英語(BGM・音楽一般)

A Pittance of Time という歌のこと

昨日、イギリスのRemembrance Day戦没者記念日)のことに少しだけ触れたが、それに関連したことで思い出したことがある。そのことを書いておく。

 1999年、11月11日、アメリカ人singer-songwriter、テリー・ケリー(Terry Kelly)はノバスコシア州ダートマスにあるドラッグストア・Shoppers Drug Martにいた。午前10時55分、店内スピーカーから、「ご来店の皆さま、お早うございます。本日11月11日、午前11時になりましたら、店内のお客様には、退役軍人の方々に敬意を表し、2分間の沈黙をお願い致します」という放送が流れた。当日は、アメリカの「退役軍人[勇士]の日」(Veterans Day) だった。
 テリー・ケリーは、退役軍人への同店が示した配慮に痛く感動した。子供連れの男性1人を除いて、全ての客が11時の時報を合図にその場に立ち止まり、瞑目した。テリー・ケリーは、その男性に怒りを覚え、その子への示しもつかないではないかと感じた。これが動機になり、彼はA Pittance of Time という歌を作った。「ほんのわずかな時間」という意味である(Remembrance Day Song 「戦没者記念日の歌」としても知られているようだ;昨日の記事でRememberance の綴りの誤りに触れたが、本記事に添えた動画のタイトルでもその語が誤って綴られている!

 内容の大筋は、「祖国のために戦って死んだ人たちのために、2分というわずかな時間、沈黙しませんか。そうした人たちの魂が安らぐように、何のために彼らが命を落としたかを私たちが忘れないように。」 という彼からのメッセージだ。 Take two minutes, would you mind? It's a pittance of time.(2分間だけ、いいですか? ほんのわずかな時間ですから)という言葉の響きが美しい。

 国の歴史や国民性が違うとは言え、ドラッグストアがこういう呼び掛けを客に対して行い、それにヒントを得た歌が作られ、堂々と歌われる。その点では、アメリカという国が羨ましくもある。祖国のために戦って死んだ人々なら、我が国にも数え切れないほどいる。だが、現在の我が国でこういうことが望めるだろうか。答えはまず間違いなく否であろう。残念だが、これが我が国の現実なのだ…。
 いずれにせよ、テリー・ケリーの素晴らしさは、自分の怒りを曲を作ることに向け、その曲を通じて、世界の人たちに自分の主張を伝えようとしたことだ。

「仰げば尊し」とSong for the Close of School

昨日午後、大学にいた私のところにTBSテレビの某氏から電話が掛かってきた。今日(昨日のこと)の午後5時からのニュースの中で、先日明らかになった「仰げば尊し」の原曲 (Song for the Close of School) のことを少し採り上げたいので、それに付された詞の内容が日本の「仰げば尊し」と類似のものかどうかを教えて欲しい、ということだった。原曲の発見者で一橋大学名誉教授の桜井雅人氏と連絡が取れないということで、私のところに問い合わせて来たようだった。そこで私は次のように応えた。

1.日本の「仰げば尊し」と英語のSong for the Close of School との共通点
  ◎教室・学校で培われた友情・親愛・同窓のよしみ
2.日本の「仰げば尊し」にだけ歌われていること
  ◎「我が師の恩」と「立身出世」
3.英語のSong for the Close of School にのみ歌われていること
  ◎「永遠の光と愛の世界」すなわち「神 (God)の王国」、および、そこでの再会

 昨日は試験監督が割り当てられていたり、教員審査委員会が設定されていたりと、多忙な一日だったので、以上のように簡単に応えたが、細かな比較をすればさらに両者の異同を挙げることができるたとえば、Song for the Close of School には、共に歌った讃美歌への言及もあるが、上記の指摘でだいたいのところは良かったろうと思う。

「あおげば尊し」に原曲があった!

今日の朝日新聞夕刊が、「あおげば尊し 米に原曲」と題して、一橋大学名誉教授・桜井雅人氏(67)が、かつて卒業式でよく歌われた唱歌「あおげば尊し」(作者不詳)の原曲とみられる歌を突き止めたと報じていた。(こちらのasahi.comにも収録されている。) 

 それによると、米国で19世紀後半に初めて世に出た「卒業の歌」(Song for the Close of School)のメロディーが「あおげば尊し」とまったく同じ。1871年に米国で出版されたThe Song Echo にそれが収録されているのを桜井氏が見つけた。同書が基本的に初出の曲を載せていることから、桜井氏は「あおげば尊し」の原曲に間違いないと言う。作詞はT.H.Brosnan、作曲者はH.N.D. とあったが、どのような人物かははっきりしないそうだ。

 「あおげば尊し」は文部省が国策の一環として明治15年(1882年)から発行した「小学唱歌集」のうち、明治17年(1884年)発行の「第3編」に収録されている。音楽教育史の研究者らが唱歌の原曲を解明して来たが、「あおげば尊し」のそれは見つかっていなかった。同唱歌の日本語詞は文部省音楽取調掛の担当者3人が合議で練り上げたと言われるがこれも不詳。インターネットの効力が大の時代ではあるが、桜井氏の地道な探索の大きな成果に、深い敬意を表したい。

「千の風になって」の原詩のこと。

今日の朝日新聞の朝刊に「千の風になって」(講談社)の大々的な宣伝が出ていた。「日本中が涙した“命の詩(うた)”」「喪失の哀しみをいやし、生きる勇気と希望意を与えてくれる“死者からのメッセージ”」「NHK特別番組で多くの人の感動を呼んだ《千の風になって》」「NHK《紅白歌合戦》でも歌われる!」等々の文句が並ぶ。これに“癒された”人々からの絶賛の声も掲載されている。日本語詩・作曲・歌唱はすべて新井満という人らしい。「原詩/作者不明」とある。私自身まだ、詳細には調べていないのだが、この詩の元となった詩はMary Elizabeth Frye (1905-2004) というアメリカ人女性のDo Not Stand at My Grave and Weep (1932)だという信憑性の高い説もある
http://www.businessballs.com/donotstandatmygraveandweep.htm)。いずれにせよ、新井氏、講談社、共にその辺りの事情を知った上で、「作者不明」としたのだろう。

【参考】1.こちらで日本語版の詩が読める。
     2.こちらで秋川雅史の「千の風になって」の歌が聴ける。
    

 

「公共広告機構」とAmazing Grace

「公共広告機構」が骨髄バンクのドナー登録者数を増やすために、白血病と闘いながら懸命に生きた歌手・本田美奈子をテレビ広告に登場させていることを知る人は多いであろう(こちら)。問題は彼女が“Amazing Grace”を歌う生前の姿が流されていることである。ちなみに、 「『アメイジング・グレイス』(本田美奈子) 白血病と闘うすべての人に、生きる勇気と希望を届けたい。それは本田美奈子さんの強い想いでした。」という解説文が添えられている。
 “BGMとしてのAmazing Graceの問題点”に関して私は本ブログにおいて何度か指摘してきた(カテゴリー「英語一般」;2005/04/30; 2005/12/18; 2006/04/02 ほか)。
 ここでも繰り返すが、“Amazing Grace”は奴隷商人John Newton (1725-1807) の“悔い改め”の歌・曲であり、いくら曲自体が美しいものだと言っても、上記のような、難病に苦しんでいる人に関連した広告の場合、不適切と思う。おそらく本田美奈子自身も、“BGMとしてのAmazing graceの問題点”には気づいていなかったであろう。

本田美奈子が歌った「つばさ」(Wings)の英訳のこと

昨年暮(12月18日)、本ブログで、急性骨髄性白血病で、38歳の若さで急逝した女性歌手・本田美奈子(1967-2005)と “Amazing Grace” のことを書いた。その彼女が「つばさ」(Wings)という歌を歌っていたこと、また、インターネット上でその熱唱場面(2003年5月25日放送)が見られることを最近偶然知った(こちら)。ところが、その録画を見て、とても残念な気がした。
 その録画では、歌詞の英訳がテロップで流れるのであるが、最初(ナレーターによる解説の英語訳)から最後まで、質の悪い英語が並んでいた。検証用の引用として、何行かに言及すれば、第1行の「私つばさがあるの/太陽にきらめいて」には I have wings. / It shinings under the sun. が、数行あとの「わたし希望があるの/心からかがやいて」には I have a hope./ It sparkling from my heart. が、そのあとの「夜明けの色 夕日の色に/つばさを染めて 飛ぶの」には I dye a wing into a color of the daybreak and sun set, and I will flying.が、またそのあとの、「あなたにもある/つばさがある」には You have it too. / You have wings. が、それぞれ当てられていた。
 だれが英訳したのか知るすべを私は持たないが、きちんと英語を勉強した者なら、中学生にでも分かる文法的間違いの連続である。音楽関係者にも英語のよくできる人はいるであろうに…。
 インターネットの時代になり、世界に向けて瞬時に、あらゆる情報が発信できる時代になった。それだけに、質のよい日本の歌は、質のよい英語で広めたいものである。これでは作詞者・岩谷時子、“歌姫”本田美奈子も悲しむのではないか(作詞者自身による生前の英訳ではないと思うが)。

今回もAmazing Graceのこと

cross一昨日の夜、あるテレビ番組が、ポンペ病という難病に苦しむアメリカの若い女性を取り上げて、彼女にまつわる詳細を放映していた。その番組の中でも、例のAmazing GraceをBGMに流していた。
 難病に苦しむ人、何の罪もなく苦境に立たされている人、本人の意思とは無関係に不幸な状況に置かれ苦しむ人などを取り扱うテレビ・ラジオ番組や、結婚披露宴など慶事の場合、この曲や歌詞はふさわしくないのではないかということは、これまで何度も書いてきた(例:2005/04/30; 2005/12/18; 2006/02/02)。
 関係者がその曲を選択したがる理由については、私にもわからないわけではない。しかし、それでも(当人がそれを望まないかぎり)その曲をBGMとして流すのは適当ではないように思う。同曲が生まれた背景や、同曲に込められた作者の思いに関しては、すでに諸所で書いてきたので、ここでは省略する。

BGMとしてのI Will Always Love you.

BGMとしてのAmazing Graceの問題点については本ブログでも二度にわたって書いた(2005年4月30日「BGMとしてのAmazing Graceの問題点」 12月18日「天使になった歌姫」)。
 昨年、教え子の結婚披露宴に招待された際にも似たようなことを感じた。BGMとしてピアノの生演奏があったのだが、その中の曲の1つに、Dolly Partonの名曲(のちにWhitney Houstonがカバーした)I Will Always Love You.が選ばれていた。曲自体は美しい曲である。しかし、Dolly Partonがあの曲に付した詞はIf I should stay, I would only be in your way./ So I'll go.../ So, goodbye. Please, don't cry.(あなたと一緒にいたら、あなたの邪魔になるだけだから、私は去ります。…だからさようなら。お願い、泣かないで。)というものである。要するに、「別離」の歌である。
 Amazing Graceの場合もそうだが、いくら曲自体が美しいものだと言ってもそれに付された詞や、それにまつわる史的事実が、援用・応用される場面にそぐわないものであれば、それは止めるのが得策である。
 
I Will Always Love You.を演奏したピアニストは、そこまで深く考えずに、曲の美しさだけでそれを選曲したものと思われるが、詞が付されているかどうか、付されていれば、その意味や来歴はどんなものか等について、事前にもう少し“勉強”しておく必要があった、と私は思った。

BGMとしてのAmazing Graceの問題点

TV番組とBGM 
 かつて某テレビ番組が、化学物質過敏症に悩む16歳の少女を採り上げた。優れた番組内容だった。問題はその番組の途中に流されたBGMの“Amazing Grace”である。番組関係者は、その曲の雰囲気が番組に似合うという理由から、深く考えずに採用したのであろうが、私には違和感を禁じ得ないものであった。それは多分、それが奴隷商人John Newton (1725-1807) 「悔い改め」の歌・曲として知られているものであり、何の罪もなく、化学物質過敏症に苦しめられている16歳の少女の過酷な境遇に重ね合わせるには、あまりにも不適当なものだと思われたからであろう(あるいは、彼女はキリスト教徒で、彼女自身がその曲をBGMとして希望したのだろうか?)。
 “Amazing Grace”は、しばしば我が国のテレビ番組のBGMとして採用されているが、同様の違和感をそれ以前にも抱いたことがある。BGMの選択にはもっと慎重であってよいであろう。

 その後、気をつけて見ていると、じつに多くのTV番組がこのAmazing Grace をBGMとして使用している。近いところでは、先の福知山線の大事故で亡くなった方々を報道した某TV番組(テレビ朝日)でも、また、昨夜、乳癌で右乳房を切除したある女性を取材・放映した某TV番組(フジテレビ)でも Amazing Graceが流れた。後者では曲だけのものが1回、歌が1回流れた。先の鉄道事故で亡くなった方々も、乳癌で苦しんだその女性も、「悔い改め」とは無関係の方たちである。
 ちなみに、私のゼミ生の一人に、結婚式場でアルバイトをしている女子学生がいるが、彼女の話によると、その式場でもよくこの曲を流すそうである。本当に客の幸せや客へのサービスを考えるのなら、別の曲を使用すべきだと、私は思う。
 
後日追記:結婚披露宴でこの曲を流すことは、むしろ新郎新婦側の希望なのかもしれない。それを裏付けるような記述をインターネット上で見つけることができる。
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