銃姫〈2〉The Lead In My Heart
【銃姫2 〜The Lead In My Heart〜】 著:高殿円 イラスト/エナミカツミ  MF文庫J

 ねえ、あたしを追ってきてくれる、セドリック……?


 ラストを読んでビビりまくる。いや、普通のライトノベルならアンはヒロインだから大丈夫みたいな安心感があるんだけど、高殿円はヤル! 高殿円ならヤル! ヤりかねない!
 遠征王シリーズを読んでいると、どうしてもそんな恐怖が湧いてきてしまいます。だって、オリエのあの酷い目に合わされようを見たら、ねえ。
 女性の作家って同姓だからなのか、とても男の作家じゃ書けないような悲惨な境遇にヒロインを落っことせる腕力があるんですよね。それも男が書くとやり過ぎじゃないのか、となってしまうんだけど、女性だとこれがまた違った感触になるんですよね。不思議。
 たとえば、マリみてのレイニーブルーを男が書いたらやっぱ変というかなんかおかしいでしょ? あんなニュアンスで女性ならでは、みたいな微妙な感覚がある。
 いや、ともかく、アンブローシア大丈夫なのか? 本当に高殿さんが書いたんじゃなかったらこんなにハラハラしないっすよ(笑)
 そしてエル姉ちゃん怖ぇぇ! 正しくライトノベルの長所を生かした挿絵の投入タイミング(MF文庫Jって意外とデザインや挿絵の使い方が上手いような気がする)。こういう狂気的な愛情を秘めた人は好きですよぅ。個人的に姉弟もしくは兄妹というものは、愛情ゆえに互いに殺しあう姿こそ正しい姿だと思います(マテ
 それは冗談として、やはり高殿円氏の背筋のゾッとするような愛憎狂気の描写は秀逸。普段は明るい陽気な人物として描かれているだけに、その底の澱みの垣間見せ方が上手いんだ。遠征王でも「エルゼリオ 遠征王と薔薇の騎士」での最後のオリエとゲルトルードの会話、滅茶苦茶怖かったし。女って怖いんだー(泣
 今回の話の筋としては、突然魔法が使えなくなってしまった主人公セドリックの悩みっぷりがメインか。なんというか、思いのほかストレートに男の子らしい考え方だったと意外の念に討たれたというかなんというか。可愛いね、少年(マテ
 でもまだまだエル姉に甘やかされて育った所為か凄惨な現実に打たれ慣れてない感があるので(例のあれはどうもまだ自分のやった事として捉え損ねてる気がする)、アンの立場が最後の展開のままになってしまった時に一体どうするか。この時こそ男としての真価を見せなきゃならんのでしょうな。男の子のままじゃいられない、と。
 
 あとは、高殿さん特有の癖みたいなものかもしれませんが、妙に展開すっ飛ばすのはもうちょっとなんとかして欲しいですね。本来話の流れで踏んでいるはずの段階を、気づかない間に通り過ぎてしまっていて、ビデオなどで早送りして台詞を聞き逃したみたいな事になってる場合がある。ビーンズ文庫の他シリーズでもそうだったからなあ。もうちょっと腰をすえてじっくりと一人一人を、とは出来ないんだろうか。商業的には。


 劣等感。罪悪感。憎しみ。それから愛情。
 心に溜まった重い感情はいつしか行き場を失って暴発してしまう。そして思わぬところで、それは弾にも火薬にもなる。心に溜まって、さらに上から溜まって押しつぶされ固く固く凝縮された感情は、それがもとはなんであっても鉛になってしまうのだ。武器になってしまうのだ。
 人が銃に鉛弾を込めるように、人が心に装填するのもまた鉛なのだ。あの重くどんよりとした心の鉛……


 過去の出来事を振り返っての独白でありながら、どこか未来を暗示する内容のようにも見えるのがまた……(欝
 第三巻は11月発売。