仏教といえば、お寺・仏像・仏画・経典とくるが、これらは外国から齎された最高級の文

化で、目も眩むような高価なものであったろう。

 そのような仏教も庶民にまで普及するにつれ、仏さんも版画によって容易く手に入って家

で拝めるようになる。それが大きく進むのは江戸時代である。

 今回の展示はその仏教版画の特集である。

     特別展示 庶民の祈り 志水文庫

         『江戸時代の仏教・神道版画』

 地味な展示にしては、そこそこ入場料を取るなあと思っていたら、立派な出品目録を頂け

た。学術的な展示であるだけにこれは有難い。

 仏像の版画はすでに唐代には出現していたようである。また京都の清涼寺の釈迦如来立像

の胎内にも宋代の版画が納められていた。版画・印刷は仏教とともに発達したといっても言

い過ぎではない。


 [印仏・摺仏]

 極初期の版画は小さな仏が主で、それを拝むというよりも、呪苻として使われていたよう

である。また判子のように捺して使ったもの(印仏)が多い。


 [大型の仏教版画]

 鎌倉期に入ると大きな版画が作られるようになる。ここで崇拝の対象としの仏像版画とな

るのであろう。


 [曼荼羅・変相]

 「両界曼荼羅 双幅」(1661)…こんなものまで版画になっている。細かい図柄をよく彫

     ったものである(約70×60センチ)。

 [阿弥陀浄土信仰 六道図・十界図]

 「当麻曼荼羅」…中央に阿弥陀の極楽浄土を、下辺に九品来迎図など、これも細かい図様

     となっている。全く同じといって内容で、大きさの違うものが展示されている。

     需要が大きかったのであろう。

 仏教書がたくさん展示されている。江戸時代の出版の大きな部分を仏教書が占めている。

 「二河白道図」…阿弥陀信仰とともに広まった二河白道を絵にしたもの。

 「五趣生死輪図」…五趣(地獄・畜生・餓鬼・人・天)、その外に十に因縁などを描いた

     もの。長くこの図様は描かれることはなかったが、天保三年にこれで復活したと

     いう。

 『往生要集』の幾つもの版本が出ている。


 [仏伝図 誕生図・涅槃図]

 仏教にとって釈迦の死・涅槃は大きな出来事であって、たくさん版行されている。


 [釈迦涅槃図の図様の摂取]

 釈迦のかわりに、高僧や有名人を描いたものがつくられた。法然・日蓮など。

 「恵齋略画芭蕉翁臨滅度之図」…鍬形恵斎の描いたものをもとに版行されたもの。

 「璃寛像黄泉発足」…上方で活躍した嵐璃寛の追善絵。

 「四代中村歌右衛門追善絵」 

 その他西郷隆盛のものまである。


 [様々な尊像]

 [各地の仏像・仏画]

 [祖師像・高僧絵伝]

 「法然上人絵伝」がある。縦軸形式で、九段に区切って、絵と詞を交互に入れる。これに

ついては、大津市立博物館で行われた『楳亭・金谷展』で、金谷作として同様の版画濃彩色

の四幅が出ていた。同じものであるらしい。


 [神仏習合 修験道の画像 神道の画像]

 [講の行事の本尊]

 [江戸時代の版木の新摺]


 美術とまでは言い難いが、歴史的に価値の高いものを拝見できた。盛りだくさんの内容で

学術研究発表といったところ。                    (6.24)