化物語(下)
【化物語(下)】 西尾維新

正直に申し述べよう。
この化物語の上巻を読んで後、ふと一つの可能性に思い至ってしまい、下巻が手元に届くまで、私は恐れ戦き部屋の隅でガタガタ震えていた。
もしかして、梯子を外されてしまったんじゃないか、と。
藤川球児の火の玉ストレートのごとき、好みど真ん中ストライクなキャラクターたち。そんなキャラたちが良い心栄えで良い決意をし、良い行動を取り、良い結末を引き出す。
そんな気持ちの良い物語だった化物語の上巻。

案の定、私は当初なんの疑いも無く、下巻もその流れが続くのだと思っていた。待っているのはハッピーエンド。
だが、ちょっと待て。傍と思い至ったわけだ。
この話を書いているのが、西尾維新という作家だという事実に。

ゾォッとなった。

代表作である戯言シリーズがどういう過程を辿り、どういう結末へと至ったか。あのエンドへと至るまで、殆どの人はあの物語の結末を救いもなにもない悲惨なものだと想像していなかっただろうか。
結果として、その予想は見事に覆されたわけだが。
ふと、思ってしまったわけだ。

この化物語、まさか戯言シリーズとは真逆の展開なんでないんかい?

ハッピーエンドを疑いもせず下巻を手に取ったのが運の尽き。待ち受けていたのは…………。
脂汗がダラダラである。
戯言シリーズは、ある意味どんなキャラだっていつどこでどんな悲惨な末路を辿るか分からないのが前提だったわけで、誰がどこで潰されようとある程度覚悟のようなものは出来ていたわけです。
哀しくても辛くても、それは予期されたものでした。
が、しかし。

この化物語にゃ、そんな覚悟は用意してねえ!!

もはや手遅れ。既に戦場ヶ原ひたぎも神原駿河も八九寺真宵も阿良々木暦も、すっかりスルリと心の棚にお住まいになっている。定住である。
こうなっては誰が消えてもミランシャ度100パーセントの恐怖。
正直、下巻を手に取るまで本気でかなりビビっていた感は否めない。

まあ、杞憂だったわけだが


あとがきを読む限り、本作はかなり作者の趣味に寄ったものだったらしい。あのダラダラと続くキャラ同士の会話の、妙にノリノリな内容なんて、なるほど好き勝手書いてますよね、垂れ流しですよね、てな感じがして非常に納得だったわけですが。
別に垂れ流しは垂れ流しで、面白けりゃそれはそれで万事OKなんですよね、私としては。そして、最高に面白かったわけですから無問題でエクセレントなわけですよ。

しかし、趣味で好き勝手書いた話がこういう気持ちのいい善性に満ち満ちた話であったというのは、西尾維新の今後を追うにしても色々と興味深い話である。
まあ今回の化物語で、私はこの人、さらにさらに好きになりましたけどね。