元:はやり「一番戦いたくないチームは、有珠山高校ですっ☆」






――つい、本音が出た。


言わなくたって、よかったのに。


理由を聞かれたって、答えられないくせに。





準決勝を見ている人は、どうしてと思ったかもしれない。


点数だけで見るなら、他校と大きく離され敗色濃厚の展開。


このまま終わるとなれば、あの言葉は何だったんだと言われてしまうかもしれない。


でも、


それは私の偽らざる本音。





本当の理由は、誰にも言えない。


わかってもらえることもない。


それは、牌のおねえさんが見せちゃいけない姿。


弱くて脆くていつまで経っても認めたくない、心に秘めた割り切れない思い。





ともすれば自分も不覚を取りかねない、初出場ゆえの不気味さ?


違う。


決して強い子ばかりじゃないのに、力を合わせてがんばってきた若い輝き?


違う。


副将の子のアイドルキャラに対抗意識を感じて?


違う違う違う。


そんなことじゃない。





『さあ、大将戦は佳境に入っています! 遂に姫松高校がトップに出ました!』


有珠山の大将、獅子原爽ちゃん。


その子のそれを、見たくなかった。


…………ただ、それだけ。


『有珠山高校、ここは正念場! 親番で巻き返したい!』



――来る――!





「ごめん、ちょっと席外すね☆」


「どうしました、もうクライマックスですよ?」


「…………うん、ちょっとだから☆」


「……オーライ、了解です」







「――フリカムイ……!」







それは彼女と同じ、鳥さんを背負って戦う姿。


でも、違う。


鳥は鳥でも、打ち筋はまるで異なる別の鳥。


彼女とは違う。


違うって、わかってるのに。





その鳥を目の前にして……。私はいつもの私で、みんなのはやりん☆であり続けられる自信が無かった。


どうしても、思い出してしまうから。


私にとって、鳥さんの友達とは彼女のことだったから。


私の大切な友達。共に青春を過ごした仲間。







「慕――」









会いたいよ―― またあなたに――








『大将戦、決着です! Bブロックからの決勝進出校は――』



ワァァァァーーーー








「――――終わった、か」







ピッ ピッピッ


プルルル プルルル


「――はい」




はやり「もしもし、慕ー? 久しぶりー! 会いたかったー!」

慕「……3日前にも会ったよ、はやりちゃん」

はやり「そうだっけ? なんだかすっごい久しぶりな気がしたの!」

慕「……ウフフッ、今日はどうしたの?」

はやり「うん、インハイ見てたー? 鳥さん! 鳥さん出たの!!」

慕「…………うん、そうだね」

はやり「びっくりしちゃったよ! 慕と一緒だねっ☆」

慕「……私の鳥さんとは、違う子だよ」

はやり「それでもそれでも! 慕のこと、すっごく思い出しちゃったんだっ!」



はやり「――だからね、これから飲みに行こうよ! 3日ぶりの再会を祝して!」

慕「……いいの? 昨日も飲み会だったんでしょ?」

はやり「だーいじょーぶいっ☆ 慕と一緒ならいつだって平気だよっ☆」

慕「はやりちゃん、お酒苦手なのに……」

はやり「へーきへーき! ベロベロになっても慕に助けてもらうからっ☆」

慕「牌のおねえさんが見せちゃいけない姿じゃないかな、それって」

はやり「慕になら何だって見せちゃっていいもーんっ☆」

慕「おや? そんなこと言うなら、良子ちゃんに言いつけちゃおうかなー」

はやり「えーずるーいー」

アハハハハ ウフフフフ



はやり「それじゃお店、メールで送るからねっ☆」

慕「また暗号メール?」

はやり「もっちろん!」

慕「……わかったよ。変わらないね、昔から」ウフフッ

はやり「そうだねっ、お互いに☆」

慕「じゃあ、楽しみにしてるね」

はやり「うんっ! こちらこそっ☆」



【#1:会いました】






――つい、本音が出た。


言わなくたって、よかったのに。


理由を聞かれたら……、まあ答えてもいいんだけど。





どうしてと思う人もいるだろう。


わかってくれる人もいれば、見損なったと思う人もいるだろう。


だから、あまり表だって言いたくはない。


それでも、


自分の気持ちに嘘はつけないから。





たぶんそのとき、私は私を止められない。


誰に向かっても笑顔を届ける、みんなのはやりん☆ではいられない。


それは、牌のおねえさんが見せちゃいけない姿。


湧き上がる心の叫びを抑えられない姿。


どうしても譲りたくない、曲げられない思いがそこにある。





『さあ、大将戦は東四局! 有珠山高校の親番です!』


有珠山の大将、獅子原爽ちゃん。


端的に言えば、彼女は敵。


…………ただ、それだけのこと。


「――リーチ!」



――来る――!







「――白い雲のおかげで……! たけのこニョキニョキしちゃうんだよね……!」









「…………あぁん? たけのこだぁ?」






はやり「…………ふっ」

良子「?」

はやり「ふっっざけんなーーーー!!!! 何がたけのこニョキニョキじゃぁーーーー!!!!」

良子「!?」



はやり「きのここそ至高! 神聖なる麻雀にたけのこなんてものを巻き込むんじゃないッ!」

良子「は、はやりさん……?」

はやり「まったく! これだからたけのこは! これだからたけのこは!!」

はやり「大体、索子っておかしいでしょ!? なんで竹なの!? なんでキノ子(きのず)じゃないの!?」

良子「はやりさん! 落ち着いてください!」

はやり「きのこ最高! たけのこ死すべし! きのこ最高! たけのこ死すべし!」

はやり「うおおおおおおお!!!!!! きのこ! きのこ! きのこ! きのこ!」ガタッ

良子「ちょっ、ストップです! 危ないですよ!!」

はやり「どぅるああああああ!!!!!!」ガタガタッ

良子「ヒ、ヒィッ!?」


ゴリッ




バタッ

良子「はやりさん!?」

はやり「…………」(気絶)

閑無「…………まったく、いくつになってもお前は……」

良子(……た、たけのこで脳天を殴打した……?)

閑無「悪かったな。昔からなんだこいつ」

良子「は、はあ……」

閑無「……大丈夫だよ。こいつへの加減くらいわかってる」

良子「いやその前に……あなたはどこから現れて……」

閑無「…………別に。ただの通りすがりだ」



はやり「…………」(気絶)

良子「えっと、今のはどういう……」

閑無「……心配しなくていいよ。ただのこいつの悪い癖だ」

良子「そう……言われましても……」

はやり「…………」(気絶)

良子「…………」

閑無「…………大丈夫だって」



閑無「ちなみにアンタ、好きなお菓子は?」

良子「? ……特に好き嫌いはありませんが」

閑無「……なら、問題ないさ」

良子「強いて言うならトッポはアメイジングですね。ラストまでプレンティオブチョコレートです」

閑無「!」

良子「?」

閑無「…………」

良子「な、なんでしょうか……」



閑無「……それ、絶対こいつには言うなよ」

良子「?」

閑無「いいから。こいつを敵にしたくないだろ?」

良子「……それはまあ」

閑無「だったら、忠告は素直に聞いときなよ。アンタのためだ」

良子「……はあ」



閑無「ま、別れ話したいってなら言ってもいいけどな。何があっても一発だ」

良子「はあ」

閑無「…………ただし」

良子「?」

閑無「言っちまったら、私も敵だからな。覚えときなよ」ギロッ

ゾクッ

良子「イ、イエッサー」

閑無「じゃあな」



【#2:時にはKINOKOをこじらせて】






――つい、本音が出た。


それは私の偽らざる本音。


本当の理由は、見ればわかる。


ただ、見られないことを願うのみ。





負ける気がした?違う。若さに嫉妬?違う。アイドルユキちゃん?おととい来やがれ。


そんなことじゃない。


アレを見たくなかった。ただ、それだけ。


『有珠山高校、ここは正念場! 親番で巻き返したい!』



――来る――!







「――フリカムイ……!」








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     ヽ._>              \__)



爽「え……?」

ジュウシマツ住職「やあ、あちゅいですね」

咲「?」

爽「フリ……カムイ……?」

住職「フリカムイではない、私は住職です」

恭子「いや……誰やねん……」

ネリー「……対局中ネリよ」

爽「あの……フリカムイ呼んだはずなんですけど……」

住職「フリさんちょっと靭帯を痛めてたんでな。同じ鳥だから問題ない、私は住職です」

爽「いや……何言ってんだよ……」



住職「さて諸君」

爽「?」

住職「私の能力は手牌にあるオタ風を我が手元に呼び込むことだ」

爽「わーーー!! 何バラしてんだよ!?」

住職「南、西、北を持っていたら提供してくれたまえ。いい牌と交換してあげよう」

ネリー「直接交換!?」

恭子「思いっきりイカサマやないか!!」

咲「いや、イカサマを超えた何かだよ!! 談合とかそういうレベルだよ!!」

住職「大丈夫だ、私は住職です」

爽「あっ、ちょっ、ごめん! 違うから! こんなんじゃないから!!」



警備員「はーい君、ちょっと来てもらおうかー」ガシッ

住職「私は住職です」

警備員「対局中に入ってくるんじゃない! 非常識な!」

住職「何か問題でも?」

警備員「いいから来なさい、話は警備員室で聞く」グイッ

住職「放したまえ、私は住職です」

警備員「…………連れて行け」

ズルズルズル

住職「……それでは私は、先に、おしとします」

バタン



爽「…………」

咲「…………」

恭子「…………」

ネリー「…………」

警備員「あ、再開していいですよ」

爽「…………はい」


はやり「…………やっぱり出た…………」



【#3:何か問題でも?】





2015/12/14