2008年02月

英語辞書はやっぱり「紙」

dictionary表題は、本日発売のAERA紙(朝日新聞社発行)が採り上げた語学欄の題名である。「紙の辞書の劣勢は否めないが、英語学習者はぜひ一考を」(同紙)ということで、1頁だけの、それも私の発言とされているのは僅か9行の簡単な取り扱いのものだが、取材を受けた(昨夏)私としては、その話題が「ボツ」にならなかっただけ幸いだと思っている。
 記事の冒頭に書かれている「昔は《食べる》派もいました」という文句に何だか懐かしさを覚えた。辞書の頁をほんとうに食べた学習者がいたのかどうか、私は自分の目で確かめたことはないのだが、そういう派がいる[いた]らしいことはしばしば耳にした。それだけ本気で勉強していた学習者がいたということだろう。
【参考】「紙の辞書と電子辞書」に関してはこちらの拙稿も参照。

「食い合わせ」がいい?

いっしょに食べると害になると言われる食べ物の組み合わせのことを「食い合わせ」(あるいは「食べ合わせ」)と言う。害になる組み合わせなのだから、「食い合わせがいい[良い]」「いい[良い]食合わせ」というような言い方は、本来不自然なはずだが、実際には、Google 検索に基づく以下の数字が示すように、プラスイメージでもかなり普通に用いられている。「食い合わせが悪い」「食べ合わせが悪い」「食い合わせがいい」「食べ合わせがいい」の順で見てみた。

食い合わせが悪い」40,200
食べ合わせが悪い」19,200
食い合わせがいい」 5,160
食べ合わせがいい」 3,820

それぞれを2例ずつ拾ってみる。

■昔から食い合わせが悪いといわれる食べ物があります。
■うなぎは梅干しとの食い合わせが悪いと言われますが、医学的には根拠がないそうです。
■梅干とうなぎは食べ合わせが悪いと言いますが お昼に梅干おにぎりを食べて 夜にうなぎを食べるのは大丈夫でしょうか?
■中国の方は「食べ合わせが悪いものには、「はまぐり」と「みかん」、「りんご」と「さば」、「かぼちゃ」と「えび」などがあるようだ。

■ハムを消化するのに酵素がメロンにはあるとかで、非常に食い合わせがいいとか。
■梅干と鰻は最高に食い合わせがいいんだよ〜 余りに良過ぎるから、昔の人が食べ過ぎない様にって出来た諺です!
■きな粉と食べ合わせがいい食べ物は何ですか?
■基本的には、魚料理を注文したら、オードブルは肉系のもの、肉料理を注文したら魚系のもののほうが、食べ合わせがいいかもしれません。

「ぶち上げる」という日本語

firework昨日の朝日新聞(朝刊)を読み直していたら、「留学生獲得に奮闘┈┈小規模校・大規模校 あの手この手」と題した記事が目に留まった。「少子化に悩む日本の大学にとって、優秀な外国人留学生の受け入れは、教育レベルを保つうえで不可欠になってきた」(同紙)ということで、留学生受け入れ態勢の改善に努力する諸大学の現状を紹介している。署名入り記事だが、その中に次の一節がある。

福田首相が「留学生30万人計画」をぶち上げたのに先立ち、少しずつ受け入れ態勢を改善してきた小規模校と大規模校を見た。(中略) 福田首相は1月の施政方針演説で、日本のグローバル戦略に触れ、こうぶち上げた。「留学生30万人計画を策定し、実施に移すとともに、産学官連携による海外の優秀な人材の大学院、企業への受け入れの拡大を進めます」

 私の語感を刺激したのは、「ぶち上げた」という語だ。意味は、周知のごとく、「(たいそうな意見や構想などを)自信ありげに多くの人々の前に堂々と提出する。大言する」(学研『現代新国語辞典』改訂第4版)ということで、やや俗っぽい感じのするものだ。
 それでは
福田首相はさぞや「大言」を吐いておられるのだろうと思いきや、何のことはない、「首相の方針は、研究者の提言に基づいたとみられ、2050年ごろの30万人達成を想定しているようだ」(同紙)と続く。
 朝日新聞記者がどんな"意図"で同語を用いたのかは文脈からは不明だが、特別な含みを持って使用したのでないなら、もっと客観的な、あるいは穏当な語があったような気がするのだが…
。正直なところ、個人的には、あまり好きになれない用法だった。

「赤とんぼ」の英訳のこと

拙訳の「赤とんぼ」(Red Dragonflies)をWeb検索にかけていたら、たまたま以下のような文章に出合った(出典はこちら)。

 三番目の論争は“ねえや”とは「子守娘」か「姉」かという問題。子守娘が順当な解釈だろうと思うのだが、姉とするものもある。

  山岸勝栄氏の英訳 Red Dragonfliesはこうしている。

   Just fifteen dear Nanny traveled far away, became a bride
  Since then not one word comes
  From my sister dear

    Nanny(子守娘)=sister(姉)と解釈しているのだろうか?ああ、ややこしい。
露風の詞がこんなに異論の多いものとは知らなかった。

 この「 Nanny(子守娘)=sister(姉)と解釈しているのだろうか?」という疑問だが、私はそういう解釈をしていない。英語のsisterは「姉・妹のような[ように親しい]ひと」の意味で用いることもあり、私は当然、その意味で用いている。要するに、"my sister dear"は親しみを込めて"dear Nanny"(子守の(ねえ)や)に言及したものだ。
 
上記の疑問は「sister =姉・妹」と直結させたために生じたのだろうが、そういう結び付け方は、いかにも「日本人英語学習者的」だと思う。

alright のこと

本年度、カナダ出身の大学院生(男性)を教えた。授業中に、「最近は all rightalright と綴る人が増えて来ましたね」というようなことを言った。するとその院生曰く、「alright が正式な綴りだとばかり思っていました」。彼は25、6歳のはずだが、all right よりも alright のほうに馴染みがあると言った。
 これは明らかに already, altogether などと混同したところから出現したものであるが、今のところ、まだ、非標準的な綴りだと思ったほうがよい。

後輩たちとの楽しい夕べ

昨夜は、久しぶりに高校時代の英語部の後輩たちと、東急武蔵小杉駅近くの居酒屋に集まり、楽しいひと時を過ごした。話題はと言えば、相も変わらず高校時代のことだ。先生・先輩・後輩の誰それのこと、姉妹校だった法政女子高の英語部の誰それのこと、それぞれがそれぞれの思い出を語る中から、ああだった、こうだった…と話題や連想が広がってゆく。来年も再来年もこんな楽しい時間を持とうと言いながら、誰が最初に「ボケるかな?」とあらぬ発言も飛び出す。  
 後輩の一人が、40年ちかく会っていなかった、同じく後輩(女性)の写真を見せてくれた。大学時代のクラブの同窓会の時に撮ったものらしい。美しく年齢を重ねていると思った。懐かしかった。 
 別の後輩が、私が好きなハワイアンの名曲のCDを今年もプレゼントしてくれた。大橋節夫(ハワイアンファンたちは親しみを込めて「オッパチさん」と呼んでいた)とエセル中田の曲が計21曲入っていた。「ハワイアン パラダイス」「小さな竹の橋」「珊瑚礁の彼方」「ブルー カルア」「ナレ オ ハワイ」などはオッパチさんのもので、「カイマナヒラ」「ダヒルサヨ」「愛のモーニング デュー」「タイニー バブルス」「バリバリの浜辺で」などはエセル中田のものだ。今朝は外国人留学生特別入試があるので早朝に大学に来たが、道すがら、クルマの中でそのCDを聞いた。涙腺が緩むほど懐かしかった。 
 某君は、退職後、知人から依頼されて某有料老人ホームの要職に就いている。私も遠からぬ将来、そういった所のお世話になる可能性も少なくないので、彼に頼んで資料を送ってもらうことにした。帰りの電車の中でも、いろいろと役立つ情報を与えてくれた。 
 仕事が終わって駆けつけてくれた某君は、埼玉に住んでおり、帰りがずいぶんと遠路になるにも拘わらず、昨年から我々に加わってくれている。高校時代に感じた人柄のまま、穏やかで温かみのある「おじいちゃん」(お孫さんがいる)になっていた。 
 いつも参加してくれていた某君は、腰痛がひどいため、珍しく欠席したが、宴席から彼に携帯電話をかけて声を聞かせてもらった。同君の回復を祈る。 毎度書くことだが、私は後輩たちに恵まれたとしみじみと思う。私のようなものを「先輩、先輩」と立ててくれる。それぞれの世界で一流の仕事をして来た後輩たちばかりである。
 常に幹事を務めてくれるのは、法政大学経済学部で優等生になり、テキサス大学大学院に留学し、若くして我が国最大の証券会社の国際部部長にまでなった某君である。そんな立派な人物もこの時ばかりは、半世紀近く前の高校時代にタイムスリップする。いかにも日本的と言えなくもないが、我々はそういう人間関係を大事にし、それを宝だと思って来た。  
 楽しく幸せなひと時を持てたのも、後輩たちのお陰だ。その一人一人に心から感謝したい。

skyscraperという語

skyscraper週に3、4日は、横浜駅周辺・みなとみらい地区の(超)高層ビルを遠くに横目で見ながらクルマ通勤をしている。周知のごとく、そうした(超)高層ビルのことを英語でskyscraper (スカイスクレイパー)と呼ぶ。この語はもとは、「空高く飛ぶ鳥」(a high-flying bird)、「山の高い帽子またはボンネット」(a tall hat or bonnet)、「(野球・クリケットなどで)高く上がったフライ」(a high fly ball) などの意味で用いられた。海洋関係では、「(快速大型帆船用のスカスルの上に張る)小形三角帆」(a  small triangular sail) を指すこともある。しかし現代の日常英語でskyscraper と言えば、もっぱら(超)高層ビルを指し、日本人に馴染み深い現代学習英英辞典はこの意味しか載せていない。ちなみに、かつては「摩天楼」という語もあったが、今では大いに古風なものになっている。
 なお、語源的には、「(sky) をこするもの (scraper)」ということで、上記のいずれの意味の場合も、日本語の「摩天楼」に似て、言い得て妙である。

 

風と日本語

今朝は風が強かった。いつも通る横浜ベイブリッジとその先のツバサ橋でとりわけ強風を受け、危うくハンドルを取られるところだった。横浜ベイブリッジ手前の防音柵(暴風柵?)沿いに低速で走っている時、何度か強風が柵にぶつかって笛のような高い音を発したような気がした。 それで思い出したのが「虎落笛」という語だ。「もがりぶえ」と読む(「もがり」とは竹を筋交いに組み合わせて縄で縛って作った柵や垣根のこと)。普通は、冬の激しい北風に言及して用いる語だが、隙間のある柵・竹垣などに吹き付けて笛のような高い音を発するところから出た名だ。 日本語には風を表現した語が多数ある。よく知られたものを挙げれば、「北風」(「きた」とも)、「秋風」、「南風」(「はえ」「みなみ」とも)、「東風」(「こち」「ひがし」とも)、「春風」(「しゅんぷう」とも)、「春一番」、「山瀬」などがある。「台風」、「木枯らし」、「比叡颪」(ひえおろし)なども忘れられない。ちなみに、私の故郷には「南風泊」(はえどまり)という地名がある。 あまり一般的ではないが、「桜東風」(さくらごち)という語もある。瀬戸内海地方の漁民が使うものと聞いたことがある(現用語かどうかは不詳)。「雪颪」(ゆきおろし)という語もあって、冬季、山から雪を吹き降ろす北寄りの強風を指す。 気候・生活環境・人々のライフスタイルなどの変化の影響もあるだろうが、そうした語は次第に日常性を失って行っているような気がする。

仏凡一如(ぶつぼんいちにょ)

hotoke煩悩・我見の徒である私のような者が、仏を語るのはおこがましいが、密教では、人は煩悩・我見に迷いつつ、しかも仏になれると教えるから、折にふれて、殊勝な気持ちを起こし、こんなことを書き綴る。仏凡一如(ぶつぼんいちにょ)という言葉はそこらあたりを教えてくれるものだ。凡夫であっても、人はそれぞれ仏性(ぶっしょう)を持っており、その仏性に、大日如来がお慈悲を垂れてくだされば、凡夫も現世において仏に成れる。即身成仏(そくしんじょうぶつ)の実現である。身内、先輩、知人などが、一人また一人とこの世を去って行くのを見るにつけて、曼荼羅(まんだら)に向かおうとする自分がいるのを知る。

「こわしてごめんなさい」

I'm sorry.近所に小学校があり、その裏門周辺には、多種多様な植木鉢やプランターが数多く置いてある。近隣の大人たちがその小学校に通う子どもたちや、道行く人たちに四季折々の花を楽しんでもらおうと精出して育てているもののようだ。花壇の周りに、動物たちや鳥たちを形どった置物を置いている人たちもいる。
 今日、そこを通った時、片方の角が欠けた牛の置物の下に一片の紙切れが挟んであるのに気づいた。昨日降った雨のせいで、やや滲んだ文字だが、「こわしてごめんなさい」とはっきりと読み取れた。小学生のだれかが、それをいじっているうちに落としたか、何かにぶつけたかして、片方の角を欠いてしまったのだろう。
 なんと嬉しいことをする子なのだろう。黙って逃げて行けば、それで済むであろうものを、わざわざ一片の紙切れに詫びの言葉を書き残して行くとは。
 子供は、物を壊した場合、そのことだけで萎縮したり、自責の念に駆られたりしているはずだ。それに追い討ちをかけて咎めたり叱責したりすれば、次回からは自分の行為の結果を隠すようになってしまうだろう。それを避けるためには、子供たちに言っておくとよい。「物を壊しても、わざとやったのじゃあなかったら、お父さ(お母さん)はけっしてあなたを叱ったり咎めたりはしない。でも、壊したことだけは必ず教えてね。」  と。
 その詫びの言葉を書き残した子は、きっと、近隣の大人たちが四季折々の花を育ててくれていることを喜び、登下校の折りに、その美しさを愛でていたのだろう。大人たちが、花鳥を愛すれば、その心は子供たちにも伝わるはずだ。心温まる一片の紙切れだった。
 【右手を負傷していたために、本ブログの更新が滞ってしまった。今、本日分を左手で打っている。】

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