以前、朝日連峰の三体山をご案内いただいた、ブログリンク先のokusanのブログを拝見すると、山形・福島県境の難峰・大塚山に直近で登った記録が掲載されていた。
大塚山と言っても何処にある山か分からない方が多いと思うが、飯豊連峰と飯森山を結ぶ県境稜線の中間点に位置する山である。
昭和40年頃まで登山道が整備されていたと聞いているが、現在は薮に埋まり、吾妻連峰から飯豊連峰への積雪期縦走の途中で立ち寄る記録が多少見られるのみである。
私にとっては憧れの山であるが、山形県側からのアプローチばかり考えていて、日帰りは到底無理と思いこんでいた。
しかしokusanは逆に南の福島県喜多方市熱塩加納町黒岩集落からアプローチするという、考えもしなかったルート採りをされていて、そのルートを読む確かさに舌を巻いてしまった。
そこでokusanが登った2日後の20日・土曜日、急遽単独で登りに行った。

【 4╱20 大塚山(1322m) 福島・飯豊連峰と飯森山中間点 】
黒岩林道入口~御川橋~1210m峰南東尾根~1210m峰~鞍部~1180mジャンクションピーク~大塚山~1180mジャンクションピーク~1034m独標~黒岩林道~御川橋~黒岩林道入口

二井宿峠を越え高畠町に入ると飯豊連峰がモルゲンロートに輝いていた。
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米沢から大峠を越えて熱塩加納町に入る。
黒岩集落への車道は道幅が非常に狭い沢筋を行くので走行には注意が必要だった。
大平沼はダム湖であるが、写真映りはイマイチの風景で車を駐車するには至らなかった。

黒岩集落は過疎の集落で、春早い今の時期は雪囲いされて住んでいない家屋が多く見られた。
黒岩林道入口に車を停める。ここから先は除雪されておらず林道歩きになる。
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大塚山を目指すに当たって足回りをどうするかかなり悩んだ。
黒岩林道に残雪が残っていれば帰りのずぶずぶ潜る雪道を考慮した場合、山スキーが一番効率良いと考えていて、入口の雪の残り方を見て迷わず山スキーにした。
しかし林道を少し歩くと、雪が消えた箇所はほぼ1╱2。
結局、直ぐに重いスキー板を担いで登らざるを得なくなる。
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砂防ダムの上流まで歩くと漸く大塚山(右)が見えてくる。
最初は左の1210mピークに登り、県境稜線を左から右へ辿る予定だ。
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やがて黒岩林道入口から2.4km地点で御川(おんかわ)橋を渡る。
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橋を右岸に渡ると、左岸の斜面を一頭のカモシカが駆け抜けていって、写真の光っている川面を飛び渡った。凄いスピードで逃げていったためカメラを構える暇もなかった。
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橋の先も山腹は藪がでていて、スキーを付ける状態にはない。
杉林の林床は残雪に覆われている感じなので、地形図にある破線ルートを少したどり、雪を求めてスキーを担いで薄薮漕ぎを始めた。こんな時の山スキーは正に無用の長物である。

多少薮っぽいが雪がつながっている感じのところでスキーをつける。
重くバランスが悪い肩の荷が下りてようやく一息つけた。
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左下に雪解けには湿地になりそうな開けた雪原が見えている。
十鞍沢対岸の西黒岩山の北壁が間近に望めた。赤崩山南東尾根の1010mピーク東壁が迫力ある姿で望めた。
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尾根に出ると雪が消えている箇所があり、スキーを外して通過する。
この先、東側から緩やかな傾斜の尾根が合流する。
登路としては、その尾根を登ってきた方が楽だったと思った。
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杉林を抜けてようやくブナ林の登りになる。
下部は二次林のようだ。
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ブナの森をテンが逃げていった。
何枚か写真を撮ってみたら唯一このショットだけ身体の全体が写っていた。(トリミングしている。)
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二次林で伐り残されていた過熟木の三本ブナ。
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1180m峰から派生している東側の尾根。
下山はこの尾根を使う予定だが、斜度40度以上ありそうな急斜面だ。
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やがて登路は左に折れて高度差100m強の急斜面の登りになる。
尾根の幅が狭く段差がきついため、階段登りを強いられた。
雪が緩んでいて、数回踏み固めて足場を作りながら登るので、作業が捗らずちょっと辛い場所だった。
急な段を登りつめると、左から大きく巻いて登った方が楽だと分かったが後の祭り。
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1210m峰南尾根に乗り上げると、雪庇の上から目指す大塚山が一望できた。
何となく神室連峰の軍沢岳に似ている感じがする。
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その右手には鉢伏山(右)と飯森山、栂峰の連山が初めて見る構図で望めた。
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尾根の西側の林間が開けた場所からは、会津駒ヶ岳(左から)、至仏山、丸山岳、平ヶ岳、会津朝日岳、荒沢岳が遠望できる。
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そこから右に目を移すと、荒沢岳(左から)、中ノ岳、越後駒ヶ岳、狢ヶ森山、浅草岳、御神楽岳が連なっている。
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南には中景の山が博士山(左端)、志津倉山、遠景が左から女峰山、大真子山、男体山、太郎山、少し離れて奥白根山が霞んでいた。(画像レタッチしている。)
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会津駒・朝日山群の展望地からブナの疎林を緩やかに登ると、1210m峰は僅かの距離だ。
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山形・福島県境の1210m峰に乗り上げる。
飯豊の大観を期待したが、ブナに囲まれて展望はさほど良くない。
目指す大塚山が木々の間から望める。
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スキーのシールを剥がして一服する。
ツボ足で北側の斜面を少し下ってみると、ようやく飯豊本山が望めた。
直線距離で約11km。その量感に驚く。
ちなみに中央少し右の三角形のピークが大日杉から登る地蔵岳。
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1210m峰から東側の標高1080mの鞍部まで、短い距離だがスキーで滑り降りる。
最初、何だか今日は上手く滑れないと思っていたら、兼用靴が歩行モードになっていた(苦笑)
夜間に冷えたので、ザラメ雪の表面が少しモナカになっていて少し滑り難かったが、歩いて下るよりは遥かに早く鞍部へ着いた。
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鞍部からは尾根の幅が細い急斜面を登る。
シール歩行は山回りのキックターンを連続せねばならないので、急な部分だけスキーを背負ってツボ足で登った。しかし数日前に積もった新雪が固まっておらず、時々膝まで雪に潜りながらの疲れるラッセルになってしまった。
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急坂を登り切ったところでシールを貼る。
そこからは快適な県境稜線歩きが始まる。

途中、最初に登った1210m峰を振り返る。
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多少アップダウンはあるが、危険個所はまったくなく、気楽にブナ林の逍遥を楽しめた。
県境稜線では2日前に歩かれたokusan達のトレースが顕著に残っていた。
スキー歩行とカンジキでは歩くルートが微妙にずれているのが面白い。
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1227m独標まで登ると、ようやく大塚山の山頂が見えてくる。
まだ標高差で約100mあるので焦らず登るように心がける。
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ちょっと二重山稜に見える箇所は登り返しを嫌って左側の尾根をたどった。
このブナの疎林を登りきれば山頂へ至る雪稜に出る。
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山頂直下の雪庇からは黒岩地区の下流にある大平沼と、会津盆地、そして那須の三本槍岳、三倉山、男鹿山塊が見渡せた。
中景に見える山は左端が大戸岳、真ん中の三角形が小野岳、左側が神籠ヶ岳。
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会津駒・朝日山群と越後三山、御神楽岳、守門岳方面を遠望する。
山座同定が大好きな私としては最高に高揚する景色が広がっている。
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山頂に近づくとブナが低木化し、反対に飯豊連峰が一気に見えてくる。
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立ち止まって何度も写真を撮ってしまうために、山頂は直ぐなのになかなか着かない(苦笑)
この標高まで登ると種蒔山の背後に大日岳も頭を出してきた。
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雪原が広がる大塚山山頂に到着。
1300m台の山とは思えない360度の大展望が待っていた。
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休憩前に四周に広がる雄大な景色を撮影する。
お昼近いトップライトの光線のため、陰影に乏しい画像中心だが、圧倒的な風景を前にして文句は言えない。

先ずは飯豊連峰の全景。
基本的に飯豊本山を中心とした景色であるが、以前、飯森山山頂から見たアングルに近い。
しかし距離がより近いために迫力がまったく違う。
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飯豊本山と宝珠山のアップ。
右の少し低い位置の山は地蔵岳。
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視線を右に振ると、光兎山、薄く新保岳、頭布山、鷲ヶ巣山が見えている。
手前の左側の山は夜蚊鳥屋山、右手は山毛欅潰山であろう。
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北東には朝日連峰が見慣れない角度で全貌を見せている。
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以東岳(左)から大朝日岳までの主稜線のアップ。
大朝日岳の右の三角形が小朝日岳、そのすぐ右が御影森山、さらに右背後の月山まで見える。
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朝日連峰の右には葉山が霞み、その手前に白鷹山と長井盆地が一望でした。
更に右を眺めると、蔵王連峰が見えてくる。
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そして東には山形・福島県境稜線が延々と伸び、その先に栂森(左)、飯森山、鉢伏山が一望できた。
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県境から三ノ倉山へ南下する支尾根の奥に高曽根山(左)と磐梯山が近い。
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山頂は少し風が強く吹き上がってきて寒かったが、雨具を着れば問題なく、大観を眺めながらのランチタイムは至福の時であった。
結局1時間も景色に見惚れて長居をしてしまい、後ろ髪引かれる思いで山頂を後にした。

ザックを背負いスキーを付けて降りようと思ったら、山頂の雪が解けた一角で、鉄製の錆びついた文字が見えない山頂標識が倒れているのを発見した。
流石に二等三角点は現れていなかったが、昭和40年台まで登山道があった証拠を見つけ嬉しくなった。
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陽が高く昇ったので、少しモナカ気味だった雪質が完全にザラメ化し快適に滑り降りる。
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1180mのジャンクションピークで左折し、ブナの疎林の尾根を一気に滑降した。
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しかし良かったのは1034m独標地点まで、そこから崖の様に見える超急斜面が切れ落ちている。
西側の尾根を登った時に見えた斜度40度以上ありそうな急坂だった。
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雪が潤沢にあれば滑り降りるのは簡単だが、ブナの根開きが進み、至る所に段差があってターンできるスペースが限られている。
しかも低木が跳ね起きている箇所多数のため、安全を期して数ターンごとに横滑り、キックターン、木の葉落しなど効率の悪い技を駆使して滑り降りた。この斜面は登りで使った場合にも苦労するであろう。

標高900mで尾根は緩やかになる。
しかし南斜面のため雪が途切れる箇所が多くなり、その都度スキーを外して手でスキーを持って藪漕ぎで下る局面が続く。

最後は林道の法面の上に出てしまい、林道にどうやって下りるか見極めが大変だった。
取りあえず邪魔なストックは林道へ投げ落し、スキーは法面の泥斜面を滑らせて落とす。
後は手が使えるようになったので、法面に垂れ下がった低木を手がかりにして、靴を泥だらけにして林道に降り立った。
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黒岩林道に出たところから大塚山を振り返る。
後しばらくは林道を滑り降りることができるだろう、と楽観視する自分がいる。
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途中、小沢を渡渉しなければならないが、沢幅が狭いのでまったく問題ない。
運よくここで法面を降りる時に土で汚れた靴とスキーを洗うことができた。
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林道から降りて来た尾根(中央)と、大塚山を見上げる。
雪の少なさに、よくあんな尾根を滑ってきたものだと我ながら感心してしまった。
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結局、法面を降りた地点から1.7km下まで林道を滑り降りることができた。
そこからスキー板を担いで2.8kmの林道歩き。
気温が上がり、断続的に現れる雪をずぶずぶ潜りながら歩くのはちょっと辛かった。

結局この日は歩行距離15.4kmの内、スキーを1╱3も担いで歩いたことになる。
今回、スキー装備にしたのはチョイスミスで、この山に登る場合はアルミカンジキが一番だったと思う。スノーシューはかなりな急斜面の登り下りがあるので向かない。

しかし今まで登りたくても登れなかった寂峰に、最高の好天の下で登れたことは忘れがたい思い出となって残ることであろう。
この山のルート情報を開示していただいたokusanにこの場をお貸しして感謝いたします。

GPS軌跡。
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