【仲間たちと日常】

――拝啓、ちかちゃん。その後いかがお過ごしですか?

ちかちゃんとお別れして東京に来てから、もう一年と二か月が過ぎました。

北海道から遠く離れた空の下、私はなんとか元気にやっています。

不安も寂しさもいっぱいあったけど。ここ先鋒学院高校には、それを吹き飛ばしてくれるすてきな出会いがありました。

今日も部室に目を向ければ、いつも賑やかな部員たち――



優希「今日もタコスうまー! タコ焼きうまーー!!」ガツガツ


――暇さえあればタコスとタコ焼き食べてる一年生と、


漫「……フン、作ったったからには全部食えよな」ジュゥゥ


――口ではイヤイヤ言いながら、いつもタコ焼き作ってあげてる二年生と、


怜「く~ろ~、ひざまくら~」フラフラッ


――暇さえあれば膝枕を求めて彷徨っている三年生と、


玄「ふえぇ……私は漫ちゃんのおもち枕が……」


――なんだかんだで断らずに膝枕させてあげてる二年生と、


照「…………」お菓子ポリポリ


――暇さえあればずっとお菓子ポリポリしてる三年生と、


煌「これで集中力が……」煮干しポリポリ


――その隣で静かに煮干しポリポリしてる二年生……あれ、煌ちゃんっていつからそんなだっけ……と、


黒服A「お嬢! 今度こんな企画を考えまして……」

智葉「却下」


――怖そうで厳しそうだけど実は優しい部長さんと…………、その仲間たち?



成香(…………)

成香(…………)

成香(…………)

成香(…………ここ、何部?)







智葉「私立先鋒学院高校麻雀部」の世界の話。

時系列順不同。






【黒服氏名対応表(読み飛ばし可)】

黒服A:山崎健二……実直な性格の持ち主。趣味はボウリング。一応リーダー格。大事なことをお嬢に話すときは彼から。
黒服B:川崎敏政……実直な性格の持ち主。趣味はボウリング。怜ちゃんが初めて未来視の片鱗を見せた時に同卓。
黒服C:荻野圭一……実直な性格の持ち主。趣味はボウリング。新婚。「学食のタコス食べ放題」でゆーきを釣る。
黒服D:萩尾純一……実直な性格の持ち主。趣味はボウリング。照さんは荻野くんと区別できてない。
黒服E:佐衛門三郎二朗……チーム最年少だが仕事は優秀。趣味はボウリング。ライバル校の情報をパワポでプレゼン。
黒服F:権田…………お嬢が生まれる前からオヤジに仕えるチーム最年長。趣味はボウリング。煌さんに紳士的と評される。
黒服G:海老谷………少々方向性が違う面が見られたため解雇。成香ちゃんには接触禁止。
黒服H:中田英寿……チーム一のボウリング好き。玄ちゃん勧誘時に鷺森レーンへ寄ろうと言い出した人。
黒服I:堂下浩次……実直な性格の持ち主。趣味はボウリング。怜ちゃんがダブルで倒れた時に救急車を呼ぶ。
黒服J:長田…………実直な性格の持ち主。趣味はボウリング。新宿まいご事件の時に照さんを気遣う。
黒服K:菊池…………実直な性格の持ち主。趣味はボウリング。漫ちゃんがタコ焼きを作る時に材料を全員分用意。
黒服L:西口冴子……三年生夏の東東京大会前(本編終了後)に新加入した女性の黒服。趣味はボウリング。今回初登場。



【プリンと営業スマイル】

二年生 11月

山崎「お嬢、ひとつ理事長よりのご相談なんですが」

智葉「断る」

山崎「そ、そうおっしゃらずに……」

智葉「却下だ」

山崎「せ、せめて話だけでも……。理事長ご自身が何かなさるわけじゃありませんから」

智葉「…………なんだよ」



山崎「実は弊社がこのたび、プリン会社とコラボ企画をすることになりまして」

照「!」

智葉「……それがどうした」

山崎「CM動画を作ろうと思っているのですが、その映像に部員の皆様を使わせていただけないかと」

智葉「なんだよそりゃ」

山崎「ですから、弊社のプリンを食べていただきその様子を撮影したいと。食べ放題ですよ」

照「!!」ガタッ

智葉「私たちはタレントじゃない。お断りだ」

山崎「えぇー」

照「えぇー」



山崎「そ、そこをなんとか……」

照「プリンたべたいです」

智葉「鹿老渡の佐々野とか、あの辺の出たそうなのに頼んだらいいじゃないか」

照「プリンたべたいです」

山崎「正式に事務所を通される方ですと、余計なマージンが発生しますので……」

照「プリンたべたいです」

智葉「変なところでケチくさいな」

照「プリンたべたいです」

智葉「少し黙れ照」

照「プリンたべたいです」



智葉「そんな露出を増やしたって碌なことにならんぞ」

山崎「大丈夫ですよ。我々はインハイ優勝校じゃありませんか」

智葉「だからこそだろうが。麻雀とは何も関係ない」

山崎「本校の宣伝効果は抜群ですよ! 皆様の人気も急上昇、メリットしかありません」

智葉「余計な面倒ごとが増えるだけだ。付きまといだの隠し撮りだのやりだす輩が出たらどうすんだよ」

山崎「大丈夫ですよ! そのために我々がおそばに!」キリッ

智葉「……ちゃんと守ってくれるのかよお前らは。信用ならんな」

山崎「もちろんですとも!」

智葉「…………返事だけはいいな、相変わらず」



なんだかんだで撮影当日

山崎「もっと自然な笑顔お願いしまーす……!」

照「…………はい」グキグキッ

智葉「……なんだあの小鍛治プロみたいな笑顔は」

怜「珍しい顔やな」

山崎「そ、それではプリンをすくっていただいて一口……」

照「…………はい」ギクシャク

つるっ

ぼとっ

山崎「あー」



煌「さすがの宮永先輩も苦戦してらっしゃいますね……」

成香「大変そうです……」

怜「らしくないで、プリン相手に」

智葉「いつもの営業スマイルはどうした」

照「……大丈夫、問題ないよ」

玄「……でも、もう3連続NG……」

漫「うーん……」



智葉「何をそんなに緊張してんだよ」

照「大丈夫、私はちゃんぴょん」ギクシャク

智葉「?」

照「ぷりんのゆうわくに負けたりしないから」ゴキグキッ

智葉「なんだそりゃ」

照(……いんはいちゃんぴょんのいめーじを壊しちゃいけない。ぷりんだってかっこよく食べられるんだから)

山崎「宮永様、りらっくすです! プリンは怖くありませんよ!」

照「…………はい」



山崎「では、改めまして」

堂下「ワンモアセッ」

智葉「その掛け声やめろ」

照「…………」ギクシャク

つるっ

ぼとっ

山崎「あー」



佐衛門三郎「えっと……、宮永様。カメラを意識しなくていいですから」

照「…………でも」

山崎「カメラ無しと思っていいですから。好きに食べてみてください」

照「……でもちゃんぴょんのいめーじが」

山崎「?」

怜「随分頑なやな」

智葉「珍しい」



怜「これはあれやな」

智葉「?」

怜「変に意識しすぎると、普通にできてたことが全然でけへんくなるってやつや」

智葉「……ふむ」

山崎「分かりました。いったんカメラを止めましょう」

佐衛門三郎「そうですね」

照「…………はい」

山崎(……おい)ヒソヒソ

佐衛門三郎(わかってます、止めるフリですね)ヒソヒソ



佐衛門三郎「はい、カメラ止めまーす」

照「…………」

山崎「いいですよ、後でもいっこ用意しますからそれは食べちゃってください」

照「…………そうですか」

スッ

ぱくっ

照「……おいしい」ニコッ

オーッ



煌「凄く自然な笑顔ですね! すばらです!」

成香「すてきですー」

山崎「さすが宮永様!」

照「…………しあわせ」モグモグ


―その後、CMとプリンは悪魔的大ヒットしたらしい―



数日後

照「すみません、もいっこはまだですか」

山崎「えっ」




【玄ちゃんと寝起き】

三年生 5月

智葉「よし、今日の部活はここまでだ」

成香「お疲れさまでしたー」

煌「じゃ、お先に優希!」

優希「はーい」

川崎「我々も失礼します」

優希「はいだじぇー。……さて、私も帰るじょ」

玄「…………zzz」

怜「…………zzz」

優希「…………おや?」



優希「ソファーに座ってる松実先輩と……そこにひざまくらしてる園城寺先輩……」

玄「…………zzz」

怜「…………zzz」

優希「二人とも寝ちゃってるじぇ」

玄「…………zzz」

怜「…………zzz」

優希「おーい、松実せんぱーい」チョイチョイ

優希「起きるじぇー」ユサユサ

優希「もう部活終わりだじょー」ユサユサ



玄「うーん……、ふにゅっ?」

優希「部活終わりだじぇ。寮に帰るじょ」

玄「あ、うん。ありがと憧ちゃん」

優希「あこちゃん?」

玄「はうっ!? 優希ちゃん!?」ガタッ

ズルッ

怜「おぶしっ」ゴツッ



優希「どーしたんだじぇ、急に立ち上がって……。園城寺先輩がひざまくらから落ちたじょ」

玄「あっ、ごっ、ごめんなさい園城寺先輩!」

怜「うーん……。なんやねん玄……」

玄「ゆ、優希ちゃんもごめんね! うん、終わりだよね、帰ろう!」

優希「何をそんなに取り乱したんだじょ……?」

怜「床に顔打ったんやけど……」

玄(はうぅ……寝ぼけちゃってたよ……)ドキドキ




【センガクと応援歌】

二年生 5月

山崎「お嬢、麻雀部のチャントを作ったので聞いていただけますか」

智葉「はあ?」

山崎「おや、ご存じありませんでしたか。強豪校はどこも作って歌ってるんですよ」

智葉「なんだよ歌うって。応援歌か?」

佐衛門三郎「はっはっは。お嬢、いまどきは応援歌じゃなくてチャントって言うんですよ」

智葉「…………」イラッ

山崎「ちなみに、選手の名前だけを呼ぶのがコール、歌になっているのがチャントです」

智葉「どうでもいいよ」



智葉「そんなもん作ってどうしようってんだよ」

川崎「いよいよ今年は団体戦ですからね! 昨年個人王者を擁するチームとして恥ずかしくないようにしませんと!」

智葉「応援歌なんて、麻雀部には不要のものだ」

荻野「どこのチームも普通に観戦席で歌ってますよ?」

智葉「選手に届かなくてどうするってんだよ。対局室に聞こえるわけないだろうが」

権田「皆さんそれですごく盛り上がってるんですけどねー。 よその応援を聞くのも観戦の楽しみです」

堂下「応援する側の気持ちの問題ですよ! お嬢や皆様に頑張っていただきたい一心ですから!」

智葉「…………」



萩尾「この際ですから、お揃いのメガホンとかハッピとか光る棒のやつとか作りませんか?」

長田「いいね!」

菊池「応援グッズ作りましょうよ!」

智葉「いらん」

中田「あっ、光る棒はサイリウムって言って……」

智葉「説明もいらん、知ってる知らないの話じゃない」

中田「えぇー……」

智葉「どうせお前らが使いたいだけだろうが」

山崎「…………」フヒヒッ



智葉「くれぐれも、大騒ぎしてうちの評判を落とすような真似はするなよ?」

山崎「大丈夫ですよ、吹奏楽部をむりやり駆り出したりとかしませんから」

智葉「危ないことを言うな」

川崎「聞いていただければきっと気に入ると思いますよ! 我々の自信作ばかりですから」

智葉「お前らが作ったものなんて、どうせろくでもないだろう」

荻野「いえいえそんなことはありません。ちゃんとしてますよ、チャントだけに」フヒヒッ

智葉「あ゛?」ギロッ

荻野「ヒィッ」ゾクゾクッ



山崎「ではまず、チーム名のコールから」

智葉「なんでもいい」

山崎「せーのっ、セーンガック! ファイッ! オー!」ドドンドドンドン

黒服全「セーンガック! ファイッ! オー!」ドドンドドンドン

智葉「なんだよセンガクって」

山崎「先鋒学院ですからセンガクですよ。かっこいいでしょう?」

智葉「嫌な予感しかしないが」



応援歌披露中

山崎「続きまして、『守れセンガク撃ち抜け敵を』」

智葉「…………」

黒服全「ゆけゆけー、センガクー! 勝利をー信じてー!!」

智葉「…………」

黒服全「撃っち抜っけー! 敵ーをー! 守れーよ誇ーりー!!」

智葉「…………」

黒服全「セー、ンー、ガー、クー! Shot! Oh!!」

智葉「コラァーーーー!!!!」ガタッ

黒服全「?」



智葉「センガクに諸島つけたらダメだろ諸島は!! 多方面からぶっころばされたいのか!!」

佐衛門三郎「いえお嬢、諸島じゃなくて Shot! Oh! です」

智葉「一緒だよバカ!! 却下却下!!」

権田「いやいや、そんな発想は一ミリもなかったですよ」

川崎「そうですよ、カクじゃなくてガクですし。ノープロブレムです」

堂下「ははっ、今日のお嬢はアグレッシブですね」

智葉「お・ま・え・ら・~」ゴゴゴゴゴゴ

黒服全「ヒィィッ」

智葉「禁止! 応援歌禁止だ!」

中田「そんなぁ……」


※結局、この歌だけの禁止で許してもらいました。




【照さんと怜ちゃん】

一年生 7月

怜「……お、今日のおやつはスナック菓子や」

照「うん、かっぱえびせん」ポリポリ

怜「ええやん、私も好きやで」

照「うん。…………でも」

怜「? どないした?」

照「これには、常々納得いかなかったことがある」

怜「何や?」



照「かっぱえびせんというけれど……。これには、かっぱが入ってない」

怜「えっ」

照「あんぱんにはあんが入ってる。ジャムパンにはジャムが入ってる」

怜「……せやな」

照「でも、かっぱえびせんは……」

怜「…………」

照「かっぱが入ってると思ってたのに。一回も食べたことない」

怜(……さて、どないしょーかこれ)



怜「…………えーとな、照。残念なお知らせなんやけど」

照「?」

怜「河童ってな、食うてもめっさ不味いらしいで」

照「!」

怜「せやから入れてへんねんて、えびせんには」

照「マジでか」

怜「おう」

智葉(…………何の話だよ)



照「でも、それならどうしてこの名前」

怜(……えらい食い下がるな)

照「かっぱ巻きもそう。入ってないのに名前を付けるなんて」

怜「…………」

照「かっぱが入ってると思ったからこそ食べたくなって買っちゃった人のワクワク感は」

怜「……えーとな、もいっこ残念なお知らせやねんけど」

照「?」

怜「それな、河童が作ってるからや」

照「!?」



怜「えびせんも、きゅうり海苔巻きも、回転寿司もや。河童が働かされて作ってるからその名前やねん」

照「……そうだったの」

怜「めっさ重労働らしいで」

照「……かわいそう」

怜「ああ、味わって食べなあかんで」

照「そうだね」

智葉「嘘を教えるなそして信じるな」




【権田さんと引率顧問】

二年生 6月 東東京予選大会前

ドタドタドタッ

佐衛門三郎「大変だーー!!」バタンッ

山崎「ん?」

川崎「どうかしたか?」

佐衛門三郎「今……職員室で聞いてきたんですが……」ハァ…ハァ…

荻野「?」

佐衛門三郎「麻雀部顧問の先生……。利根川先生が……」

萩尾「顧問の先生?」

佐衛門三郎「ぎっくり腰で……入院したと……!」

黒服全「?」



中田「……えっ、それが何か……?」

堂下「うん、そんなの別になあ?」

権田「問題ないんじゃ?」

長田「部活に顔も出してない、名前だけの先生だろう?」

菊池「ああ、今更いなくたって何も支障は……」

山崎「…………いや……まずい……」

中田「山崎さん?」



山崎「名前だけとはいえ……。麻雀部の顧問は学校の先生……」

川崎「?」

山崎「部活の大会に出るなら……。教員の引率がないと……!」

黒服全「!」

ざわ…

山崎「部活動はあくまで……学校教育の一環だからな……!」

ざわ…ざわ…



荻野「……てことは……」

萩尾「……それって……」

権田「まさか……」

山崎「……ああ」

ゴクリ

山崎「アウツ……! インハイ出場不可……!」

黒服全「!!」

ざわ… ざわ…ざわ…



中田「そ、そんな! どうにかならないんですか!」

堂下「せっかく今年は団体戦に出られるって、お嬢たちみんな頑張ってたのに!」

長田「一年に一度のインターハイ……、いや、お嬢の二年生の夏は……今しかないのにっ……!」

菊池「……それなら、代わりの人は!? 他の先生たちは!?」

佐衛門三郎「それが……聞いてきたんですが……」

黒服全「…………」

佐衛門三郎「皆さん他の部の活動があったり……すでに予定が入っていたり……」

ざわ…

佐衛門三郎「確かに急な話でしたけど……よりによってその日だけが……」

ざわ…ざわ…

佐衛門三郎「誰も彼も……インポッシブル……!」



川崎「なんて……こった……」

荻野「……ど、どうにかできないのか!? この際誰でも!」

堂下「そうだよ、うちの先生じゃなくても! 誰か教員免許を持ってる人に!」

萩尾「いや、そんなの急に言われても……」

長田「教員免許なんて……パッと用意できるものでは……」

菊池「ぐっ……」

中田「うう……」

黒服全「…………」

権田「……いや……。ある……!」

黒服全「!?」

ざわ…



山崎「…………権田さん?」

佐衛門三郎「今、なんて……?」

権田「……どっこい、あります教員免許……!」

黒服全「えっ!?」

権田「私が……持ってるっ……!」

黒服全「!!」

ざわ… ざわ…ざわ…



山崎「ご、権田さん……」

権田「クククッ…。取っててよかった、教職課程っ……」

川崎「……持ってるんですか? 教員免許……」

権田「ああ……いつか役に立てばと思って……。遠い昔の学生時代だ……」

荻野「す……すごいじゃないですか!」

佐衛門三郎「教科は!? 何の教科ですか!?」

権田「国語だよ……。古本とか好きだったんだ……」

\オーッ/



権田「教壇に立ったことは一度もないが……。免許状は大事に額縁に入れて飾ってある」

権田「有効期限もOK……。この前更新講習も受けた……」

権田「私……いやこのワシが……! 引率しようっ……!」

中田「やったぁ!」

萩尾「イエス!」

権田「黒服になって四半世紀以上……。このまま定年を迎える人生だと思っていたが……」

権田「この歳にして……やっと……」

権田「オヤジに……、お嬢のために恩返しできる舞台……!」

長田「凄いです! 輝いてますよ権田さん!」

菊池「これで全国大会も大丈夫やでー!」

堂下「ごーんーだ! ごーんーだ!」

権田「ありがとう…… ありがとう……」ボロ…ボロ…



佐衛門三郎「あ、でも……」

山崎「どうした、佐衛門?」

佐衛門三郎「その服で行くんですか? 引率……」

山崎「それはそうだろう、これが我々の正装だ」

佐衛門三郎「うーん、いつもと同じかあ……。どうなのかなぁーそれって……」

権田「?」

佐衛門三郎「せっかく利根川先生の代理なんですから! もっとキメていきましょうよ!」

権田「あ、あんまりそういうのは得意じゃ……」

佐衛門三郎「大丈夫ですよ! 僕らも協力します!」



佐衛門三郎「僕みたいなポインテッドトゥシューズはどうですか? 今から買いに行きましょうよ!」

山崎「それは乱れすぎだろう……! お嬢の気分を害したらどうするんだ……!」

佐衛門三郎「大丈夫ですよ。お嬢はそんなことで怒る方じゃありません」

山崎「しかし……我々には弊社の容儀規定が……」

佐衛門三郎「もちろんそれはクリアしますよ! 規定違反なんてしませんから!」

山崎「うーん……」

佐衛門三郎「心配しないでください、山崎さん!」

山崎「まあ……お嬢が許せばな……」



佐衛門三郎「じゃあ、胸に花とかはどうです?」

権田「胸に花……?」

佐衛門三郎「卒業式とかに校長先生がつけてるようなやつですよ! バラの造花の!」

川崎「なるほど!」

荻野「いいね!」

中田「素敵です!」

堂下「おっ、それ本内お嬢様の真似ー!」

中田「あっ、な、内緒にしてくださいよお嬢には!」

ハハハッ アッハッハッ



萩尾「花の色は白と赤とありますが?」

権田「じ、じゃあ白かな……」

萩尾「肩書はなんて入れましょう?」

長田「『引率教諭』でいいんじゃないか?」

権田「き、教諭はさすがに恥ずかしいな……。せめて『顧問代理』で……」

菊池「ははっ、権田さん意外とシャイですね!」

ワイワイ ハッハッハッ



―大会当日―

智葉「…………おい」

山崎「はっ」

智葉「今日のあいつは何のつもりだ」

山崎「お気づきですかお嬢」

智葉「気づかないわけがないだろう」

権田「…………」ドキドキ

山崎(……大丈夫かな……)ドキドキ



山崎「利根川先生が急遽入院してしまいまして。今日は権田さんが代理で引率いたします」

智葉「それはその花にでっかく『顧問代理』と書いてあるからな。その恰好は何のつもりだと言っている」

権田「何も問題など」

智葉「問題だらけだろうが」

権田「?」



智葉「いつもと違う縦縞の黒服に、タレ目っぽいグラサン(ティアドロップ)、先の尖った靴(ポインテッドトゥ)……」

権田「はい」

智葉「……そして、急に日焼けサロンで焼いてきたようなその肌」

権田「一晩でがんばりました」

智葉「…………極めつけはその、上着に着けたでかい造花と小脇に抱えたでかい額縁。なんなんだよ」

権田「大丈夫ですよお嬢、準備万端ですから」ドキドキ

智葉「…………」



権田「せ、先鋒学院高校です! よろしくお願いします!」ギクシャク

受付「…………はい、ではこちらが今日の実施要項です」

権田「はっ。頂戴いたします」ギクシャク

受付「注意事項をよくお読みになって、集合時間に遅れないように。あとは放送の指示に従ってください」

権田「かしこまりました」キリッ

受付(…………なにこの人)



権田「…………」チラッ

受付「?」

権田「…………」チラッ チラッ

受付「…………」

智葉「おい何してんだ、行くぞ」

権田「あ、いえ……まだ……」チラッ チラッ チラッ

受付(額縁をチラチラと見せようとしている……? なにしてんだろ)



権田「…………」チラッ

受付「…………」

権田「…………」チラッ

受付「…………」

権田「……あの……教員免許の提示確認はいつ……」

受付「えっ」

権田「えっ」

受付「…………しませんよ、そんなの」

権田「えっ」

智葉「…………なにやってんだ」




【おもちときなこ】

二年生 1月

漫「部長って完璧超人ですよね」

怜「せやなー」

煌「ですねー」

漫「苦手なものとか、ほんま無さそうですよね」

怜「私も聞いたことないわ」

照「うん」

成香「そうなんですか……」

怜「今ちょうど智葉おらんし、黒服さんに聞いてみよか?」



山崎「お嬢の苦手なもの……ですか……」

怜「はい」

山崎「そうさなあ……」

佐衛門三郎「山崎さんは、お嬢について一番長いですよね?」

山崎「そうだけど……。知っての通り、完璧超人だからなあ……」

怜「やっぱり……」

山崎「あー……しいて言うなら」

怜「はい」

山崎「きな粉のお餅かな」

玄「おもち!?」ガタッ



煌「きな粉のお餅……ですか?」

怜「あの、シンゲン的な餅?」

山崎「ええ」

漫「へぇー」

煌「これは意外なところで……」

照「おいしいのに」

成香「どうしてなんでしょう……?」



山崎「味が嫌いではないと思うんですが……。いつもむせちゃうんですよね」

煌「むせ?」

山崎「はい、きな粉で」

怜「あいつそんなん苦手なんや……」

照「……意外」

佐衛門三郎「はははっ、可愛らしいじゃないですか」

玄(おもちにきな粉をまぶすんですか……。それはなかなかに斬新だね……!)



煌「ふむぅ、しかしこれは困りましたね」

怜「?」

煌「シンゲン餅と言えば、私の地元にあずさで帰った時の定番のお土産なんですが」

照「!」ビクッ

怜「そうなん?」

煌「ええ。車内販売でいつも売ってますし、駅の売店などにも」

照「…………」コソコソッ

成香「?」

照(…………あずさで帰る地元の話)

成香(……あれ? 宮永先輩がお菓子の話なのに消極的)



怜「そういや、こないだもおやつで出とったな」

煌「はい、まだいくつかそこの戸棚にありますよ」

成香「……そういえば、その時も部長……」

漫「……うん、確か食べてへんかった」

怜「残ってる数見ても……、間違いないな」

煌「ふーむ。そうしましたら、今後どうしましょうかね」

成香「今後?」

煌「部長がお食べにならないのに、毎度買ってくるというのもすばらくない話です」

漫「うーん」



怜「今まで通り買うてきてええんちゃう? 私は好きやで」

漫「うん、私も」

成香「はい」

煌「……そうですか?」

怜「気にせんでええてそんなん。ずっと置いといたら、いつかあいつも食うかもしれへんしな」

漫「そうですね」

成香「うんうん」

煌「わかりました! すばらです!」



怜「しかしええこと聞いたな」

照「ガイトのじゃくてん」

怜「よーし、ほな今度……」

智葉「食わんぞ」

怜「!」ビクッ

智葉「まったく……。何をくだらないこと話してるんだお前らは」

怜「い、いやー、今日もええ天気やなーって」

智葉「そんなもん無理矢理人に勧めるものじゃない。解散だ」

怜「えぇー」



その夜 玄と漫の部屋

玄「あの……漫ちゃん……」

漫「ん?」

玄「これ……食堂からもらってきたんだけど……」

漫「きな粉?」

玄「うん……えっと……あの……」

漫「?」

玄「おもちにきな粉がおいしいんだって……」

漫「うん、今日部活で言うてたな」

玄「だから……あのね……」

漫「…………うん」

玄「漫ちゃんのおもちにきな粉かけてもいいかな?」

漫「とうとうお医者呼ぶか今日は?」

玄「違うよぉ~~~」



玄「言いにくいお願いだと思ったけど、がんばって言ったのに~」

漫「……まあ、何の臆面もなく言うよりは爪の先くらいマシやけど。口に出した時点で一緒やて」

玄「えぇ~」

漫「あかんからね」

玄「…………あっ、黒蜜!」

漫「?」

玄「きな粉だけじゃダメだよね! 黒蜜もあればいい!?」

漫「は?」

玄「漫ちゃんのおもちにきな粉と黒蜜かけて」

漫「よし、お医者呼ぶな」

玄「待ってぇ~~~」



同時刻 智葉の部屋

智葉「ったく……。バカにしやがってあいつら」

コトッ

智葉「…………」

智葉(…………つい気になって持ってきてしまった)

智葉「…………」

智葉「こんな餅くらい……」

智葉「…………」

智葉「なんてことないっての。たまたまあいつらの前で食べたとき……」



智葉「…………」ソワソワ

智葉(……誰も見てないだろうな)キョロキョロ

智葉「…………」

智葉「……ただの夜食だ。練習とか克服とかそんなんじゃない」

智葉「…………」

智葉「…………」

ぱくっ

智葉「…………エホッ ケホッ ゴホッ」




【玄ちゃんとコスプレ写真】

三年生 6月

玄「はぁ…………」

漫(……最近また、玄があの写真見つめてボーっとしとることが増えた)

玄「ふぅ…………」

漫(こないだお姉ちゃんと電話したとか言うてたし……。そんでまた、地元の事でも思い出しとんのやろか)

玄「ほぅ…………」

漫(それに、あの写真の左端のあの子……)

玄「…………」

漫(……煌たちに相談したほうがええかな)



数日後の夜 玄と漫の部屋・玄ちゃんおふろタイム

漫「……さ、今のうちや。入って」

優希「おじゃまするじぇー」

煌「玄が最近元気ないって……?」

成香「心配です……」

漫「……うん。そんでひとつ見てもらいたいもんが」

煌「ほう?」



漫「前も見たことある思うけど。ほら、この写真」

煌「はいはい、去年見た和が写ってる……」

成香「昔のお友達との写真ですね。机の上にずっと飾ってるっていう……」

漫「うん」

優希「おー、のどちゃんいるじぇ」

煌「ええ、これで和と玄とご縁があったって気づいたんですが……」

漫「……そこやなくて、後ろ。こっちの子」スッ

煌「あっ」



煌「このショートヘアの子……?」

成香「優希ちゃん、ですか?」

優希「人違いだじぇ」

成香「でも……よく似てます……」

煌「優希……。この写真の方々とお知り合いでした?」

優希「のどちゃんも松実先輩もこんな昔に会ったことないじぇ。他も知らん人だじょ」



漫「……ほな、ほんまに人違いやんな?」

優希「だじぇ」

漫「前に寝てるとこ起こしたったとき……、名前間違えられたて話しとったけど」

優希「あー、あったじぇそんなこと」

漫「……それ、この子と間違えたんちゃうかなって」

煌「あ……」

成香「そうかも……」

優希「?」

煌「それがきっかけで、この子と優希のことを重ねて意識しちゃって……」

成香「……また昔を思い出しちゃったんでしょうか……」

漫「たぶんなー」



優希「よくわかんないけど、とどのつまり人違いだじぇ? なんも気にすることないじょ」

漫「そうなんやけどなー」

成香「前にもあったことだから……。心配です……」

煌「ふむぅ……」

漫「……どうしたもんやろか」

煌「…………よっし、それなら!」キュピーン

優希「?」

成香「煌ちゃん?」

漫「何か思いついたん?」

煌「今度の日曜日! みんなでおでかけしよう!」



次の日曜日

成香「下級生の五人で出かけるなんて初めてですねー」

漫「せやねー」

玄「えっと、どこに行くのかな……?」

煌「えーっと、この辺りのはず……、あっ、ここ!」

漫「ここは……」

成香「貸衣装のお店……ですか?」

煌「黒服さんにお願いしたら、紹介してくれたんだ! 今日一日貸し切りでいいと!」

優希「へぇー」

成香「すごいですー」



玄「ここで……何をするのかな……?」

煌「ふっふっふ、衣装屋さんに来たのならすることはひとつ!」

玄「?」

煌「レッツ! こすぷれいパーティー!」

玄「コスプレ?」

煌「そう! ここでいろんな服を着て、みんなで私たちだけの写真を撮ろう!」

玄「写真……?」

煌「私たちは私たちで! アレに負けないすばらな写真をいっぱい撮ればいいってことで!」

漫「おおー」

成香「なるほどー」

玄「……アレ……?」



衣装物色中……

漫「あっ、このパンダさんええな……」

煌「おー」

成香「かぶりものですか……?」

漫「……これ、ちょっと着てみてええかな……」

優希「へー、上重先輩そんなの好きなんだじぇ?」

漫「え、ええやんか!」



煌「それじゃ、カーテンオープン!」

パサッ

煌「おー、これは……」

漫「かぶりものっていうか……なんやろ……」

成香「頭にはパンダさんですけど……」

玄「他はずいぶん面積が少ない服だね……!」

優希「おへそまるだしで……ミニミニスカートだじぇ……」

煌「ということはつまり……」

玄煌(…………おもちがさらに目立つ!!)キュピーン



漫(…………なんや視線が怖い)

煌(フフフッ……。相変わらずのボリュームですね……!)ジーッ

玄(これはなかなかになかなかだね……!)フヒヒッ

成香(と、とりあえず玄ちゃんが笑顔になった……? のかな……?)



更に衣装物色中……

成香「こちらは……。ファンタジー衣装のコーナーですね」

漫「あれ? 煌は?」

玄「あ、いまここで着替えてるよ……」

パサッ

煌「じゃーん! どうかな!?」

玄「おー」

煌「ぴちっとした黒い服にファンタジーな短剣装備! アサシンスタイル!」

漫「へー、ええやん」

優希「かっこいいじぇ、花田先輩ー」

成香「大魔王と戦いそうな感じです……」

煌「すばら!」



煌「ほら、玄も何か! この辺のやつはどう?」

玄「うーん……。じゃあこれとか……」

玄ちゃん着替え中……

煌「ではでは、ご登場!」

パサッ

成香「わぁ……、これもすてきですー」

漫「魔術師風……かな?」

煌「玄ならドラゴン召喚士だねー。ほら、竜のぬいぐるみもつけちゃおう!」スッ

成香「あー」

漫「あー」

玄「へ、変じゃないかな……」

煌「似合ってるよ! すばらっ!」



煌「成香は……。やっぱりこれとか? 天使の衣装!」

成香「て、天使なんて……。畏れ多いです……」

漫「気にせんでええよ、コスプレなんやからー」

玄「これ、背中に羽もついてるんだねー」

優希「なんかすっごい麻雀強くなりそうだじぇ!」

成香「で、でも……」

煌「んー、じゃあこっち。幼稚園児スモックなんてのもあるけどー」

成香「…………!!」ゾクッ

煌「思い切って園児服?」

成香「い、いえ…………。天使の服で」

煌「そう! すばらだね!」

成香(……今何か……物凄い寒気がしました……)



煌「では、最後にゆーき!」

優希「うーん……。あんましどれもピンとこないじぇ」

煌「そう言わずに! 写真の子のことがあるんですから、ゆーきが一番大事なんですよ!」ヒソヒソ

優希「そう言われてもだじょ……」

漫「ほな、自分はどういうのがええの?」

優希「うーん……。タコスの着ぐるみとか!」

玄「そ、そういうのは無いかな……」

煌「とりあえず、片っ端から来てみましょうか!」



優希いろいろ試着中……

煌「ファンタジーな冒険者……魔法少女……ステージ衣装……」

優希「落ち着かないじょ」

成香「和服にナース服に巫女装束、警察官、フォーマルスーツ……」

優希「……趣味じゃないじぇ」

玄「本当いろいろあるねー」

煌「うーん……」

…………

……



優希さらに試着中……

玄「これは……チャイナ服?」

優希「おうおうっ、万事屋なめんじゃないアルネ!」

成香「全身鎧……」

優希「もう誰も殺させない!」

煌「フレイムヘイズ!」

優希「うるちゃいうるちゃいうるちゃい!!」

漫「あっはっはっ、ええよええよー」

煌「すばらですよ、ゆーき!」

優希「…………先輩たち、遊んでるだけだじぇ?」



煌「さて、一通りいろいろと着てみましたが……」

漫「うーん、なかなか決まらんなー」

優希「もう単純なのでいいじょ」

成香「単純なの……って言っても……」

優希「うーん……」

キョロキョロ

優希「あっ、……これかっこいいじぇ……」

成香「真っ赤なマント……?」



パサッ

優希「うん! 制服の上からこれでいいじょ」

漫「えー、それだけじゃ物足りないんちゃう?」

優希「問題ないじぇ~」ニコニコ

煌「……まあ、本人が気に入るのが一番だけど」

優希「これで麻雀打ったらちょーし出そうな気がするじぇ」

玄「ま、麻雀はどうかな……」

優希「よーし、今度のインターハイもこれで出るじぇ!」

成香「えぇー!?」



煌「じゃ、みんなそろって一枚――」

はいっ、チーズ!

パシャッ

店員「はい、こんな感じです」

玄「わぁー」

煌「すばら!」

店員「後日大きくプリントしてお渡ししますねー」

成香「ありがとうございます!」

煌「じゃあ、お次はどれにする!? まだまだいっぱい撮るよー!」

…………

……



漫「あー、たっぷり遊んだなー」

優希「なかなかおもしろかったじぇ!」

玄「うん! 楽しかったね!」ニコッ

煌「……おっ、いい顔したね玄!」

玄「えっ?」

成香「はい! すてきな笑顔です!」

漫「よかったー」

煌「心配してたんだよ!」

玄「……えっ?」



漫「最近また、あの写真眺めてボーっとしてたやん?」

成香「優希ちゃんと似た子が写ってたから、また思い出しちゃったのかな? って思ったんです」

煌「そう! だから今日ここに来たのは!」

玄「…………」

煌「私たちも負けないくらいに! 玄と一緒にいっぱい写真を撮っちゃおう大作戦!」

優希「てことだじぇ!」

玄「……そう……だったんだ」



玄「ごめんね心配させちゃって。私、大丈夫だよ」

漫「…………そう?」

玄「落ち込んだりしてないよ。むしろあの写真を見て、がんばらなくちゃって思って燃えてるよ!!」フンス

煌「そうなの?」

玄「うん。……この間、お姉ちゃんと電話した時にね……」

玄「あの写真に写っている友達が、みんな全国大会に出るって聞いたの」

玄「だから思ったんだ。私も全国に出て、みんなに会うんだ! ……って」

玄「寂しさよりも、今はそういう気持ちでいっぱいだよ」



漫「ほな、元気なさそうにしてたのは……」

玄「うーん、ちょっと頑張りすぎちゃってたかな? 疲れてボーっとしちゃうことは……最近多かったかも」

漫「……それだけ?」

優希「なーんだじぇ」

煌「…………ホッ」

成香「安心しましたー」



優希「それじゃー、これにてめでたしめでたしだじぇ!」

成香「よかったです……」

玄「うん、みんなありがとう! コスプレ写真も凄く楽しかった!」

煌「すばら! じゃあこれからもいっぱい写真撮ろうね、玄!」

玄「そうだねー。今度は撮影する方をやってみたいな!」

漫「ほな、デジカメも買いにいかんとなー」

玄「あっ、欲しいよねデジカメ! カメラは昔から好きだったんだ!」ウフフッ



成香「ところで、先輩方は今日どうしてお誘いしなかったんですか?」

煌「いやーさすがにね……」

成香「?」

煌「こないだのアレがあって、部長にコスプレしに行きませんかとはちょっと声をかけられず……」

玄「ああ……」

漫「メイドエプロン事件な……」

成香「じ、事件って言うのはどうかと思いますけど……」

煌「部長だけ誘わないというわけにもいかなかったので。今回は我々だけにしておこうかと」

漫「しゃーない」

煌「まあ、また今度みんなで行けば! もう少しほとぼりが冷めてから!」

玄「そうだね、先輩たちとも写真撮りたいもんね!」



参考画像(漫,煌&玄,成香)

2nenCos

引用元:
プレシャスメモリーズ 咲-Saki-
『咲-Saki- 阿知賀編』4巻
『ムダヅモ無き改革』4巻



【エビロールとメイドエプロン】

三年生 5月

山崎「…………で、なんだよこんなところに呼び出して」

海老谷「山崎さん……。お久しぶりです」

山崎「…………入院したんじゃなかったのか? 病院はもういいのか」

海老谷「何か色々検査は受けさせられましたけど、別に異常ありませんでしたよ?」

山崎「…………」



山崎「……それで、何の用だ」

海老谷「クククッ……耳よりな話を持ってきましたので。ぜひお嬢に取り次いでいただきたく」パチンッ

山崎「……もううちのチームに関わるなって言われたと聞いたが」

海老谷「まあまあその辺は。お嬢のいつもの手厳しい言葉攻めですよきっと」

山崎(……本当堪えないなこいつ)

海老谷「部員の皆様の性格や好みはもう把握してますからね。大体わかりますよ」

山崎「…………ほう?」



海老谷「一言で言えば、宮永様はお菓子にしか興味がない」

山崎「…………」

海老谷「園城寺様はひざまくらにしか興味がない」

山崎「…………」

海老谷「そしてお嬢は我々に興味がない」

山崎「…………」

海老谷「完璧です」

山崎(…………全然的外れだろとは言えないのがまた腹立つな)



海老谷「それはさておき……。聞いてますよ……」

山崎「何をだ」

海老谷「今年のホープ……片岡優希お嬢様の力の源……!」

山崎「?」

海老谷「そして必ずや、お嬢のお力にもなれる秘策があるんです……!」パチンッ

山崎「…………その無駄に指を鳴らすの、お嬢の前でやるなよ」

海老谷「お見せしましょう……。この海老谷がお届けする海老旋風(エビロール)……!」クルッ クルッ

山崎(…………なんだよその手の動きは)



数日後 学校の調理室

海老谷「皆様、今日はようこそおいでくださいました」

智葉「…………」

漫(あの人って……?)

怜(……しばらく見てへんかった黒服さんやんな)

玄(辞めちゃったのかと思ってました……)

煌(黒服じゃないのにサングラス……?)

海老谷「本日はこの海老谷が、麻雀部の皆様のためにと日々思索している100の作戦の中から……」

智葉「いいから早く本題に入れ」

海老谷「……クククッ、かしこまりました。いやーお嬢の罵倒も久方ぶりでゾクゾクしますね。また腕を上げられたようで」

智葉(…………キモッ)



海老谷「今回はズバリ、片岡優希お嬢様」

優希「じょ?」

海老谷「聞きましたよ……! なんでも、ロール料理がたいそうお好きなようで」

優希「私が好きなのはタコスだじょ?」

海老谷「そんな貴女のために! ご用意させていただきました。魅惑のエビロール……!」クルッ クルッ

優希「???」

海老谷「クククッ……。大丈夫ですよ、きっとお気に召します。海老旋風(エビロール)の世界をご堪能あれ……!」クルッ クルッ

智葉(相変わらず人の話を聞く気ねえなこいつ)



エビロール調理中

海老谷「まずはトウモロコシと小麦粉を混ぜた皮を焼き……」ジュゥゥ

成香「トルティーヤみたいな……?」

優希「タコスなのか?」

海老谷「そして新鮮な赤座海老を熱い油へin……!」

ドバッ

成香「えっ……」

煌「丸ごと……!?」

成香「殻……取らないんですか……!?」

漫「ワタとかも……そのまんまやけど……」



バシャッ バシャバシャッ

山崎「うっ、うわっ、ちょっおい!」

ビチビチッ バッシャバッシャ

佐衛門三郎「油が! 飛び散ってますよ!」

海老谷「そしてカラリと揚がった海老を、サニーレタスと一緒に皮でくるんっとひと巻き……!」

ドサッ

海老谷「さあ! 召し上がれ!!」

優希「それ……だけ……?」

怜「いや、殻ごと海老を巻かれても……」

成香「堅そうです……」



海老谷「さあさあ! 片岡様!」

優希「えぇ~……」

玄「がんばって、優希ちゃん!」

煌「ファイトですよ、ゆーき!」

優希(……新しい罰ゲームなのかじょ……?)

海老谷「さあさあ!」

優希「……う~~~……」

ぱくっ



優希「…………」

バリッ… ボリッ… ボキボキッ…

海老谷「どうですか!? おいしいでしょう!」

優希「…………」

んべっ

海老谷「!」



海老谷「ど、どうなさいました?」

優希「…………刺さる」

海老谷「?」

優希「口ん中痛いじぇ」

海老谷「そ、そんな!」

優希「……もう食べたくないじょ」

海老谷「!」ガーン

智葉(…………そりゃそうだろ)



玄「結局、だれもそれ以上食べず……」

ドラ猫「…………ケッ」

漫「あの食い意地の張ったドラ猫まで……」

煌「せっかく連れてきましたのに……、見向きもしませんでしたね……」

智葉「…………じゃ、そういうことで。もういいな?」

海老谷「え……」



海老谷「そ……んな……」ヘタリ

山崎「……そこまで落ち込まれてもな」

川崎「しょうがないだろ?」

海老谷「……もう……買っちゃったんです……」

荻野「買っちゃった……?」

佐衛門三郎「……何を?」

海老谷「赤座海老……200キロ……」

中田「えっ」



堂下「……なにやってんだよ……」

権田「大変だぞ、そんな量さばくの……」

海老谷「…………」

萩尾「……でもまあ、自業自得だよな」

長田「がんばって処理するんだぞ」

菊池「うんうん」

海老谷「…………弊社の金で」

全員「なにィ!?」



運送業者「失礼しまーす」

煌「あっ、はい?」

運送業者「ええと、麻雀部様はこちらで?」

山崎「……そうですが」

怜「なんやあの保冷箱の山……?」

運送業者「ご注文いただいてた残りの赤座海老、お届けにあがりましたー」ドサドサッ

智葉「なん……だと……」

成香「そ、そんなにたくさん……!?」

山崎「ど、どうしますお嬢……!?」

智葉「いやどうするって……そんなもん……」

山崎「…………」ゴクリ

智葉「捨てるわけにはいかないだろ……!」



智葉「…………玄」

玄「はい」

智葉「お前の実家の旅館では……赤座海老は出さんのか」

玄「全部使いきれるかわかんないですけど……。いただけるならぜひ」

智葉「使えそうな分だけでいい、買ってもらえんか。多少は安くしよう」

玄「おまかせあれです!」



智葉「あとはうちの組……ゲホゴホン、親父の仕事の贈答品にでもして……。もう開封しちまったのもあるな」

山崎「……はい」

智葉「……明日、調理室か食堂は空いてるか? 残りは校内で配るしかないだろ」

山崎「!」

ざわ…

漫「それは部長……」

玄「いいんですか……?」

智葉「……いい機会だ、こうなったら開き直って部の宣伝にしよう。新入部員を増やせるかもしれんしな」



智葉「漫、これでお好み焼きは作れるか。タコ焼きに入れるでもいい」

漫「できますけど……。これだけ立派なやつなら、まるごと鉄板焼きでもええと思います」

智葉「なんでもいい、頼む」

漫「了解です!」

優希「エビタコスもほしいじぇー」

漫「はいはい」

怜「うちの部ってこういうとき人材豊富やんな」

照「…………またおいしいものが食べられる」

煌「すばら!」


智葉「……あと、代金は後で全額お前に請求するからな」

海老谷「えぇー!?」

山崎「…………当たり前だろ」



次の日

山崎「お嬢、設営完了いたしました。急遽ですが食堂を開放していただきまして」

智葉「よし、準備はいいな。調理係!」

漫「はいっ!」

玄「おまかせあれ!」

智葉「ウェイトレス!」

成香「がんばります!」

優希「やったるじぇ!」

煌「すばら!」

智葉「…………呼び込み係」

怜「…………」

照「…………」

智葉「お前らだよ、三年生。誰のことだって顔すんな」



怜「いやー、わざわざ呼び込みするほどでもないんちゃうかなー」

智葉「いいから働けよお前ら」

照「このいいにおいだけで人は来ると思う」

智葉「お前らだけサボってたら後輩に示しがつかんだろうが」

怜「サボるとは人聞き悪いで、もしものために力を溜めとかんと」

照「得意分野を伸ばす麻雀部がいいと思います」

智葉「お前がなんだかんだ一番知名度高いんだぞ照。こういう時に前へ出なくてどうする」

照「昔ガイトが露出を増やしてもろくなことは無いって」

智葉「働け」



怜「ほんなら聞きたいんやけどー」

智葉「…………なんだ」

怜「三年生が呼び込み係なら、智葉もやんなー?」

照「なー?」

智葉「……何?」

怜「まさかあの責任感強い我らがお嬢がー、私らだけにやらせるとは言わんはずやでー」

照「でー」

智葉「……こいつら……」



智葉「……何を考えてるか知らんが。やるよ、私も」

怜「その言葉が聞きたかった」

照「うん」

怜「ほな」ニヤッ

智葉「?」

怜「全員同じ衣装てことで、ええねんよなー?」

智葉「……?」



怜「じゃーん、これ」

智葉「!」

優希「その服って……」

煌「いわゆるメイドエプロンというものですね」

成香「凄くふわふわで……かわいいです……」

漫「そ、そんなのを……」

玄「部長が着るの……?」

一二年生「…………」ゴクリ

一二年生(…………に、似合わなさそう…………!)



智葉「……そんなもんどこで手に入れたんだ」

怜「昨日黒服さんに言うたら秒速で用意してくれはったで、三人分」

智葉「お前ら……」ギロッ

黒服全「ヒィッ」

怜「いやでもー、いやなら無理せんでええでー」

照「でー」

智葉「…………何?」



怜「あー、残念やわー」

照「わー」

怜「智葉がこれ着てくれる言うなら、私らも喜んでやってんけどなー」

照「なー」

智葉「お前ら……それが狙いか……」

怜「これはもう呼び込み無しでやるしかー」

照「しかー」

智葉「…………」ブチッ



智葉「…………誰がやらないって言った」

怜「えっ」

ざわ…

智葉「私が着たら……やるんだろ?」ビキビキッ

照「えっ」

智葉「やるんだな」

照「ガイト……」

怜「は、早まったらあかんで」

智葉「…………やるんだから問題ないだろうが」ゴゴゴゴゴゴ

ざわ… ざわ…ざわ…



次の日

新入生A「あっ、その海老どうしたのー?」

新入生B「食堂でもらったの。麻雀部さんが無料プレゼントだって」

新入生A「ふーん、すごーい」

新入生C「う、うん……。でもね……」

新入生A「?」

新入生B「凄い美人のメイドさんが……客引きしてるんだけど……」

新入生C「うん、顔が……」

新入生B「…………怖い」



智葉「はい、いらっしゃいいらっしゃいー」グキゴキッ

新入生A「ひっ」

智葉「麻雀部からの……ご、ご奉仕だ。遠慮なく食べて行ってくれご主人様」ビキビキッ

新入生A「は、はい……」ビクビク

智葉「そ、それでもしよかったら! 一緒に麻雀をやらないか!!」ギロッ

新入生A「ヒィッ」

煌「四方八方にすばらく振りまいてるね……」

漫「……愛想やなしに、殺気をな」

玄「…………うん」

権田(あれこそオヤジ譲りの覇気……!)

川崎(極みの道っ……!)

荻野(……跡継ぎの……器っ……!)

智葉「お前らなにか不穏なこと考えてないか?」ギロッ

黒服全「ヒィッ」



新入生A「見てきたよ……。こわかった……」

新入生B「うん……」

新入生C「どうしてあんなこと……?」

新入生A「麻雀部入部のお誘いらしいよ……」

新入生B「えぇー、どうする……?」

新入生C「うーん、エビはおいしかったけど……」

新入生A「…………」

新入生B「…………」

新入生C「…………」

新入生ABC「…………ごめんなさい」



山崎「その結果、エビの方は見事に完売……」

智葉「…………」

山崎「しかしやはりといいますか、部に入りたいと思う人はいなかったようで」

智葉「私のせいかよ」

山崎「い、いえ! お嬢のすばらなカリスマが凄すぎまして、皆さん遠慮されてしまったのかと」

智葉「…………フォローしなくていいよ。大体わかってる」

山崎「結局、今年の新入部員は片岡様だけでしたね」

智葉「信じられるか……? これがインハイ優勝校だぞ……?」

山崎「HAHAHA」

智葉「お前らが居るから引かれてる方が影響でかいって自覚もっと持てよ」

山崎「HAHAHA」




【タコ焼き屋と常連客】

三年生 7月のとある金曜日 部活終了後

玄「今日もお疲れさまでしたー」

優希「疲れたじょ~。マスター、今日もタコ焼きいっちょ頼むじぇー」

漫「誰がマスターやねん。タコ焼きバーかここは」

優希「似たようなもんだじぇ~」

漫「麻雀部の部室やねんけどな」

煌「まあまあ。毎週金曜日はみんなこれを楽しみにしてるんだから!」

成香「うふふっ。漫ちゃんがタコ焼きとお好み焼き作ってくれるの、すっかり恒例行事になっちゃいましたね」

漫「……まあええけどさ……」



玄「でも、タコ焼き専用ブースが部室に常設されるとは思わなかったよね~」

漫「お好み焼きの鉄板もあるで」

智葉「……フン、まったくあの黒服どもは」

怜「ええやん、智葉かて毎週食いに来とるやんか」

智葉「……あるものは使わなきゃもったいないだろう。こんなでっかい業務用を今から撤収する方が手間だ」

怜「素直やないな~」

照「…………」モグモグ



智葉「食べてるばっかりじゃなく。お前らはもっと作ってくれる漫に感謝しろよ」

漫「べ、別にそんな大したことは……」

怜「もちろんやで~」

照「もがもが」モグモグ

成香「いつもありがとうございます、漫ちゃん」

漫「……まあ、気持ちよく食うてくれるのは悪い気はせんけどね」

照「…………」モグモグモグモグ



優希「んじゃマスター、今日のおすすめは何だいっ?」

漫「お好み焼きとタコ焼きしか無いで」

優希「そんじゃ、おまかせで適当に握ってくれだじょ!」

怜「寿司屋か」

漫「うちで握っとるのは麻雀牌だけや」

優希「ほっほう、じゃあいっちょその麻雀牌とやらを握ってもらおうか!」

漫「宮永先輩ー、優希がもう一荘打ちたいそうで」

照「いいよ」

優希「あっちょっ待つじょもう握らなくていいですごめんなさい」

アッハッハ アッハッハッハ




【お嬢と不器用なありがとう】

三年生 2月13日

智葉「今年もバレンタイン、か……」

パサッ

智葉「煌から届いたこの招待状……」

智葉「去年のように……。明日、部室でチョコパーティをやってくれるらしい」

智葉「今年はさらに、優希と……。あの新人女黒服L(西口)まで巻き込んでるのも見た」

智葉「……盛大になりそうだな」



智葉「麻雀部を引退してから……。部室には全然顔を出してなかった」

智葉「黒服どもには引き続き部を支えるように言って……。おかげで私にはくっつかなくなっていた」

智葉「照や怜も、授業が違えば顔を合わせることもなし……。考えてみれば、しばらく誰とも話してないな」

智葉「久しぶりに。様子を見に行ってやるか」

智葉「…………」

智葉「…………」

智葉「…………」

智葉「…………手ぶらで…………か…………?」



智葉「…………」

智葉「…………」

智葉「……何を考えてんだ私は」

智葉「今年も煌たちが作ってるだろ、あいつらの分まで。私がすることなんか無い」

智葉「大体、私のガラじゃあないってんだ。バカバカしい」

智葉「…………」

智葉「だが……。どうしても引っかかってる、去年怜に言われたあの言葉……」


怜「――あげてへんかったん? 今まで」

智葉「…………誰がやるかよ」



智葉「…………」

智葉「…………」

智葉「…………」

智葉「…………」

智葉「……そういうもんなのか……?」



智葉「感謝……だと……? 私があいつらに……?」

智葉「…………何言ってる、鬱陶しかっただけだ。昔っからいつでもどこにでも付きまといやがって」

智葉「…………」

智葉「…………」

智葉「しかし……」

智葉「……今年やらなきゃ……。もう無いか……」

智葉「…………」



山崎「お嬢! 今度の企画なんですけど……!」

川崎「お嬢! 明日のおやつは何になさいますか……!?」

荻野「お嬢! どうですかこの新しいコーヒーセット……!」

佐衛門三郎「お嬢! また僕のパワポ見てくださいね……!」

権田「お嬢! 次はこちらの対局室です……! がんばって……!」

中田「お嬢! みんなでボウリング行きましょうよ……!」

堂下「お嬢! 自分も園城寺様の体力づくり、ご一緒していいですか……!?」

萩尾「お嬢……!」

長田「お嬢……!」

菊池「お嬢……!」


智葉「…………」

智葉「…………ちっ」

智葉「最後まで煩わせやがって……」



翌 14日

智葉「結局、朝まで悩んで……。チョコを用意する時間なんかなかった」

智葉「手に入ったのは、登校途中こっそり寄ったコンビニで買った……板チョコ10枚」

智葉「キラキラふわふわしたやつなんか買えるかよバカ……。10個も同じのなんてこれくらいしかねえし」

智葉「…………まあ、チロルチョコにしなかっただけありがたく思えよな」

智葉「さて、どうやって渡すものか……」チラッ

部員「ハッピーバレンタイーン!」

ワイワイ キャッキャッ

智葉「……とりあえず。終わった後だな」



智葉「…………おい」コソッ

西口「?」

智葉「…………おい、黒服L」チョイチョイ

西口「あらお嬢! どうなさいました、こんな隅っこで」

智葉「シーッ!! でかいんだよ声が!」

西口「?」

智葉「今日のこれが終わった後。黒服全員残ってるように伝えろ」

西口「! ……それって……」

智葉「いいから言う通りにしろ。部員には内緒だぞ」

西口「…………かしこまりました!」

智葉「…………」

西口(これは……!)



部員帰宅後

山崎(全員部室に残されて……お嬢からの通達……)

川崎(高校三年生二月、卒業間近のこのタイミングに全員集合とは……)

荻野(これは……)

佐衛門三郎(ついに……来たか……)

権田(お嬢が部活を引退なさってから、ずっと覚悟はしていたが……)

堂下(間違いない……)


西口以外(……お嬢チーム解散のお知らせっ……!)


西口(バレンタイン……!)ニコニコ



中田(あああ……。ついにクビっ……!)

萩尾(人事異動……!)

長田(左遷っ……!)

菊池(南波照間校行きっ……!)

ざわ… ざわ…


西口(約束通り……。理由は何も話してませんよ、お嬢……!)

西口(サプライズですもんね……! わかっちゃうとは思うけど……!)

西口(ウフフッ……。やっぱりお嬢も女の子……! がんばれっ……!)



山崎(しかし、最後を皆様からチョコをいただいた日にしてくれるとは……)

川崎(なんたる温情っ……! 圧倒的慈悲っ……!)

荻野(最後に……いい思い出ができました……!)

権田(心安らかに……受け容れます……!)

佐衛門三郎(本当にありがとう……ございましたっ……!)

花京院(後悔はない…… これから起こる事柄に…… ぼくは後悔はない……)

堂下(……誰だこいつ)



智葉「あー、まあなんだ」

西口以外「!」ビクビクッ

西口「…………」ニコニコ

智葉「……今まであんまり、面と向かって言ったことは無かったが」

西口以外「…………」ドキドキ

智葉「…………お前らよくやってくれたな、今まで」

中田(やっぱり……!)

萩尾(お嬢が我々にそんな優しい言葉って……!)

長田(絶対クビ……!!)

菊池(南波照間……!!)



山崎「うっ……ううっ……」ボロ…ボロ…

智葉「!?」

川崎「やっぱり……ですか……」ボロ…ボロ…

荻野「わかっていても……これは……」ボロ…ボロ…

佐衛門三郎「言葉に……できないっ……!」ボロ…ボロ…

権田「感無量……ですっ……!」ボロ…ボロ…

智葉(えっちょっと何を泣き出してんだこいつら)

西口(ウフフッ……。皆そんなに嬉しいなんて……!)

智葉(意味わからん……。さっさと終わりにさせろよ)



智葉「…………じゃあ、もうわかるだろ。ほら」

スッ

堂下「えっ」

中田「えっ」

萩尾「えっ」

長田「…………えっ?」

智葉「…………」

菊池「……SHOWAミルクチョコレート……?」

智葉「…………ああ」



智葉「…………」

黒服全「…………」

智葉「…………」

黒服全「…………」

智葉「…………」

黒服全「…………」

西口「?」



智葉「どうした、いらんのか」

山崎「えっと……あの……それは……?」

川崎「何……ですか……?」

智葉「……見てわかるだろ。言わせるなそれ以上」

荻野「?」

佐衛門三郎「い、いえ……」

権田「ちょっと何言ってるか……」

堂下「わからないんですが……」



西口「もうー。じれったいですねー皆さんもお嬢もー」

西口以外「?」

西口「ほら! チョコレートですよ! お嬢からのバレンタイン!」

西口以外「えっ」

智葉「…………そうだよ」



萩尾「お嬢が……」

長田「チョコを……?」

西口「そうですよ!」

智葉「…………ああ」

菊池「……???……」

智葉「…………」

中田「…………西口さんにあげるんですか……?」

西口以外「!!」

智葉「…………は?」



山崎「あーはいはい、そういうアレ!」

川崎「ですよねー!」

智葉「…………いや、おい」

佐衛門三郎「理解しましたよ、パーフェクツに」

荻野「お二人、そういう関係だったんですね!」

智葉「何言って……お前ら……」

権田「こんな形でお披露目とは、いやいやお嬢も隅に置けませんな」

堂下「おめでとうございます!」

中田「お幸せに!」

智葉「…………」

西口以外「 Congratulations...! Congratulations...! 」パチパチパチパチ

ハッハッハッハッ

智葉「…………」



萩尾「…………あれっ、お嬢?」

智葉「…………」

西口(…………あっ)

長田「……どうしたんですか?」

菊池「そんな怖い顔して……」

西口「…………」

智葉「アホかお前らはーーーー!!!!」

黒服全「ヒィィーーーー!!!!」



――こうして、智葉のはじめてのバレンタインは散々な結果に終わったわけや。

黒服さんたち泣いとったで、バッキバキに折れた板チョコじっと見つめながら。

なんや全員ものすご気持ち悪い笑顔やったけどな。



でも、智葉はまだ気づいとらんかった。

一か月後のホワイトデー。

私らの卒業記念も相まって、去年以上の文字通り山のようなお返しが届くことに。

そして、その大半が照の胃袋に入るという約束された事実に。

私には見えとったけどな、未来視なんかせんでも。



ま、ほんまにいろいろあったけど。楽しかったで、三年間。

一緒に頑張って支えてくれる優しい仲間たちがおって。毎日至れり尽くせりのお嬢様扱いしてもろて。

何より、全国大会に出てあいつらと打ちたいっていう……いちばんの夢まで叶えてもろた。

感謝してるで。

お嬢とゆかいな仲間たちに幸あれ、や。

ああお嬢 ああ黒服 フォーエバーソーファイン


先鋒学院高校麻雀部 第一期卒業生 園城寺怜



カン






【海老谷レポート完全版】

智葉「そして……成香……」

パサッ

智葉「…………」

智葉「……何だよこれは」

パラッ パラパラッ

智葉「他の奴等はせいぜい、一人数枚ずつのホチキス留めだってのに……」

智葉「……一つだけ冊子並みの厚み……。明らかに安いコピーと違うきれいな紙と印字……機械で綴じた製本……」

智葉「……これは……」

智葉「オフセット印刷……!」

パラッ



P1:序文

このたびは本内成香お嬢様を団体戦レギュラーに推薦するという大任を仰せつかり、誠にありがとうございます。

本件の展開にあたって、この海老谷がまず考えたことは何か?

それは宇宙一可愛らしい我が麻雀部の至宝、成香お嬢様の可愛らしさが如何にしてここまで育て上げられたのか、

そのルーツである北の大地・北海道の魅力を詳らかにせねばならないという使命感でありました。

本レポートでは成香お嬢様の可愛らしさの源泉たる北海道の魅力を歴史・名所・グルメ等様々な視点から解析し……

…………

……


智葉「…………長ぇよ前置きが」



P2:目次

北海道知事ロングインタビュー「母なる大地の恵み」・・・・・・・3
写真と史跡で振り返る北海道の歴史 ―開拓者と現地民―・・・・39
定番から穴場まで! 一度は行きたい北海道観光スポット・・・・53
最新北海道グルメマップ・本内牧場もあるよ!・・・・・・・・・77
本内成香お嬢様完全プロファイル これが天使だ!・・・・・・・81
成香お嬢様を団体戦レギュラーに推薦する100の理由・・・・・85



智葉「…………読むかこんなもん」



P85~:成香お嬢様を団体戦レギュラーに推薦する100の理由 ―私、海老谷の寸評とともに―


「ちっちゃかわいい部員ランキング1位」
すべてはこれに尽きますね。身長145cmは堂々の部内トップです。

「園児服が似合いそうな部員ランキング1位」
ちいさい=園児=正義です。説明するまでもありませんね。

「頭なでなでして差し上げたい部員ランキング1位」
あの可愛さなら誰だってそうします。お嬢だってそうします。

「小動物のような怯えた仕草が可愛らしい部員ランキング1位」
非常に庇護欲をそそりますね。守ってあげたいです。

「お茶をお出ししたときに返してくださる笑顔がちょーかわいい部員ランキング1位」
天使の存在を信じますか? 私は毎日部室で見ています。

「コーヒーを間違えてブラックで飲んでしまったときに見せた涙目がキュートな部員ランキング1位」
意外とドジっ子な一面もお持ちですよね。私がお出しするときはいつもミルクと砂糖を二つずつです。

「部活中に皆様が飲んだお茶の片づけを手伝ってくださる部員ランキング1位」
黒服がやりますと再三申し上げているのですが、有難いことです。花田様の方が回数は多いんですが可愛さで1位です!

「対局中の真剣に頑張っていらっしゃる姿が凛々しい部員ランキング1位」
常に怯えておられる印象が多く思われがちですが、対局中の表情はキリっとしていて力強さを感じますね。

「対局中お菓子の入った器に手を伸ばす仕草が愛らしい部員ランキング1位」
宮永様の一心不乱な姿も素晴らしいですが、他の皆様に気を遣って少しずつ召し上がっている可愛らしさに軍配です。

「他の皆様の打ち筋をすてきですと褒め称える姿が神々しい部員ランキング1位」
自分より他人へ対する心遣い。対戦する相手へのリスペクト。これが無くては一流の麻雀打ちとは呼べないでしょう。

「緊迫した対局の中でその存在が癒しを与えてくださる部員ランキング1位」
勝負の緊張感は大切ですが、それだけでは息が詰まります。時に癒しが無くては激戦のインターハイは乗り切れません。

「相手に振りこんでしまい涙目になったところを全力で励まして差し上げたい部員ランキング1位」
他の皆様方が非常に強い中、よく頑張っていらっしゃいます。くじけず打ち続ける姿にキューンときますね。

「恐る恐る立直をかける姿にがんばれ! と声をかけたくなる部員ランキング1位」
何しろ他の皆様はお強いので、立直をかけても普通のことですから。励まし甲斐があるという点では随一ですね。

「和了して安堵した瞬間の表情が天使かな? と思わせる部員ランキング1位」
天使かな? と言いますか天使です。和了れる機会が少ないだけに、喜びを噛みしめていらっしゃる様が心を撃ちますね。

「ロンとツモを言い間違えてしまい真っ赤になった時が悶絶するほどかわいかった部員ランキング1位」
あったんですよ、そんな貴重な瞬間が。その日にお茶当番だった自分を褒めてあげたいです。

「おひとりだけの専属チーしますか?って言って差し上げる係になりたい部員ランキング1位」
正直言って、全員に言って回る係よりもこっちの方がいいですよね。対局中ずっとおそばにおりますよ!

「最下位になってもそこでしょんぼりしている姿の可愛らしさに点棒をお支払いしたい部員ランキング1位」
対局後の表情の豊かさでウマをつけるってアリだと思いませんか? 宮永様とかお強いですけどその辺残念ですよね。

「点棒マイナスだったとしても無意識でプラスに書き換えてあげたい部員ランキング1位」
かわいいですから無理もないこと。おかっぱ黒セーラー服の神などもそんな気持ちを持たれるんじゃないでしょうか。

「『点棒を取られた』ではなく『哀れな子羊に施しをお与えになった』と表現したい部員ランキング1位」
点棒なんて飾りです。偉い人にはそれがわからんのです。

「失った点棒分を黄色い24時間募金で補填して差し上げたい部員ランキング1位」
ご安心ください、募金と言っても全額この海老谷が負担いたします。テンピンデカピン、メガリャンピンでもいいですよ!

「がんばって対局されている後ろで『負けないで』を歌って差し上げたい部員ランキング1位」
この時ばかりは黒服でなく黄色Tシャツを着用したいのですが、ご許可いただけませんでしょうか?

「オーラスになったら後ろで『サライ』を熱唱して差し上げたい部員ランキング1位」
みんなの応援があってこそ、有終の美を飾れるというものです。お嬢も黄色Tシャツ着ちゃっていいんですよ?

「部活中ソファーで居眠りされているところに優しく毛布を掛けて差し上げたい部員ランキング1位」
わりとよく寝てらっしゃいますよね。やはり強い皆様相手に頑張っていると疲れもたまるのでしょう、おいたわしい。

「部室の窓から外を眺めて物思いにふけっている表情がすてきな部員ランキング1位」
故郷の北海道を思い浮かべていらっしゃるのでしょうか。少し寂しげな感じがまたかわいらしさの厚みを増しますね。

「日々の授業を受けていらっしゃる真剣なお姿が美しい部員ランキング1位」
ご安心ください、決して授業の妨害などはしませんので。望遠レンズを駆使して遠くから見守っておりますよ!
(智葉「最近学校周りで覗きの不審者が出るらしいとか聞いてたが……。こいつのことかよ」)

「休み時間にクラスメイトと楽しくおしゃべりしている様子が微笑ましい部員ランキング1位」
特に花田様と話されていることが多いですね。やはり寮でも同室ですから親密度も高いのでしょう、うーん羨ましい。

「先生に褒められて照れくさそうにニッコリ笑ったお顔が太陽の輝きな部員ランキング1位」
自分に教員免許が無いことを後悔するばかりです。あっ、でも成香お嬢様お一人だけに集中するにはむしろ邪魔ですかね!

「第一回麻雀部チキチキ実家のおみやげ選手権、予想順位ぶっちぎりの1位」
ご覧になりましたか、合宿でいただいたあのお肉と牛乳のすばらしさを。まだまだ他にもたくさんありますよ!

「一緒にアイスクリームを作りたい部員ランキング1位」
合宿で披露された腕前は相当なものかと。最近腕を上げてきた宮永様の追い上げを見事に振り切りました。

「腕によりをかけて作ったアイスをあーんして食べさせて差し上げたい部員ランキング1位」
あーんは憧れですよね。私が作ったものを差し上げるとなれば喜びも格別です。

「部員の皆様一人一人に合わせたアイスの盛り付けを一緒に考えて盛り上がりたい部員ランキング1位」
フルーツ、生クリーム、チョコなど、盛り方や組み合わせ次第で夢が広がります。あっ、赤座海老とか良くないですか?

「一緒に新しいアイスクリームを開発したい部員ランキング1位」
昔つぶつぶドリアンっていう伝説のジュースがあったんですが、あれをアイスにしたらいけると思うんですよね。

「一緒にプッチンプリンをぷっちんしたい部員ランキング1位」
もちろん私もぷっちんする派ですよ! しない派というのは本当に意味が分かりませんね(笑)
(智葉「うちの親父はしない派だったな、確か」)

「合宿の昼食時、お食事前に感謝のお祈りをする姿が可憐な部員ランキング1位」
幼馴染の方が教会の娘さんだったようでその影響ですね。まさに神様に仕える天使の清らかさと言えましょう。

「合宿の夜一緒に線香花火をしたかった部員ランキング1位」
夜のイベント前に黒服は帰宅命令とは、いや~お嬢も人が悪い。夏の合宿では期待してますよ!

「キャンプファイヤーの火をずっと一緒に眺めていたい部員ランキング1位」
合宿でやりたかったのですが却下されてしまい残念でなりません。次こそはぜひ!

「キャンプファイヤーでフォークダンスを踊っていらっしゃる姿をずっと見守っていたい部員ランキング1位」
一緒に踊りたいとは申しません、恐れ多いですしお嬢に斬られそうですしね。脳内にメモライズするだけで十分です!

「部員の皆様と焼き肉に行ったら隣の席に座りたい部員ランキング1位」
宮永様や園城寺様が一緒だとガツガツ取られてしまう感じがしますからね! この海老谷がお肉を確保いたしますよ!

「部員の皆様と回転寿司のカウンターに行ったら一番上流に座らせてあげたい部員ランキング1位」
皿を取る手の早くない方が優先なのは基本ですから。すみませんが宮永様や園城寺様は下流側でお願いします!

「部員の皆様とケーキバイキングに行ったら一口ずつ全種類食べさせてあげたい部員ランキング1位」
小食でも大丈夫、ああいうのは量より種類ですから。残りは私が食べますから問題ないです、勿論カレーもありますよ!

「部員の皆様のお食事会手配係になったら、分煙掘りごたつのお店を選んでご案内したい部員ランキング1位」
こういう細かい一手間が案外……できぬものなのだ、(検閲削除)には……! おっと、失礼しました。

「後ろ髪の縛り方に定評がある部員ランキング1位」
ほどいたら結構長いんですよ。すぼまったロングもまた愛らしい。

「片目を隠した髪型がかわいい女子高生選手権東京代表に選ばれそうな部員ランキング1位」
東京代表どころか全国優勝間違いなしと確信しています。なぜ弊社で全国大会を企画しないのでしょう?

「隠された片目が開いてからが真の麻雀力な麻雀部員ランキング1位」
長野県の方にも有力候補がいるとかいう噂ですが、しょせん成香お嬢様の敵ではありませんよ。

「部員のチャントを製作させたら一番応募作が多そうな部員ランキング1位」
他の皆様には申し訳ありませんが、これはもう思い浮かぶんですから仕方ありませんね。

「大会の選手入場時に私の作曲した入場テーマソングを流して差し上げたい部員ランキング1位」
もう皆様全員分と成香お嬢様のは10曲以上もできてるんですけどね? 高麻連が許可してくれないのがネックです。

「お顔の丸さが可愛らしい部員ランキング1位」
まんまるですよね。ぷにぷにしたいです。

「お顔の絵を筒子にした麻雀牌を制作したい部員ランキング1位」
あの丸さは筒子にぴったりですよね。これで清一色などできたら心が躍ります。

「その筒子の牌で純正九蓮宝燈を和了りたい部員ランキング1位」
シベリアンエクスプレス? 冗談じゃありません、JR北海道ですからね。

「まんまるなお顔をデザインしたぬいぐるみを発売したい部員ランキング1位」
巷ではエトピリカなんとかというペンギンが人気らしいですが、成香お嬢様こそエトピリカです。エトナルカですよ。

「もうなんでもいいからグッズを大量に発注したい部員ランキング1位」
今回の資料には付けませんでしたが、成香お嬢様グッズの100の企画書も鋭意製作中です。いつでもご用命を!

「入学スカウトのために費やした交通費金額ランキング1位」
北海道なので単価は勿論ですが回数もダントツ、完全優勝です。なにせ私が何度も行き倒しましたからね!

「入学スカウトのために費やした出張滞在費金額ランキング1位」
成香お嬢様がかわいすぎて体がもちませんので、毎回スイートルームで回復に努めました。体力の限界でも頑張りました!

「入学スカウトのために費やした寄付金金額ランキング1位」
交通費滞在費とあわせ三冠達成ですね。お好み焼き屋の借金や旅館のリフォーム程度、牧場融資に比べたら安いもんです。

「入院された園城寺様を甲斐甲斐しく看病する姿ランキング1位」
病院での様子を撮った写真を見ていただければ一目瞭然です。いずれ写真展などにも出品したいですね!

「私も入院したら付きっきりで看病していただきたい部員ランキング1位」
採血や点滴などしていただけると思うとワクワクが止まりません。残念ながら、私は心身ともに至って健康ですけどね!

「合宿中のスナップ写真、黒服チーム内焼き増し注文数1位」
この海老谷が鑑賞用・布教用・保存用とすべて3枚ずつ注文しましたので。2位以下に余裕のトリプルスコアです。

「自撮り写真をツイットしたら一番リツイット数が多そうな部員ランキング1位」
これは間違いないですね。何しろこの海老谷が拡散しまくりますので!

「自撮り写真を販売するネットワークビジネスを展開したら一番人気になりそうな部員ランキング1位」
お嬢に任命いただければ、この海老谷が一大ビジネスにする自信があります。これってすてきなことだと思いませんか?

「理事長の書画の代わりに顔写真を思いっきり拡大して部室に飾りたい部員ランキング1位」
正直なんなんですかねあの掛け軸(笑)。こっちの方がいいに決まってますよ!

「理事長の書画の代わりに飾る大きな肖像画のモデルになっていただきたい部員ランキング1位」
『すべらない話』みたいなやつ、いいですよね。常に成香お嬢様の満面の笑顔の下で仕事したいものです。

「理事長の書画の代わりに全身像の彫刻を彫って飾りたい部員ランキング1位」
実は北海道へ出張の際に、経費で熊の木彫り教室にも通ったんです。私の腕前をお見せしますよ!

「おだいばの公園に巨大なブロンズ像を建てたい部員ランキング1位」
あの女神像ってそろそろ成香お嬢様の顔になってもいい頃だと思いませんか? ぜひ都と弊社でご検討を。

「お誕生日を国民の祝日に定めたい部員ランキング1位」
1月12日です! 成人の日と組み合わせれば1月中旬に新たな大型連休爆誕ですよ!

「むしろお誕生日の前後一週間ほど世界人類の祝日に定めたい部員ランキング1位」
シルバーやゴールデンなど比べものになりませんね。ナルカウィークと呼ばれてしかるべきです。

「お誕生日祝いのために前後半年ずつは時間をかけたい部員ランキング1位」
やはり年に一度の神聖な日ですから、それくらいはしませんと。さすがは成香お嬢様!

「節分の日に思いっきり豆をぶつけていただきたい部員ランキング1位」
数少ない合法的に痛撃をいただける行事! 昨年まで10連覇だったお嬢は残念でしたが挫けず精進してくださいね。

「七夕の願い事に『宇宙一かわいいです』と書いた短冊を吊るして笹を埋め尽くしたい部員ランキング1位」
成香お嬢様のかわいさはもう宇宙レベルですから。織姫と彦星にも当然伝えなくてはなりませんね。

「夏合宿でスイカ割りをするならスイカの代わりの的になりたい部員ランキング1位」
お嬢がやると命中率高すぎなので逆に無しです。どこに打撃が来るかわからないドキドキ感がいいんですよ。

「夏合宿の夜、夏祭りに出かけるときの浴衣が似合いそうな部員ランキング1位」
夏合宿では周辺のお祭りの日程なども考慮しましょう。山小屋の合宿所はそういうのが無いところが弱点ですよね。

「ハロウィーンで本気を出したら泣いてしまいそうなので控えめな仮装で臨みたい部員ランキング1位」
トリックオアトリート? ナルカオアトリート? いいえ、ナルカアンドナルカです。

「秋には落ち葉を集めて一緒に焼き芋を焼きたい部員ランキング1位」
昔ながらの落ち葉焚き、風情があっていいじゃないですか。もちろんお芋は北海道産です!

「一緒に並んでこたつに入ってぬくぬくしたい部員ランキング1位」
北海道民ですから暖房器具の扱いには定評があるかと思います。今から冬が楽しみですね!

「冬合宿では雪山で一緒に雪だるまを作りたい部員ランキング1位」
お嬢たちは適当にスキーでもなさっていてください。もしものときに備えて私と成香お嬢様が待機してますので!

「初詣に来ていく着物姿がもうちょーかわいいんだろうなと想像できる部員ランキング1位」
来年のお正月、もちろん皆様で行かれるんですよね? 次こそは黒服は正月休みなどと言わずお供させてください!

「休日になったら各地の温泉旅館に出かけて一緒にくつろぎたい部員ランキング1位」
特訓合宿もいいですが、ゆったり休むだけの旅行もいいですよね。優勝したあかつきにはぜひご検討ください。

「今回レポートした北海道の名所を一緒にまわって写真集を作成したい部員ランキング1位」
地元の観光協会等とタイアップして観光案内を作りませんか? 企画から撮影まで、私海老谷にお任せを!

「エアーズロックへ一緒に旅行に行きたい部員ランキング1位」
そこは元々ウルルと呼ばれてたんですが起源はよくわかってないんです。これは仮説なんですが、天使はナルカなのでは?

「高い本棚にある本を取ろうとしているときに踏み台になって差し上げたい部員ランキング1位」
代わりに取ってあげるなんて無粋なことはいたしません。やっぱり踏み台ですよ!

「背中に乗って踊ってほしい部員ランキング、僅差でお嬢を抑え1位」
『おどろうキッズ』のあれですね。お嬢に踏みつけていただくのも捨て難い魅力でしたが、紙一重です。

「冷たい目で罵声を浴びせていただきたい部員ランキング、お嬢との激戦を制し1位」
本当に難しい首位争いでしたが、ここはあえて見慣れた安心感より未知の好奇心を推させていただきました。

「生ゴミを見るような目で押さえつけられ刃物を突きつけられたい部員ランキング、お嬢との究極頂上決戦の末に1位」
連敗となってしまいましたがこれはもう本当に仕方ない! ドンマイです! お嬢ドンマイ!

「トースターでチンしてバターを塗っていただきたい部員ランキング1位」
お嬢の命令とあらばトースターで焼かれる程度なんでもありません。しかしバターは成香お嬢様に塗られたい!

「食べていただけるなら鉄板焼きの具になってもいい部員ランキング1位」
焼くだけなら鉄板焼きに定評がある上重様でも渋々承知いたしますが。食べるのは成香お嬢様お一人でお願いしますよ!

「第一回チキチキ黒服盲牌大会で間違えた時の罰ゲームビンタ役をお願いしたい部員ランキング1位」
今度、黒服慰労会のときに余興でやろうと思っているんですよ。ぜひご許可を!

「フルスイングでお仕置きケツバットしていただきたい部員ランキング1位」
すみませんがお嬢では力が強すぎて一発しか耐えられませんので(苦笑)。威力は弱くとも回数でお願いしたいです。

「罰ゲームとか何もなくてもとにかくタイキックを食らわせていただきたい部員ランキング1位」
未経験でも大丈夫、練習から丁寧に御指導させていただきますよ! もちろん練習台も私です!

「赤いヒールで背中をガッツンガッツン踏みつけていただきたい部員ランキング1位」
いやー、黒いヒールでしたらお嬢が1位だったんですけどね。残念!

「背後からガバッとチョークスリーパーで締め落とされたい部員ランキング1位」
申し訳ありませんが最下位は上重様です。キモい脂肪の塊が背中に当たってしまいますからね、あんなのは邪道です。

「もしもアイドルデビューしたら牌のおねえさんを軽く追い越すスターになりそうな部員ランキング1位」
私だけのアイドルであっていただきたい気持ちと非常に葛藤がありますが! デビューなさるなら全力で応援しますよ!

「ライブハウス単独公演が開かれたら全日最前列席を押さえたい部員ランキング1位」
これはもう使命ですね。出来なかったら即自害するくらいの心構えです。

「ライブのステージ衣装をどれにしようか多すぎて迷ってしまう部員ランキング1位」
どれがお似合いですかと問われれば、この世のすべての服に決まっています。一曲一衣装でもいいくらいですね。

「CD付き握手券が発売されたらすべて買い占めて即刻廃棄したい部員ランキング1位」
どこの馬の骨ともわからぬ輩に握手などさせるものですか。私は握手よりグーパンチ(顔)をいただきたいです。

「アイドル活動資金のために仮想通貨口座を開設して全財産投入したい部員ランキング1位」
というかもう開設しました。もちろん全財産も投入済み、これから運用がんばるぞ!

「舞台へ向かって大声で声援を差し上げる練習をしていたら夜が明けていた部員ランキング1位」
なーるーか! なーるーか!

「世界の中心で成香お嬢様と出会えた喜びを思いっきり叫びたい部員ランキング1位」
うおおおおーーーー!!!! 幸せでーーーーす!!!!

「成香お嬢様かわいいなあ……と考えていたら一日が終わっていた回数ランキング1位」
かわいいなあ…… ああ…… かわいいなあ……

「『人は成香お嬢様かわいいだけで一日生きられるか?』に挑戦したらうっかり十日ほど過ぎてしまったランキング1位」
かわいいかわいいかわいいかわいいかわいいかわいいかわいいかわいいかわいいかわいいかわいいかわいいかわいい

「その間ずっと日記を書いたけど結局かわいいしか書くことがなかった部員ランキング1位」
きょうも なる  さまかわ いかっ  で  す   しあ わ   せ

「かわいい 1い」
なるか
かわ



智葉「…………クビだな、この黒服G。隔離入院だこんなもん」



もいカン




一年生
二年生(前)
二年生(後)
三年生
センガク日和
2018/12/14