【清澄】

久「『つきましては、貴校の希望する追加ルールを考えて提出してください』ですって」

まこ「なんじゃいそりゃ」

久「全国大会運営本部から来た通達よ。抽選に当たれば自分たちで決めたルールをひとつ付けられるらしいわ」

まこ「そう言われてものう」

優希「東風戦!」

和「開幕直前になってやることではないと思います」

咲「いきなりだよね……」

優希「東風戦!」

久「明らかに不公平なのは事前却下されるみたいだけどね。うちが和了った時だけ十倍点棒ください、とかは無理」

まこ「そりゃそうじゃろな」

優希「ぜんぶ東風戦にしたらいいと思います!!」



久「でもこれで、うちに有利なルールが採用されたらぐっと優勝に近づくわ」

まこ「そうかもしれんが」

和「あまりおかしな偏りには左右されたくないです」

咲「うーん……」

優希「東風戦! 東風戦!」

久「まあ一回戦ごとに四分の一の確率だし、気楽に決めましょう。一度提出しちゃったらもう変更不可みたいだけど」

まこ「言うても事前却下されるんなら、あんまり変なモン出したってダメじゃろ」

久「そうなのよねー、そこが問題。一見公平なオマケ程度に見えて、実はうちが有利……くらいがいいところよね」

優希「東! 風! 戦! で! やらせてください!!」

久「…………」

まこ「…………」

和「…………」

咲「…………」



久「ま、うちから出すならそれくらいかしらね」

まこ「特に他にも無いけえの」

和「ゆーきがそこまでしたいなら」

咲「いいと思います」

優希「やーったじぇーー!!」

久「抽選に当たれば、ね」

優希「それくらいタコスぢからでバリバリに引き当ててやるじょ!」

まこ「なーに言うとるんじゃ」

和「そんな力は存在しませんよ」

咲「あはは……」

久「じゃ、『半荘を東風戦二回にする』……っと。これで出しましょう」




【白糸台】

菫「…………だそうだ」

誠子「追加ルール……ですか」

菫「まったく、急におかしなことを言い出すものだな……。何がいい?」

誠子「うーん、そう言われても……」

照「普通に打てばいいよ」

淡「興味なーい」

尭深(お茶がおいしい……)

菫「…………まあ気乗りしないのはわかるが。何か出してくれ」

照「……しいて言うなら」

菫「和了るたびにお菓子をくださいはだめだぞ」

照「えぇー」



尭深「ではひとつ」

菫「お、あるか尭深」

尭深「『勝ち抜き戦にする』というのはどうでしょうか」

菫「勝ち抜き戦?」

尭深「普通の25000点持ちで始めて、半荘ごとに下位の二人が次の人に交代します」

菫「ほう」

尭深「上位二人はそのまま残って、また25000点の最初から。大将まで打つ人がいなくなったチームが敗退です」

菫「……ふむ……」



誠子(確かに、宮永先輩が先鋒のうちにとってはいいルールかもしれないけど……)

菫(……わりとえげつないな、尭深)

淡「?」

照(…………なんでもいい)

菫(最悪、照以外の出番がなくなるぞ……)

尭深「……いいかなと思ったんですが」

菫「……そうだな。だがそれだと、勝ち残り続けるチームはずっと先鋒が打つことにならないか?」

誠子「そうですね」

淡「えぇーそしたら私の出番はー」

菫「最短でも……五回戦、最長九回戦か。半荘ごとでも結構なものだ」



菫「照がこのルールで負けるとは思わんが……。だからこそ、照だけが延々と打ち続けるのは色々まずいだろう」

尭深「……はい」

菫「せめてひとりが出られる回数を……最長九回なら四回戦までとしようか。それ以上は勝っていても交代だ」

誠子「なるほど」

菫「五回戦以上照が抜いたら、どうなってもうちの勝ちだからな……。そこまでさせるのはさすがに外聞も悪い」

誠子「ですねー」

尭深「いいと思います」

淡「それでも私まで順番こないかもー」

誠子「……まあしょうがないだろ、勝ち抜き戦ってそういうもんさ」

淡「えぇー」



照「…………私がいっぱい打つの?」

菫「お前の負担が増えるのはすまないが、抽選に当たった時だけの余興のようなもんだ。頼むよ」

照「…………」(なにかごほうびが欲しいの目)

菫「…………わかったよ、一回勝ち抜くごとに私がお菓子をやろう」

照「がんばります」キリッ

淡「つまんなーい」

菫「……仕方ないな、順番こなかったらお前にもお菓子やるよ」

淡「それでいきましょう」キリッ




【阿知賀】

晴絵「……ということで。何か希望ある?」

玄「はーい! はいはい!」

晴絵「はい玄」

玄「対戦中おもちを触らせてくれたら、一万点をお支払いしちゃうというのは!」

晴絵「だめだ」

憧「まーた玄がおかしなことを」

玄「えぇー」

晴絵「自分から点棒渡してどうすんだよ。あと生中継で映せないだろそんなもん」

玄「渡して減った点棒は! 責任もって自分で取り返すのです!!」フンス

晴絵「だめだって」

玄「えぇー」



晴絵「宥、お前はどう?」

宥「えっと……。ルールっていうか、お願いなんですけど……」

晴絵「お願い?」

宥「会場の冷房を暖房に変えてください、っていうのは……だめですか……?」

晴絵「えっ」

穏乃「宥さんそれは……」

憧「だめよ。当然」

宥「えぇー」

灼「死者がでると思……冗談じゃなく」

晴絵「いや、全体効果系で宥だけプラスになるならアリなのか……?」

灼「正気?」

憧「じゃないわよね」



憧「みんな自分の個人的なことばっかりじゃない! そんなんじゃ却下されて終わりよ」

晴絵「そうだな」

憧「全員制服をきちんと着て出る! こういうことで十分よ、高校生なんだから!」

晴絵「ん?」

穏乃「えー、私持ってこなかったよ」

憧「わかってるわよ! 私が貸してあげるから言ってるの!」

晴絵「んん?」

穏乃「いいよーそこまでしなくても」

憧「いいよじゃないの! いいから私の制服着なさい!」

穏乃「えぇー」

晴絵「……お前は、そのとき何着てるつもり?」

憧「うっ」ドキッ



憧「し、しずが持ってないんだから仕方ないじゃない! 変なこと言わないで!」

晴絵「……まあ、知らんけど。制服着るくらいどこも当たり前にやってるだろうよ」

憧「…………わかったわよ」

晴絵「灼は?」

灼「うーん……」

晴絵「なんでもいいぞ、他にろくなの出てないし」

灼「それじゃあ……鈍器攻撃ありのルールなら貢献できるかも」キリッ

晴絵「!?」

灼「……冗談だよ」



灼「……甘えるつもりじゃ、ないけれど」

晴絵「?」

灼「ハルちゃんに甘えて頼りきるつもりじゃないけれど……。一緒に、同じ景色を見てほしいから」

晴絵「同じ景色?」

灼「監督やコーチが後ろに座って、助言してもいいっていうのはどうかな……」

晴絵「!」

穏乃「おお!」

宥「わぁ~」

憧「……大丈夫それ?」

灼「黙って座ってるだけでもいい。あなたを近くに感じて、打っていたい」

晴絵「灼……」



晴絵(こいつらと、同じ会場……。本当に同じ舞台に立つ)

晴絵(……当然だけど、そんなことまで想定はしてなかった。私はあくまで監督、選手じゃないんだから)

晴絵(……でも、これが通れば私も……そこに……)

晴絵(…………)

灼「?」

晴絵(…………自分が打つわけじゃない、スポットライトを浴びるわけじゃない。そんなことはわかってる)

晴絵(……けど……)

晴絵(私は……)

晴絵(あの場所に、立てるのか……?)

晴絵(……立っていいのか……?)



晴絵「…………」ブルブルッ

灼「ハルちゃん?」

晴絵(…………怖くない怖くない怖くない。この子たちと一緒なら……怖くないっ!)

灼「……大丈夫?」

晴絵「……ああ」

灼「……迷惑、だったかな……」

晴絵「いや……。いいと思うぞ、それにしようか」

灼「!」

晴絵「…………よし、決まりだ!」



晴絵「じゃあそうだな、さすがに無制限ってわけにはいかないだろうから……」

灼「うん」

晴絵「『半荘ごとに一回、後ろに座ったセコンドに助言を聞いていい』これでどうだ!」

穏乃「いいと思います!」

宥「あったか~い」

憧「……やるからには、ちゃんとお願いね」

玄「あ、あのそれじゃ、半荘ごとに一回、セコンドさんがおもちを触らせてくれるというのは……」

晴絵「だめだ」

灼「……ハルちゃんを触る気?」




【臨海】

智葉「というわけだ。案があったら言ってくれ」

ハオ「では、中国麻将をやるというのは」

智葉「……それで有利なの、お前だけだろ」

メガン「ワタシたちも打てないデスよ」

明華「あまり得ではないですね」

ネリー「ムリムリー」

ハオ「むー……」



メガン「優勝賞品にカップラーメンを追加しマショウ」

智葉「賞品なんかあるわけないだろ。高校生の部活動だぞ」

明華「カラオケ大会で勝負してはどうですか」

智葉「麻雀で勝負しろよ」

ネリー「点棒じゃなくて現金取引にしちゃえばいい! ネリーはやる気出るよ!」

智葉「論外だっての」

ネリー「えーじゃあもうわかんない! なんでもいい!」

ハオ「なかなか難しいですね」

メガン「もうサトハが決めてクダサイよー」

明華「はい、それでいいです」

智葉「…………わかった」



アレクサンドラ「さりげなくうちを有利にするなら、日本語禁止で打つとかどうだ? 違反したら罰符で」

智葉「あからさまでしょう」

アレクサンドラ「あ、お前が無理か?」

智葉「馬鹿にしないでください。普段からこいつらと日本語以外でも話してます」

アレクサンドラ「ハラキリゲイシャフジヤマあたりなら英語と言い張ってもいいぞ?」

智葉「馬鹿にすんなっつってんだろが。そもそも対局中は雑談なんかしないですよ」

アレクサンドラ「おお怖い怖い」

智葉「……監督ならもう少し真剣に考えてください」

アレクサンドラ「真剣だよ、自分たちをよくする提案くらいどこだってやるさ」

智葉「…………」



智葉(…………うちの高校らしい言い草だな)

智葉(勝つためには手段を選ばず……。おかげで留学生を先鋒禁止にまでされたってのに、まだ懲りてないらしい)

智葉(だから真剣だというその言葉も……嘘じゃないんだろう)

智葉(…………だが)

智葉(気に入らないな、卓につく前から有利だの不利だのと)

智葉(その場限りの珍妙なルールのおかげで勝ったところで……喜べるものかよ)

智葉(……特に、宮永……。あいつにはそんな真似などせず……ただ勝ちたい)

智葉(…………勝てる自負もある)

智葉(…………)

智葉(……私だって高校生最後の夏だ、変な後悔はしたくない。真っ向から殴り合おうじゃないか)



智葉「よし、これでいこう」

ネリー「なになにー?」

智葉「『和了っても取った点数は自チームに加算しない、取られた点数が減るだけ』」

メガン「…………ホウ」

ハオ「これは……」

明華「なかなかですね」

アレクサンドラ「大胆だな」

ネリー「はぇー」

智葉「かまわんだろう? どうせ勝つのには変わりない」



ネリー「かまわないけどー。性格わかるよねー」

智葉「……なんだよ」

ハオ「ノーガードの削り合いといいますか……日本刀で生身の体を斬りあうといいますか……」

明華「サトハらしいと思います」

メガン「サムライの心意気を感じますね」

智葉「……大袈裟だっつの」

アレクサンドラ「まさにハラキリゲイシャだな」

智葉「それはもういいですって。つーか腹切るわけでも芸者でもねえよ」

アレクサンドラ(罵る時だけ私にタメ口になる智葉……。あ、何か好きかも)ゾクゾクッ




【千里山】

怜「で、監督が自分たちで決めろやて」

竜華「へー、おもしろーい」

怜「おもしろがっとる場合とちゃうで? 丸投げやん」

泉「結構ムズいですよね……」

セーラ「どない思う、フナQ?」

泉「うちの知恵袋!」

浩子「そうですね……。まあ色々考えられることはありますが」

セーラ「うん」

浩子「連荘は三回以上禁止いうのがまず第一候補ですね、白糸台対策的に考えて」

竜華「えっ」



浩子「あとは点棒払う人がドラ持ってたら追加で罰符とか、居眠りしとったら叩き起こされる監視員つけるとか」

怜(うわぁ……)

泉(あからさまな特定個人つぶし……)

浩子「大将から逆順に打つで新道寺は潰せる思いますし、三色ぜんぶ使わな和了り禁止なら永水複数いけますね、ええ」

セーラ(ガチやん……)

竜華(もっとお遊びのお楽しみ要素ちゃうの……)



竜華「あ、あのなフナQ」

浩子「はい」

竜華「そない禁止禁止いうんやのうて……。もっとこう、味方にやさしい感じのとかないん?」

浩子「そうですか? ほな、園城寺先輩の"見える力"を最大限に活かして」

怜「私?」

浩子「配牌時に予告和了をして、その通りの役で和了れたら点数五倍いうのはどうでしょう」

怜「それ私、何巡先まで見なあかんの」

竜華「他の人はそうそうでけへんよ。怜ばっかり何回も当てとったら不審に思われるやん」

セーラ「満貫以上で和了る! てくらいならやってもええけどなー」

泉「ないっすわー」

浩子「全否定!?」



怜「まあでも、今セーラの言うたやつ」

セーラ「ん?」

怜「予告までせんでも、満貫以上で和了ったら何か特典つけるいうのはええんちゃう」

セーラ「おお」

怜「どうせ高いの狙うん好きやろ? 私も多少は調整できるし」

セーラ「まあな」

浩子「ほな……満貫以上縛りで?」

泉「そ、それはちょっと私らにもキツないっすか……?」

竜華「せやねー、流局ばっかりになってまうかもなあ。『満貫以上は点数倍、代わりに満貫未満は半分』くらいでどう?」

泉「なるほど」

怜「ええとこかもな」

セーラ「かまへんで」

浩子「…………ふむ」



浩子「ええとは思いますけど。宮永照に満貫以上縛りやったら、ともすれば和了りゼロなるかもわかりませんよ?」

竜華「んー、そう都合よういくかなあ」

怜「白糸台とやるときだけに抽選当たるとも限らんし」

セーラ「うまくいかんでもオレがカバーするて!」

浩子「……まあ園城寺先輩がよければええですが」

竜華「確かに、怜の体力は心配かも……」

怜「ほなやっぱ、竜華を持ち込み可にして途中ひざまくら休憩ありとかひざまくらの上で打ってええとかにしよか?」

竜華「ときー」

怜「りゅーかー」

浩子「……はいはい、バカップル禁止て言わんかっただけ有難く思うてくださいね」




【新道寺】

煌「私たちがすばらになるようなルール……ですか」

姫子「どげん思います、部長……?」

哩「んー……。うちにとっていちばん悪かことは」

姫子「はい」

哩「私と姫子の打つ順番が崩されてリザベーションできんくなるこっちゃね。オーダーをシャッフルしてくださいとか」

煌「なるほど」

姫子「うんうん」



哩「だけん、うちから出すルールとしては!」

姫子「はい」

哩「『オーダーシャッフルせんと、最初んままの順番で打つ』!」

美子「えっ」

煌「おぉー」スバラッ

姫子「さすが部長!」

仁美「えっ」



哩「これなら、よそがうち対策でオーダー変更求めてきても大丈夫!」

姫子「正々堂々、っち感じもすっとですね!」

煌「すばらです!」

美子「……あの、部長……?」

哩「ん?」

美子「うちのが選ばれよる時点で、よそのルールは選外よ?」

哩「えっ」

仁美「あらためて言わんでもよかね、そげな事」

哩「あ……」

姫子「そういえば……」

煌「そうですね……」



哩「…………」

煌「…………」

姫子「…………」

哩「……どがんしゆう……」

美子「もう行き詰まり!?」

仁美(なんもかんもポンコツ……)



仁美「……花田には悪か思うが」

煌「?」

仁美「うちのチームは、ぶっちゃけ後半に勝負をかけるオーダーたい」

煌「…………はい」

仁美「だけん、後になるほど点数の高なるような……『誰が和了っても積み棒を流さず大将まで引き継ぐ』とかどげんね」

煌「!」

美子「まあ、一見公平っちゃね」

姫子「大将戦は何十本場にもなってことですか?」

哩「…………ふむ」



哩(確かに、姫子のリザベーションに何十本も積み棒の乗っかれば、私らには願ってもない……)

哩(……ばってん……花田にとっちゃまた……)

哩(思い返せば、花田にはそがん思いさせてばっかり……。申し訳なかと)

煌「…………」

哩「…………どげんね、花田」

煌「……心得ております」



煌「私自身が及ばずとも。白糸台の宮永さんはじめ全国の先鋒の方々を抑えられたら、私もチームにとってもすばらです」

姫子「花田……」

煌「それに貢献できるんですから! ぜひ、そのルールで提出してください!」

哩「花田……。お前にはいつも「部長!」」

煌「そこから先は…………。すばらくないです」フルフル

姫子「花田ぁ……」

仁美「…………すまんの」

美子「頼りにしよるよ」

煌「任されました!」

哩「……あいがとな。じゃあ、それで」

煌「すばら!!」




【姫松】

恭子「……という話や」

洋榎「はっ、小賢しいわ。いらんいらんそんなもん」

恭子「まあそう言わんと」

洋榎「誰が何を小細工してこようと勝ちゃええねん。へのつっぱりはいらんですよ!」

漫「おおー、言葉の意味はようわからへんがとにかくすごい自信や」

絹恵「さすがおねーちゃんやー」

洋榎「串カツからあげ食べ放題を用意せえ、くらいならアリやな」

恭子「何を与太事言うとんねん」



由子「それでも、何かうちに有利なことは言うといたらええのよー」

恭子「そうやね。何かある?」

由子「んー、『どこか一回だけ半荘やり直しできる』とかー? 特に先鋒戦」

漫「えっ」

絹恵「あー」

洋榎「なるほどな」

由子「漫ちゃんが不発やったら、今の半荘なしでもう一回ーって」

恭子「それは確かにええな」

漫「えっ」



漫「そんな、うちの都合だけでやり直しできたら不公平言われますって!」

恭子「そないセコいこと言う気はないけど……。確かに全チーム言い出したら収拾つかんし、特にうち有利でもないか」

漫「でしょ!?」

恭子「ほんなら公平に、おでこに油性ペンしたらやり直し権ゲットいうのは」

漫「結局私だけやないですか!」

洋榎「敵がやり直し言うたときに漫が二倍油性したらバリアー! もつけよか」

由子「子供のケンカなのよー」

絹恵「……バリアーの絵ってどんなん描くの?」

漫「やめてください! 完全に遊んどるやないですか!」



恭子「……ほな、早いもん勝ちで一回やり直したら二度は無理、くらいにしとこか。油性とバリアはなしで」

洋榎「串カツのソース二度漬けと一緒やな!」

由子「ええと思うのよー」

恭子「漫ちゃんの仕事は相手にやり直しコールされても、もっかい爆発することやで」

漫「ええ……」

絹恵「……まあ、不発やなかったらええんよ。がんばろー」

漫「…………うん」




【永水】

巴「何がいいですかねー、追加ルールの希望」

霞「そうねえ……」

初美「私はずっと北家で打ちたいですよー」

霞「あら、それいいじゃない」

小蒔「自風をずっと同じにする……ですか?」

初美「そうです!」

巴「それ、最初に北家がとれなかったらずっとまわって来なくなっちゃいますよ?」

初美「うちだけずっと北家で固定にしてください! にすればいいですよー」

巴「そんなんじゃ採用していただけないですよ」

春「不公平……」

初美「えー」



巴「姫様は何かありますか?」

小蒔「えっと……。私、対局中に寝てしまうことが多いみたいなので」

巴「はい」

小蒔「まくらを首につけて打ってもいい、がいいですね」

巴「えっ」

小蒔「この間見た通信販売サイトで、旅行中安眠グッズ特集というのをやっていたんです」

初美「あー、あの首に巻き付けるやつですかー?」

小蒔「はい! あれがすごく便利そうだったんですよー」



巴「うーん、そう言われても……」

春「……それは麻雀と関係ない」

小蒔「えー……」

霞「小蒔ちゃんしかやらないと思うわ」

初美「そんなの好きにしてください、で終わりですよー」

小蒔「えっ! じ、じゃあ好きに持ち込んでもいいってことですか……?」

巴「……いえ、うちには無いですよそんなまくら。誰も持ってないです」

霞「今から通販しても、届くまで何日もかかるわね」

小蒔「そんなぁ……」



霞「春ちゃんはどう?」

春「…………しいて言うなら」

巴「和了りのごほうびに黒糖以外でね」

春「えぇー」

霞(何でしょう……? どこか遠くで、凄く似たような会話がされた霊圧を感じたわ……)



初美「もー、そんなにルールなんて思い浮かばないですよー」

小蒔「そうですねえ……」

霞「ルールをこうしたらとか戦略とか、今まであまり気にしてなかったわ……」

春「うちみたいなゆるふわチームに求めても無理……」

巴「正直そうですよねー」

小蒔「どうしましょう……」

春「…………」

初美「…………」

霞「…………」

巴「……じゃ、それでいいですか」

四人「はーい」

巴「…………はい、『特にないです』」




【宮守】

トシ(開幕直前、突然の異例な通達……。運営は一体何を考えているのやら)

トシ(私が運営側の立場だったら、ちょっと問い詰めにでもいきたいところだけど……)

トシ(今は一出場校の監督。……なら、活かさない手はないわよね)

トシ(……さて、どうしてくれようかしら)

トシ(うちのチームにとって一番いいのは……やっぱり、任意に出場順を変えられること、かしらね)

トシ(副将に限らず、そのとき一番厄介な相手を選んで塞が塞げるようになったらかなりのアドバンテージ……)

トシ(エイちゃんにはできるだけ、捻った打ち手より正統派の相手をさせてあげたいし……)

トシ(シロも胡桃も豊音も。より相性がいい打ち筋の相手にあてられたら盤石だわ)



トシ(…………問題は、それをどう実現するか)

トシ(うちだけが相手にあわせられるようじゃ、当然不公平と言われて却下よねえ)

トシ(さてさて……。これは結構難問かもしれないわ……)


塞「あ、熊倉先生おかえりなさい!」

トシ「あら、みんな揃って……どうしたんだい? ここは私の部屋だよ」

胡桃「ちょっと、みんなでお願いがあって」

トシ「なんだい?」

白望「……追加ルールの希望を出す、っていう話を聞いたんだけど……」

エイスリン「モウ、キメチャッタデスカ?」

トシ「……まだよ」



豊音「みんなで考えたんだけどー、これにしてほしいんだー」

トシ「?」

白望「……見てください」

バッ

トシ「それは……岩手県大会のときの……」

エイスリン「ハイ!」

トシ「エイちゃんが描いた決勝戦20人の似顔絵と、その下に全員のサインが入った絵……」

塞「はい」

豊音「『みんなでひとつの色紙にサインを書いて、各校に一枚ずつプレゼント』! がしたいです!」



トシ「……うーん、それなら普通に終わった後で頼みに行けばいいんじゃないかしら?」

塞「……はい、それはそうなんですけど」

豊音「断られちゃうかもしれないしー、気まずい感じになっちゃったり頼めなかったこともあったから……」

胡桃「県大会一回戦のときは、頼んだのに逃げられちゃったんだよね?」

豊音「うん……」ショボン

白望(あれはただ、いきなり現れたでっかい豊音にみんなびっくりしただけだったと思うけど……)

トシ「……いいの? 麻雀と関係ないわよ?」

塞「うーん、それもそうなんですけどー」

胡桃「はっきり言っちゃえば、関係ない方がいいです!」

トシ「おや」



塞「結局、どんなルールでも私たちがやれることは変わらないかなって」

豊音「そうだよねー」

胡桃「そんなことに一喜一憂したって仕方ない!」

トシ「……ふむ」

白望「気にすることが増えたり、やることが変わったりするのはダルい……」

エイスリン「チガウルール、ムズカシイデス……」

白望「些細かもしれないけど。……エイスリンにとっては、絵の具やペンが変わるくらいのことかもしれないって」

エイスリン「…………」ウンウン

白望「それはすごく大事なことだって……思ったら。迷ったけれど、そっちの方がダルいと思った」

塞「……うん。だったら……皆が頑張れるようなご褒美があって、励みになれたらそれでいいって思ったんです」

トシ「…………なるほどね」



トシ(……やれやれ。マヨヒガ様に「迷ったけど」とまで言われるとはね)

トシ(この子たちなりにしっかり考えた答えというならば……。それを尊重するのも監督の務め、かしら)

トシ(所詮は開幕直前に差し込まれた程度の余興……。難しく考えすぎていたかもねえ)

トシ(事前却下の体制がしっかり整っているなら……、他校が偏ったルールを出したところで大きな影響はないでしょう)

トシ(……それくらいの良識はあると、信頼させてもらうわよ)

トシ(だったら、自分たちが一番納得できるように打てたらいい……。それが正解かもしれないわね)

トシ(…………逆に言えば、その程度のことに左右されるようなら。最初から勝ち運なんて無かったってことだわ)


トシ「……わかったわ、じゃあそれにしましょうか」

豊音「やったー!」




【有珠山】

誓子「それでどうするの? 明日提出よこれ」

爽「そりゃーもちろん! 『かわいい服を着てきたチームは、持ち点にボーナス加算』!」

揺杏「だなー」

誓子「服って……、制服のこと?」

爽「もちろん、制服以外も自由でさ! ユキのアイドル服アピールだ!」

揺杏「全国大会のために新調してきたからな!」

爽「揺杏様!」

成香「そんなルールでいいんでしょうか……」

爽「大丈夫だろー!」

由暉子「みなさんが仰るなら着ますけど」

爽「よーし、決まり!」



爽「でもさ、もっと早く言ってほしかったよな! 分かってたら学校行事で使う修道服とか持ってきたのに!」

誓子「嫌よそれは。おふざけで使ったら怒られるわよ? というか私も怒るわ」

爽「永水女子はみんな巫女服で出るってのにー?」

誓子「よそはよそ、うちはうち」

爽「うちら一応ミッション系だろー? ある意味そっちの方が勝負服じゃん!」

揺杏「でも別に私たち、そういう打ち方ができるわけでもないしなー」

成香「それはそうです……」

由暉子「この学校の麻雀部さんならできると思っていた時期が私にもありました」

誓子「……何よ、そういう打ち方って」

由暉子「背中に天使の羽を生やすとか、聖歌と共に『父と子と聖霊の御名において! 大三元(サントリニテ)!』とか」

誓子「……麻雀漫画の読み過ぎよ」



誓子「でも、修道服は冗談にしても。そのルールだったら、ユキひとりだけかわいい服でもだめじゃない?」

揺杏「そうだなー」

成香「私たちも……何か着るんですか?」

爽「ユキの服だったら、いろいろ持ってきたぞ」

成香「えっ?」

爽「新調したってことは、昔のやつもあるってことさ! おどろうキッズのダンス撮った時のやつとか!」

誓子「それは持ってきてたのね……」

由暉子「私の服だとサイズが合わないのでは」

揺杏「ちょっとくらいのサイズ直しならしてやるよ。胸まわりの布は余るだろうしな」

爽「やめろ揺杏、その話は私に効く」

揺杏「じゃあ成香と爽はそれな! 三人もいればいいっしょ」

誓子「えっ」

揺杏「えっ」



誓子「私たちは……無いの?」

揺杏「さすがにうちらには小さすぎだって。直すにも布が足りねーよ」

誓子「…………そう」

揺杏「爽のだって最悪直してヘソ出しくらいになるかもしれねーけど。それがギリだろ」

誓子「…………そうね」

揺杏(……あっ、キレてる?)

爽「…………」

成香「…………」

由暉子「…………」

誓子「…………そうね」



誓子「……まあいいわ。ユキがかわいい服で高得点もらえるなら私たちにはいいことだし」

爽(…………ホッ)

誓子「かわいいって言ってくれる方々と神様に感謝しましょう」

由暉子「……はい」

誓子「でも私の服は新しく作ってね」

揺杏「えっ」

爽「……いや、もう東京来ちゃってるし」

成香「材料もないです……」

誓子「作ってね」

揺杏「オイオイ、今から布買うところからってかー? 明日開会式なんだけど」

誓子「作ってね」

揺杏「…………はい」




【黒幕】

咏「おっはよーっす。……おろ?」

えり「……はあ……」

咏「どーしたんだいえりちゃん、ムズかしい顔して! 水虫の告知でも受けたのっ?」

えり「三尋木プロ……笑い事じゃないですよ」

咏「にょろ?」

えり「これですよ、これ。全国各校から届いた追加ルール希望」

咏「あー、ボツにするやつ決めるんだっけ? 全部集まったの?」

えり「ええ……」



えり「私は早く来たから、ざっと目を通し始めてたんですけど……。半分以上却下ですよこれじゃ」

健夜「そうなの?」

みさき「私たちはまだ見てないですが……」

理沙「来たばっかり!」

良子「ジャスト集合時間ナウですね」

えり「それじゃ……とにかく皆さんも見てください。会議始めましょう」

咏「んじゃ、がんばってねーぃ」

えり「待ってください! あなたもですよ三尋木プロ!」

咏「存じ上げぬ」

えり「とぼけないでください!」

咏「しょーがねーなー。どれどれー?」



咏「『最下位チームと一位チームの点数入れ替えチャンス』」

えり「だめに決まっているでしょう」

健夜「『対局中ツイッターが気になるからスマホ持ち込み解禁で』」

えり「バカなんですか?」

理沙「『全員目隠しして盲牌麻雀』!」

えり「放送事故ですって」

みさき「『ちゃちゃのんのCD一枚一万点で交換してあげるんじゃー』」

えり「趣旨わかってないですよね?」

良子「『半荘ごとに最下位校からひとりを一位校へ引き抜くデービーバックファイト、抜かれた人はそのチーム所属となり次回戦以降に出場可能』」

えり「ムチャクチャじゃないですか……」

咏(……ちょいっと面白そうだねぃ、インターハイでさえなければ)

…………

……



えり「ほら! 全然まともなのが無いんです!」

咏「んー、まあ高校生に自由に決めさせたらそーもなるさね」

えり「だからって! ひどすぎでしょう!」

咏「わかんねーけど」

えり「もっとこう、半荘順位にウマをつけてサイコロで点数決めるとか! チーム全員同じ役を和了ったらご祝儀とか!」

えり「そういうかわいいオマケ要素じゃないんですか!!」

咏「まじめだねーえりちゃんは」



えり「というかそもそも! なんで私たち実況解説者がこんな仕事やってるんですか!」

咏「自分たちで大会本部に売り込んだからだろーよ、これやったら視聴率とれて盛り上がりますからって」

えり「……わかってますよ本当は。そしたら私たちで全部責任取るならいいって言われて……」

咏「自業自得だねい」

えり「私は乗り気じゃなかったのに……」

咏「いや、知らんけど」

えり「全放送局合同企画の会社命令だから仕方なかったんです!」

みさき「それは私もですが」

健夜「わ、私は却下の基準が妥当かどうかプロの意見が欲しいからって呼ばれただけで……」

理沙「同じ!」

良子「イエス」



えり「大体、言い出しっぺのあの人はどこ行ったんですか! 主犯格は彼女でしょ!?」

咏「せめて主謀者って言ってやりなぃ」

健夜「あまり変わらないよ」

咏「そんで誰だったっけ、言い出しっぺって?」

健夜「私じゃないよ……」

みさき「同じくです」

良子「ノーウェイ」

理沙「冤罪!」

咏「だってよ?」

えり「……わかってますって、今ここにいない人なんですから」

ガチャッ

恒子「お疲れ様でーっす。……あら?」

健夜「あ、来たねこーこちゃん」

咏「ご登場だねぃ」



恒子「どーしたんですか皆さん、ピリピリしちゃって? おしりぴりぴり病の告知でも受けたんですか?」

咏「ひとの持ちネタ取るんじゃねーぜ」

健夜「こーこちゃんを待ってたんだよ」

恒子「あ、そうなの?」

理沙「遅刻!」

みさき「……来ないかもとすら思ってました」

良子「ギルティです」

恒子「ゴメンゴメン! 仕事してたんだから許して!」

健夜「仕事?」



恒子「却下されたチームに補填する代わりのルールだよ! これ作ってたんですから!」

咏「へー」

えり「……存外まともですね」

みさき「そんなことまで考えてたとは……」

恒子「もっちろん! 四択になってないと成立しないですからね!」

健夜「こーこちゃんが考えたの?」

恒子「そうだよ!」

良子「こう見えてマイジョブはちゃんとするんですね?」

理沙「意外!」

健夜(嫌な予感がするけど……)



えり「じゃあそれ、見せてもらえますか?」

恒子「あ、それは当日のサプライズで! だから見なくていいですって!」

えり「私たちは把握しておかないといけないでしょう。見せてください」

恒子「いいっていいって」コソコソッ

えり「……何を隠そうとしているんです?」

咏「何か怪しーねい」

恒子「そんなことないから! 大丈夫大丈夫!」

えり「見せてください」

恒子「えー、サプライズの方が面白いと思うけどなー」

えり「見せなさい」

恒子「…………はい」



『小鍛治プロが代わりに半荘打ってくれる券配布』

『鷲巣麻雀をやりましょう』

『もううちが優勝でいいんじゃないかな』

『ワイプではやりんライブを放送してください』

『はやりんライブのワイプで全国大会放送でもいいよ!』

『和了りに応じて別室に集められた監督コーチが脱衣』

『むしろはやりんが脱衣』

『部員同士のえっちなエピソードを公開したチームに三万点プレゼント(実演も可)』

…………

……


えり(♯^ω^)ビキビキビキッ

恒子(…………あ、やべっ)

えり「アホかーーー!!!」



えり「中止中止! この企画は無かったことにしてください!!」

恒子「えぇー」

健夜「さすがにフォローできないよ、こーこちゃん」

咏「おっつかれー」

みさき「やれやれですね」

理沙「当然!」

恒子「えぇー」

良子「……ちょっとこのはやりさんをクロスアウトさせる案について、詳しく伺いたいのですが」

健夜「お、穏便にね……」


カン




【アナザー清澄】

久「役のレア度と飜数が釣り合ってないって思うことあるわよね。こんな出にくい役なのに一飜しかないの? とか」

まこ「まあ無いとは言わんが」

久「だからその辺を改善して! 『役の飜数を以下のように変更』で提出しましょう」

まこ「猛烈に悪い予感がするのう」

久「とりあえず嶺上開花は十飜くらいがいいかしら」

まこ「あからさまに身内びいきじゃろ。咲が和了るだけで倍満確定とかみんな引くわい」

久「あら、誰が和了ったって倍満確定は一緒よ?」

まこ「普通は滅多に出んじゃろて。わしらは咲と打っとるからマヒしとるかもしれんが」

久「滅多に出ないなら十飜くらいいいじゃないー」

まこ「咲が悪目立ちするじゃろが。そのルールのためにサマこいとると思われるんがオチじゃ」



まこ「せいぜい一飜プラスくらいにしときんさい。変に目立たんよう他の役も考えて」

久「あらー、混一色や清一色もそんな程度でいいのー? 染め手したいでしょー?」

まこ「しゃーないじゃろ。別にそのままでもええわい」

久「欲がないわねーまこは」

まこ「あんたが極端すぎじゃて」

久「えー、私だって地獄単騎なら得点五倍! くらい言いたいけど役じゃないから我慢してるのよ?」

まこ「十飜だの五倍だのが極端じゃっちゅうんじゃ」



久「じゃあ目線を変えて! 眼鏡美人は得点あっぷとか!」

まこ「もうフザけとるじゃろ自分」

久「えぇーだってまこはかわいいのにー」

まこ「……これで悪気が無いっちゅうんじゃからのう」

久「眼鏡を取ったらさらにかわいい美人は得点あっぷのほうがいい?」

まこ「からかうのもええかげんにせえ」

久「まこはどっちもかわいいわよ?」

まこ「…………」

…………

……



京太郎「なかなか決まらねえな先輩たち」

優希「じゃあ、お前とタコス焼き器を持ち込み可にするでもいいじぇ! 試合中絶え間なくタコスを提供するのだ!」

京太郎「寝言は寝て言え。対局中にじゅうじゅう音立てたり匂い出したら迷惑だろうが」

優希「タコス焼くこと自体は否定しないところ、好きよ☆ アナタ☆」

京太郎「ケッ」

和(……エトペンの代わりに咲さんを抱いて打てないものでしょうか)

咲(和ちゃんのおもちをツモしたいなあ……)


もいっこカン




2022/07/10