空ノ鐘の響く惑星で〈7〉
【空ノ鐘の響く惑星(ほし)で 7】 著:渡瀬草一郎

 さて諸君、君たちは好きな子ほど苛めたくなるという少し厄介で微笑ましい性癖をご存知かね? 重畳だ、しかし諸君、君たちはこの性癖を男の子の、しかも思春期を迎えつつある年頃の子にのみが発露する愛情表現であると勘違いしてはいないだろうか。
 冗談じゃあない。
 こんなに偏執的で盲目的で被虐的なリリカルラブが、子供たちだけのものだなんてそんな殺生な話があってたまるものか。
 
 斯くして、物語を紡ぎだす語り手にも、この愛らしい性癖の持ち主が少なからず存在するのであります。
 そう、自分の描くキャラクターを愛すれば愛するほど、ついついそのキャラを過酷な運命に追いやり、悲惨な目に合わせ、負の海へと突き落とす。可愛さ余って憎さ百倍、いやさ憎んじゃおりませんが、気がつくと苛めてしまうこのむず痒さ。

 嗚呼、嗚呼。
 この性向に当てはめてみるならば、渡瀬草一郎氏はまさにまさに生粋にして凶悪なまでの

【幼馴染スト!!】

 と云えましょう。
 幼馴染ウルクに次々と襲い掛かる苦難の津波。波間に沈もうとする彼女へと、やっと一握の藁束が与えられたと思ったならば、
 やってくれるじゃないですか、この幼馴染ストめっ♪
 思えば、パラサイトムーンでも幾多の幼馴染がこれでもかこれでもかと過酷な運命に飲まれていきました。
 まさに、イジメっぷりは筋金入り。
 嗚呼、幼馴染ウルクの運命や如何に如何に!!


 と、幼馴染モードはこれまでにして。今回は一冊丸ごとギューっと凝縮して教会での戦闘を描いている。これまで視点を広げて大きな推移で描いてきただけに、今回の視点を一極に集中させたやり方には「お」と思わせるものがある。恐らくこの密度を鑑みるに、ここが人間関係、国際情勢、物語の流れ、情報開示、すべてにおいての転換点なのだろう。
 全般に渡って戦闘状態が続くにも関わらず、むしろそれを踏まえながら様々な再構成がなされていく。戦慄すべきは、物語的にこれほどの大変動が起こっているにも関わらず、それを感じさせない読感の自然さと疾走感だろう。もしかしたら、動きが少ない巻だったと思う人も出てくるかもしれないが、とんでもないとんでもない。
 今回ほど動いた巻はなかったぞ。しかもノンストップで。信じられん。普通は息切れする。絶対に。
 渡瀬草一郎という人の実力を思い知らされた巻だった。