昨日の朝日新聞(2月4日、日)の記事によれば、「厚生労働省は、公立図書館で図書を分類する項目に、ハンセン病の差別的表現である『らい』の表記が使われているケースがあるとして、都道府県などに確認を求める通知を出した」そうである。「使用されていれば、『ハンセン病』に改めるよう求めている。」
 「らい」や「らい病」は、周知のように、ハンセン病の旧病名。「らい予防法が廃止されたのに伴い、患者や、その家族が尊厳を傷つけられてきた過去を連想させるなどとして、行政文書などで使う病名を《ハンセン病》と改めるように各自治体に求めた」こともよく知られる。
 「今年に入り、患者団体から、図書館の分類項目に、『らい』という表記が使われている、と指摘が寄せられた」ことから、厚労省は、「誠に遺憾で、早急に対処する必要がある」と判断し、「都道府県に、市町村を含む公立図書館の使用状況を確認してもらうほか、今後、日本図書館協会(東京都)を通じ公立以外の図書館にも理解を求めていく」らしい。

 「らい(病)」を「ハンセン病」と言い換えることに関しては何の異議もない。ただ、1点だけ、「本当にそれでよいのだろうか」と思うことはある。問題提起という形で、それについて記しておきたい。
 言われなき差別と偏見に苦しめられて来た多くの人々の本当の苦しさ、悲しさ、憤りをよく表すのは、むしろ、「らい」「らい病」「らい病患者」といった語ではないだろうか。それを別称で表せば、確かに、それなりの言語的・社会的効果は望めるだろう。しかし、「らい」「らい病」「らい(病)患者」といった文字で記された書籍等(がどれぐらい存在するかは分からないが、それら)をすべて焼却しない限り、それらは厳然たる事実として図書館の一角に残る。そうである以上、むしろそれらの語が内包する問題点を明らかにしておくためにも、それらの名称のままで項目を分類するほうがよいのではないか。
 図書館の分類項目に、きちんと「らい」という表記を残し、時代が生んだ深刻な問題を正しく後世に伝え、その上で、「ハンセン病」への参照を怠らず、その名の下に、「ハンセン病」関連の書籍を分類、項目化しておくほうがよいと思うし、またそうすることが、事実・真実を糊塗しないことに繋がっていくのではないかと思うたとえ時代の偏見や差別が生んだ、酷く愚かしい病名であっても、それが現に存在した事実を抹消することは、歴史的真実まで抹消することに繋がらないだろうか。私は、それが酷く愚かしいことであればあるほど、後世に正しく伝えていく必要があると思う。
 かつて、勝新太郎が演じた座頭市の場合も、映画ではどめくらという語が頻繁に使われたが、かなり以前から、再放送の場合は、その語を差別用語として音声カットして放映している。しかし、私はこの種の対応に反対である。その映画の背景である、江戸時代にどめくらという語が普通に用いられた事実がある以上、その映画の中に、その語が頻出するのは致し方ないことである。それを臭い物には蓋よろしく、その語を音声カットしたところで、問題の真の解決には繋がらないと思う。
  過去の事実を直視し、その問題点や、人間の愚かしさ、醜さなどを反省し、後世に、より望ましい人間社会のあり方を示していくことこそが、真の差別解消に繋がるのではないかと、私は思う。

【付記】聖書の『らい病』について知る」