バカ「なあ、今からすごいこと言っていい?」

ヲタ「ダメだ」

バカ「気づいちゃったんだよね……。どうしてウチがモテモテじゃないのかって」

ヲタ「知らん」

バカ「やっぱり部活なんだよ。青春の熱いキラメキがウチらには足りないんだ」

ヲタ「喋んな」

バカ「だってそれしかねーじゃん!? でなけりゃこのウチがモテないなんておかしーし!! 世の不条理だし!!」

ヲタ「聞いてねえな人の話」

ロボ「いつものことよ」



バカ「だからさ、麻雀打とうぜ!」

ヲタ「断る」

バカ「全国大会出て注目集めて、イケメンたちに『ふっ……おもしれー女……』って思われるんだ!」

ヲタ「人の話を聞け。なんでいきなり麻雀なんだよ」

バカ「なんでってそりゃ、すっげー人気なんだろ!? 毎年テレビでやってんじゃん!?」

ロボ「確かに。高校生の夏、男子は甲子園、女子は麻雀と言われるくらいにメジャーな競技ではあるわね」

バカ「だろだろ!?」

ヲタ「そりゃ知ってるけどさ……。昨日今日打ち始めたニワカが勝てるわけねえだろ」

バカ「ニワカじゃねえし! 麻雀ぐらいみんな知ってんだろー!?」

ヲタ「ルールぐらいは一般常識だけど。競技で真剣にやってる人らとなんか全然違うっつの」



バカ「どうせ暇だろー? 打つくらいしようぜー!」

ヲタ「……暇は否定しないけど。雀荘なんて嫌だよ、こえー人とかいたらどうすんだ」

バカ「大丈夫だって! 学校ん中でできるとこ見つけたんだ!」

ヲタ「学校の中?」

バカ「こないだロボと部室棟歩いてたらさ、空き部屋に雀卓置いてあった!」

ヲタ「なんだそりゃ」

ロボ「廃部寸前の麻雀部室ね。誰も使ってないわ」

ヲタ「……うーん……。まあ、校内ならいいか」

バカ「よーし、メンツ集めっかー!」



マジメ「麻雀……ですか?」

バカ「おー!」

マジメ「一般的な嗜みとして、ルールは把握していますが……」

バカ「打てりゃいいって。これから打とうぜ!」

マジメ「これからって……。どこで打つつもりなんですか?」

バカ「麻雀部!」

マジメ「麻雀部に……入るんですか?」



ヲタ「入るかどうかは置いといて。とりあえず打つだけさ」

マジメ「でも……。麻雀部室なら、部員さんがいらっしゃるのでは……」

バカ「大丈夫だって! おこられたら逃げればいいし!」

マジメ「そんな適当な……」

バカ「いいじゃん、ちょっと遊ぶだけだしさー」

マジメ「ダメですよ。部活動なら真剣に取り組まないと」

マジメ「全国の麻雀部員さんは相当な努力をされていると思います。毎日真剣勝負で、データを集めて分析して……」

マジメ「軽い気持ちで臨んでは、頑張っていらっしゃる方々に失礼ではないでしょうか」

ヲタ「マジメだなあおい」

ロボ「大丈夫よ、そこまで深く考えなくても」

マジメ「…………まあ…………。鷺宮さんと一緒でしたら……」



バカ「おーいロリ、麻雀打とうぜー」

ロリ「……麻雀?」

バカ「お子様は麻雀なんて知らないか―?」

ロリ「バカにすんな田中!! それくらいおばあちゃんに教えてもらったもん!」

バカ「なら打とうぜー」

ロリ「…………」

バカ「ん?」

ロリ「麻雀は……やらない」

バカ「?」



ロリ「私は麻雀……あまり好きじゃない」

バカ「はあ?」

ロリ「……おばあちゃんに止められてるから」

ヲタ「おばあちゃんに?」

ロリ「だから小さい時しか……。小学校入る前くらいしか打ったことない」

バカ「今でも小さいけどな」

ロリ「うるせえバカ!!」



ヲタ「なんで止められてるんだ?」

ロリ「……お前は麻雀を打つと我を忘れちゃう、って……。自分じゃわかんないんだけど」

ヲタ「ほう?」

ロリ「昔、おばあちゃんのお友達がお正月に来て……」

ロリ「私が勝ったらお年玉あげるよ、って言われて……打ったことがあった」

ロリ「そのときの事、よく覚えてないんだけど……。そこでおばあちゃんにそう言われた」

ヲタ「ふむ?」

ロリ「……それ以来打ってない。おばあちゃんのお友達も来なくなっちゃった」

ロリ「だから……いいよ私は……」



マジョ「つよい力を感じます~~~!!」

ヲタ「うおわっ!? いきなりどうしたマジョ!?」

マジョ「オカルトのにおいがします……。ロリさんに……とてつもない麻雀力を感じますっ!!」

ヲタ「はあ?」

ロリ「マジョ……」

マジョ「ロリさん……本当は麻雀凄く打ちたいのでは……?」

ロリ「……えっ」



ロリ「……でも……おばあちゃんが……」

ヲタ「よくわからんけどさ。自分が打ちたいなら打ったっていいんじゃないか?」

バカ「そうだよ、昔の話なんて気にすることねーし」

ロリ「……そのお友達さん、『ハサンした』とか言ってた」

バカ「んっだよ、意味わかんねー」

ロリ「…………みんなもおばあちゃんの友達みたいになって……避けられたくない」

ヲタ「そう言われてもな」

バカ「ウチらとそんなばーちゃんたち一緒にすんなよ!」

マジョ「ロリさん……」



ヲタ「どう思うロボ?」

ロボ「打ってみればいいわ。何か理由があるとしても、わからないことには何とも言えないのだから」

ロリ「えっ」

ロボ「何かがそこにあるのなら、起きてから考えればいい。もう起こらないならそれまでの事よ」

ヲタ「ほら、ロボもそう言ってるし……。ロリだって、ずっとモヤモヤしてるよりいいんじゃないか?」

ロリ「……うーん……」

マジョ「大丈夫です……! 私たちは、ロリさんを避けたりしないですから……!」

ロリ「…………マジョがそう言うなら」



リリィ「ちょっと田中さん! またロリちゃんのこと泣かそうとしてるの!?」

バカ「っせーなー、麻雀誘っただけだっつーの」

リリィ「まったく……。今日は何の騒ぎ?」

ヲタ「全国大会に出たいんだと、麻雀で」

リリィ「田中さんらしいわね。昨日今日始めたところで勝てるわけないでしょう」

ヲタ「……まあな。あいつ人の話聞かねえから」



リリィ「大体、麻雀で全国大会なんてあるの?」

ヲタ「毎年テレビでやってるぞ。夏の風物詩だろ」

リリィ「そうなの? 私父がオーストリア人だから日本の風習に疎くて」

ヲタ「お前、純日本育ちっつってたよな?」

ロボ「日本中から麻雀部員の女子高生が一堂に会するわ」

リリィ「!」



リリィ(日本中から……女子高生が……)

ヲタ「どした、リリィ?」

リリィ「そういうことなら! 私も付き合わせてもらうわ!」

バカ「えぇーいいよお前は」

ヲタ「いきなりやる気だな」

リリィ(全国のかわいい美少女にたくさん会える……! フヒヒッ)

ヲタ「…………じゃ、行くか麻雀部室」



麻雀部室

バカ「失礼しまーっす!」ガチャッ

ヲタ「おー、開いてる開いてる」

マジメ「誰もいませんね……。鍵も空きっぱなし」

リリィ「杜撰な管理ねえ」

ロボ「牌も点棒もあるし、卓も動くわね。すぐ始められるわ」

ロリ「シンクと湯沸かしもある」

マジョ「あ、それじゃ私お茶淹れますね……」

ヲタ「変な秘薬とか入ってないやつな」

マジメ「いいんでしょうか、勝手に……」

バカ「大丈夫大丈夫! じゃあ始めるぞー!」



一回戦 東家:バカ 南家:ロリ 西家:ロボ 北家:リリィ

ロリ(久しぶり……。おばあちゃんたちと打って以来だ……)

ロリ(えっと……最初はよっつずつ……で、手元に並べて……)


ドクン


ロリ「!」

ドキドキ… ドキドキ…

ロリ(あれ……)

ドキドキ… ドキドキ…

ロリ(なんか……へんな感じ……)

ロリ(凄くドキドキして……体が熱くなってきた……)

ゴォッ

マジョ(ロリさんの中で……、なにかが目覚める……!!)



東一局

チャッ

ロリ(……ここだ……)

ロリ「カン!」

カチャッ

マジメ(こんなところでカン……?)

バカ「やっりー、ドラ増えっじゃーん!」

ヲタ「呑気だなバカ」

ロリ(リンシャン……)

スゥッ



ロリ(……くる……!)

キュッ

ロリ「…………なあ」

ヲタ「ん?」

ロリ「今日はこれ、和了っていいんだよな?」



タンッ

ロリ「ツモ! 2000・4000!」

バカ「はあ!?」

リリィ「り、りんしゃんかいほー!!」

マジメ「凄い……」

マジョ「レアな役です……」

バカ「なにそれ!? ウチそんなん知らねーし! インチキだインチキ!!」

ヲタ「お前が無知なだけだ」



東三局

ロリ(なんとなくわかる……。さっきのは……偶然じゃない……!)

ロリ(…………もう一度!!)

ロリ「カン!」

リリィ「また!?」

ヲタ「おいおい、一回できたからって――」

ロリ「もいっこ、カン!」

ヲタ「なにィ!?」

ロリ「……もういっこ!!」ゴォッ

マジメ「三連続!?」

マジョ(ロリさんの目に……炎が宿ってます……!)



タァン!!

ロリ「…………ツモ。嶺上開花三暗刻三槓子、あと何か」バチバチッ

マジョ「……三倍満……です……」

マジメ「あ……ああ……」

リリィ「すご……」

ヲタ(今……目から稲妻が出た……!?)

バカ「んっだよー!? インチキインチキインチキー!!」

ヲタ「ちょい黙ってろお前」



ヲタ「……見た? 今の……」ヒソヒソ

マジメ「…………はい」ヒソヒソ

ヲタ「どうなってんだ……。まるで別人じゃねえかロリ……」ヒソヒソ

マジメ「……そうですね……」ヒソヒソ

リリィ(あぁ~んでも真剣な顔のロリちゃんもかわいい~)



南二局

ロリ(……また……。さっきとは違う感じ……)

スッ

ロリ(ここでこの牌を切ったら、いい感じの多面張テンパイ……)

ロリ(……でも……なんか違う……)ドキドキ

ロリ(なんだろう……心の奥で、こっちの牌を切れっていう声がする……)ドキドキ

タンッ

ヲタ「!?」

マジメ(多面張を捨てて単騎に張り替え!? そんなセオリー外な……)

ヲタ(しかも残り一枚……地獄単騎だぞ……)

ロリ「…………」



…………

……

ロリ(…………よし!)

パシュッ

ヒュルルル…

ズガン!!

ロリ「ツモ! 8000オール!!」

ヲタ「うっわ……なんだそれ……」

マジメ「牌を上に高く弾いて……叩きつけた……」

マジョ「……凄いです……」

リリィ「惚れるわ……」ポッ

ヲタ「いやリリィそれはおかしい」



対局終了後

ヲタ「ロリ以外の人を替えて再戦、3回半荘が終わったが……」

リリィ「……全部、ロリちゃんの一人勝ちだったわね……」

マジメ「しかもほとんどの和了が、嶺上開花か地獄単騎……」

ヲタ「…………ありえん」

マジョ「オカルトです……ロリさんすてきです……」

ロリ「…………なんかあんま実感ない」

ヲタ「そうなのか?」

ロリ「でも……楽しかった! もっと打ってみたい!」

バカ「あっぱれじゃロリ、ウチの肩に乗っていいぞ」

ロリ「乗らねぇっつってんだろ! ナウシカの肩に乗るやつ扱いすんな!!」



ヲタ「どう思うロボ?」

ロボ「オカルトとかいう見えもしない概念には興味ないけれど……。彼女が強いのは事実のようね」

ヲタ「……まあそうなのかな」

ロボ「いずれにせよ……つきあってみる価値はあるかもしれないわ」

ヲタ「正気か」

バカ「よーし、じゃあ大会出ようぜー!」



マジメ「待ってください、大会に出るには部活動でないといけませんし、まず申請書を出して同好会から……」

バカ「めんどくせー、いいよそんなの適当で」

ロボ「麻雀部に入ってしまえば問題ないわ。今は部員がいなくて休部中なだけだから」

バカ「ならちょうどいーじゃん! 誰もいないならみんなで入ろーぜ!」

マジメ「しかし、顧問だとか手続きとかいろいろ……」

バカ「ワセダに頼めばいーじゃん」

マジメ「もう……」

ヲタ「諦めろ、このバカに関わった時点で手遅れだ」



ロボ「出場するなら団体戦ね。オーダーを決めましょう」

ヲタ「オーダー?」

マジメ「団体戦は5人制。10万点を引き継いで順番に打つんです」

ヲタ「5人しか出られないのか……。溢れちまうな」

バカ「ウチいーっちばん!!」

ヲタ「……ったく……。自分が出たいだけじゃねえか……」

リリィ「勝つ気無いのかしらね?」

ロリ「なんでもいい」

ロボ「……わかったわ。監督として私が決めてあげる」

ヲタ「いつの間に監督!?」



さいのたま女子高校麻雀部

先鋒:田中望(バカ)
次鋒:菊池茜(ヲタ)
中堅:染谷リリィ(リリィ)
副将:一奏(マジメ)
大将:百井咲久(ロリ)


ヲタ「えっロボ出ねぇの!?」

ロボ「誰かが出られなくなったら、補欠で出てあげるわ」

ヲタ「マジョは!? すっげーオカルトできそうじゃねえの!?」

マジョ「わ、私も人前に出るのはちょっと……」

ヲタ「なんなんだよお前ら……」



数日後 地区予選大会当日

バカ「よーっしゃ、軽ーくぶっちぎって優勝だ! そんでイケメンにモテモテ!!」

ヲタ「ウチらってどこの地区になるんだ?」

ロボ「東村山は西東京よ」

ヲタ「ほーん、東京って東西分かれてんだ」

ロボ「ちなみに、一回戦の相手はこれよ」パサッ

ヲタ「なんだ、雑誌の紹介記事? 『西東京・白糸台高校』」

ヲタ「…………えっ?」

ヲタ「……『前年度全国優勝校』……?」



一回戦先鋒戦 東三局六本場

照「ツモ。16600オールです」ギュルルン

バカ「…………はい?」

照「……ありがとうございました」

実況「最後は役満ツモでトビ終了ー! 王者白糸台、三連覇へ向けて好調なスタートです!!」


ヲタ「……なんだあの人……」

マジョ「バカさん、一回も和了れませんでした……」

リリィ「……そんなレベルじゃないわよっ……恐ろしいわ……」

マジメ「10万点がハコになるなんて……」

ロリ「なあ、終わり?」

ロボ「残当ね」


カン




ヤマイ「人間とは愚かな生き物だ」

ヤマイ「わかりきった未来が待っているというのに、進むことを止めようとしない」

ヤマイ「当然の結末が、そこに見えているというのに」

ヤマイ「…………だが」

ヤマイ「だからこそ、僕とドラゴンが助けてやらねばならないのかもしれないな」クックック

ワセダ「山本」



ワセダ「探したぞ山本。こんな木の上にのぼって何してるんだ」

ヤマイ「…………愚かな人間の未来を憂いて」

ワセダ「憂いが必要なのはお前の頭だ。降りてきなさい、話がある」

ヤマイ「僕を拘束する気かい? 僕は何者にも縛られない、あの白い雲のように」

ワセダ「呼び出し放送には従いなさい。どうして指導室に来なかったんだ」

ヤマイ「フッ……言っただろう、僕は何者にも縛られないと。話したところで凡人にはわかるまい」

ワセダ「そこから降りられなかったのか」

ヤマイ「…………」



ワセダ「降りられなかったのが理由なら理解はしよう。納得はしないが」

ヤマイ「ちっ、違う! 言っただろう、愚かな人間の未来を……」

ワセダ「いいから降りてくるんだ」

ヤマイ「やれやれだね。よしんば僕が降りたかったとしても、血塗られた竜の宿命が僕をここから降ろさないのさ」

ワセダ「自力で降りられないのなら素直にそう言いなさい」

ヤマイ「ふう、しつこいメンズだ。僕をこの木から降ろしたいのなら力ずくで来るんだな」

ワセダ「降りられないんだな」

ヤマイ「…………」

ワセダ「…………」



ワセダ「いいだろう、宿命とやらの気が済むまでそこに居ればいい」

ヤマイ「えっ」

ワセダ「指導室には明日来なさい。私は帰るぞ」

ヤマイ「ちょまっ、待てっ!! かわいい教え子を見捨てる気か!?」

ワセダ「自分でかわいいなどと言うもんじゃないぞ山本。降りられないのなら正直に言いなさい」

ヤマイ「…………」

ワセダ「…………」

ヤマイ「…………」

ワセダ「…………」

ヤマイ「…………降りられますん」

ワセダ「そんな日本語は無いぞ山本」

ヤマイ「…………」

ワセダ「…………」



ワセダ「仕方ないな」

ヤマイ「?」

ワセダ「……力ずくで来いというのなら、そうしてやろう」

スッ

ヤマイ(? ……メガネ外して……?)

バサッ

ヤマイ(うえぇっ!? 上着脱いだ!?)



ヤマイ(……あっ、すご、意外と筋肉質……)

カチャッ カチャカチャッ

ヤマイ(うそっ!?!? ベルト外してズボンまで……)

パサッ

ヤマイ(イヤッ、見え…………あっ?)

ワセダ「…………」ゴキゴキッ

ヤマイ(……ぱんつ一枚…………じゃない? 何あれ、ふんどし? ……違う、相撲の……まわし???)



ワセダ「久しぶり……だな。現役引退して以来か」

ヤマイ「?」

ワセダ「その後入った有名大学では一切封印していた……。完全に退いた道、まして仮にも元幕内が学生には混ざれん」

ワセダ「……だが」

ワセダ「あいつらの活躍を横目で見ながら……。ずっとトレーニングは続けていた」

ワセダ「まだまだ鈍っちゃいない……。見せてやろう、国宝『鬼丸国綱』と並び称された……『鬼切』の輝きを」

ヤマイ(なに……言ってんだ……?)



ワセダ「ふっ!!」

ドスッ

ワセダ(……この四股の感触も……懐かしい)

ヤマイ(……おすもう……さん……?)

ワセダ「……ぶちかましは苦手分野じゃないかだと? フッ、こんな木の一本ごとき……準備運動にもならん」

ヤマイ(…………?)

ワセダ「毎日ぶつかりあっていた部長や童子関の存在感に比べれば……屁でもないわ!」



ワセダ(手をついて……)スウッ

ヤマイ(……な……何……?)

ワセダ「…………はっきよいッ!!!」


シィッ!!


ドスッ




グラッ グラグラグラッ


ヤマイ(う、うわっ……木がすごい揺れて……)


ガタガタガタッ


ヤマイ(落ち……る……)


ズルッ


ワセダ(…………キャッチ!!)


ガッ




ヤマイ「…………」

ヤマイ「…………」

ヤマイ(あれ…… 落ちたのに……? どこも痛くない……)

ワセダ「大丈夫か、山本」

ヤマイ(ワセ……ダ…… ええっ!?)

ワセダ「怪我は無いな。ちゃんと受け止めたぞ」

ヤマイ(うわーーー!! うわーーー!! 僕お姫様抱っこされてるーーー!! 全裸の男の人にーーーー!!!)

ワセダ「全裸じゃあないぞ山本。ちゃんとまわしを締めている」

ヤマイ(心の声まで読まれてるーー!?)



ヤマイ「…………」

ワセダ「…………」

ヤマイ「…………」

ワセダ「山本?」

ヤマイ「…………」

ワセダ「…………」

ヤマイ「…………」

ワセダ「……気を失ったようだな。仕方のないやつだ」



保健室

ワセダ「失礼します。生徒を一人休ませたいのですが」

シーキョン「あら佐渡先生、まわし一丁でお姫様抱っことはおさかんですわね」

ワセダ「生徒指導の一環です」

シーキョン「その恰好をなさっているときは……鬼切関とお呼びした方がいいかしら?」

ワセダ「!」

シーキョン「それとも……辻先生?」

ワセダ「……その名前は引退と同時に捨てました。今の私は佐渡正敬です」



ワセダ「…………しかし、よくご存じで」

シーキョン「……ええ」

ワセダ「…………」

シーキョン「鬼切関の土俵姿は……。私もテレビで見ていましたから」

ワセダ「!」

シーキョン「かっこよかったですよ」ウフフッ

ワセダ「…………ありがとうございます」



ワセダ(……現役を過ぎた女子大生に興味などないが……念のため)

ワセダ「ちなみに……今の私は……」

シーキョン「……まわしいっちょで教え子を抱く女子高教師、ですか?」

ワセダ「誤解を招く言い方はせんでください」

シーキョン「ウフフッ、冗談ですよ」

ワセダ(…………やはり女子大生は現役に限る)



保健室前の廊下 扉の隙間から

ヲタ(ワセ……ダ…………なんて格好してんだ……? で、だ、抱くってなんだよ!? 誰を!? ヤマイを!?!? えええええ~~~!?!?!?)



もいっこカン




2021/01/19