黒祠の島

【黒祠の島】  著:小野不由美  祥伝社文庫

 以前新書で出版されていたものが、文庫で再版されたのを期に購入。図書館で借りて読んだかもしれないと不安だったんですが、未読だったみたいです。
 出版年度を見るとあの『屍鬼』より後なんですね。わりとあっさり風味だったので『屍鬼』のプロトタイプだろうかと勘繰ったのですが。『屍鬼』は文庫形式で全五巻にもなる大作ですから、それと比べたらあっさり風味というのも当然なのですが。
 いわゆる孤島系の本格ミステリー。
 さすがは小野不由美、もしくは小野不由美らしいと思うのは、舞台が独特の因習に縛られた外界とは隔絶した島でありながら、そこに暮らす島民たちが、他の作品で良く描かれるような外の人間とは相容れない、相互理解と干渉を頑なに拒むような人々ではなく、あくまで現代社会に生きる当たり前の人として描いているという事。上手いと思うのは、そういう当たり前の人たちという描写を崩さないまま、彼らに独特の因習を根付かせているという部分。詳しい解説があるわけじゃないんだけど、現代に至っても解けない因習の連環作用を民俗学的な見地から解体してみせてるんじゃないだろうか、これは。主人公が最後に感じたあの敗北感を鑑みるに、そんなイメージを抱いたです。
 肝心要のトリックと謎解きに関しては、私判断が苦手なので詳しい言及は無しにしておきます。ただ、メインとなる錯誤に関しては、もう冒頭段階で私ですら分かったので、そんなややこしいものじゃないはず。かといって、安易だとかチャチという印象は受けなかったですけど。ちゃんと練り上げられている印象です。