戦闘城塞マスラヲ Vol.1負け犬にウイルス
【戦闘城塞マスラヲ Vol.1 負け犬にウイルス】 林トモアキ

 最終ページまで読み終えて、もう一度読み返して、さらに読み返して、首を捻る。
 戦闘城塞マスラヲってなんだ?
 このタイトルに関連すると思しき文章は、一切、一切出てきてないようなんだが、見落としているのか? 聖魔杯会場のことなのか? まさかとは思うが、適当な思いつきなのか!?

 ……多分、そうだな。

 でもまあ、この作者の場合。シリーズが進むうちに見事に辻褄を合わせるに違いない。そんで、最後にはそのタイトルに込められた意味の深遠さに、読者は感嘆させられるのだ。
 きっと、その場のノリの思いつきなんだろうけどな。

 前作『お・り・が・み』にて、最終的に聖女にして魔王たる存在、世界のルールを支配する聖魔王と呼ばれる立場となったメイドS。
 その彼女の後継者の座を賭けて昼・夜・闇の三世界から猛者が集まり、競いあう――聖魔杯。それが続編、戦闘城塞マスラヲの舞台配置だ。
 今のところ、出てきてるのは猛者というより色物って感じのヤツばっかりだがw
 ただ、人間と、人間以外の自律した意志を持つ者とのペア、という参加資格を見る限り、『お・り・が・み』の最終巻でどうして睡蓮とホムラがコンビを組んでいたのかがわかりそうなものである。
 そんなに出たいのか、妹。
 個人的には、リリーさんがいったい誰と組んでるかが興味深いところ。カッコとリップルラップルはテレビ番組のキャスターで忙しそうだし。となると、ミーコさんなんでしょうか。
 
 さて、主人公である。
 あの鈴蘭女史の後継を担うにたるだけの格を、果たして新しい主人公は保持しうるのかと密かに心配していたわけだが。

 参りました。平伏絶倒。

 よくぞまあ。こんなキャラクターを主人公に持ってくるなっ! 無職で貧乏。無口で無表情。ダウナー系引き篭もりで、あげくに対人恐怖症。
 初っ端から人生に絶望して死のうとしているあたり、鈴蘭と似たり寄ったりなんだが。いやまあ、鈴蘭の場合は膨大な借金があったわけだから、まだ無一文てなだけヒデオはマシなのか。いや、性格が暗い分、悪い。
 正直自分だったらこんなキャラ、どうやって動かしたらいいのかさっぱり思いつかないや。
 なのに、いや、参った。会心の一撃。
 暗いのに、ダウナーなのに、ヒッキーなのに。
 果断と才知。はったりと周りの勘違い。泥酔と幸運で、ガシガシと勝ち進んでいく我らが主人公ヒデオ。
 妙にこれが、格好イイ。そして、痛快!
 なにより、爆笑!

 ああ、やっぱりこの作者の作品、大好きだわ。