皇国の守護者 4 (4)
【皇国の守護者 4】 漫画:伊藤悠 原作:佐藤大輔

 実のところ、私はこの物語の主人公である新城直衛という男。このあまりに癖と毒のありすぎる男を描いた中で、この北領戦域における後退戦最末期の頃の彼が一番好きである。
 この新城という男の分厚く頑強で諧謔と歪みに覆い尽くされた本性が、この極限の極限に追い込まれた先に、滲み出てしまっていると思うのだ。
 この地獄を経ることで、彼の奥底にあるまっさらなモノは、これ以降二度と出てこなくなる。新城直衛は、新城直衛以外の何者でもなくなってしまう。
 だが、金森の死に平静を保てなくなり、漆原の成長に目を細める心の揺らぎ。自らの矮小さを呪いながら指揮官としての責を果たし続ける意地。
自らを救いに戻る部下たちを目にし、こんな戦争は大嫌いだ、と心の底で絶叫する。
 地獄の果てにいたこの時の彼には、歪んでいる余裕すらなかったのだろう。漆原のことを、拗ねている暇もなくなったか、などと言ってはいるが。自分だってそうじゃないか。ここに、余計な全てを削ぎ落とし、まっさらになった彼がいた。
 漆原は、この時の彼をこう表している。

 いま
 統制された狂気の源泉となったこの男は
 秋晴れの空を見上げているような表情で
 生き残りの兵をみまわしている。


 新城直衛という男が、もっとも澄み切っていた瞬間だ。
 これ以降の、地獄の使者のような生き様を見せる新城直衛が、ああも魅力的であるのは、この北領戦域最後の戦いにおける彼の姿を知っているからじゃないのかと、私は思うのだ。

【皇国の守護者】 伊藤悠の描く第四巻。
 ここには、澄んだ地獄の全貌がある。

 圧巻だ。圧巻である。イカレている、と言い換えてもいい。こんな凄まじいモノを描けるという時点で、イカレているとしか思えない。
 羨ましい。
 妬ましい。
 これほどのものを描き、余す所無く、欲する全てを表現できたその達成感、幸福感、到達感はいかなるものなのだろう。想像するだに垂涎だ。
 それとも、まだ足りないのか。まだ描き足りないと、これを描いた人は思っているのだろうか。
 もしそうなら。想像するだけで、チビりそうだ。

 許容もなく慈悲もなく――センサ・ベルドゥーノ・センサ・ピエタ。
 漫画を読んで震撼したいと思うのなら、この本を手に取るといい。