邪魅の雫
【邪魅の雫】 京極夏彦

ううううっ、ラストには思わず貰い泣きしてしまいました。あれは、あれはキツい。これ以上ないくらいばっさり切り捨てられて、あれは泣く、泣く。
常に本質を突く言葉しか言えないえのさんだけれど、だからこそなのでしょうね。最後の最後まで彼らしくなく、悶々と躊躇っていたのは。会えば、もう言わなくては済まないから。
二人の心情を思えば、もう泣けてくる。切なさで言えば、京極堂シリーズで一番来たなあ。

今回は、かなり仕組みを変えてきたんではなかろうか。これまでは、関口はじめ、周囲の人間が得体の知れない事件を前に右往左往し、混乱極まったところに榎木津が現れ快刀乱麻を断ち、京極堂が混沌を解体して事件を解決する。
ところが、今回は周りの人間が思いのほか頼もしい。京極堂も、今回は随分腰を落ち着けていられたんじゃないだろうか。多少の助言を京極堂から貰ったものの、青木くんも益田くんも自分なりのやり方で真相へと近づいていく。これまでの事件の経験は、彼らに確かな成長をもたらしていたのだ、ということが、普通ならまったく見当違いの方向へ進んでしまいそうになるところを、何度も自分達で修正していったことからも窺える。
いや、あの山下さんをはじめ、今回はみんな頼もしかった。右往左往しながらも、地に足が着いていた感じがする。
あの探偵が、この本じゃ青木くんも益田ちゃんも、一度だけですがちゃんと名前を呼んでるんですよね。その一点からも、今回の二人の活躍は明らかかと。
しかし、なにより驚いたのが関口さん。なんかもう、一時期は人間やめてないかという廃人っぷりだったのに、この本の関口さんはまともに喋ってるし、他人の気付かないことにも気付いているし、なにより知性的だった。ダメ人間じゃない、ダメ人間じゃないよ。
えのさんとのあのやり取りなんか、ちょっとジンと来てしまった。ああ、この二人って本当に友達だったんですねえ……(酷

ちょっと残念だったのは、京極堂のウンチク話が殆どなかったところ。邪魅という妖怪について、何にも語ってないもんな。どういう妖怪なのか、長々と講釈して欲しかった。あの薀蓄苦手だ、という人は多いようだけど、私は好きなんですよね。
しかし、今回の【邪魅の雫】というタイトルはクリーンヒットだ。京極堂シリーズのタイトルはみんないいんだが、この邪魅は【魍魎の匣】並に作品の芯をついた素晴らしいタイトルだと思う。

待った甲斐のある、素晴らしい作品だった。
で、次はいつだ?

コメントする

名前
URL
 
  絵文字