侯爵夫妻の物語―よかったり悪かったりする魔女
【よかったり悪かったりする魔女 侯爵夫妻の物語】 野梨原花南

 こうした場合、『鳥肌が立つ』という慣用句を引用するのは間違っているそうだ。だが、このゾワゾワっと総毛立つ感覚を表現する言葉を、私は他に知らない。

 そう、鳥肌が立ったのだ。総毛立たされたのだ。
 まったく、まったく。
 この人は、この野梨原花南という作家氏は。
 たまらない。かなわない。 

 死ぬかと思った。
 ああ、きっと。自分に向かって、あんなとてつもない愛の言葉を投げかけられた日には、私はきっと死んでしまうのだろうね。いや、むしろ死ね。
 ツンデレもいいさ。ああ、そうだ。私は俗に言うツンデレと呼ばれる特性を備えたキャラクターが大好きである。
 彼女ら、もしくは彼らは実に不器用で、微笑ましく、いとおしい。
 だが、その一方で。自分の想いを素直に、真摯に、てらいなく、言葉にする人々のなんとスバラシイことか。なんと美しいことか。
 なんてまぶしいことか。

 素晴らしき哉、人生!-It's a Wonderful Life
 この人の描く人々を眺めていると、いつもこの言葉が思い浮かぶ。
 まったく、楽しい限りじゃないか。


 かくて、よかったり悪かったりする魔女の織り成す、マダーとアザーの物語もこれにて一先ずの幕となりました。
 めでたし、めでたし。