖「景雲余彩」…小さい画面ながら各人の持ち味を生かし

     た、大変品格の高いもの。献上品か。


 [常設展]でも関連作品が展示される。

 安田靫彦の代表作「額田王」「卑弥呼」。

 下村観山「鵜鴎図屏風」

 前田青邨「猫」…全体に黄色の絨毯、左端に猫という構図。

 菱田春草「雪の山」…版画のような色使い。

     「落葉」…よほど評判が良かったのか同工の絵がたくさんあるようであ

          る。


 ※残念ながら日本画の知識がないもので、その大正期の新しい試みをしかと捉える

ことが出来ない。せっかくの良い企画なのだが、その意図を十分咀嚼できない自分が

情けない。


 常設展ー現代海外作品ー版画

   ピカソ、マティス、ブラック、マクルーシ、カンディンスキー、

   マレーヴィッチ、シュヴィッチ、ニコルソン。

京都国立博物館ー日蓮と法華の名宝

 私は日蓮さんのそのアクの強い行き方についていけないのだが、その筋を曲げない

一途な生き方は信仰者の大事な素養なのであろう。いよいよ京都での日蓮展が始まっ

た。


   特別展覧会 「立正安国論」奏進750年記念

      『日蓮と法華の名宝』

         ー華ひらく京都町衆文化ー


 [第一部 法華文化の展開]

 重文「紫紙金字法華経并開結」…平安時代作で、本阿弥光悦が寺に寄進したもの。

 重文「一字宝塔法華経并観音賢経」…紺地銀泥で丁寧に、銀も変色していない。

 重文「法華経ー伏見天皇宸翰、紙背後深草天皇宸翰」…行書で書かれている。

 重文「花園天皇消息」…“孟春之節 正朔之日 一天静謐 万民快楽 自他幸甚 勧

     娯無極〜”と読める。

 重美「釈迦三尊・羅漢図」詫間栄賀筆…宋元の筆法を学んだという。普賢・文殊の

     顔が初々しくなまめいている。

 「釈迦・多宝如来坐像」定慶作…日蓮宗独特の一塔二尊の姿。多宝如来というのは

     初めてお目にかかるか。

 「三十番神像」…吉田神道と結んで、神への信仰も行っていたという。

 長谷川等伯「絵曼荼羅」「釈迦多宝如来像」「日蓮像」…仏画から出発した等伯の

     スタイル。


 [第二部 日蓮とその時代]

 国宝「立正安国論」…独特の癖のある字、残念ながら読めない。

 「日蓮坐像」…たくさんの坐像が出ているが、現在北海道の法華寺にある像は、も

     ともと摂津高槻の正覚寺(廃寺)にあったもの、久々のお戻り。

 「日蓮書簡」

 「三教指帰注抄巻上」…修復のとき見つかった紙背の絵が何と「首実検」の図、少

     しマンガ的。


 [第三部 京都開教と西国への展開]

 重文「洛中洛外図屏風(歴博甲本)」…初期のもので少し地味。人物は小さいが動

     き有り、永徳へとつながるか。

 他略

 [第四部 京都受難時代]

 略


 [第五部 復興と近世文化の開花]

 本阿弥光悦が熱心な法華信者であったという。その関連の文化財がたくさん出てい

る。

 本阿弥光悦筆「立正安国論」「消息」

 本阿弥光悦作「赤楽ー加賀光悦」…黒づみが景色だというのだが。

       「黒楽ー銘時雨」     

 国宝本阿弥光悦「舟橋蒔絵硯箱」…名にし負う天下の硯箱。鉛の橋はザックリ作っ

     てある。沃懸地の金の色は鈍い。

 国宝藤原行成「書簡」

 重文俵屋宗達「牛図」…垂らし込みの妙。

 重文尾形光琳「太公望図屏風」…久し振りに拝見。

 重文長谷川派「松桜図襖」…智積院のものには届かない。

 狩野山楽「唐獅子図屏風」…永徳のものと並べて見たくなる。

     「四季竹図屏風」…珍しい画題。

 「厩図屏風」 

 酒井抱一「観世音菩薩像」…光琳百年忌に描かれて、京の妙顕寺に納められたも

     の。観音の右手に花瓶に生けられた立葵、白百合、紫陽花、仙翁花、撫

     子。この組合せの意味は、今橋理子『江戸絵画と文学』参照されたい。

 「蓮紙織画」…絵を細くたてに裂き、同じ巾に裂いた白い紙を布の横糸のように編

     み込んでいったもの。伊藤若冲の「白像群獣図」や「樹下鳥獣図屏風」に

     用いられた“枡目描き”のヒントになったのかもしれないという。 


   ※私にとって第五部の名品を見るだけでも幸である。

何必館ー北大路魯山人展

 没後50年ということで各地で魯山人展が開かれているものの一つ。何必館では常設

の魯山人展も行われている。


  没後50年 何必館コレクション

    生活の中の美

       『北大路魯山人展』


 入館すると受付の向かいに「呉須花入」や「銀彩大鉢」など13点が段飾りされてい

る。

 [刻字] 陶磁もいいが、刻字が最も味わい深い。

  「龍廬」…“為桜谷画伯 乙卯春日 大観生作”

  「行高於人 衆必非之」…“行い人より高ければ、衆かならずこれを非とす” 時

          代に先んずる人はなかなか認められないということか。

  「清風」「白鷺」など

  屏風「前赤壁賦」1914…実に見事な字。板は薄青、字は白で、中国風。


 [書] 求めに応じてたくさん書かれたとのではなかろうか。

  「山河走處」「識法者懼」「娯泉石」「閑林」「独歩青天」「雪月華」「残雪」


 [絵]

  「筆の絵」…“筆研精良 人生一楽”

  「翠露満筺」…竹籠の中に西瓜、葡萄に虫。

  「松林小禽」…“尋常一様窓前月 纔有桜花便不同”禅句。

  「竹に雀」…風炉先屏風。


 [文房具]

  筆筒、硯、墨、印章(磁印、木印ー无境)


 [漆器]

  「日月椀」「桃山風椀」「一閑張扇面椀」「葡萄絵朱椀」


 [陶磁]

  備前の焼き締め、それに織部が一番見応えがあるようである。

堂本印象美術館ー和装美人から洋装美人へ

 「美人」とくれば出かけずんばあらず。パンフレットの若き女性の姿がまた魅力的

に映っている。しかも今回は印象以外の画家も多数出展されているという、楽しみで

ある。


   特別企画展

     『和装美人から洋装美人へ』

         大正・昭和の女性像

 [スロープ 和装]

 絵葉書がたくさん展示される。なかでも、

 小林かいち「寂しき街灯」シリーズ…細い細い女性が街灯に絡む。1920年代にこ

     んな絵葉書が売れたのか。

 竹下夢二のものもある。

 ポスターでは

 北野恒富「たかしまや飯田呉服店ー京舞妓若松」

 サッポロビール…舞妓三人
 宝味醂

 堂本印象「からむし上布」…日本画をそのままポスターに使ったようで、品の良い

     仕上がり。

 [スロープ 洋装]

 関東大震災以後洋装が市民権を得ていく。断髪洋装の麗人をモダンガール=モガと

呼んだ。

 小林かいち「二号街の女」「夜の微笑」…目が蠱惑しているよう。

 ここにも竹下夢二絵葉書があり。

 前田藤四郎「装飾窓」版画…マネキンの飾り

 [2階展示室]

 上村松園「明治初期風俗十二ヶ月」

     9月…襖を開けて花魁が立つ。

     10月…三味を前にする母と子

   ※彼女の美人画は如何ともし難い。

 北野恒富「摘草」…これを和装美人の範疇に入れるとは。

 中村大三郎「現代少女」…まことに華やかな女性像。

      「春」…顔つきと洋装のバランスが取れている。

 榎本千花俊「揚々戯」…二人の若い女性がヨーヨーで遊んでいるさまを。

 梶原緋沙子「カメラ」…近代感覚に溢れているが、戦後の作にしては平凡か。

 堂本印象「読書する女」「白いレースの女」…戦後の女性らしい姿。


 [ミニ企画 印象二十歳の女性像]

 印象は三越図案部を経て龍村工房に遷る。そこでの同僚に秦テルヲ、野長瀬晩花が

いた。印象はその後京都市立絵画専門学校に入り、画家として立つことになる。この

修業時代の女性像である。主に芸妓の姿を写している。

 甲斐庄楠音や秦テルヲのスケッチブックがある。

 「雨の日」水彩…日本髪の後ろ姿、情緒溢れる。

 「梅の女」…若い女性のこんなに初々しい姿はあまりない。

 「松島の女」…光を下から当てて写したもの。

 「おばけ 花街の節分会」…大作。19人の芸者が群れている。秦テルヲの描きそう

     な主題だが。

 「女義太夫団千代」 

 「和倉温泉の女」「片山津温泉の女」水彩

 「浪速港涯絵巻」
 
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