流血女神伝 喪の女王 (1)
【流血女神伝 喪の女王 1】 須賀しのぶ 

あたしが女だったら、まず結婚を申し込むね!!
誰にだって? 出てくる男全員にさ!!

ついに、ついに流血女神伝も最終章に突入。望まぬ形とはいえ授かってしまったお腹の子供を守るため、愛する夫バルアンを捨て、命がけで救い出した息子を置きざりにし、エディアルドと逃亡を図ったカリエ。
イーダル王子を頼り、ユリ・スカヤ国に辿り着いた二人は、そこで傷ついた身体を癒しつつ、ルトヴィアへ攫われて以来始めてかもしれない穏やかな日々を過ごすのだが……。

もうね、コラコラと思うぐらいカリエとエドが当たり前のように二人でいるわけですよ。所帯じみてさえ見える。家族、と誰かが表現してたけど、まさにそんな感じ。バルアンとカリエも良いパートナーでお似合いの夫婦に見えたけど、ふと自然に肩を寄せ合い、寄り添いあう感じが今のカリエとエドにはあるわけで。
それでいて、この二人。恋愛意識がスッポリ抜けてるだけに、物凄く自然でありながら物凄く妙な雰囲気。生まれたての子供抱えて動けない女を、男が養う関係ってどう見たって夫婦なのにねえ。そういう生活をまるで恋愛感なしに語り合う二人が妙に可笑しい。

ともあれ、とにかく終始カリエとその周辺は穏やかな雰囲気で、それが逆に何故かメチャメチャ恐ろしく不安を誘う。これまで本当にページ一枚捲ればそれまでのカリエの置かれていた状況が激流の上でイカダをひっくり返したみたいに激変し、壮絶なまでの窮地に追い込まれるのが常だったため、読み進めるのもハラハラドキドキだったのが、この巻に限り本当に安穏としたまま話が進むのだ。これほど恐ろしいタメはあるまい。
ハラハラドキドキがガクガクブルブルだ。
カリエに捨てられたバルアンが、いったいどうなるのかとハラハラドキドキしていたら、バルアンはやっぱりバルアン以外の誰でもなく、安堵するとともにカリエというくびきを失った本来のバルアンの恐ろしさにガクガクブルブル。
でも、この覇王たる姿が身震いするほど魅力的。弱いバルアンはバルアンじゃない、彼はやはりこうでないと。
さらにサルベーン。外伝以来、その魅力が革変しまくりのサルベーン。ああもうこいつ可愛いなあ。健気だなあ。ダメダメだなあ!!
冷静に考えてみると、こいつもう随分なおっさんのはずなんだが、そして女殺しのはずなんだが、本当に好きな相手の扱い方は全然まるでなってないわけで。
でも、前巻からのラクリゼとの絆の復活が嬉しいやらもどかしいやら腹立たしいやら。意固地というか頭が固いというか。
でも仕切りと周りの連中がラクリゼを置いてきたサルベーンを苛めるので、けっこうこの二人の結末は楽観視できるのかもしれない。

イーダルも本当にイイやつなんだけどなあ。

ルトヴィアからエティカヤへと流れ続けたカリエの物語も、ついに最後の国ユリ・スカナ編。波乱に満ちた彼女の運命は、この地でいったいどういった顛末を辿るのか。次巻はしばらく待たねばならないらしい。ぐーー、我慢我慢。

船戸さん、カバーしか描いてませんでしたね。中のイラストは皆無。忙しいんだろうか。いまさら他の人にイラスト変更なんて認められませんけどね。