副題は「激変する社会と悩める若者たち」。急激な経済成長の中で生まれる世代間のギャップを主に恋愛と結婚の面から見た本になります。
改革開放が始まる以前の世代とそれ以降の世代では価値観やライフスタイルが違うというのは当然想像できるところですが、本書はつづく90年代や00年代に生まれた世代も見ていくことで、さらなる価値観やライフスタイルの変化を明らかにしています。
中国では急速に少子化が進んでいますが、本書を読めばそれも納得という感じで、現代中国における恋愛・結婚・子育てが日本以上に険しい道だということがわかります、
現代中国と、これからの中国を見ていく上で非常に面白い材料を提供してくれる本だと言えるでしょう。
目次は以下の通り。
第1章 世界一のジェネレーションギャップ―生活、金銭感覚、結婚観第2章 データで見る中国の恋愛、結婚、離婚と出産第3章 北京で聞きました―20代、30代の恋愛観と結婚観第4章 「図書館30秒」に見るZ世代の恋のカタチ第5章 ファミリービジネス化する結婚―結納金は年収の10倍以上第6章 中国の住宅事情―住宅私有化の波が呑みこむ少子社会第7章 恋愛は「闇」でする悪いこと?―中国の恋愛観第8章 細くなった一人っ子世代、「気まずさ」に悩む若者第9章 美顔を整形で手に入れろ―不安と競争圧力の下で第10章 画一化された競争人生にノーと言い始めた若者たち
著者は1996年に北京に初めて降り立ち、その後、北京を中心に暮らしてきてきたそうですが、その変化はとてつもなく大きなものだったといいまし。電話を掛けるために屋台のような電話やさんにお金を払ってかけていた時代から、日本以上のスマホ社会になり、二束三文だった住宅は平均収入比では世界最高レベルになりました。先進国の住宅は年収の約10倍で買えるのに対して、中国は全国平均で20倍、北京市では40倍以上です(15p)。
そんな変化の中で顕在化したのがジェネレーションギャップです。どの国でもジェネレーションギャップはあるものですが、中国には2つのものがあるといいます。
1つは現在80歳前後の親と50歳前後の子どもの間にある金銭面を中心としたギャップです。80歳代は生まれた頃は日中戦争、さらには大躍進による飢えや文化大革命の混乱を経験しており、とにかく倹約癖が強いといいます。
水を節約するために全自動洗濯機を一度止めて排水される水を汲み出して再利用としたり、無料のものは何でももらってきたりで、ある程度金銭的な余裕が出てきた子ども世代とは大きなギャプがあります。
もう1つが60〜70代の親とその子どもの間に見られる恋愛・結婚観のギャップだといいます。
50年代から60年代前半に生まれた世代は、子どもの頃に文化大革命を経験し、1600万人を超える青年が半強制的に辺境の農村に送られた世代で、教育の機会を奪われた人も多くいました。
それでも若い頃に改革開放を経験したので、金銭面で子の世代と大きなギャプはありません。しかし、親世代としては金銭的にも不自由させずに学歴もつけてやったのに結婚しない、孫ができないということに戸惑いがあるようです。
また、兄弟が多かった親世代に対して子の世代は一人っ子であり、親の期待はその一人っ子にすべてかかっているのです。
恋愛・結婚観のギャップは日本にもあるかもしれませんが、現在の中国では夫の側が住居(マンション)を用意するのが当たり前になっており、しかもマンション価格は高騰しているので、親の援助がなければ用意できないという状況になっています。
中国でも晩婚化は進んでいます。2010年に男性25.75歳、女性24.0歳だった平均初婚年齢は2020年に男性29.38歳、女性27.95歳にまで高くなっています。初婚人数も最も多かった2013年の2385.96万人から20年には1228.6万人とほぼ半減しており、結婚の件数そのものが激減しています(54p)。
中国の離婚率(人口千対)は2019年で3.36で日本の2020年の1.57に比べて倍以上の高さになっています。
中国は女性の就業率が2022年で62%と日本の53%(2019年)よりも高く、女性が経済的に自立していることが1つの背景にあると考えられます。
また、不動産価格の高騰対策として夫婦が2軒目の住宅を購入できるのは1軒目を購入してから3年以上経過してからといった規制があるのですが、この規制をかいくぐるために離婚する夫婦もいるそうです(近年でこうした行為を禁止するための新たな規制もつくられている)。
他にも、中国は夫婦別姓であり、離婚しても役所の書類を見ない限り気づかれないといったことも要因の1つです。
この離婚率の高さに対して、2021年から離婚手続開始から30日間は撤回を受け付けるクーリングオフ期間を設ける民法典の改正がなされています。
結婚数の激減とともに少子化も進行しており、合計特殊出生率も2000年以降は1.6程度で推移していましたが、2020年には1.30、ほぼ日本と同じ数字になっています。
要因としては生活水準の上昇と都市化があり、これは万国共通の少子化要因ですが、中国の急激な少子化には、これ以外にも男女比のアンバランスや住宅費と教育費用の高騰などがあると言われます。
長年、一人っ子政策を続けてきた政府は、2014年からこれを緩和し、2016年には二人目まで、21年には3人目まで認めるようになりましたが、一時的に反転があったものの少子化は止まっていません。
国公営の組織の人事評価では昇進基準に子どもの多さが加味されるところまで出てきたといいます。
こうした中で家庭の教育費の負担を抑えるために、政府は2021年7月に塾禁止令を出しています。
ただし、中国の教育システムは多様な人材を「育てる」ことよりも、エリートを「選別する」ことを念頭にデザインされており、これが変わってこないと学歴獲得競争はなかなか収まらないと思われます。
中国では教育が重視されながらも教師の待遇は悪く、優秀な教師が塾講師になってしまうことも多いため、そういった人材が戻ってくることを期待する声もありますが、その先行きは不透明です。
第3章では北京の20〜30代の若者の生の声が紹介されています。
ここでは、上海の若い女性の母親は婿を評価するための詳細な一覧表を持っていて、そこには学歴などの他にも戸籍の所在地や新居のマンションがどこにあるのか? なども評価対象で、こうしたことを詰めるために本人なしで両家の親同士の交渉が行われるという話が紹介されていたり、女性側の希望としても「マンションの頭金の180万元〜250万元(3600万〜5000万円)は男性側が支払ってくれるのは必須。その後の支払いは二人でローンを返すのもあり、だけど、全部男性側が買い取ってくれていればなおさら良い」(102−103p)といった話が紹介されており、結婚と不動産が密接に結びついていることがわかります。
また、日本だと「孤育て」などと言われたりしますが、30代で2歳の子どもを持つEさんの話だと、両親+両親の両親の6人で子育てをしている状況で、今は仕事をしていないので手は足りているものの、4人の祖父母が一人の孫のために一週間交代で彼女の家に詰めている状況で、料理も洗濯も子どものものは別立てといった形になっているそうです。
他に興味深いのは20代のバリスタというCさんの話で、60代の母親は本も読まずにスマホの動画ばかり見て認識が偏っていて困るという話(本人は村上春樹などを読んでいて母親に薦めたそう)。日本でも親がYou Tubeで陰謀論にハマったとかいう話がありますけど、中国でも同じようなことがあるんですね。
他にも高校生までは恋愛はダメだと言いながら、大学を卒業するとすぐに「結婚はまだか」と言ってくる親への戸惑いなども語られています。
第4章では「図書館の30秒」という2019年の末にバズった書き込みから現在の若者の恋愛事情が考察されています。
このエピソードは「8年付き合った彼は、私が目をつぶって誕生日のろうそくに願い事をしていた30秒間に、停電中の図書館にいた他の女性とスマホで連絡を取っていた」という書き込みで、彼が寝ている間に彼をスマホを見たところ、上記のようなことがわかり、彼は彼女とその両親に謝ったが、傷ついた彼女は分かれることを選択したというものです。
ここから見えてくるのはメルヘンチックな恋愛を求めている現代中国の若者の姿ですが、同時に恋人のスマホを見ることは当たり前であること(付き合い始めるときに相手のスマホのパスワードを要求するケースは多い)、相手の両親に謝りにいったことからもわかるように両親参加型の恋愛になっていることがうかがえます。
しかし、恋愛では純粋なものが志向されながらも、結婚となるとまるで商談のようになるのが現代中国の難しさ。
先に夫側が新婚の新居を用意するのが当たり前と述べましたが、農村では結納金の高騰が問題になっています。
2人の息子を持ち甘粛省から北京に出稼ぎに来ている男性は、結納金は18万元になっていると効いて頭を抱えていたそうですが、これは農民の平均年収の12年分以上のあたる金額です。この男性が結婚した20年前の結納金は400元だったそうですから驚くべき高騰ぶりです。
この結納金の高騰は2010年代から始まったとも言われていますが、注目すべきは辺鄙で貧しい地方ほど結納金が高騰している点です(139pの「全国結納金地図」参照)。
貧困地域には女性に嫁には来たがらない、でも中国の伝統的な社会において男やもめは「失格」家族や「失格」息子の烙印を押されてしまう。そのため辺鄙な農村ほど結納金が高騰するわけです。
さらに中国では一人っ子政策の中で男女比がアンバランスになったことも要因の1つです。今後、30歳前後で男女が結婚していくと考えると、男女比がアンバランスな人口グループの婚期は2026〜45年にピークを迎えることになり、まだまだ問題は続くと思われます。
結納金については農村部での高騰が著しいのですが、都市部で問題になっているのが先述した住宅価格の高騰です。
北京では理想的な新居とされる第三環状線内で広さ100km2以上の3LDKの物件となると、1億円以下ということはまずなく、築20年以上のマンションでも3億円近い値がついているなど、若者には変えない価格になっています。
これが70年代生まれと80年代生まれのギャップも生んでいます。70年代生まれの人間は、中国はどんどん個人主義的になり、血縁関係も弱まると考えていたのですが、その後の世代になると、親丸抱えの結婚が当たり前になり、強烈な逆戻りが起きていると感じているのです。
かつて中国の都市部の住宅はすべて公有で、基本的には就職先が用意していましたが、1998年にこの福利住宅の制度がなくなり、そこから不動産ブームが始まりました。
中国では賃貸住宅における借り手に対する保護がほとんどなく、大家が出ていけと言えば出ざるを得ないので、夫婦で賃貸に住んで住宅購入資金を貯めるという形も根付きませんでした。
そこで、家族総出で若夫婦のために住宅を用意するという風習が生まれてきたのです。新婦の側も相手方が娘にふさわしいかを用意された新居で測るようになり、いまや「新婦の母は不動産価格高騰の元凶」(169p)とまで言われています。
もともと中国では恋愛については厳しい面もあり、60年代の頃は共産党員は結婚も離婚も党の許可を得てするものでした。
また、90年代までは中国では5つ星高級ホテルなどを除くと、男女で宿泊するときは結婚証明書の提示が求められるといった成文化されていないルールがあったそうです。
第8章では「新語」から中国の若者の姿を探っていますが、「破防(心が折れる)」、「社恐(社交恐怖症)」、「社死(社交の場面で死ぬほど恥ずかしい思いをする)」など、繊細さを感じさせる用語が並んでいます。
もう1つよく使われているのは「尬(ガア・気まずい)」という言葉です。90年代辺りまでは中国の若者といえば周囲のことを気にせずにやりたいことをやるタイプが多かったそうですが(男子学生は清潔感皆無だったという)、今の若者は周囲に非常に気を遣い、潔癖とも言えるほどになっています。
そのため、下着は別洗が当たり前になって、わざわざ別洗用の小さな洗濯槽がついた洗濯機が登場しているそうです。
精神面にも「潔癖」は現れており、本書では「恋愛をしたことのある男の人は受け入れられない。前の彼女と色々あったと思うだけで気持ちが悪くなる」(210p)と語る35歳独身女性のネットへの書き込みなどが紹介されています。
一方で、美容整形が流行するなど即物的な面もみられ、大学受験が終わってから大学入学前の夏休みに親に連れられて整形手術をしにくる新入生が多いため、夏休みは整形業界のかき入れ時となっているそうです。
しかも、その理想とする顔は比較的同じようなものだといいます。著者は今まで美容の歴史がなかったところにいきなり美容が必要とされる時代となったので、美の画一化が起きていると分析しています。
また、学歴と同じように「美」も成功のために獲得すべき1つのステイタスのようになっているといいます。
こうした中、行き過ぎた競争に疑問を持つ若者も出てきています。
最近、現代中国人を形容するためによく使われる言葉として「焦慮」というものがあります。競争に乗り遅れたらどうしようという焦りや思慮を表す言葉ですが、庶民だけではなく、成功したと思われている人もこうした思いにとらわれているといいます。
これに対し、若者の間では競争から降りようという「寝そべり族」も登場しています。これがどの程度広がるのかはわかりませんが、激しい競争社会から生まれた1つの反応と言えそうです。
このような本書は中国の若者の恋愛・結婚事情を中心に現代中国社会とそこに生きる人々の様子を教えてくれます。
後半の話題はややまとまりが弱くて雑多な印象も受けるのですが、前半の結婚やそれに付随する住宅の話などは読み応えがあり、また「大変だな…」と思わせます。
思い起こせば、日本もバブルの頃は「もう庶民に住宅は買えない」みたいな状況になったわけですが、中国がこの状況からどのように着地するのかは注目でしょう。
また、本書は一元的な競争が生み出すパワーとその影といったものも教えてくれており、その点も興味深いと思います。
日本存亡に関わる台湾有事危機が高まる中、
隣国が望む改憲阻止の為、中韓と連携し野党メディアが倒閣へ扇動をかける状況にどうか気付いて頂きたいです(09年は扇動が成功)
国防妨害一色の、メディアが全力で守る野党は、北と韓国政府から資金投入の朝鮮総連、殺人の革マル等反社勢、大炎上中のcolaboとの連携は一切報じぬ裏で、
中朝は核の標準を日本に向け、尖閣への侵犯を激化、進行形で侵略虐殺を拡げる中、有事の際、外国勢の国防動員法に対抗出来ぬ現憲法では、
多くの日本人を銃殺した韓国の竹島不法占拠、北の日本人拉致、中国の尖閣侵犯にも、9条により日本は国を守る為の手出しが何一つ出来ない事が示しています。
中韓の間接侵略は、野党が法制化を目指す外国人参政権や日本人のみ弾圧対象ヘイトスピーチ法、維新の道州制等、多様性と言う"中韓の声反映"に進んでおり、
野党メディアが09年再現へ世論誘導をかける今、中韓浸透工作は最終段階である事、
日本でウクライナの悲劇を生まぬ為、一人でも多くの方に目覚めて頂きたいと切に思いこちらを貼らせて頂きます。
https://pachitou.com/2021/10/29
長文、大変申し訳ありません。