何年経っても、ふと思い出してしまうときがある。


あのときに戻ってやり直したいなと、思ってしまうことがある。





何気なくつぶやいた、あのときの一言。


思わず強く言い返しちゃった、そんなつもりじゃなかった言葉。


こうしたほうがよかったのにと、いつまでも悔やみ続けた返らない結果。


悩みに悩んで絞り出した、あの日彼女へ伝えた気持ち。





もっと別な言い方があったんじゃないかな。


そうしていなかったら、今の自分はもっと変わっていたのかな。


彼女の今は、違う形だったのかな。





今に不満があるわけじゃない。


届かない過去を気にしても、仕方ないことだってわかってる。


過ぎ去った昔に戻れるなんて、ありえない話なのもわかってる。


忙しく過ぎる毎日の中で、ほんの一時だけ訪れる気の迷い。



――でも、もしも。





もしも、あの日の私に戻れたら。


あのときと違う気持ちを言葉を行動を、そこで出すことができたなら。


そんな風に、考えてしまうことがある。


彼女のことを思い出すたびに、そんな気持ちがどうしても心に浮かぶ。





彼女はそれだけ、私にとって特別な人だった。


ずっと一緒に同じ時を過ごした、小学生からの友達でチームメイトで、


初めて出会った、同い年の対等なライバル。



……面と向かっては言えなかったけど、私はずっとそう思ってた。



麻雀に対する姿勢は本当に真摯で一直線で、心から尊敬できるひとで。


それでいて、アイドルもやりたいという私を素敵だと言ってくれて。たくさん後押しをしてくれて。


牌のおねえさん瑞原はやりの、世界で2番目に熱心な大ファンになってくれたひと。








「慕――」











もう一度会いたいな―― あのときのあなたに――








CM「――あのデロリアンが君のものに! デアゴスティーニの新シリーズ、ついに登場!!」


はやり「!?」





CM「『週刊 バック・トゥ・ザ・フューチャー デロリアン』、2017年1月31日創刊!!」


はやり「……デロリ……アン……?」


CM「全130号のパーツを集めてデロリアンを完成させよう! 現在、定期購読申込受付中!!」


はやり「……これ……って……」


CM「デアゴスティーニ♪」


はやり「…………これだ!」




ガタガタッ バタンッ

はやり「良子ちゃん! 良子ちゃん見てこれ!!」

良子「どうしました、はやりさん」

はやり「デロリアンだよ!! デロリアンがもらえるんだって!!」

良子「?」



はやり「デロリアンだよ? 知らない?」

良子「……ええ、知ってはいますが」

はやり「タイムマシンだよ! 過去や未来に行けるんだよ!」

良子「…………はい」

はやり「……私、決めたよ良子ちゃん」

良子「?」

はやり「この本を全部買い揃えて! もう一度小学生に私はなる!!」

良子「えっ」



はやり「一冊1790円ってことは……、20万円以上だよね。お金おろしてこないとな……」ブツブツ

良子(…………どうしたものか)

はやり「週刊で130号だから……、完結まで二年半くらいかな。今から待ち遠しいよ……」ブツブツ

良子「…………あの」

はやり「でもこれで……。あのときの慕に、また会えるかも……!」ドキドキ

良子「…………あの、はやりさん」

はやり「何?」

良子「そのデロリアンには、タイムスリップシステムはついていないと思うんですが」

はやり「えっ!?」



はやり「えっ…………えっ?」

良子「はい」

はやり「…………」

良子「…………」

はやり「えっと……。ちょっとよく意味が分からなかったんだけど」

良子「はい?」

はやり「良子ちゃんって、そういう感じの芸風だったのかな?」

良子「……ノーウェイ、芸風ではありません」



はやり「……だって、デロリアンだよ?」

良子「はい」

はやり「ドクことエメット・ブラウン博士の世紀の大発明なんだよ?」

良子「……はい」

はやり「マーティ少年がそれに乗って大冒険をしたんだよ?」

良子「…………はい、一緒に観ましたよねDVD」



はやり「そのデロリアンがね、この雑誌を買ったらもらえるの!」

良子「…………ええ、ですからそれは」

はやり「?」(真剣)

良子「……いくらなんでも、それはオカルト過ぎ……」

はやり「??」(真剣)

良子「…………」

はやり「…………」(真剣)

良子(…………マジですか、はやりさん)

はやり「…………」(真剣)

良子(……そんなに真っ直ぐな瞳を向けないでください、心に刺さります)



良子「……オーライ、よしんばタイムスリップができたとしましょう。でもここ見てください」スッ

はやり「えっ?」

良子「『1/8スケールのデロリアンが作れる』です。本物の車のサイズじゃないですよ」

はやり「あ…………」

良子「はやりさんが乗れる大きさじゃありません」

はやり「う~……」

良子「……残念ですが、はやりさんがタイムスリップをすることは無理かと思いますよ」

はやり「…………そんなぁ…………」



はやり「えっと、じゃあじゃあ、こびとさんになる魔法を使える人を探せばいいのかな!?」

良子「はい?」

はやり「魔法使いさんの霊とか、良子ちゃんは呼べたりできないのかな!?」

良子「…………」

はやり「…………」(真剣)

良子「…………ソーリーです、私はそのような霊に心当たりはありませんね」

はやり「良子ちゃんの知り合いでできる人とか!」

良子「いません」

はやり「えぇー……」

良子「…………」



はやり「…………」

良子「…………」

はやり「…………」

良子「…………」

はやり「…………無理、なの…………?」

良子「…………はい」

はやり「…………」( ´・ω・`)



良子「……代わりになるかわかりませんが」

はやり「…………?」

良子「私が、ここにいますから」

はやり「…………」

良子「…………」

はやり「…………」

良子「…………それでいいですか?」

はやり「…………うん」( ´;ω;`)


カン




参考文献
週刊 バック・トゥ・ザ・フューチャー デロリアン - デアゴスティーニ
「バック・トゥ・ザ・フューチャー」1/8スケールのデロリアンが作れる雑誌創刊 - 映画ナタリー


デヤゴスチーニ「『月刊麻雀牌』創刊!」慕「これだ…!」

2017/01/06