疾走!千マイル急行〈上〉

【疾走! 千マイル急行(上)】
著:小川一水  ソノラマ文庫

『智謀湧くが如し』と呼ばれ賞賛されたのは秋山真之だが、この人は『創作湧くが如し』ですよ、まったく。
もしかして、万事万物を書き尽くすつもりなのだろうか。

ヘリコプターに郵便に、掘削、文明シビライゼーション、海洋怪生物サスペンス、戦場救護、宇宙開発、空戦、災害復興ときた小川一水先生が次に手がけたのは
『大陸横断鉄道』
いや、厳密には横断よりもスケール違うんだが。

運搬系はこれであらかたやりましたよね。他、なに残ってる? また海かしら。密かにポプラパレスの続き読みたいなあと思ってるんだが、これはまず無理なんだろうな。ウェブ公開版は読みました、はい。

しかし、いったいどれだけ勉強したら、こんなにあれこれ色んな話書けるんだろう。凄いのは、ただ書き散らしてるんじゃなく、どれもこれも面白いってのが冗談じゃないという感じだ。
本作も一筋縄の鉄道小説にあらず。
故郷エイヴァリーから、走る調高級ホテル、弾道鉄道『千マイル急行(TME)』が東の大国「采陽」に向けて発進する。一見、単なる旅客運行に思えたのもつかの間、TMEは突如軍隊による襲撃を受ける。ここで、乗客たちは初めてエイヴァリーが敵国に占領され、自分たちが采陽に救援を求めるために東に向かっていることを知る。
もはや唯一のエイヴァリー領とその国民となったTMEと乗客たち。

容易に逃亡ルートが予想し得る鉄道でありながら、装甲列車『メイドン・カースル』と鉄道員たちの奮闘により、TMEは敵の追撃を振り切りながら、采陽へとひた走る。

も、燃える。

環状線じゃなく大陸鉄道だけあって、銀河鉄道999ほどデタラメではないが、駅ごとに異国に立ち寄る事になるシチュエーションにもなっていて、これがシルクロード旅情めいた遥か遠い地に旅する、という雰囲気が出ていて、またいいんだ。

分水嶺戦争という過去の戦争。都市国家エイヴァリーが抱える謎。
まだまだ裏はありそう。