日本の桜草と美術

桜草の栽培と美術鑑賞

2010年02月

兵庫県立歴史博物館ーミニチュアの世界

 姫路の美術館から博物館に回る。今回は大変珍しい展覧会である。

    特別企画展

       『ミニチュアの世界』

           ー小林礫斎と手のひらの宇宙ー


 いま雛人形が各地で飾られている。これは文字通り「雛」=ミニチュアであり、いろんな小さな道具

が飾られる。一般に嫁入り道具を模したものといわれるが、関西の御殿飾りに付属するのは台所や生活

什器の模型である。女の子のままごと遊びそのものである。

 このように小型模型=ミニチュアは子どもの遊びから出発するが、これが大人の愛玩物に成り上がる。

早くには洋の東西で豆本が作られたが、それがさらに日常の諸道具に及び、これでもかというくらいに

小さく小さく作られることになる。それを掌中の珠として楽しんだのである。

 今回の出展物のほとんどは東京渋谷の「たばこと塩の博物館」の蔵品である。

 これらの品は、田中実氏が収集された超小型の模型のコレクションである。田中氏が亡くなられたあ

と長く西宮市で保存されていたのだが、近年くだんの「たばこと塩の博物館」に寄贈され、今ここに里

帰り展示となったのである。

 恐ろしいまでの小型化であるが、素材は本物で、ほとんどは象牙や唐木が使われている。これらをど

のように仕上げたのか、製品が小さい分それを作る道具も小さくなければならない。そこから工夫が始

まる。しかも物が小さい分、それだけ誤差も小さくなる。これはもう大人のマニアの世界ということが

出来る。

 これらを作ったのは小林礫斎をはじめ様々な工芸家が参加している。それぞれに普通の大きさの物で

も一流の職人がミニに取り組んだのである。特に感心するのは画家の小林立堂である。1センチ2セン

チの小さな画面に山水や花鳥を描いている。しかもそれなりの出来である。

 ところで彼らは小さいけれどあくまで本物を志向した。そのための手本も本物であったという。なん

とここに京都国立博物館の国宝「芦手下絵和漢朗詠集」がお出ましである。こんな所で再会するとは

思っても見なかった。

 とにかく驚くべき小ささである。今日では再現は不可能であろう。普通の大きさの物を作るよりはる

かに高価につきそうである。

姫路市立美術館ー大野麥風展

 昨日の雨のあとで今日も休業、関西春の一日パス券(2900円/日)で姫路に行く。 

 まずは姫路城真下の市立美術館へ。

    『大野麥風と大日本魚類画集』

 大野麥風は東京生まれ、はじめ洋画を学びのちに日本画に転向、山水風景を得意とした。関東大震災

のあと淡路島に、そして西宮に転居してこの地で生涯を過ごした。後に魚好きが嵩じて魚類画集を描く

ことになる。

 その「大日本魚類画集」は500部限定、200度摺の超高級版画集である。今回この版画集の全72点が

展示される。さらに一部は絹本の原画や摺見本も添えられてある。

 これはまことに見事な魚類図集である。日本には花鳥画の伝統の中で魚も描かれて来た。さらに江戸

中期以後の本草博物学の発達の中魚類図集も編まれている。彼の絵はこれらを受けて成ったものであろ

う。

 魚を真写すると言っても、それは絵画として表現される、生態写真ではない。画家の個性が自ずと現

れる。しかも多くの人に見てもらおうと版画という手段をとった。版画は原画と較べ、くっきりとした

形の表現が身上である。魚が紙の上に泳いでいる。これを見ていると、何か良い音楽を聴いているよう

な気がする、それも耳に心地よいモーツアルトのような。

 500部も摺られたけれど、写楽とまでは行かないが、北斎・広重の浮世絵の水準にいっているのでは

ないだろうか。それにしても戦時中によくもこんな手の込んだ仕事をしたものである。そして戦争の影

がどこにも無いのが良い。

 今回の展覧会では大野麥風の全体像が示される。


 [日本画かとしての大野麥風]

 いくつかの軸(風景画)が出ている。その茫洋とした筆致は速水御舟や横山大観の影が見えるような

 気がするが、如何。
 

 [南方ヘの憧憬]
 
 南洋諸島や琉球の風景画がものされる
 

 [大日本魚類画集]
 
 どの魚もいいのだが、やはり「鯛」、それに色鮮やかな「闘魚ーベラ」がおもしろかった。
 

 [大日本魚類画集からの展開]
 
 画集の評判が良かったのであろう。注文で描いた魚の絵が幾つも並ぶ。
 

 [版木に見る麥風版画]
 
 戦後に作られた魚や風景の版画につき、その版木の一部も展示されている。ちなみに「大日本魚類画

 集」の版木はすべて焼失したという。


 [麥風の花鳥]

 穏やかな花鳥画がおおい。

 「冬の池畔」は枯れた蓮の残る冬枯れの池に飛来した鳥が遊ぶ姿。これは名品である。

長浜・黒壁美術館−野村陽子植物細密画展

 資料館に続いて、盆梅のパス券を利用して黒壁美術館へ。

 この美術館は元庄屋の屋敷だったものを、そのままの姿で美術館に転用されて居る。特に黒壁なので

ガラス工芸を中心にした展示館である。今回は常設のガラス工芸とともに、    

     特別展『野村陽子植物細密画展』が行われている。

 植物細密画とは一般にはボタニカルアートと呼ばれているのだが、ここでは「植物細密画」とう言葉

にこだわっているらしい。

 彼女の細密画は、割に大きな画面で、実物大に描くものが多く、背景は白無地にしてある。たくさん

展示されていたが、主題を挙げてみよう。

   シクラメン、オンシジューム、すみれ三種、サフラン、クロッカス、ピンクのバラ、アネモネ、

   ケマンソウ、水仙、芥子、ジャーマンアイリス、八重芥子、ポピー、ヒアシンス、

   ヤクルマギク、エノキダケ、マイタケ、ドライコーン、アザミ綿毛、炭、ゼンマイ、

   ウラシマソウ、枯れたウバユリ、マグシグサの実、パパイヤ、シイタケ、オリーブ、

   ブナシメジ、トウガラシ、ニンニク、クロカボチャ、レンコン、パプリカ、アボガド、アンズ、

   ザクロ、シモニダネギ、そして大きなコンニャクの花は迫力満点。

 ここに郷土資料館で出会った鯉の西川亮次の「果物と野菜」の小さい彫り物が展示されていた。


 〈ガラス工芸の部〉

 アール・ヌーヴォーから現代に到るガラスが集められている。目についたものをいくつか紹介しょ

う。

 ガレ「花文一輪挿し」…何と黄色い被せガラスが「桜草」を表しているではないか。ポリアンタかブ

     ルガリスであろう。

 ガレ「蓮文鉢」…浅鉢だが、全体が青磁様の色合いで、赤いガラスを被せて蓮の花と葉を彫り出して

     ある。まことに青磁と見紛う作品。ひょっとして青磁をねらったのかも知れない。

 ガレ「耳手付花器」…これも上等。

 その他ドーム工房の作もあり。

 現代作家のものもたくさん並ぶ。

  アルヴィン・アイツシュの「仏陀ー関わり、たそがれ、生と愛」「ピカソ蓮作」

              「キャノン・オルフェィス」など。

  ピノ・シニョレットの「レダ」、それに何と日本の「おわら風の盆の男女人形」

            「蛸と烏賊」   

  アレッシュ・ヴァシュチェック、トマム・レムケ、ロブマイヤーの作品など。

  
 

長浜・郷土資料館−ニシマサコレクション

 盆梅展のパス券を利用して「郷土資料館」を訪れる。ここには以前にも来たことがあるのだが、小体な

がらぎっしり詰まった内容を持っているなかなかの博物館である。

 〈虎図コレクション〉

 どこの博物館でも年の初めは干支に関わる展示物が巾を利かす。かって日本の家屋には居間に床の間が

あって、必ずと言っていいほど軸が掛けられていた。そのための需要も多かったと思われる。いまはもう

日本国中の博物館で膨大な軸が眠っていることであろう。

 展示される軸の作者を挙げておこう。

  矢尾春堂、山縣岐鳳、紀楳亭、橋本関雪、岸連山、岸駒、片山楊谷、池辺香銓など。


 〈泉亮之の彫刻〉特集

   泉亮次は(天保9.1.11〜大正9.2ー83歳)飾り物の小品に才能を発揮した人として知られている。

     10数点が特集展示されている。

   「蛙(ガマ)と雨蛙」、「蛇(シマヘビ)と蛙」三点、「親子蛙」   

   「仔犬(応挙風)」、「髑髏に蛇」「蓮に蛙(香盆)」

   その他合作の「矮鶏」 

   手のひら大の大きさながら、見事な存在感あり。蛇など生きているようであった。 


 〈西川亮次の木彫の鯉〉三点…これも地元の職人さん。


 〈櫛笄簪コーナー〉ここでは櫛笄のセットが数十点並んでいて壮観。簪ではまことに微細な細工を施

     したものが見られる。


 〈アイヌ民族コーナー〉長浜は越前との繋がりで北前船からの荷が齎されたようで、アイヌの着物や

     その他がこんな所でも見られる。

 その他省略。 
 

伊吹の見える美術館−中川大幹個展


 私はたくさんの仏像を今までに見て来たが、今も新たに作られている仏像についてはそんなに拝見する

機会は無い。

 江里康慧・佐代子氏のものは個展会場で、松本明慶氏の白檀の観音像は観音正寺で、向吉悠睦・中村桂

睦氏のものは琵琶湖文化館友の会新春公演会で見ることが出来たくらいである。

 「伊吹の見える美術館」では中川大幹氏の作品が常設されているが、今春は個展という形で、写真を

含めて45点が展示されている。

 仏像は長い伝統の中でたくさんの決まり事の多い世界である。そのなかで各仏師が自らの個性を生かし

ながら信仰の対象であるものを形として表すのである。

 今回の出展では、龍玄精舎本殿の本尊や四仏(写真)の均整がとれ、極彩色に彩られた姿が見事であっ

た。

 また小さな「阿弥陀仏立像」にまことに華やかな截金が施されてあるのも美しかった。

 村瀬信吾氏の「曼荼羅」2点は、これも極彩色で、恐ろしいほどの細密さに満ちていた。

 別の部屋には、制作過程を示す写真アルバムも置かれていた。そのなかに大変興味深いものがあった。

ある新興宗教の教祖の坐像である。それはどこにでもいるようなお婆さんの姿をしている。それを信仰の

対象として、仏像と同じ方法で作られてたのである。

 軽い気持ちで立ち寄ったのだが、何とも豊かな気持ちにさせられた。

盆梅行

 久し振りの雨となったので植替作業はお休み、家人を誘って再び湖北の盆梅を見に行って来た。

 [鴨の里盆梅展]

 米原の東「グリーンパーク山東」での盆梅展に2年振りに行く。ここは個人の盆養しているものを持ち

寄って展覧がなされている。盆梅の盛んの湖北地方のこと、ここにも良い木が集まって来ているようであ

る。特に良かった木を紹介する。ただ残念なことに、このところの暑い気候で落花が始まり、もう盛りは

過ぎていた。

 「不動」…桃八重。太い木の中は空洞。上部左右に雲が棚引くように花がついている。

 「武蔵」…太い幹が割れ、双幹のような姿になっている。

 「白竜」…白八重。細い枝がくねっている。

 その他「瀧戸」は白斜幹、皮一枚で立っている。

    「龍頭」は白八重斜幹。

    「福寿」は白一重で、無数の花を付けている。

 以下省略。広い会場ながら、雨のため見学者は私たち二人だけ、関係者のほうが多くその話し声が会場

に響くほど。


 [浅井盆梅展]

 山東から浅井の回る。浅井には先だって来たのだが、蕾みが堅かったので再度の訪問となった。さらに

「長浜盆梅パスポート」を持っていたので、パス券で入場できたからである。

 先に注目していた木ぶりの良いものに花が十分に乗っていた。やはり「茶々」と「お市」が双璧であ

ろう。ここはもうさっと見て済ます。

桜草の出芽

 このところの急激な温度上昇で桜草の芽が動き始めている。しかし例年とその様子が違う。今までな

ら、寒さを窺うように土の中から小さな「もみじ葉」をそっと覗かせる。そしてよしとなって初めて葉を

繰り出した。ところが今回はいきなり葉が伸びて来ているのである。このままだと寒さがぶり返したと

き、葉先がやられそうである。こればかりは天の配剤、如何ともし難いか。

 今日の植替で、我家の東側・南側の鉢を終える。昨年と較べ鉢が20ほど余ってきた。暑さで作落ちした

ものが幾つも出たせいである。これからいよいよ北側の大舞台をのこすのみ。

植替−3

 植替続行中も、今日の気温は18度を超えて4月下旬並みに。この気温があと数日続きそうで、一気に

芽が伸び出すであろう。困った困った。このまま春になるとは考えられない、例年3月に入っても、決っ

て雪が降っている。この落差を我家の桜草は耐えられるだろうか。それにしてもこの時期よく雨が降るの

だが、今年に限って晴が続く。「雨読」出来ないのは痛し痒しである。

 今回は昨秋での鉢明・芽揃が出来ていないので、植替に少し手間取っている。出来るだけ手早く手際よ

くを心がけているが、1日8時間労働というわけにはいかないので、せいぜい1日に50鉢程度しかはか

どらない。同じ手順で流れ作業方式で出来ればいいのだが、展示会用や頒布会用のポットも作らねばなら

ない。

浪華さくらそう会総会

 今年の総会も堺のサンスクエアで開かれる。10数名の参加者。遠くは熊本から来られる。

 会式の辞

 会長挨拶…挨拶代わりに最近の桜草界の状況を紹介する。

    ・地方によって、人によって出来は様々のよう、加茂花菖蒲園では八重咲き種の生育が思わしく

     なく公開せず、苗の頒布もないという。

    ・鶴見緑地での花の万博20周年記念の展示で、桜草の展示要請があり、小屋組花壇を出す予定。   
    ・イギリスの園芸雑誌に桜草の記事が載り、そこに浪華さくらそう会の銘鑑のことが言及されて

     いる。

    ・2月1日に記念切手「ふるさとの花−5集」が発行され、そこに大阪府として50円と80円

     の「梅と桜草」模様の切手が出ている。

 事務局よりの報告

   ・会計の問題点…収入より支出が大幅に上回っている、このまま推移すれば早晩破綻すると。

   ・中村幹事より会計監査報告   

 桜草栽培史の新しい考え方…会誌記事をもとに山原が解説。文化年間の連の活動が天保時代に入って終

    焉するとともに、染植重での栽培と育種が始まり、ここで一気に今日につながる銘花が誕生す

    る。それを西国に販売し新たなたくさんの好事家を生み出し、一方江戸での連の後代が生まれ

    ることになる。しかしこれも明治維新の動乱の大波を被って衰退する。それを復活の緒に就か

    しめたのは、柴山正富の皇居での展示であった。そして桜草に関心を持った貴顕に苗・鉢を供

    給したのが染植重等の植木屋であった。桜草界は植木屋が桜草を維持・増殖してくれたお蔭

    で、栽培が継続することになったのである。

 植付け実習…鉢植えに於ける培養土の特性の話、そして実演2鉢。

 スライド上映…昨年山原が写したスライド−旧花、実生新花など紹介。

 余剰苗頒布

  3時過ぎに終了。

実生新花贈らる

 今年も作者から実生の新花を送っていただいた。

  宮崎三千男氏より

    雪の空=高嶺の雪×十洲の空……高根の空の兄弟

    露紫=秋の風(春告鳥×松の位)×合歓の雨(三田自慢×松の位)

  冨増和彦

    涼篠津(すずしのつ)

    藤の湖風(ふじのこふう)

    石鹿時雨(せきろくしぐれ)

    反縞(そりしま)

 それぞれどんな花が咲いてくれるか。4月が待ち遠しい。
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