2005年10月

教育音声学の必要性

昨日、私の勤務校で「公募制推薦入学試験」が行われた。私は同僚の一人と14名の高校生を面接した。10行程度の英文を読ませ、その大意や特定の語句の意味を尋ねる試験も行った。気のせいか、きわめて平易な英文が読めず、その大意や特定の語句の意味が取れない受験生がますます多くなってきているように思う。受験生の一人はsuch を「スッチ」と読み、foreignを「フォレグン」と読んだ。別の受験生はunifyingを「アンイッフィング」と読み、occurを「オキュア」と読んだ。さらに別の受験生はconservative「コンサーベイティブ」と読み、adjustを「アドジェスト」と読んだ。また、ほとんどの受験生が複数名詞の語尾を不明瞭に発音することも気になった。customs, reawards, languages, barriers のような語の末尾を明瞭に、聞き取りやすく発音した受験生は皆無であった。昔から、「日本人英語でも、発音が下手でもよい、通じればよい」という極論を聞くことがあったが、個人的にはそうは思わない。教職を目指す大学生に必修科目の1つとして「教育音声学」(Educational Plonetics) を用意する必要性を感じる昨今である。

自己PRについて

昨日、大学に行って、私の研究室の連絡板に、女子学生の一人が、就職面接第一次合格通知を受け取った旨のメモを挟んで帰っているのを見つけた。某航空会社に応募した学生であった。その10日ほど前、会社に提出する自己PRを書いた用紙を持ってきて、私にこれでよいかどうかと意見を求めていた。それには、「私はつらい時でも笑顔がつくれる」「私には協調性がある」「私には忍耐力がある」などの言葉が並んでいた。私は、「会社側から見れば、あなたが書いていることは、接客業に携わるものとして、持っていて当然の人間的資質であって、あなたの“自己PR”にはなっていないのではありませんか」と訊いた。本人はきょとんとした顔をしていた。

 最近、よく自己PRという言葉を聞く。しかし、何が自己PRなのか、あるいはどのようなものを自己PRと呼ぶのかという点になると、学生達の多くは答えに窮するようである。いろいろな答えを出すことは可能だろうが、1つだけ私見を言えば、就職試験を受けるまでに培った人生経験と、受けて来た学業とが、自己形成にどう深く関わって来たか、それが自分の人生観や他人との共存の必要性にどう影響を与えて来たか、その経験と学業成果との将来的な活かし方を大学時代にどう予想してみたか、そのような過程が自分の人間的魅力創りにどう貢献して今日に至っているか等のことを踏まえた上で、「私は…の点で、他人には(負け)ない強みを持っている」と、自分の強みや長所を列挙することだと思う。

 その女子学生には、だいたい以上のようなことを伝えて、「自分だけの強み」を探してくるように言った。翌週、来室してその「強み」を私に話してくれた。その結果、第一次審査合格の通知を受け取ったのである。

 

 

笑顔がこぼれた?

私の誕生日にメールをくれたある学生がこんなことを書いていた。「昨年、先生にゼミ生が花束とプレゼントを差し上げた時、先生の笑顔がこぼれたのが印象的でした。」 気をつけていないと読み飛ばしてしまいそうな日本語だが、「笑顔がこぼれた」は、私には、不自然な表現に思える。「笑顔」はこぼれない。「こぼれる」のは「笑み」である。Googleで「笑顔がこぼれた」を検索してみると、新聞記事を含め、多数の用例が見つかる。3例だけ引用する。

1.「昭和小学校からのプレゼントがアテネオリンピック目前のゲオルギア選手に届き笑顔がこぼれた。(2004年8月)写真:信濃毎日新聞社提供」

2.深夜体力も極限であったが満足堤。 笑顔がこぼれた。ちなみに大岩氏は第2ゲームをものにした。 彼も笑顔がこぼれた。帰りの車、3人中2人に笑顔がこぼれた。そして静かにハンドルを握る竹元氏がいた。 次回に期待しておきます!

3.みんなは心から組長に頼みたいという感じだった。虹太郎もみんなのそんな様子に、気持ちが楽になり笑顔がこぼれた。

 何が言いたいかこれでも分かるが、やはり、「笑顔がこぼれる」という表現は気味が悪い。個人的には、「笑みがこぼれる」のほうを好ましいと感じる。

口を聞いてもらう?

いつだったか、昔の卒業生の一人が、出版社を紹介してほしいという内容の手紙をよこした。その中に、「先生に口を聞いてもらえれば、こんなにうれしいことはありません」とあった。「口を聞いてもらう」というのはおかしい。これは「口を利いてもらう」と書かなければならない。単純な間違いと言えば言えるが、一度間違えて覚えてしまうと、当の本人はなかなかそれと気づけない。

ライミング・スラング(宿題24の答え)

前回、宿題となった例文の意味と解説を示す。

(24ans.)One load of hay my old China Plate came with me to the pair of braces at Epsom in the hope of making some bees.

       【意味】ある日、ワシの古い友だちが、ちょっとカネ儲けをしたいとエプソム競馬までワシについて来た。

  【解説】load of hayのhayがday(日)と、China PlateのPlateがmate(友だち、仲間)と、the pair of bracesのbracesがraces(レース)と、それぞれ韻を踏む。また、some beesのbeesはbees and honeyのand honeyが省略されたもので、honeyがmoney(おカネ)と韻を踏む。したがって、標準英語で書き直せば、One day my old mate came with me to the races at Epsom in the hope of making some money.となる。

次回用
(25) She began removing her full-length almond rock.

★上の例文はどこがライミング・スラングと呼べるものだろうか。

ファックス1枚の退職願

先日、私が所属する学科で非常勤講師を務める“ネイティブスピーカー”の某氏(男性)が突然、ファックス1枚で退職を申し出てきた。当日は木曜日で、同氏の授業が夜2コマあった。翌日の金曜日も同じく夜2コマあった。学科教務委員長としての私は、突然のことにおおわらわとなった。契約違反だと当人に詰め寄ることもできるが、やる気の無くなった人を相手に時間を費やすのは、受講生のことを考えれば得策ではない。そんなことで、受講生には申し訳なかったが、その日とその翌日の授業は休講にして、さっそく人探しにかかった。私は“せっかち”な性格のせいか、その日に起こったことはその日のうちに対処したいと思うことが多く、それがたまたま“幸い”したのだろう、結果的には同氏が退職を申し出たその日のうちに2名の非常勤講師を探し(と言うよりも、無理をお願いして)、翌週からの授業に備えた。私は、外国人だから、日本人だからという偏見は持っていないつもりである。しかし、学科主任、学科教務委員長などを務めてきた経験から言うと、“身勝手”な辞め方をしていく非常勤講師は、間違いなく、外国人に多かった。今年度に入って、そうした事例が2例続いた。

電話の道は電話?

昨日、帰途に着こうとして、大学の駐車場に行き、そこで携帯電話が鞄の中に入っていないことに気づいた。研究室に忘れてきてしまったかと思い、そのまま研究室までもどった。室内のどこを探しても見つからなかった。あるいは持って来ていたと思ったのは私の勘違いで、それを自宅に置いて来てしまったのかも知れないと思い、帰宅した。ところが自宅にもなかった。おかしいおかしいと思いながら、以前テレビ映画の中で、携帯電話の置き場所を忘れた登場人物が、それを探すのに、別の電話を使っていたのを思い出した。私もそれを試してみようと思い、自宅の私の書斎にある電話の子機で紛失した私の携帯電話の番号に掛けてみた。するとどうだろう、私が大学で何度も探したはずの私の鞄の中から呼び出し音が鳴るではないか。探して見ると、鞄の底敷きの下に入っていた。「蛇の道は蛇」という言葉があるが、まさに「電話の道は電話」である。もっとも、その場合、携帯電話の電源が入っていなければ、当然のことながら、それは無理である。

ご持参してください?

学生の一人から、音楽会の招待状をもらった。その末尾に、「ご来場の際には本状をご持参してください」と注意書きがしてあった。「ご持参してください」という言い方に違和感をおぼえた。最近、この言い方をしばしば耳目(これを「みみめ」と読んだ学生がいた)にするが、「持参」とは本来、「…を持参致します」のように、自分の行為に言及する語であるから、他人の行為に使うのは不自然である。やはり、「…をお持ちください」のような言い方のほうが自然に響いてよい。ただし、かく言う私自身、「…をご持参ください」という(「して」を除いた)言い方には、大して違和感をおぼえなくなっているから不思議である。いずれにせよ、言葉は変化するものであるから、多くの人たちがその言い方に違和感をおぼえなくなれば、それはそれで正用法になる。今のところ、(「私的には」ではなく)私としては「…をご持参してください」は避けたい語法である。

法外の幸せ?

卒業生の某君が海外留学のための推薦状を私に書いてもらいたいと言ってきた。その一文の中に、面白い表現があった。「先生に推薦状を書いていただけましたら法外の幸せです。」 問題は「法外の幸せ」という表現である。おそらく本人は「望外の幸せ」「法外の幸せ」と勘違いして覚えこんでしまったのだろう。「法外」は「法外な値段」とか「法外な要求」というような言い方をする場合に用いる「望外」は「望んでいた以上」の意味であり「法外」は著しく程度を超えること」の意味である。人間、一度覚えこんでしまうと、なかなか自分の間違いや勘違いに気づかない。ちなみに、「勘違い」を「感違い」と表記する“勘違い”もけっこうある。

 

第8回明海大学大学院応用言語学セミナー案内

明海大学大学院応用言語学研究科主催・第8回応用言語学セミナーは来る12月10日(土)、同月11日(日)の2日間にわたって開催予定。詳細はこちら。→http://jiten.cside3.jp/8th%20Seminar.htm

 

明海大学外国語学部英米語学科非常勤講師募集

私が勤務する明海大学外国語学部英米語学科では、以下のとおり、英語非常勤講師を募集している。締切日が押し迫っているが、一応紹介しておきたい。

明海大学外国語学部 英米語学科 非常勤講師の募集
                   英米語学科 主任 原口庄輔

英米語学科では、2006年度に、非常勤講師を下記の通り募集することになりました。応募を希望される方は、期日以内に必要書類をお送り下さい。

(1) 日本人で、1年次生または2年次生のTOEIC対策講座 および一般英語の授業担当が可能な者(外国人若干名)。
週に2コマ以上の授業担当が可能な者。
(2) 募集人数7-10名
(3) 応募先: 279−8550 浦安市明海8
明海大学外国語学部英米語学科主任 原口庄輔
(4) 必要書類: (1) 履歴書(CV) (2) 教育研究業績
(5) 締め切り: 10月31日 なお、面接の日は改めてお知らせいたします。
  応募書類はお返ししませんのでお含み置き下さい。

教えられなければ分からない。

私のゼミに特修生として参加している大学院生・KT君が、ゼミ専用掲示板に、テレビタレント達の「気になる日本語」に関連して、興味深い文章を書いている(実名を仮名に変更して以下に転載する)。同君も数年前まで、相当に問題のある日本語を話したり書いたりしていた。それに対しては私は、機会があるごとに、ゼミ専用掲示板で、加除修正を施した。今では、同君は後輩ゼミ生達の良き日本語アドヴァイザーである。日本語も英語も、やはりきちんと話したり書いたりすることを教わらなければ、けっしてできるようにはならない。

 

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ライミング・スラング(宿題23の答え)

前回、宿題となった例文の意味と解説を示す。

(23ans.) See the bird? Let's get back to work or we'll get the tin-tack.

     【意味】時計、見た? 仕事に戻ろう、でないと、クビになっちゃうよ。

   【解説】birdはbird limeの略で、limeがtime (時間)と韻を踏む。また、tin-tackはsack  (get the sackで「クビになる」の意)と韻を踏む。

次回用
(24)One load of hay my old China Plate came with me to the pair of braces at Epsom in the hope of making some bees.

horse-racing★上の例文はどこがライミング・スラングと呼べるものだろうか。4箇所あって、かなり難しい。Epsomはロンドンの南西に位置する町で、その郊外にはDerby、Oaksで知られる競馬場がある。ここはその競馬場のこと。

Elsie who?/Stopwatch who?

49. Knock, knock!/ Who's there?/ Elsie./ Elsie who?/ Elsie you later.

50. Knock, knock!/ Who's there?/ Stopwatch./ Stopwatch who?/ Stopwatch your doing and open the door!

ライミング・スラング(宿題22の答え)

前回、宿題となった例文の意味と解説を示す。

(22ans.) (パブでの友人同士の対話)
   “Fancy a tumble?”“Thanks. A pint of pigs, please.”

      【意味】「1杯、やるかい?」「ありがとう。ビール、1パイント、もらおうか。」

   【解説】tumbleはtumble down the sinkの略で、最後のsinkがdrink(酒などの1杯)と韻を踏んでいる。また、pigsはpig's ear の略で、最後のearがbeer(ビール)と韻を踏んでいる。難易度の高いライミング・スラングの1例と言えよう。

次回用
(23)See the bird? Let's get back to work or we'll get the tin-tack.

★上の例文はどこがライミング・スラングと呼べるものだろうか。2箇所ある。

「題名のない音楽会」テノール歌手ラ・スコーラ

昨日の朝(10月2日)、久しぶりにテレビ朝日の「題名のない音楽会」を観た。ポスト三大テノールの一人として注目されているイタリア人テノール歌手ヴィンツェンツォ・ラ・スコーラが「女心の歌」(G.F.ヴェルディ作曲)、「帰れソレントへ」(E.デ・クルティス作曲)、「誰も寝てはならぬ」(G.プッチーニ作曲)などを歌った。喜納昌吉作詞・作曲による「花」を日本語で歌ったが、これまた素晴らしかった。ラ・スコーラの美声は「太陽の声」と形容されているという。さもありなん。
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