2010年12月

妻のいない二度目の年末

r妻が私の元を去ってから二度目の年の暮れを迎えた。否定しようのない永訣の事実さえ、昨年の今頃はそれを受け入れられずに、日夜、苦悶していた。最近になってようやく、自分が置かれた状況を少しだけ客観的に認識することが出来るようになった(立ち直りの遅さに我ながら情けなくなる)。

 それをきっかけに、ここ何日かを費やして、妻の写真を整理したり、新たにアルバムを作ったりした。妻の幼い頃、小学・中学・高校生の頃、大学生の頃のものはそのほとんどを妻自身がまとめていたから、手間は掛からなかったが、私と知り合った頃から亡くなるまでの40数年間は、アルバムに貼った写真もあれば、貼らず終いというものも多くあって、どうしても整理が必要だった。特に、結婚式・その披露宴・新婚旅行の頃、妻が長女・長男を身ごもった頃、私のイギリス留学に家族で同伴してくれfkた頃、子供たちの学校生活・行事・習い事に母として頑張ってくれていた頃、妻自身の習い事(華道・書道)で仲間達と活躍していた頃、それぞれの時期の写真は未整理のものも多かった。中でも、末期膵臓癌を告知されてから亡くなる頃までの妻を写した写真は全てが未整理だった。何と、全部で約3,000枚あった。

  それらを整理しながら、いったい何度、作業の手を止めただろう。いったい何度、写真が霞んで見えたことだろう。約3,000枚の写真1枚1枚に一駒ずつの想い出がある。その1枚1枚に懐かしい想い出を重ね合わせながら、妻を偲んだ。

 一番つらかったのは、2008[平成20年]正月から春に掛けて写した多数の写真を整理する時だった。その年の5月初旬には、自らの余命を告知される妻がそこにいたからだ。深い自責の念に苛まれる私に、写真の中の妻は相変わらず優しく微笑んでいた。

今年もひどい風邪を引いた。

fl先週金曜日(24日)の昼頃から寒気と喉の痛みと鼻水に悩まされ始めた。風邪の兆候だった。悪い事に持病の腰痛も併発した。土曜日は大学を休みたかったのだが、来年度入学生の準備学習の日であったために、一応、マスク、薬などを用意した上で、登校した。しかし、やはり立っているのも辛いほど体がだるく、寒気も感じられた。

 同僚のH教授がそれを見かねて、「このクラスは他と比べて受講生も少ないですから、私だけで大丈夫です。先生は研究室でお休みになっていてください。」と親切な申し出をしてくださった。その言葉に救われて、研究室に戻り、昼頃まで椅子に腰かけてまどろんだ。H教授とK講師のお二人が、私の様子を見がてら、昼の弁当を差し入れてくださった。何の働きもしていないのに申し訳ないと思ったが、私も関係者の頭数には入っていたようだから、ありがたくそれをいただいた。だが、喉の痛みが激しく、そのほとんどを食べ残してしまった。

 昼過ぎ、急いで帰宅した。すぐに布団に入り、それからまる1日眠ってしまった。その間に、息子が私の食べられそうなものということで、喉越しの良い食品、喉薬等々を買い揃えてくれていた。最近は、息子に面倒を掛けっ放しである。

 今日(27日)の夕方近く、喉の痛みが少し取れ、咳も少し治まった。娘が遠路を見舞いに来てくれて、これ以上風邪を悪化させないように気遣って温かな下着のプレゼントをしてくれた。3日ぶりにパソコンの前に座り、メールをチェックしたあとで、これを書いている。このあと、また就寝するつもりだ。

I suspicion ...という言い方

英語で…だろうと思う」という意味を表す言い方の1つに I  suspect...があるが、このsuspect という動詞の代わりに、名詞の suspicion を用いる人がいる。Google で検索すると、たとえば、次のような例を拾うことができる。

I suspicion he was a policeman.
I suspicioned somethin' was wrong, somewhere ... so I kept quiet.
I suspicion it's always cut in half since it might otherwise be too big to handle...
I suspicion that those who write the lesson plans don't teach, but that is just me.
I suspicioned that it was taken by the USB, and THEN I went to "Disc Management" looked for the disc, and found it when I scrolled down. ...

 手元のアメリカ語法辞典(B. A. Garner: A Dict. of Modern American Usage) を見ると、suspicion, as a verb, is dialectal for suspect と説明があって、用例(ここでは省略)も添えてある。要するに、方言形としては存在するということだ。同じアメリカ語法辞典であるW. M. Morris:Harper Dictionary of Contemporary Usage には、更に詳しい解説がある。それによれば、この語法はオザーク高原地帯(ミズーリ州ほか広範囲に及ぶ高原地帯)、およびウエスト・ヴァージニアとケンタッキーの一部の地方で聞かれるもので、イギリス英語では普通の用法という。ただし、イギリスの語法辞典であるLongman Guide to English Usage は、Do not use this word as a verb. Use suspect.と書き、suspicion をsuspect の代用語とすることを戒めている。また、The Oxford English Dictionary は動詞用法としてのsusupicionに、dial. and colloq. (orig. U.S. ) とラベルを付けている。結論的には、日本人英語学習者はこの用法を真似ないのが賢明だということになる。

奉祝

p

奉 祝

陛下 77歳のお誕生日 まことにお芽出とうございます
国民の一人として心よりお祝い申し上げますとともに
この佳き日が幾久しく重なりますように心よりお祈り申し上げます

平成22
年12月23日   
山岸勝榮

Fuji

CD: The Best Christmas Ever...

Lavinia1昨日、ルーマニアの女性歌手(メゾソプラノ)Lavinia Bocuさん(こちらこちらを参照)から最新のCDを贈っていただいた。題してThe Best Christmas Ever (MasterMusic, 2010)。ラヴィニアさんの母語はルーマニア語だが、このCDに吹き込まれている11曲のクリスマスソングは全て英語だ。次の11曲が入っている。

 1. White Christmas 2:57
 2. Away in a Manger 3:22
 3. It Came Upon a Midnight Choir 3:10
 4. Take Me Back to Toyland 2:33
 5. Blue Christmas 2.58
 6. Have Yourself a Merry Little Christmas 2:57Lavinia2
 7. The Christmas Waltz 2:55
 8. Winter Wonderland 3:35
 9. I'll Be Home For Christmas 3:03
10. O, Holy Night.  4:22
11. Auld Lang Syne 3:59

  メゾソプラノの限りなく美しい声が、CDから流れ始めた時、私の体は一瞬、硬直したかのようだった。そして、その透き通った歌声が私の想い出の中にあったこれまでのクリスマスタイムの1コマ1コマを想い出させた。「心が洗われる」という言葉が使われることがあるが、ラヴィニアさんの歌声にはそれを可能にする大きな魅力がある。日本での入手は困難ではないはずだ。本ブログの読者にもお薦めできるCDの1枚だ。

今日は結婚41周年記念日だ。

roses今日12月21日は妻と私の結婚41周年記念日。夕方は子供たちとささやかなお祝いをしようと思っている。今朝一番に、同居している息子から、「お父さん、結婚記念日、おめでとう。」と声を掛けられた。嬉しかった。その後、娘から可愛いリースが届いた。これも嬉しかった。

 国立がんセンターの最高峰にあった癌専門医・垣添忠生氏の著された『妻を看取る日 ―  国立がんセンター名誉総長の喪失と再生の記録』(新潮社)を読み、そのテレビドラマ化されたものも観た。ドラマの最後のあたりで登場された垣添氏が言われた言葉に共感した。「男だからと言って、鎧(よろい)に身を包む必要はないでしょう。人前での自制は必要だが、泣きたい時は泣けばよい。」 私もそう思ったし、実際のところ、いつもそうして来た。妻の遺影や妻が生前身に付けていたものを見るたびに、私の目からは涙が止めどもなく溢れ出る結婚41周年記念日を迎えた今日、妻との大切な想い出は、更に私の涙腺を大きく緩める

 垣添氏は、「もう生きていてもしようがないな。」と感じられたようだ。私も一度だけ、それに近い感情を抱いたことがある。ただ、お子さんのおられなかった垣添氏と異なり、私には妻が身二つにして残して逝った娘と息子がいる。二人ともとっくに成人した身だが、その子たちの将来の更なる可能性を思った時、私は私自身の人生に決着を付けるわけにはいかないと思った。それでは妻が悲しむに違いない。「父」としての私の責任を詰問するだろう。それと、私には社会人として、まだやらなければならない仕事が山ほどある。

 何十年もの間全身全霊で愛し続けた人を先に逝かせることほど辛く、roses悲しい事はない。だが、その辛さ、悲しさは、それが深ければ深いほど、大きければ大きいほど、それだけまた深く大きな幸せを長年月にわたって味わって来たということだろう。私が40数年前に、妻に出会っていなければ、これほど苦しく切ない経験をすることはなかった。その代わり、自分が日本一、いや世界一幸せな夫であり父であったことも実感できなかった。
 妻の愛は私の日常を浄化してくれた。妻の愛は私の知識を富ませ、私を賢くしてくれた。妻の愛はこの世での如何なる労苦にも恐怖にも私をたじろがせないでくれた。
 
 肉体を持ったあの優しく美しい妻にこの世で会うことはもう二度と叶わないけれども、妻の魂には毎日、確実に、触れている。妻の遺影に向かって私は言う。「結婚41周年、おめでとう。これからまた1年、宜しくね。

【後刻記】夕方、妻が好きだった胡蝶蘭その他の花を妻の霊前に飾り、子供たちとささやかな祝宴を催した。

夢の意味

fl今日未明、いつもの願いどおり、妻の夢を見た。夢の中で妻は、生協かどこかに注文してあった掃除道具、トイレ・台所用洗剤等を、玄関で、それを配達に来た男性から受け取っていた。残念ながら、それだけの短い夢だった。

 妻が先立ってからというもの、精神的に落ち込んだ状態が続いているために、家の内外に目が届かない。それでも、気を利かした息子が、あちこちをきれいにしてくれているのがありがたい。


 毎年末には妻が家中を大掃除していた姿が目に浮かぶ。家事万端、ソツなくこなしてくれる、きわめて有能な主婦だった。それを「当たり前」のこととして、私は大学の仕事がない時には、ひたすら辞書の仕事に没頭していた。冬休みに入ったら、時間を見つけて、少しはあちこちを掃除しようと思っている。

 妻には私の言動に対する妻なりの不満があったはずだ。だが、生前、私に対してはもちろんのこと、子供たちに対しても、常ににこやかに接してくれた。どうしてあれほどにこやかに、温かくひとに接することができたのだろう。

 今朝見た夢は、「少しは家の内外をきれいにしてね。」という、きれい好きだった妻から私へのささやかな願いだったのだろう。たった独りであの世とやらへ旅立たなければならなかった妻を想う時、夢の中の妻の言葉は、私には当然大きな意味を持つ…。

「サハラ砂漠」の英訳

desert先日、あるクラスで、学生が書いた英文の中にthe Sahara Desert という語が出て来た。当然、「サハラ(砂漠)」の訳である。私は添削の際、Desert をカッコで括って、次のように解説した。

Sahara という語自体がアラビア語で《砂漠》という意味ですから、わざわざdesert という語を付ける必要はありません。これは富士山(Mt. Fuji)をわざわざMt. Fujiyama と言うのに一脈通じますね。また、厳密に言えば、日本語も「サハラ」だけのほうが重複的でなくていいでしょうね。

 その時は言い忘れたが、ほかにも「リオグランデ(川)」の英訳 the Rio Grande River がある。Rio Grande 自体がスペイン語で「大きな川」(big river;rio=river) という意味だから、わざわざRiverを付ける必要はない。the Rio Grandeでよい(ついでに言えば、日本語も「リオグランデ」で十分)。

 the Sahara Desert the Rio Grande River のような重複的な言い方はインターネット上にいくらでも見つかるが、それらの語源を考えた場合、やはり冗語[剰語]はないほうがいいだろう。the Sahara Desert Desert をカッコで括った所以である。

The Song of a Sea Shell

The Song of a Sea  Shell

seashell

                                                        YAMAGISHI, Katsuei

Here's a beautiful seashell, a pink-colored one, for you.
I dedicate it for you who passed away so young.
I found it on the beach last year when I was strolling there alone.
And I've saved it 'cause it reminds me of the days I spent with you.

The light rouge of the seashell is the proof of my love for you.
My passion burns as ever, though I'm lonely as could be.
Coming all the way to you is the faint smell of the seashell,
The proof of the ripples of my heart, yearning for you, my dearest one.

But, alas, my love for you, how short-lived and unrequited it was,
Meeting its fate where the tide dies on a lonely, empty beach.

beach

WestminsterとWestminister―その発音と綴り

BlogPaintイギリスのロンドン・ウエストミンスターにあるウエストミンスター寺院は、戴冠式などの王室行事が執り行われる場所として、また外国人観光客が必ず訪れる観光スポットとして有名であるが、この寺院の英語綴り Westminster Abbey Westminster がしばしばWestminister と誤って綴られる。これは当然、発音がminster のそれではなく、minister のそれであることを意味する。

  インターネットで検索すると、誤まった綴りの例はいくらでも見つかる。 こちらはウエストミンスター寺院の公式ページだが、さすがに間違いは見つからない。それに対して、こちら分かりやすいようにキャッシュの頁にリンクしたではWestminister Abbey の綴りが散見される。その他、語頭のWが小文字のwになっているものがあるかと思えば、WestMinster のような綴りもある。また、こちらでもWestminsterWestminister とが混在しているのがわかる。

 綴りの間違いはインターネット上に見られるだけではない。昔から出ている紙の地名“辞典”にさえ、しばしば誤記されている。1例だけを挙げておく。上の画像はK. B. Harder編 Illustrated Dictionary of Place Names United States and Canada (1976) のWestminster の項を写したものだが、何と、そこにWestminister の綴りが3か所も見られる(ピンクのドットで示した)。
 
 ちなみに、Westminster minster (古英語ではmynster) は「修道院付属の教会堂」という意味である。West は方角の「西」。したがって、Westminster の原義は 「(ロンドン)西方の修道院」(Western monastery) ということになる。「St Paul's Cathedral(セント・ポール大聖堂)の西方」と具体的に考える人もいる。いっぽう、minister にも教会関連の意味(「聖職者、牧師; 聖務者」など)があるから、それへの連想および音声類似が働いて、この誤った綴りが生まれたものだろう。

【付記】Westminster Abbey 近くにあるWestminster Cathedral(ウエストミンスター大聖堂)の場合も、Westminister と誤って綴られることが少なくない。例1例2

「仮免バス」の乗客や哀れ―菅首相のお粗末発言

bus菅首相が、支持者とのある会合で、就任してからの半年間を「仮免許」の期間と譬えた。「これからしっかりと菅カラーを出して行きたいという気持ちの表れだ」と苦しい弁解をしたが、この人の発言と弁解はたいていこの程度だ。

 いつも言うことだが、言葉は思想の表れである。菅さんの思想では、日本という名のバスに国民という乗客を乗せ、仮免許程度の腕でも、乗客(国民)を安全に「最小不幸の地」まで運べるらしい。それは全くの「勘違い」(「違い?」)だ。つまり、仮免許での営業用バス運転は違法なのだ。大型[中型]自動車第二種免許という、地上最難関の自動車運転免許を取得している必要がある。だから、日本という大型バスの運転手は、当然、その所持者であるべきなのだ…。

 「仮免政権」に国家を任しておいて良いはずがない。その政権が国民に見放されつつあることは、現内閣の支持率が続落している(21%)ことを見ても分かる。当然だろう。

【追記】菅さんは今年の漢字として「」を選び、「修行の行有言実行のだ。これからもこの字を大事にしていく」と言ったそうだが、この字は「送行(旅立ちを送ること)の行辞行(出発の暇乞いをすること)」でもあるのだ。現状のままの菅政権なら、こちらの語に含まれる「」のほうがお似合いかも…。

ネイティブスピーカーと言うけれど…(続)

前回、in my personal opinion という表現のpersonal は余計だろうと書いたが、これをPersonally, I think...と言ったとしても、やはり personally が冗語[剰語]的だろう。I think... だけで十分だと思う。

 ほ
かにも冗語[剰語]と思われるものがいろいろとある。たとえば、at the age of  fifty という言い方。この場合のthe age of は冗語的だろう。at fifty でいっこうにかまわないし、それのほうが簡潔だ。また、in the business world の場合も、単に in business だけのほうがすっきりするし、それで意味は十分に伝えられる。さらに、a handsome-looking young man の場合も、一目で分かることなのだから、-looking を省いてa handsome young man で何ら差支えないだろう。I had no choice but to wait. なども冗長な感じがする。I had to wait. だけで理解に支障は来さないし、そのほうがすっきりする。これは I can do nothing but wait. にも言える。その場合、I  have to wait. とするほうが簡明だろう。 

ネイティブスピーカーと言うけれど…

university英語圏出身の男性Aさん(30代)は、時々、in my personal opinion という表現を用いる。「私の個人的意見では」のつもりだろう。それを聞くたびに、my opinion と言えば「の意見」のことだから、personal は“冗語 [剰語]ではないか、と思う。そう思いながら、同じく英語圏出身の男性Bさん(50代)にその点について尋ねてみると、Bさんは、「私も時々その言い方をするが、言われてみればあなたの言う通りだ。」と答えた。 
 
 日本人が母語である日本語を誤用したり、不自然な言い方をしたりすることがあるように、英語母語話者でも、時に英語を誤用したり、不自然な言い方をしたりすることがある。上の例もそうだし、副詞の recently (通例、過去形または現在完了形と共起する)these days (通例、現在形または現在進行形と共起する)の区別を付けない場合とか、five different policemen のように、冗語[剰語]的なdifferent を挿入するとかもそうである。
 
  ただし、いつも言うことだが、多くの人々がある誤用法に抵抗を感じなくなったり、非慣用的な表現を日常的に用いたりするようになれば、それらはやがて普通の言い方になる。それが言語というものだ。たとえば、イギリス英語では、「大学に行く」の意の go to the university を、定冠詞を落としてgo to university と言うのはかつては誤用法だったが、現在ではそちらが正用法になっているこの語法変化は、専門的には、イギリスにおける大学数の変化と大学教育の大衆化とに関係付けられるものであるが、ここではその点には触れないでおく;アメリカ英語では今でも定冠詞があるほうが普通

母語を豊かなものに

lThe tree was heavy with ripe persimmons.という英文をたいていの学生が「木は熟した柿で重かった。」と不自然に訳す。「枝もたわわに柿が実っていた。」と、「たわわ」を用いる学生は皆無だ。
 ある日のゼミ授業で20名の学生たちに「たわわ」という語を知っているかと訊いてみた。誰もが、知らないと答えた。日常的に使わないのだから知らないのも無理はない。別のクラスで、「柿が鈴なりに実っていた。」を英訳させようとした時、学生の誰も、「鈴なり」を理解できなかった。ちなみに、この日本文に対する英語にもThe tree was heavy with ripe persimmons.を当てることが可能だ。(「鈴なり」に関しては、こちらを参照。)

 ゼミ生たちは、また「鉄面皮(てつめんぴ)」という語も、「行状(ぎょうじょう)」という日本語も知らなかった。これもまた非日常的な日本語になってしまったことの証しだろう(ちなみに、この2語は某大学院の修士課程の院生2名も理解できなかった)。

 だが、問題はそうした学生が「(英語)翻訳・通訳コース」に属する場合だ。そうしたコースに属する学生が「そんな日本語(表現)は知りません」では通用しない。「枝もたわわに柿が実っていた」、「あんな鉄面皮など見たこともない」「あの鉄面皮の裏での行状をそのうち暴いてやる」などといった日本語を英訳しなければならないこともあるだろう。
 
 平素、母語である日本語を豊かにしようという心がけのない学生に、立派な英訳や和訳ができるわけがない。母語の運用能力と英語のそれとは車の両輪の関係なのだ。

学生たちと「詫び」の言葉

最近の学生たちのコミュニケーションスタイルは、私の若い頃のそれとかなり大きく変わって来ているようだ。たとえば、遅刻して教室に入って来る諸君の「弁解」の仕方にそれが言える。つい先日のことだが、2クラスで、計6名の遅刻者が出た。一人だけ、寝坊したという学生もいたが、他の5名の諸君は電車の遅れを遅刻の理由に挙げた。その時の私との対話は次のようなものだった。A君を例に採る。

 

A君(10分位の遅刻で沈黙のまま、教室の前のドアから入室)

授業が始まっているのだから、後ろのドアから静かに入室しなさい。

A君:(沈黙)

私:どうしたの?

A君:電車が遅れました…。(着席)

 
他の諸君も同じ反応を示した。つまり全員が、「電車が遅れました…。」とだけ答えた寝坊した学生は当然、寝坊しました。答えた
 
人にもよったが、私の学生時代の反応はこれとはだいぶ違った。たとえば、学生時代の私なら次のように反応しただろう。

 

私:(教室の後ろのドアから、そっと入室し、教授に黙礼する)

教授:どうしたの?

私:申し訳ありません[済みません]。じつは途中**で人身事故がありまして、電車が3、40分間、停車したままだったものですから。

 

 つまり、教室の後ろのドアを使い、入室後にまず教授に対して黙礼する(今の学生の多くは「黙礼」という言葉に馴染みがないかも知れない)。次に、教授から「どうしたの?」と尋ねられるようなら、「申し訳ありません。」とか「済みません。」とか、まず“詫び”を言う。これが学生に期待される最低限のマナーだったと思う。後ろのドアがない場合は、前のドアを軽くノックしたり、ドアを少しだけ静かに開いたりして、中からの反応を待った。(ただし、大教室では、ドアは複数個所あったから、後ろのドアの1つからそっと入室した。)

 今の多くの学生にとっては、「遅刻は自分のせいではない。遅れた電車が悪いのだ。だから、『申し訳ありません』だの『済みません』だのと詫びを言う必要はない。」と思える事柄なのかも知れない。あるいは、幼い時から、私が例示したようなコミュニケーションスタイルを学んでいないのかも知れない。たぶん、その両者だろう。

 

付記:今の学生の中にも、私に馴染みの挨拶や詫びの言葉を口にする諸君もいるにはいるが、絶対数としては、きわめて少ない。時代の流れか…。

政治家たちの謝罪の仕方

政治家たちの「謝罪」の仕方を見ていて、いつも釈然としないものを感じる。

大臣A氏は国会議事堂内でファッション誌の写真撮影を行ったことを追及された際、「撮影場所が不適切との懸念を招いたとしたら、本意ではないことであり、率直にお詫びする。」と言った。

 大臣B氏は、自衛隊を「暴力装置でもある」と失言したあとで、「法律上の用語としては不適当であったので、自衛隊の皆さん方には謝罪する。」と言った。

 大臣C氏は「2フレーズ問題」を追及された時、「思慮が足りなかったと心から反省している。心からお詫び申し上げる。」と言った。

 一見したところ、いずれも「謝罪」をしているかのようだ。だが、「率直にお詫びする」も「謝罪する」も「心からお詫び申し上げる」も、私に言わせれば、“謝罪の意思表示”であって、“謝罪”そのものではない。私が考える“謝罪”とは、何よりも「申し訳ありませんでした」、「申し開きのできない発言[失言、暴言]でした。お許し下さい。」、「申し訳ございません[ありません]の一言です。」などの言葉が必ずどこかに入っているものだ。

 大臣A氏が使った「率直にお詫びする」などという言い方を耳目にすると、私などはそれだけで、「申し訳ないとは思っていないな」と疑ってしまう。「真摯 [謙虚] に受け止めます」などという“謝罪もどき”も、同様で、素直には受け入れられない。結局のところ、政治家たちは、「申し訳ありませんでした済みませんでした」も悪くはないと、自分の非を“率直には”認められないのだろう。そんなことをするのは“沽券にかかわる”とでも思っているのかも知れない。
 次のダイアログでは、どちらの謝罪の仕方が好ましいだろう…。

 

ダイアログA 

部長:お粗末クン、今日の大事な会議に遅刻かね。困るねえ。

お粗末クン:ご迷惑をおかけしたのなら、率直にお詫びします [お詫びしたいと思います] 


ダイアログ
B 

部長:エリートくん、今日の大事な会議に遅刻かね。困るねえ。
エリートくん:(まことに申し訳ありません。今後、十分に気を付けます。

Meikai University Special-Status Native Speaker Position

Meikai University
     Special-Status Native Speaker Position
         (The university is located near Shin-Urayasu Station)

       明海大学外国語学部英米語学科外国人専任教員募集

 

Announcement of Position

 

1. Description: One Full-time, non-tenure track position available for a native speaker with an advanced degree in TESOL or a related field.

2. Title: Associate or assistant professor

3. Courses to be taught: 
    a) English as a foreign language

    b) Study Skills, Applied Linguistics, and/or Business English

4. Terms of contract: Three years with a possibility of extension

5. Remuneration: Dependent on experience and publications

6. Start of employment: April 1, 2011

7. Applicant's qualification: With a degree of Ph.D. or its equivalent

8. Application material:

    a) CV

    b) Two references and letters of recommendation

    c) List of publications with brief summaries

    d) Three major publications (books and/or papers. Two must have been published in the last three years.

    e) One essay on the candidate���s teaching philosophy, at least two pages in length

    f) Deadline: Tuesday, January 11, 2011

  Short-listed candidates will be contacted for interview.

 

Send material to:

 "Application for English Department Native Speaker Position"
  Foreign Language Department
  Meikai University

  1 Akemi, Urayasu, Chiba 279-8550
���Fax: 047-350-5504

  E-Mail: Midori32@meikai.ac.jp  (Attention: Professor Shosuke Haraguchi, Dean)
                                                                        Posted by Prof. Dr. Yamagishi, K.
                                                                             Department of English, Meikai University


『野村の実践「語録」』の宣伝文句のこと

今朝の新聞の新刊書広告に、野球界の著名人・野村克也さんのものが掲載されていた。名付けて『野村の実践「論語」』(小学館)。「野村語録を読み解くと、『論語』が見えてきた。名言といわれる著者の言葉の数々が、『論語』と響き合い、かくも現代に生きる者の胸を打つ」という宣伝文句も添えられている。ところが、そこに例示されている文句を見て、野村さんには悪いが、思わず笑ってしまった。その例とは…

【野村の言葉】失敗を活かせる者は、それを放置する者に勝る。
【論語】子曰く、過って改めざる、これを過ちと謂う。(論語/ 衛霊公 第十五)

 なぜ思わず笑ってしまったのか。その理由を言うのは、「野村の言葉」の野村さんに失礼だからやめておこう。それにしても、この文句を同書の代表例として使うように指示したのは野村さん自身だろうか、それとも出版社(の編集者)だろうか。知りたいところだ…。そう言えば、論語には、「子曰く、書は言(げん)を尽くさず、言は意を尽くさず」というのもあった…。

「拝読」という語

ゼミ生の一人がくれたメールが次の一文で締め括ってあった。

最後に、上記の文を拝読してくださりありがとうございました。

 誤用法は「拝読して」という語だ。この間違いをする大学生が多い。「拝読」とは、相手が書いた何かをうやうやしく読むことをいう語だから、上例のように、自分が書いた文章を相手に読んでもらった場合に用いるのはおかしい。「拝読」という語は、普通、「お手紙を拝読(致)しました」、「先生の御近著を拝読致しました」などのような用い方をする。インターネット上にはこの誤用が、そう多数ではないが、あちこちに見られる。5例だけ挙げておく(接頭辞の「ご、御」が付いたものも含める)。

*最後まで拝読してくださり本当にありがとうございました!!
*新潟戦の前は、いつも新潟サポの全ブログを拝読してくださり、ありがとうございます。
*いつもご拝読してくださり、ありがとうございます。
*いつもご拝読してくださり、コメントまで頂いてありがとうございます。
*読者の皆様方には去年1年、拙ブログを御拝読してくださり、大変感謝しております。

 いずれも、「読んでくださり」か「お読みくださり」で構わないものだ。「ご覧くださり」も悪くはない。

 ちなみに、インターネット上で多数見かける、「対応してくださり」、「了承してくださり」、「心配してくださり」、「指導してくださり」等は、そのいずれもが誤用法だと言えよう。正しくは、それぞれの「して」を省いた形のものだ。

菅政権は悪夢か…(続)

昨日、「菅政権は悪夢か…」と題して、岡崎トミ子民主党議員のことを書いたばかりだが、今度は同じ民主党議員が不敬発言を為したようだ。中井 洽(ひろし)議員のことだ。中井氏と言えば、場所もあろうに、部外者立ち入り禁止になっている議員宿舎にホステスを出入りさせていたことや、防災担当相の頃、福島県沖で起きた地震の際には都内で女性と“デート”していたことなどで“話題”となった人物だ。その人物が、今度は、人もあろうに、議会開設120年記念式典に来賓として出席しておられた秋篠宮ご夫妻に対し、「早く座れよ。こっちも座れないじゃないか。」と言い放ったらしい()。それを直接耳にしたのはみんなの党の桜内文城(ふみき)議員ほか桜内氏ご自身はブログでは中井氏とは特定していないが、すぐに周知の事実となったようだ
 この種の人物が現役の国会議員であり、鳩山政権下では国家公安委員会委員長を務めていたのだ羽田内閣では法務大臣。民主党政権下では“あってはならないこと”が次々と起きている。桜内氏の言われる通り、「これでは国会崩壊」だ…。やはり、「菅政権は悪夢」としか言いようがない…。

The devil tempts us not - 'tis we tempt him. ― George Eliot
 悪魔は我々を誘惑しない-彼を誘惑するのは我々だ―ジョージ・エリオット

【付記】そう言えば昔は「不敬罪」があった…。

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海外インターネット活用事典
[監修]山岸勝榮
 [執筆]関根紳太郎
小学館


100語で学ぶ英語のこころ
 日本人の気づかない意味の世界
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三省堂

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D.Graddol著・山岸勝榮訳
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