銀盤カレイドスコープ〈vol.6〉
【銀盤カレイドスコープ vol.6 ダブル・プログラム:A long, wrong time ago】  海原零

今回は凄かった。圧巻。やっぱりこの人、すげえや。

本来の主人公である桜野タズサは今回は完全に外側。視点はタズサのライバル(好敵手にはあらず)アメリカのドミニク・ミラーと前回のトリノオリンピックでタズサに代表権を奪われた至藤響子の二人で進む。
まさかここで至藤響子が来るとは思わなかった。1、2巻でタズサとの闘いに敗れた後は全然名前を見なかっただけに。
ここで描かれる響子の生い立ちとスケートに駆ける想いは、これまでの彼女のイメージからは一線を画す激しいもので、それだけに彼女のオリンピックに掛ける思いにはタズサとはまた違った情熱というよりも執念のようなものを感じる。
一方のドミニクも、タズサ視点からだととにかく嫌なやつというものだったけど……やー、やっぱり危ないもんを秘めてるよ、この娘(笑
ただスタンピードな態度はまずタズサに関する事柄のみで、他に関してはまあ高慢なところもあるけれど、他人に嫌われるような性格ではないのは確かなようで。
響子と仲が良いというのは意表を突かれた。若干、人種に排他的な側面があるのかと思っていただけに。

ともあれ、始めはそんな二人のスケート人生を追いかけ、やがて立ち塞がる桜野タズサの影を、二人の視点から見る事になる。
タズサを直接描写するのではなく、ライバルたちの目から見る彼女を描くことで、これまでに増して凄まじい存在感を示す桜野タズサ。いや、彼女だけでなく、リア・ガーネットを中軸に、そしてタズサの出現が化学反応となり、急速にそのレベルを高みへと昇らせつつある、フィギュア会の盛り上がりを、多角的な視点から見ることでグッと実感させられる巻だった。
特に後半のニューヨークで行われた世界大会は、海原零氏の真骨頂が見えたように思う。

海原氏は一巻か二巻で、メダルを取るばかりが重要じゃない、みたいな趣旨の事を書いていたのだけれど、トリノオリンピックでのタズサの演技を始まりに、この6巻までの積み重ねを経て、この巻でそれを見事に表現してみせたように思う。
それぐらい、今回は自分の納得できる演技ができたことを喜ぶ選手たちの姿の描写が素晴らしかった。

フィギュアシーンは、響子、ステイシー、ガブリー、ドミニク、リア、タズサと、普段なら一人分でクライマックスというところを、最上級レベルのフィギュアシーン六連発。もうこれが物凄かった。普段の六倍だもんで、興奮しっぱなし。ショートプログラム分も合わせたら、今回のフィギュアシーン、どれほどあるんだろう。力の入り方が段違い。これで削ったってんだから、いやはや。
盛り上がりに関しては2巻のクライマックスに比肩したんじゃなかろうか。興奮具合なら今回が上だったかも。

いやー、ばり面白かった。

あとがきを見る限り、あとは1、2冊で終わりそう。
多分、リア編をやって、それからバンクーバー五輪でファイナルじゃないかな。
フィギュア界全体がかつてないレベルへと駆け上がり、最高潮に達した中での最後の舞台はピートの故国であるカナダでのオリンピック。
さあ、勘繰りたくなるじゃないですかw

帯には今をときめく浅田真央選手の本を持った写真と読んでますコメント。この方、立場だけ見ると前回のヒロインのキャンドルなんだけど、あの強さは当てはまるのはリアの方だよな。
トリノには出れないみたいだけど、これは残念。その時の機会を掴み損ねると、実力とはまた別のところで永遠に二回目のチャンスが来なかった、みたいな事があるのがオリンピックの常だけに。
まあ、協会としたら荒川・恩田・安藤美姫と今回は粒が揃ってるから、と焦らなかったという事か。
いや、でもこの本読んでから俄然フィギュアに興味が湧いているのは確か。トリノまでも度々テレビで放映があるみたいなんで、見てみよう。
訂正:帯の人は浅田真央選手じゃなくて舞選手の方でした(汗

そういや、キャンドルの末路は、悲惨悲惨で言葉も無しでした。触れられたのはほんの数行。潰れたかー。