神様のメモ帳
【神様のメモ帳】 杉井光/岸田メル

 また、なんつーニュートラルな筆致か。
 己が内から湧き出してくるものを何の手も入れずにそのまま文章にしたような自然体の筆遣い。それでいて脳内思考の垂れ流しではなく、精巧なデッサンに基づき構築されたブレのない一本芯の通ったしっかりとした枠組み。
 なるほど、絵画のような、といえばそうなのかもしれない。
 緑豊かな庭先の日溜りの中で、キャンバスに向かうような穏やかな筆致のもとに描かれたお話。ただし、話の中身もそうだとは言わないけれど。
 ただ、源泉というか根底というか、そういう部分はこの認識でいいと思われ。少なくとも自分はそう感じ、そう受け取り、そう納得したわけだ。
 自分が何を書きたいのかが細部まで自覚できていないと、なかなかこうはいかない。自覚していても、実際にそれを書き出せるかというとこれがなかなか難しい。それを成立させている時点で、もうお見事としか言いようがない。
 作風としては、同じ電撃を見渡してみると壁井ユカコに似ていると言えば似ているけど、あの人に比べると物語に対するスタンスが冷淡で突き放している感がある。その分、距離感が躓かずに一定していて、最終的に優しさを感じるのが不思議なところ。見守る優しさというのか。けっこう自分の作品に対しては可愛がりすぎて逆に水をやりすぎた観葉植物みたいなことになってしまってる本って、けっこう多いだけに、この作品は作者と物語との関係がフラットな感じがして、好きだなあ。
 と、見返してみるとなんかわけわからんこと書いてるぞ、私(苦笑
 しかしまあ、電撃文庫はわりとこの手の感じの話を書かせる事に躊躇しないですよね。少女系レーベルを除けば、辛うじてこの種の話を書かせているのは富士見ミスかしら。スニーカーはまたベクトル違うよね。
 これだけのものが書けるなら、この杉井光氏もじきに単行本の方にも名前を見る事になるかもしれない。できれば【火目の巫女】シリーズを完結させてからにして欲しいけど。感想では偶々書きそびれてたんだけど、これもかなりお気に入りのシリーズなので。
 
 ところで、このニート探偵という煽りは、正直引きますなあ(苦笑
 最初、火目の巫女の作者とは気付かず、購入予定からサクッと省いてたし。
 でも、読んでみるとこれは正しくニート小説。と書くとまた回避したくなる人も続出するんだろうけど。うん、自分もそうだからそれは分かるんだが、多分字面から想像するのとはまた違うものなので、その辺は誤解しないでほしい。いやさ、自分が想像してしまうそれと、他の人のそれとが同じとは限らないので、保証はできんのだが。
 ニートというのは生き様、というのは現実としては少々飲み降せない文言なのだけれど、作中でニート探偵アリスが語るニートとはつまるところどういう人なのか、という解釈については物凄く得心がいったわけで。まあ、そうなんだよなあ。そしてそれは、決して見つからないものなんだよきっと、うん。