>ちょっとマンガの紹介です。気が向いたらどうぞ。ヤングガンガンの「ユーベルブラッド」という少年漫画です。中世ファンタジーもので萌えの「も」の字も、恋愛要素の欠片もないですが。


 いやだがしかし……最新刊では他のパーティーメンバーが女性ばかりじゃないですか!
 まあ、恋愛要素が主軸とはなりえない漫画とは認識していますが。
 ちなみに、せっかく紹介していただいて申し訳ないのですが……

 実はもう、読んでたり!!

 この雑記の右レーンの「最近のオススメ」を下までつらつらと見ていただくとお分かりになっていただけると思うのですが。
 しかし、この漫画も感想を書こうと思いつつ、タイミングを失ってなあなあに流してしまっていたので、これを機会にちょろっと書かせていただきたくあります。

ユーベルブラット 1 (1)
【ユーベルブラッド 1】 塩野 干支郎次

 ちなみに、冒頭は0巻から。現在では4巻まで発売中。1巻からでも話は分かるけど、後々0巻で出たキャラがメインに出てくるから、0から読んでおいた方がいいのは確か。変な構成だけど、0巻分の書かれた時点ではまだ長期連載は決定していなかったのかしら。

 本作は復讐譚である。
 神々の敵、結界を越えてやってくる闇の異邦――ヴィシュテヒとの戦いに人々が明け暮れていた時代。時の皇帝は14人の若者に使命と聖なる槍を与え、闇の異邦を封じるために送り出した。
 三人は旅の途上で命を落とし、四人は敵に寝返り残る七人に討たれ、闇の異邦を封じて帰還した七人は七英雄と呼ばれ、帝国に平和をもたらす。
 そして、七英雄の時代という名の平和が訪れたのだった。
 だがその平和も二十年の時を経て、危機を迎えることとなる。裏切り者とされ殺されたはずの「裏切りの槍」の一人が、復讐の鬼となり帰って来ることで。

 復讐者を主人公に据えた話というのは決して珍しくは無いけれど、この作品は文句なく秀逸、素晴らしい。
 自分達を裏切り、ゴミ屑のように殺した七英雄に対する憎悪、憤怒。同時に、一緒に敵と戦い、背を預けあい、心を共にし、絆を結んでいた友人であり、確かな仲間であったはずの彼等への懐旧の念。そしてなにより、今や帝国の秩序の象徴として民衆に慕われ、崇められている英雄となった彼らに剣を向ける事への躊躇い。
 憎しみに染まりながらも、人としての心を喪えていない主人公ケインツェルの葛藤や慟哭が、巻を重ねるごとに深く深く抉るように追求されていく。このへんの心理描写は、いっそ凄まじいと言ってもいい。
 なにより凄かったのが、ついに七英雄の最初に一人の前に辿り着いた時のケインツェルの描き方。自分たちが命を賭けて成した使命を横取りし、無惨に殺した相手を前に、ケインツェルの胸を満たすのは憎しみでもなく、怒りでもなく、かつての仲間の変わり果てた姿への、悲しみ。
 復讐は虚しいものとされている。討とうとしている相手は、人々からすれば正義と平和の象徴だ。彼の復讐は誰からも認められず、喜ばれず、憎まれ恨まれるものでしかない。
 ケインツェルの正義を理解してくれる者は、ほんの僅かしかおらず、その僅かな人の中でさえ、ケインツェルの復讐を認めてはくれず止めようとする者もいる。
 懊悩し、煩悶し、決心に惑いながらも、それでもケインツェルは剣を離さない。復讐を諦めない。
 4巻まで至ると、もはや凄絶とすら呼べるほどの凄みが伝わってくる。
 最後までこの復讐を書ききれたとしたら、まず間違いなくこの作品は、
 傑作になれるだろうと思うのだが。