昨年末に宮崎日日新聞でこんな記事が発表され話題になりました。
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*宮崎日日新聞 2018年11月3日 記事より抜粋

無人ヘリで除草剤散布 県、下刈り省力化へ試験

http://www.the-miyanichi.co.jp/kennai/_35338.html?fbclid=IwAR0WZdQgD6TKAW3eWix_Kh1sk4cw4CzjXkm6L0rNPB0qR4fIzCRcADA8xQ0

簡単に説明すると、
①宮崎県では林業従事者(山師)が減っています。→②木を植えても手入れ(下草刈り作業)する人がいません。→③手入れしないと木が育ちません。手入れ不足の山になります。→④きつい労働の林業は人出がどうしても増えません。→⑤手入れ不足を解消する為にもう無人ヘリで山に農薬撒いて下草を枯らせます。→⑥人手が足りなくても、これで手入れができます。これで解決。

と言う訳なんです。
とりあえず宮崎県が所有する山林で実験して、「大丈夫そうなら2020年(来年)から始めますよ」と。

いやいやいや、これは駄目でしょ!!!!!

もうこの記事読んでから、ずーーーーーーーーーーーっと言いたかった!!ずっとブログに書きたかった!意見も結構求められていたんですが、すいません、ようやく書きます。

ご存じの通り、私山師をしています。
現場でもバリバリ作業しています。親方もしています。従業員も雇用しています。
そして林業の未来を考え、これまでいろんな情報発信も行って来ました。活動も行って来ました。
とうとう山と街を繋ぐべく、宮崎市内若草HUTTEというお店まで作りました。
山側の目線、街側の目線どちらの目線も大事にし、宮崎の未来の為に林業がどうあるべきなのかを常に考えています。

そんな私が今言える事は一言。
これは完全に「愚策」です。

県の担当者の方達も林業の現状と未来を一生懸命に考えたのだとは思いますが、完全に目的と手段が混同し大きな指針を見失っています。
これをやってしまうと、宮崎県はいくら杉の木を生産しようが日本で一番の、いや世界で一番の林業後進県に成り下がるでしょう。後進県というか、もう付ける薬も見当たらない最低最悪の県になります。もう誰も宮崎の木材なんか買わないし、だれも宮崎になんか住みたがらない。

「宮崎県からオーガニック農業が無くなる。」
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宮崎県民が宮崎を誇りに思うところを上げるならば、「安全で美味しい農産物」が必ずでてきます。安くて美味しく新鮮な野菜はもちろんの事、今では無農薬・無化学肥料・有機栽培にこだわった質の高い野菜の生産者も増え、オーガニック農業は間違いなく宮崎に価値を与えています。

野菜のみならず畜産業や漁業もそうです。
こだわった飼料に水、更に一手間もふた手間も加えて、より良い品質の向上に生産者が長年に渡って努め、宮崎を代表するブランドが多く誕生しています。日本を超え、世界に羽ばたく農産ブランドも数多くでてきました。

しかし、この努力は全て水の泡となります。
何故ならば、川上(山)で農薬を散布するからです。
その農薬は川下に流れ、間違いなく農業にも漁業にも影響します。
いくら自分の畑を無農薬にしようが、流れてくる水には農薬が入っているかもしれません。
「間違いなく無農薬です」と言えない以上、無農薬栽培はうたえなくなります。
この条件で有機JASは取れるでしょうか?国際認証は取れるでしょうか?世界の基準は私たちが思っている以上に、非常に厳しい。この環境下にある農地の農産物が世界で評価されるとは思えません。
私は宮崎県全域でFSC(国際森林認証)を取得するべきだと考えていますが、その以前の問題。FSCなんか夢のまた夢です。なんぼ輸出頑張ったって日本の木なんか買ってくれないでしょう。

宮崎県は浅はかな一手で、唯一の武器を放棄し、自ら首を絞める事になるのです。

「林業で一番過酷な、下草刈り作業」
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しかし、林業に人出が足りていないのは事実です。
特に6月~10月のくそ暑い中に行われる「下草刈り作業」は、林業の作業の中で肉体的に最も過酷と言われています。
宮崎の30度を超す真夏の気温の中、植えて1~6年生の小さな木の苗の周りに茂る青草を、刈り払い機というエンジン付きの機械で、日中ひたすらに振り回して草を刈ります。
陰は無い…山の上で太陽がなんだか近い…青草と言ってもむっちゃワイルドな草です。草って言うかむしろ木。畑の草とは大違い、場所によっては自分の身長を超す2mのススキを相手にしない場合もあります。もう「どんげかなるわ」とはこの事。

1週間で軽く2,3㎏痩せます。←その割には俺痩せないなーw
熱中症なんか日常茶飯事。毎日軽度の熱中症です。「耳鳴りがしだすとそろそろやばいなー」とか、熱中症や脱水症状慣れしてきますw

それが1週間で済めばいいけど、5か月続く訳です。
なのでこの時期に辞める新人も多数います。昔から「下草刈り作業を乗り切ればもう辞めない」とさえ言われます。この作業が体力的・精神的にも山場なのです。

図解 知識ゼロからの林業入門 [ 関岡 東生 ]

「減る山師、減らない杉生産量」
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宮崎県の林業従事者は減っています。(参考 宮崎県オープンデータボックス)
1990年 5392人 →2010年 2690人

直近の数字が出なかったのですが、20年で半数の2702人減っているのです。

でも杉生産量は29年日本一!

横ばいどころか右肩上がりで年々上昇しています。

もうアホなのかなと思います。
30年で人は半分に減っても、生産量は維持どころか増やしている訳です。
持続的な林業をうたっていますが、数字だけ見ても無理ゲーなのは一目瞭然なのです。

もちろん高性能林業機械と言って、木材生産を省力化できる機械も多く活躍しています。
宮崎は北海道に次ぐ2位の保有台数があります。だから人が減っても大丈夫、そう言いたい人は是非下草刈り作業をひと夏やってから言って頂きたい。

そう、木を伐って造材する、木材生産部分は近代化し機械化しました。
ですが、木を植えて育てるまでの造林業はこの30年で全く近代化していないのです。
未だにほぼ人力、ほぼアナログ。
高野仁③

木を植えるのなんていまだにクワ1本で植えてますから。一日300~400本も山の急斜面で背負って、一本一本手植えする訳です。
この作業に至っては50年、いや100年くらい変わっていないんじゃないかな?人工林施業の有史以来変わってないのかも。機械化したくてもできるものとできないものがやはりあるのです。*機械で植林できものも無くはない。

そして宮崎の林業には偏りがあっって、機械化した華やかで儲かる木材生産業には人が多く若者も多いですが、地味でアナログな植林・育林の造林業には人手が集まらず、若者も少なく高齢化しまくっています。
なので下草刈り作業をする労働力は統計数字に出る以上に深刻なのです。

「労働力を省く=機械化、は正解なのか」

じゃあやっぱり造林業(植林・育林)を維持するためには、機械化じゃん!無人ヘリコプターで農薬撒いて労働力を省力化しようよ!って言うのは果たして正解なのでしょうか?

山に農薬を撒いてまでやりたい林業ってなんなのでしょか?
山に農薬を撒いてまで残したい山ってなんなのでしょうか?


畑の草を枯らすのとは大違いなのです。エンジンが付いて、鋭い刃が高速回転する草刈り機じゃないと切れないような草です。それを枯らすほどの農薬ですよ。
記事には「環境に影響がないか調べる」とありますが、どの程度調べるつもりでしょう?
環境に影響があるのかどうかは本来数十年、数百年しないとわからないのです。
生態系への影響は数回実験したくらいでは到底わかり得るものではありません。
「お前ん家(ち)のすぐ裏山で実験してこい」って感じです。恐ろしくてそんな事できないはずです。

労働力を省いてもできる、木材生産もあるはずです。
小規模皆伐なのか、長伐期施業での間伐なのか、伐採量を制限するのか、議論の余地は沢山あります。
時代に合った、宮崎に合った森林づくりを勇気を持って模索する時代に来ているのです!

私は林業に定義があるとするのなら、これだと思うんです。

図解でよくわかる農薬のきほん 農薬の選び方・使い方から、安全性、種類、流通まで [ 寺岡徹 ]

「未来(次世代)が喜ぶ山を残すのが林業」
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時代によって林業の技術も仕組みも政策も変わります。
同じ日本でも場所が変われば林業も変わる。同じ宮崎でもそうなんです。
地域や会社や人も変われば林業も変わります。でもみんな根本にあるのはこの気持ちだと思うんです。この気持ちが根底にあるのなら何をやっても良いし、逆にこの理念から外れる事はやってはいけないのです。

そしてこの気持ちは宮崎県の林業政策を決める方達も持っているはずです。
今回下草刈り作業の省略化の為に、山林への農薬散布を考えたのも、手入れ不足では無い、立派な木材が並び立つ、豊かな山を未来に残したいと思ったからに違いありません。

ですがそれは「豊かな木材」の為であって、「豊かな山(森林)」の為ではありません。
29年杉生産日本一の流れを止めたくないのかもしれませんが、それよりも大事な事は沢山あります。
森林の機能は木材生産だけではありません。豊かな土壌が豊かな水を生み、それが農地へと流れ豊かな農業を生み、それが海へ流れ豊かな海と漁場を生み出すのです。そしてそこに住む人達へ豊かな暮らし育み、子孫永代へと繋がっていく。その根本を生み出すのが林業のあるべき姿のはずです。
もう一度ここを思い出して頂きたい。目的と手段が混同しているのです。木材生産はあくまでも手段の一つでしかなく、本来の目的は未来が喜ぶ山(森林)を残す事だったはずです。

「山に農薬を撒くぐらいなら、林業辞めます」
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私は林業従事者の中でもやる気満々の部類の人間ですが、それでもこんな林業をやらされるくらいならもうこの道からは降りたいと思います。こんな手法は誰も幸せにしないし、何より子どもたちに顔向けできません。将来子どもや孫たちが、農薬を撒き続けた山を喜んでもらえるとは思えないのです。そして私自身そんな場所に住みたくもない。もしこれが日本でスタンダードになるのなら、どこか違う国にでも住もうかなとさえ思います。そしてそう思う人は少なくはないでしょう。



「植えない勇気は放棄では無い」

今後日本の人口は完全に減少します。*移民を入れない限り
その中で高水準で木材生産を維持する意義はどこにあるのでしょうか?
以前この議論の中で、「将来無い方がいけない。とりあえず植えとけば将来どうにかなる。」と仰った方がいましたが、私からすると狂気の沙汰にしか思えません。

現在既に「とりあえず植えた木」がどうにもなっていないのです。需要と供給のバランスが崩れた林業は、従事者をひっ迫し新たな問題が続出しています。現場は仕事に追われ、木材生産はこんなに機械化したのに未だに労働災害は減りません。30年横ばいです。これを更に継続させようというのです。
伐り過ぎた山々はまた税金を投入して植林・育林をしなくてはならなくなります。高度経済成長期以降、木を伐りまくって植林・育林に税金を投資しまくった負の50年がまたやってくるのです。そしてそんなお金はもう日本にも宮崎県にも無いのです。どうするつもりなんでしょう?

そこまでして作りたい木材ってなんなのでしょうか?
そもそも人口減るのに木材は今ほどいるのでしょう?
木材生産しなくても林業はできるんじゃないのか?
木材生産をしなくても山(森林)を守って行ける方策を探る時期なんじゃないのか?
「林業=木材生産」は止めた方がいいなじゃないのか?
私はそう思う訳なんです。


「宮崎県民は声を上げる時が来た!」
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ここまで読んで下さった方はもうお気づきだと思いますが、これは林業だけの問題ではありません。
宮崎県に住む人間全ての人にとっての問題です!

だってそうですよね?皆さんが飲む水は山から流れてくる訳ですから。
皆さんが家で使う水の話です。
皆さんが作る野菜に撒く水の話です。
皆さんが家畜の飲ませる水の話です。
皆さんが魚を獲る海に流れる水の話です。
皆さんのお子さん、お孫さんが飲む水の話なんです。


「山に農薬を撒かなくても、林業を救う道はある!」

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みんなで話し合えばきっと見つかります!
山に関わる人間だけで考えるからこうなるんです。街も農も海もみんなで考えましょう!
私は自信を持って言えます!
きっと良いアイデアが生まれるはずです!

だって若草HUTTEをOPENして2年、山と街が繋がる事でいろんな可能性が見えたから!
沢山の人のアイデアが集まれば、どうにかならない事なんか意外とないんです!!

私は声を上げたい。
1人の山師として、1人の宮崎県に住む人間として、1人の親として。
山林への農薬散布は「NO」!と。

もちろん憎くて言うんじゃありません。後悔する前に議論しておきたいんです!
これは大きなムーブメントとなって動かさないと動かない事例だと思っています。
特に宮崎で共に頑張る林業・農業・漁業関係者の皆さん。一緒に声を上げましょう!
宜しくお願いします!

*web署名のページを作成しました!
「【宮崎県林業】山林へのヘリ除草剤散布は反対です!他の解決方法をみんなで考えよう!」

http://chng.it/tDKmbytZnL

今回の署名は宮崎県行政に対する批判でもなく、除草剤に対する批判でもなく、木材生産に対する批判でもありません。
あくまでも
「宮崎県民(日本国民)のほとんどが知らなかったこの状況をもっと知って貰って、みんなで勉強して議論して、どんな解決方法が最適なのかを見つけたい!」
「その為に一旦除草剤散布実験は中止して下さい!」
「そしてみんなでこの問題について話し合いましょう!」
「みんなが納得する解決方法を見つけましょう!」

という署名です。
自分の意思に合わない方はスルーして下さい。
「現状を変えたい、自ら望む未来を生み出したい」という方は是非ご署名お願いします。一緒に考えましょう。

この問題にまだ答えはありません。
それは簡単には到達できないかもしれない。

でもこれをきっかけにしたい!
林業関係者だけでなく、みんなで未来の森林づくりを話すきっかけにしたいんです!

未来(次世代)が喜ぶ森林づくりが何なのか。そして私達に必要な森林づくりとは何なのか。それを探る一歩目を、今日から一緒に始めましょう。
一緒に未来を生み出しましょう。

プロジェクト内容だけでも呼んで頂けるとありがたいです。
賛同頂けたら署名お願いします。

*集まった署名は宮崎県知事・宮崎県森林環境部部長・林野庁長官宛に届ける事になっています

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