今回でこの講座も最終回。

    『近世絵画のいろいろ』

       ー琵琶湖文化館収蔵品からー

             滋賀県立琵琶湖文化館 学芸員 上野良信

 日本の近世までの絵画の流れをかいつまんで紹介。仏教絵画から始まって、世俗画の山水

や肖像画へ。雪舟の時代より作者がわかるようになる。そして狩野派が誕生して日本絵画の

大きな潮流を形成する。それに対抗するように民間の絵師、南宋画家が活躍してより豊かな

絵画の世界を生み出したと。 


 [絵画鑑賞ースライド]

   館蔵品のなかから主だったもの10数点を上映。これらは全て琵琶湖文化館で見たこと

がある名物である。

 「山法師強訴図屏風」…大変珍しい主題の絵。歴史資料としても良く使われているという

 「楼閣山水図」曾我蕭白 近江神宮…近年とみに注目を集める蕭白の屏風。見た事もない

     山水を描くと行って、これほど奇怪なものは他の人にはない。こんな時代に個性

     溢れるものを描くのは大変だったと想像される。それでも注文する人がいたとい

     うことである。

      この館からの貸し出し機会の最も多い作品という。最近複製が作られ、正月開

     けにも神社の方でお披露目がなされるという。

 「金谷上人御一代記」横井金谷…自分で自分を上人と称し、自分の一代記を記したもの。

     この一代記は、この春にあった大津市歴史博物館の『楳亭・金谷』展に出展され

     ていた。進取の気性に富んでいた人で、その落款に、ローマ字で“KIN KOK”と彫

     ったものがある。

 「五老図」紀楳亭…通称近江蕪村とも呼ばれた。九老と称す。

 「柳汀双禽図」宋紫石…沈南蘋の孫弟子にあたる。新しい中国風の写生の匂いがする。

 「狗子図」円山応挙…狗子は特異の画題であり、人からも求められたのであろう、たくさ

     ん描いている。さすがに写生を徹底した人である、手を差し伸べてかわいがりた

     くなる。これを真似たものがどれほどあることか。

 「長春孔雀図」張月樵…やはり中国のものを学んだので、薔薇が描き添えられている。

 「武陵桃源図」広瀬柏園

 「楽山楽水図」塩川文麟

   その他省略


 文化館にはこんなにも良い作品が蔵されているというメッセージを送られているようであ

る。ただ今回の出席者はほとんどがご老体ばかりであった。