帯に「敗戦は、帝国「領域」に何をもたらしたか/日本、朝鮮、台湾、満洲、樺太、南洋諸島の8月15日」とありますが、まさに内容はその通り。

 ポツダム宣言の受諾によって日本は海外領土をすべて失うことになるのですが、多くの日本人が住み、実質的に日本と日本軍が治安の維持をになっていた地域において、日本の存在が一夜にして消え去るということはありません。
 日本軍が去ったあとの治安を誰が担うのか?日本人をどうやって引き揚げさせるか?という問題が残りますし、さらに冷戦と中国での国共内戦を控えた当時において、誰が日本から占領を引き継ぐのか、日本人の技術や行政データを手にするのかというのは大きな問題でした。
 この本はそうした問題と、その中で翻弄された現地の人びとの姿を各地域ごとに描いています。

 沖縄だけでなく樺太でも民間人を巻沿いにした地上戦が行われ多くの悲劇が生まれたという事実、8月15日に建国記念日をおいたという韓国の「屈辱」など、この本では8月15日以降の「戦争」というものが描かれています。

 また、敗戦を知った日本人の中に日本に帰らずその地に残りたいと思っていた人が多くいたこと、台湾や南洋諸島に沖縄から多くの人がわたっていたことなど意外な事実を知ることも出来ます。

 8月15日という日を境に海外領土を放棄したことは正しいことなのでしょうが、一方的な放棄は時に現地に位していた人びとを翻弄します。
 この本の216ページに書かれている樺太から引き揚げたサハリンの少数民族ゲンダーヌ(北川源太郎)の悲劇などはまさにそれを表していますし、日本の国家としての「責任」を問うものです。

 開戦責任や戦争犯罪の責任とはまた違った国家の「責任」というものを考えさせられる本です。

「大日本帝国」崩壊―東アジアの1945年 (中公新書)
4121020154