SHINO ―シノ― アリスの子守唄
【SHI−NO 2.アリスの子守唄】 上月雨音

私はこの本の紹介文に純愛ストーリーと銘打ったのは間違いではないと思う。絶対間違いではないと思う(力説!)

純愛、じゃないか!!!

いや、面白かった。サイコミステリー風な陰鬱な雰囲気こそ纏っているけど、主人公の青年……(名前出てなかったっけ?)が健全で、しっかりとした良識家なのがアンカーとなっているのか、もしくは事件の収拾の付け方がすっきりしているからか(これは憑き物落としに近いスッキリだと思われ)、ヒロインにして主人公である志乃ちゃん(小学生)が彼岸の彼方に片足を踏み込んでるような非常に危うい存在にも関わらず、陰鬱とした読み味にならずに済んでいる。かといって、退廃的な匂いやこの世の果てを覗いているような感覚も消えてはおらず、予想外なほど陰陽のバランスが取れている作品になっているんじゃないだろうか。バランスが取れている、なんて語ると中途半端に聞こえるかもしれないが、ならば【絶妙な】バランスが取れている、と付け加えよう。この両方の雰囲気を両立させるバランス感覚は、かなり並外れていると私なぞは思うのだが。

なんにせよ、志乃ちゃんである。
キタね。きたきた。ズキュンと心臓打ち抜くヒロインが来た。
小学生らしからぬ無機質な、この世の全てに無関心でいるかのような、それでいて殺人事件にだけは異様な興味を示す少女。そんな彼女が、主人公の存在だけはしっかりと認識している。それこそ、白紙に落ちた一滴の墨のようなものだけど、大事に思っているとか大好きだとか、そんな明確な意志として存在する想いでは決してないけれど、虚無の中から世界に繋がった命綱のように、彼女の中には主人公の存在が厳然と固着している。
これを純愛と言わずして、なんと言う。
これほど純粋で無垢な想いのつながりなどそうそう無かろうて。
まさに、富士見ミステリーにこそ相応しい作品である、と言い切ってしまえ!!

最高