ALL YOU NEED IS KILL
【ALL YOU NEED IS KILL】 桜坂洋/安倍吉俊 スーパーダッシュ文庫

著者が誰かを知らないまま読んだら、まず桜坂洋が書いたとは思わなかったと思う。それぐらい前作「よくわかる現代魔法」とまるで違う作風。最初読み始めたときは面食らった面食らった。二回裏表紙捲って著者間違えてないか確かめたし。
帯に神林長平の推薦があるとおりのSF。未知の地球外からきたギタイと呼ばれる群体との戦争状態にある地球で、同じ一日を繰り返すはめになった新兵の話。この手のループものの傑作として思い浮かぶのは、なぜか小説じゃなくてゲームの「クロス†チャンネル」と「プリズマティカリゼーション」ですが(涼宮ハルヒもそうか)、程度の差はあれ日常を繰り返すこれらと違ってこの作品では戦場の真っ只中。それも全滅必死の最悪の状況下。物語りも徹頭徹尾鋼鉄の色と温度。
正直、「よくわかる現代魔法」はいささかキャラの動かし方や心理描写、ストーリー展開の表現などにぎこちなさを垣間見ていたのですが、こちらときたらスッキリと無駄な部分をそぎ落としてて、もたもたと鞘から刀を抜くのに手間取っていた侍にスパッと一刀両断切り伏せられた気分です。
明らかにこの人は、ダラダラとしたキャラの掛け合いを排した必要なものを必要なだけきっちり配置するようなシステムの方が適合してるんじゃないだろうか。これほど見事にやりたかったであろう事をちゃんと描ききってるものを見せられるとそう思わざるを得ない。スーパーダッシュが今後もこうしたものを出させてくれるならそれでいいし、それでなくても早川文庫に引っ張られるんでなかろうか。
いや、なんにせよ予想外に驚かされつつ大変面白うございました。切ないなあ。