日本の桜草と美術

桜草の栽培と美術鑑賞

2016年04月

品種のいろいろ4

 今回も私の実生新花である。

 〈未央宮〉
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 これも「花の司」の実生。「標野行」の姉妹に当たる。大輪で平咲きなので大きく見える。しかも表白裏濃桃で鑼弁なので、大変派手で目立つ。ただ裏の色が一部染出しするのが欠点と言えばそうである。葉が大きくなりやすいので、締めて作る必要がある。短。
 名前は中国漢代の王宮の名前から拝借した。それは孫の名前に使っている漢字がそれに含まれているからである、意味はない。

 〈綿津見〉
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 これは「豊旗雲」の古い実生。大きめの中輪で控え目な乙女の雰囲気。茎が高く、バランスがいい。列片が6枚になりやすく、勿論重弁である。長く私一人で楽しんで来たが、数年前から外に出している。名前は親の「豊旗雲」の本歌(綿津見の豊旗くもに入日射し………)をそのまま利用させてもらった。長。

小屋掛花壇 4,30

 雛壇の入替・並び替を行う。すでに盛りを過ぎた鉢がいくつも出てきた。そこで少し手直しをする。
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品種のいろいろ3

 今回はここ10年来の私の実生新花を紹介する。

 〈標野行〉
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 この品種は、中村宏氏の「花の司」の実生である。「花の司」が我家にやってきて花が咲いた時、私は、これが鑼弁となり抱えてフリル状になれば一層華やかになるだろうと感じた。そこでこの種子を蒔いて出現したのが「標野行」である。初花から目立っていた。長。
 名前は、万葉歌人の額田王の歌「茜さす紫野ゆき標野ゆき野守や見ずや君が袖ふる」から採らせてもらった。

 〈菅丞相〉
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 この品種の花付はあまりよくないのだが、丸弁の白花平咲き(花筒は紫)が珍しいので取り上げた。
 名前は、花型が梅鉢の文様に似ていることから、菅原道真に準えさせてもらった。さらにこれに命名しようとした時の首相が菅直人氏であったことにちなむ。長。

実生新花の選別2

 実生新花で、見所があるなと思い込んで残してあるものをふるいにかける。どうしても自分が作ったものには身びいきしてしまい、なかなかに思い切れない。しかし心を鬼にして、類似花のありそうなものをはねていく。
 一目見て“これは!”と心をとらえるものはない。

 〈処分するもの〉
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 〈何とか今年はクリアしたもの〉
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 〈迷っているもの〉丈夫でよく増える、変わった花型だが輪径が小さい。
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くらしの植物苑観察会ー2016,4

 昨年は私がこの歴博のくらしの植物苑観察会で「日本の桜草栽培史」を話させていただいた。
 ここでの企画委員をされていた茂田井氏が委員を辞任されたというので、今年はどうなるのか気になっていた。やはり路線が変更になったようである。こういう組織では実際の栽培家を持ってくるのは難しいのであろう。私などは異質の存在だったのかもしれない。
 
  『江戸の花とさくらそう』   半田 高氏(明治大学農学部教授)

 私は観察会に参加できなかったが、歴博のHPに当日の観察会のレジメが公開されているので、話の内容は伺い知れる。
 そこで私の気づいた点を少し述べておこうと思う。
 まず江戸時代の園芸の発達の流れを簡にして要をえて紹介されている。
 桜草の分野では、栽培の始まりを室町中期とする新しい考えをとり入れられている。ところが、江戸時代の後期に栽培の中心だったのが庶民とされているのは、私にとっては始めての知見で、いったいどんな史料・資料からとられたのか気になるところ。私の調査では、桜草園芸種の栽培は中級武士の独占物であったようである。これは花菖蒲も武家の草花であったと同様で、江戸時代の園芸植物の栽培といってもその種類によっては、取り扱った階層が限定されていたことを知らねばならない。
 一方、古典園芸植物の先行きについて警鐘を鳴らされているのは稽首に値する。生きている文化遺産ともいうべき古典園芸植物への関心が薄れているのは如何ともし難いところで、数年前には輝かしい活動実績を残された「大阪朝顔会」が散会してしまっている。
 これは他人事ではない。桜草の世界でも関心を持つ若人の参加がいかにも少ない。
 どうすれば良いのか。名案はない、公的機関による栽培保護も危うい。歴博での桜草の取り組みは今のところ例外的に成功しているようにみえるが、担当者が変わればどうなるかわからない。
  

根茎の成長

 桜草では花茎が上がり花が咲く頃、土の中では新しい根茎が出来つつあり、不定根も伸び始めている。つまり花の咲いている頃に肥料が効いていることで大きい芽が出来、そして分枝を促して多くの芽が出来ることになる。根茎は扇の骨のように要を中心に伸びる。根茎がある程度大きくなると分枝もしない。
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品種のいろいろ2

 今年よく出来た品種をとりあげてみようと思う。

〈江天鳴鶴〉
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 「江天鳴鶴」は『桜草名寄控』に著録された150年ほども前に出た銘花である。今でもこれほど艶やかな花容の品種はあまりない。表染め出し裏紅色で、桜重弁の抱え咲き、そして花数も10花以上で大変賑やかな風情を醸している。さらにその名前が良い。中国のよく知られた古典熟語二つ(江天暮雪と九皐鳴鶴)を組み合わせた壮大な意味内容を持つ。さらに言えば、我家ではこのところ毎年のように出来がよくて楽しませてもらっている。これを乗り越える新花を生むのは至難の業のようである。短。
 「紅天」では「江天暮雪」とはなり得ないので、誰かさんの誘導によって「紅天」(古典にはこんな言葉はない)とした方は「江天」に戻されるがよい。

〈紫鑼〉
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 「紫鑼」も『桜草名寄控』に始めて現れた品種である。紫系の銘花としてつとに知られている。花が良いだけでなく、茎もしっかりして、作り易い。この花は「鑼弁」の代表選手である。
「かがり」とは「縢る」ことで、布のほつれを防ぐために生地の端を縢っておくことである。それを一種の模様と見て、大鋸(「おが」と読み、「大かがり」の略)の鋸歯との連想から「かがり咲」と名付けたのであろう。「かがり咲」がもう少し深く切れると「フリル状」になる。長。
 「鑼」は「銅鑼」のことであり、これをなぜ「かがり」と読ませているのかは判然としない。近代に入って、列片の形を区分する時に誰かが使いだしたのであろう。
 *村松貞次郎著『新道具曼荼羅』36頁に、
   「縦挽鋸…当時はこれをガガリ(加賀利)と称して鑼の文字を当てていたらしい」とある。

 *このように『桜草名寄控』は桜草の品種の歴史におけるターニングポイントといえるようである。もっと評価しなければならない。


 

品種のいろいろ

 品種の特色などについて、写真とともに思いつくままの感想を述べる。
 桜草には珍しく「紅色」には濃色がある。最もよく知られるのが「玉珊瑚」であるが、この花は玉咲きなのでわかりにくいが、花の表色は白系である。一方ここに示す仙台の浦澤儀行さん作出の「初紅」は表色まで紅色である。色の面で一歩抜きん出た観がある。ただこの美しい紅色で大輪の花があればと思うのだが、今のところかなえられてはいない。
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 ほとんどの品種はウィルスに罹患しているが、普通には病状は隠れていて発現することはあまりなく、ときどき出てくる。写真のように全体が萎縮して小さくなり、花形が歪になり、列片のあちこちから突起が現れる。接触では移らないので抜き去ってもあまり意味がなく、手の施しようはない。これは「江天鳴鶴」の例である。
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 「流れ星」が出現してから、大切弁の他の花を見かけるが、やはり「流れ星」の爽やかな赤目には勝てない。またこの中輪の大きさもいいのだろう。輪径が大きくなると、可愛らしさが低下する。
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雛壇の組上げ

 昨日、小屋組の雛壇に入れる鉢を選抜して、鉢の泥をタワシで落とす。今日は化粧直しに取り掛かる。少しの歪みなら手の指を鉢土に押し込んで茎を直す。茎自体が曲がっていれば、竹串を使う。面倒だが、これをするとしないでは見映えが大違い。ここ数年、この化粧直しを宣伝にこれ努めているのだが、私に追随する人はほとんどいない。一年の成果を問うのであれば、これくらいしてしても罰は当たらないのだが……
〈今年の雛壇〉
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葉の黄変

 期待の実生新花の調査をしていると、早くに出た葉が黄変して萎れ始めている。純白系統の品種では咲き疲れするのであろうか、早々とこの症状が出るものがある。この新種については、来年には4芽植が出来ると楽しみにしていたのだが、どうなることやら。
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 大きく細かく切れた列片の実生花。私好みなのだが、もう少し輪径が大きければいいのだが。
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