花京院「僕の『魂』を! 賭けよう!」

ダービー「グッド」ニヤリ

ジョセフ「おい花京院!」

承太郎「おめーがやる必要はねえ」

花京院「大丈夫ですよ、ジョースターさん、承太郎……」

ジョセフ「し、しかし……」

花京院「僕もこの咲-Saki-という作品には、人並み以上の思い入れがある……。心配いりません、咲さんはかわいいです」

ジョセフ(うわぁ)

承太郎(うわぁ)

ダービー「…………」



ダービー(ククク…… よりによって麻雀ゲームを選ぶとは……)

ダービー(麻雀は私の最も、もっっっとも得意とするゲーム! 野球ゲーム以上になッ!)

ダービー(私のスタンド"アトゥム神"は、YESかNOで相手の心を読む能力ッ!)

ダービー(お前の手牌も待ち牌も、何もかもお見通し……。お前は牌を見せた状態で打つも同然なのだッ!)

ダービー(……勝ったな。プレイする前から明らかだ)クククッ

花京院「どうした?」

ダービー「いえ……。では始めましょう」

ピッ



ゲーム「『咲-Saki- Portable 全国版2』ッ!!」

ゲーム「全国52校の出場選手260人を操作可能ッ! 全選手の実力を忠実に再現ッ!!」

ダービー「フフフ……。今回使うのはこのフリー対戦モード」ピッ

ゲーム「フリー対戦モードッ!!」ジャジャーン

ダービー「全国52校のチームから、お互いに1校を選んでの団体戦……。他の2校はCPUが打つ」

ダービー「半荘5回で最終的に順位が上だった方が勝利だ……。ま、私が1位でしょうがね」

花京院「……了解した」



ダービー「フフフ……。まずチームを選んでください」

花京院「白糸台高校」ピッ

ダービー「なるほど、攻撃力に重点を置いたチームを選んだわけか……。最強クラスの火力を持った選手が二人いる」

花京院「…………」

ダービー(……だが!)

ダービー(心を読めるアトゥム神は無敵だッ! どこを選ぼうと無駄な足掻きよッ!!)クックックッ

花京院「…………」

ダービー(さて、私が選ぶのはもちろん、1月5日生まれのキャラがいる高校……。私が1月5日生まれなんでね……)

アトゥム神「…………」



アトゥム神「…………」

ダービー「…………」

アトゥム神「…………」

ダービー「?」

アトゥム神「…………」

ダービー(どうしたのだ、アトゥム神よ)

アトゥム神「…………」

ダービー(何を黙っている、さっさと1月5日生まれのキャラがいる高校を教えてくれ)

アトゥム神「…………NO! NO! NO!」

ダービー「?」



ダービー(どういうことだ……。なぜNOしか返さない)

アトゥム神「…………」

ダービー(1月5日生まれのキャラを出せ、と言っている。そのキャラが所属する高校を選ぶ)

アトゥム神「…………NO! NO! NO!」

ダービー(…………私相手になら、YES,NO以外も喋れるだろう。早くしろ)

アトゥム神「NO! NO! ない! いない!」

ダービー(……いない……?)



ダービー(……いないだと? そんなバカなことはあるまい)

ダービー(咲-Saki-には一年の半分近い人数に誕生日設定があるんだぞ)

アトゥム神「…………」

ダービー(ということは……。この全国52校の中にはいなかった、という意味か)

ダービー(……うむ、そうだろう。それでチームが選べなかったんだな)

ダービー(県予選のキャラか、それともプロか。シノハユだけのキャラって線もある)

ダービー(なにしろキャラ数が多いからな、そういうこともあり得るか)

ダービー(…………フン、仕方ない。不本意だが妥協してやろう)

アトゥム神「…………」



ダービー(全国に出ていない選手だというなら、出身県の代表校でもかまわんぞ)

アトゥム神「NO! NO! NO!」

ダービー(……選手ですらないのか、それとも出身がわからんか? 何かしら関連があればなんでもいい)

アトゥム神「NO! NO! NO!」

ダービー(…………もういいから名前を挙げろ、誰なんだよ)

アトゥム神「NO! NO! NO! NO!」

ダービー(…………)



アトゥム神「…………」

ダービー(…………おい)

アトゥム神「…………」

ダービー(まさか……本当に……)

アトゥム神「…………」

ダービー(誰・も・い・な・い・と・い・う・の・か・? 1・月・5・日・生・ま・れ・が・?)

アトゥム神「YES! YES! YES! YES!」

ダービー(なにィ~~~~~!?)

┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨



ダービー(バカなッ! そんなわけがあるかッ!!)

ダービー(公式サイトdreamscapeに単行本14巻ッ! データはすべて集めてあるはずだッ!)

ダービー(総勢177人! 同じ日に被ったキャラだって何組もある多さ……)

ダービー(それだけあって……私に一番重要な……)

ダービー(1月5日生まれが…………。ひ・と・り・も・い・な・い・だとぉ~~?)

アトゥム神「YES! YES! YES! YES!」

ドォーーーン



ダービー(くっ…… ぐぐっ)ハァーハァー

ダービー(その発想は微塵も無かった……全くの「想定外」だ)ハァーハァー

ダービー(……くそッ、うろたえるな……。こんなことでうろたえるな)ハァーハァー

ダービー(オレはゲームの天才だ……。負けるハズはない)ハァーハァー

ダービー(落ち着け……。落ち着いて代わりの1月5日に関わるものを探すんだ)ハァーハァー

ダービー(何か……何か無いか……)キョロキョロ

花京院「……どうしたダービー?」

承太郎「早くしろよ、てめーの選択だぜ」

ダービー(くっ……。早くしないと)

ジョセフ「?」



ダービー(何か……何か……)

ダービー(…………)

ハッ

ダービー(……これだ!)

ジョセフ「何をキョロキョロしとるんじゃ……。なにか不正を行っているんじゃあないのか?」

ダービー「……いえ失礼、なんでもありません」コホン

花京院「…………」

ダービー「私が選ぶのは、全国大会トーナメントの抽選番号15番の高校! 1月5日生まれなんでね……」キリッ

花京院「!」

ピッ



ダービー(ふぅ……。なんとか余裕の顔で通したぞ、危ない危ない)

花京院「…………」

ダービー(…………さて、それで。15番ってどこの高校だ……?)チラッ


――

【選択結果】

花京院:白糸台(西東京)1

ダービー:千曳学園(青森)15

――


ダービー(…………は?)




ダービー:千曳学園(青森)15


ダービー「…………なん……だと……?」


千曳学園(青森)15


千曳学園(青森)15


千曳学園(青森)15


ダービー「ゲェェーーーッ!!」ガタガタッ

花京院「?」

ジョセフ「?」

承太郎「?」



ダービー(し……しまった……)

ダービー(早く選ばねばとアセってしまい! 名前も何も見てなかった!!)

ダービー(千曳学園だと!? 誰がわかるんだそんなもん!! 青森!? 知るかッ!!)

ダービー(…………)

ダービー(これは……非常にまずい……)

ダービー(このゲームは全選手の実力をそれはもう忠実に再現しているッ! 優勝候補に一回戦負けが勝てるかッ!)

ダービー(いくらアトゥム神が手牌を読めたって対策が打てなきゃ勝てないに決まってるだろッ! 常識的に考えてッ!)

ダービー(ちくしょう……ちくしょう! なんてミスだッ!!)



ダービー(……あっ、そうか!)

ダービー(一回戦負けとはいえ! 組み合わせが悪かったなら仕方ない!)

ダービー(相手が悪かっただけなら、実は強かった高校の可能性もあり得る!)

ダービー(千曳学園はどこに負けたんだ……? 14番から17番の山で勝った高校は……)チラッ


越谷女子(埼玉)17


ダービー(ホゲェーーーッ!!)



ダービー(なんて……なんてこった……)

ダービー(よりによって越谷女子……)

ダービー(2回戦、千里山と阿知賀が勝ち上がった山で最下位敗退だった……)

ダービー(こう言っては申し訳ないが、完全にストーリー上やられ役だったあいつら……)

ダービー(……その越谷女子に……負けた高校だと……)

ダービー(くそッ! これなら「不明」の方がまだマシだッ!!)



ダービー(マズい……マズいぞ……)

ダービー(このままでは本当に! 千曳学園で白糸台と対戦することにッ!)

ダービー(どうする……どうすればいい……)

ダービー(…………)

ダービー(どうにかして、チーム選択のやり直しをしたいが……)

ダービー(私の方から「間違えたので変えさせてください」などと……言えるわけがない)

ダービー(……あれだけドヤ顔で言い切ったのに……。私のプライドが許さぬ)

ダービー(それに、何にせよ自分の落ち度を認めることは……。精神的に負けを認めてしまうことにつながりかねない)

ダービー(アトゥム神がそのはずみで、せっかく掴んだ承太郎の腕から手を放してしまうかもしれない……)



ダービー(……やはり、あいつらのチームの方を変えさせるしかないッ!)

ダービー(なんとか……。なんとかあいつらを話術でそそのかして……!)

ダービー(…………)

ダービー(クソッ、クソックソッ! なんという屈辱だ……!)

ダービー(この私が……あの軽蔑する兄と同じ……)

ダービー(「ハッタリ」や「ブラフ」に頼らねばならないとはッ!)

ダービー(だが……。やるしかないッ!!)



ダービー「……フッ、フフフ……」ドキドキ

花京院「?」

ダービー「驚きましたか……? 花京院、君は今こう考えている」ドキドキ

花京院「…………」

ダービー「なぜ、優勝候補に対して一回戦負けのその高校を選んだのか? と」ドキドキ

花京院「…………」

ジョセフ「おい花京院、奴の揺さぶりになど付き合うんじゃあないぞ」

花京院「…………ええ、大丈夫です」



ダービー「私はこう言いました……。『1月5日生まれなんでね』と」

花京院「…………」

ダービー「バカげた理由とお思いですか……? しかし、そのバカげたことがけっこう重要なのですよ」

ダービー「慣れ親しんだ自分の一番のお気に入り、お決まりのパターンというものは……。侮れない価値があるものです」

ダービー「野球選手が打つ前の動作を常に決めているように! ラグビー選手がキックの前に謎のお祈りをするように!」

花京院「…………」

ダービー「『ジンクス』や『ルーティン』なんて概念に縛られるのは……頭の悪い行いだと考えますか……?」

ダービー「だが私に言わせれば、その考えこそが悪。『いつも通り』は不測の違和感を消し、精神に安定をもたらします」

ダービー「精神の安定は心を研ぎ澄まし強さを生む。そうした些細な機微が、最終的に勝敗を分けたりするものです」

花京院(…………口数多いなこいつ)

ジョセフ(なーにが「兄とは違う」じゃ……。クダラン事ベラベラ喋りおって、そっくりじゃあないか)

承太郎(やれやれだぜ)



ダービー「ちなみに花京院……。君の好きな数字は?」

花京院「…………」

ダービー「…………勝負には関係ありませんよ、余談です」

花京院「…………」

ダービー「…………」

花京院「…………28」

ダービー「ふむ……。ちなみに抽選番号28番は……、沖縄の真嘉比高校ですね」

花京院「…………」



ダービー「沖縄代表・真嘉比高校……。いい高校だ」

ダービー「副将のエース、"ニライカナイ"の銘苅ちゃんばかりが注目されるが……。彼女だけのチームじゃない」

ダービー「琉球古武術の使い手、ティンペーローチンに目隠し姿で盲牌に定評がある大将・"盲剣"の宇水」

ダービー「キャリオカステップを完璧に使いこなすパワー型の先鋒・田仁志」

ダービー「他のメンバーたちも皆、元小学生日本一が師匠をつとめる小禄道場で鍛えられた精鋭たちです」

ダービー「……非常に魅力あふれる良いチームですね」

花京院「…………」

ダービー「結果こそ一回戦負けですが、よほど相手がうまくやったのかなという感じがいたします」

花京院「…………」


ジョセフ「なあ承太郎、最近の麻雀はキャリオカステップなんて使うんかいの?」ヒソヒソ

承太郎「麻雀はずっと座ってやるもんだぜ、寝ぼけてんのかジジイ」ヒソヒソ

ジョセフ「いやわしもそりゃわかっとるが……」ヒソヒソ



花京院「…………何が言いたい」

ダービー「……君は選ばなくていいんですかね? そのお気に入りの28番を」

花京院「…………」

ダービー「一度決めた事を変更するなど、真剣勝負の場では本来ありえないことですが……」

花京院「…………」

ダービー「私としても、より全力を尽くした君と対戦できるならやぶさかではない」

花京院「…………」

ダービー「今だったら、選択し直させてあげてもいい……。純粋な私の厚意からね」

花京院「いや、それとこれとは別の話だ」さらっ

ダービー(チクショォ~~~!!)


承太郎「なんだあれは……。一回戦負けチームに変更させようってのか?」

ジョセフ「あいつヘッタクソじゃのぉ揺さぶり」



花京院「……ひとつ教えてやろう、ダービー」

ダービー「?」

花京院「それとこれとは別だと言ったが……」

ダービー「…………」

花京院「28は確かに僕の一番お気に入りの数だ……。それは掛け値なしに間違いない」

ダービー(言われなくてもわかってんだよそれくらい! アトゥム神がYES言うとるわ!)

花京院「その意味……。君ならわかると思うがね」ニヤッ

ダービー「……?……」


ジョセフ「何をワケワカランこと言っとるんじゃ花京院も」

承太郎「さあな……」



ダービー(くそっ、何を思わせぶりに……。私なら意味が分かるだと……?)

ダービー(咲-Saki-において(28)と言えばその意味は一つ……。牌のおねえさん、瑞原はやり)

ダービー(……だがそんなことなら誰でもわかる、果たしてそんな単純なことか……?)

アトゥム神「NO! NO! NO!」

ダービー(くっ、やはり……。もっと別の何か……)

ダービー(28……28……2と8…………2月8日……)

ハッ

ダービー(まさか……こいつも誕生日で……?)



ダービー(……おい、アトゥム神)

アトゥム神「…………」

ダービー(2月8日生まれは……。 2月8日生まれのキャラは……咲-Saki-にいるのか?)

アトゥム神「YES! YES! いる! いる!」

ダービー(誰だッ!! 名前を教えろッ!!)



アトゥム神「2月8日生まれの検索結果……1件」

ダービー(…………)ドキドキ

アトゥム神「……『瑞原美月(はやり母)』……2月8日生まれ」

ダービー(…………な…………)


【瑞原美月(はやり母) 2月8日】


アトゥム神「…………以上」

ダービー(なんだってェ~~~!?!?!?)

┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨



ダービー(バカなッ! バカなバカなバカなッ!)┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨

花京院「…………」

ダービー(全国出場者でもなければッ! 高校生ですらないッ!!)┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨

花京院「…………」

ダービー(あげくに(28)で・も・な・く・ッ! そ・の・母・親・だとォッ!!)┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨

花京院「…………」

ジョセフ「?」

承太郎「?」

ダービー「花京院! 貴様ッ!! 年上趣味だなッ!!!」ガタッ

花京院「答える必要はない」ニヤリ

ダービー「おのれェ~~~」


ジョセフ「何の話をしとるんじゃ……?」

承太郎「わからねえが……。何か二人にだけ通じる意味があるんだろうぜ」



ダービー(年上趣味だと…… 花京院……)

花京院「…………」

ダービー(許さんッ! 貴様は今! 『マホちゃんファンクラブエジプト支部』名誉支部長の私を愚弄したッ!!)

花京院「…………」

ダービー(よくもぬけぬけと~~~ このオレに向かって~~~)ギリギリッ

花京院「では……始めようか」

ダービー「!」ギクッ

花京院「?」

ダービー「は、始めるって……何を……」

ジョセフ「何を言っとる、麻雀ゲーム勝負じゃろ」

承太郎「てめえからふっかけてきた勝負だろうが」

ダービー「えっ、いや……まだチームが……」

花京院「?」



ジョセフ「モタモタしとったら日が暮れちまうぞ。言っとくが、日没の時間稼ぎに付き合うつもりはないからな」

ダービー(くっ…………ぐぐぐぐぐ…………)ハァハァ

承太郎「俺の右腕を人質にしてるとはいえ……。状況次第じゃ、腕一本潰した方が早いって判断もできるんだぜ」

ダービー(くぬぅ~~~~~ がぬぬぬぅぅぅ~~~~~)ハァハァ

花京院「……座れダービー、君がSTARTを押さねば始まらないぞ」

ダービー(あっちくしょお~~~うううううああ…………)ハァハァ

承太郎「?」

ジョセフ「何かこいつ……老けたな……」

ダービー(キィ~~~ クキクウウウ~~~ゥゥ)ハァハァハァハァ



花京院「…………始めてくれ」

ダービー(ちくしょオ~~~やってやるゥ~~~勝てばいいんだろォォ~~~)ハァハァハァハァ

ダービー(オレはゲームの天才なんだァァ~~~! 千曳学園でだって白糸台に勝ってやるゥゥ~~~!!)ハァハァハァハァ

ダービー(オレは心が読めるんだッ! 相手の手牌も待ち牌もみんな分かるんだぞォォォ~~~!!)ハァハァハァハァ


GAME START !!




…………

……

先鋒戦 東二局六本場

照『ツモ 16600オールです』ギュルルン

ダービー「」

ジョセフ「ウッヒョォ~! とうとう八連荘じゃ! ギャハハーッ!」

ダービー「」

承太郎「六本場の役満払い……。これで花京院が開始から八連続の和了だな」

ダービー「」

花京院(相手がどんな策を使ってこようと……。ツモ和了りできれば関係ない)

ダービー「」



スゥッ

承太郎「……ムッ」バッ

ジョセフ「どうした承太郎?」

承太郎「オレの腕を掴んでいたダービーのスタンドが……消えてなくなった」

ジョセフ「!」

承太郎「こいつが敗北を認めたんだ……。心が折れたな」

ダービー「…………」

花京院「…………」

ダービー「…………」

花京院「……僕の勝ちだな、ダービー」

ダービー「…………YES,YES,YES」

ジョセフ「OH MY GOD」


カン




2016/08/26