シャギードッグ 天使の序章
【シャギードッグ 天使の序章】 七尾あきら/宮城
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 くわあああああああ! 来た。来た来た帰ってきた。七尾あきらが戻ってきた。それも、本気の力作真打本命携えて。
 八岐、狂喜乱舞!

 わたくし八岐には、贔屓にしているといいますか、お気に入りと言いますか、巷の知名度はさほどでもなく作品数もあまりたくさん出しておらず、そもそもあんまり売れてないんじゃないかと心配で悔しくて勿体無くて、とにかく信者と言い換えてもよろしかろうというほど、その人たちが書く話が好きでたまらない、これはもう、波長が合うとしか言いようがないくらいの、作家さんが何人かいます。
 岩佐まもる、枯野瑛、渡辺まさき、そしてこの七尾あきら。

 やっべえ、ちょっとうれし泣き入りそう。枯野瑛が去年ソルトレージュ
出した時もそうだったし、渡辺まさきが月の娘で復活した時もそうだったけど、嬉しいなあ、嬉しいなあ。七尾あきらの新作だよぉ。
 しかも、予想の斜め上を行く凝った内容で、キャラで、展開で、設定で、SFで、氣で、アクションで。明らかに【風姫】の頃より面白さの旨味が増している。しかも、【風姫】のあの私が好きだった感触やエッセンスを踏まえた上で。新しいのに懐かしいこの感覚。ああ、七尾あきらを読んでますよ、私。
 こりゃあ、マイナーなルートからガツンと一皮剥けたんでないかしら。一挙にレーベルの看板張ってくれませんかね。くれませんかね。

 とにかく、盛りだくさんな内容。こりゃあ、アレも書きたいこれも書いてみたい、ああついでだからこれも突っ込んでみよう、という感じに欲張りに欲張ったみたいな。いっそここまでやられるとすがすがしい。格闘プログラム、ドリーマー、異局、パワードアーマー。どれでも一つで一つの話を成り立てることができそうなのに、全部まとめて一つの話につぎ込むんだから力技だぁ。お陰でどこか雑然としているんだけど、これが不思議と混乱しておらず、一種独特の作風を織り成している。話の展開もお陰さまでめまぐるしいんだけど、なんだかあれもこれも楽しめて凄く得した気分になれた。
 世界観も何気にちょいと不可思議なものになってる。舞台はまるで現代そのもののようなのに、日常的な部分でSFな近未来が散らばってるわけで。それ自体は決して珍しくもないんだけど……なんていったらいいんだろう。パトレイバーな舞台の上に、攻殻機動隊な小道具が散らばってるような。
 うん、とにかく色んなところでごちゃ混ぜ感があるんだ。そう、これは種類の違う色んな作品を一緒の鍋に突っ込んでしまったような、独りクロスオーヴァー作品みたいな、そんな感じ(笑
 とりあえず、オズは男でも女でもどっちでもOK(マテ
 基礎ベースは女性みたいだけど、男バージョンのときはまりんを、女バージョンは大介を転がして遊べばいいと思います。ほら、見事に三角関係が丸く収まる……ん?
 オズはいいよ、この子はいい。内面については色々と描かれているにも関わらず、容易に理解しきれない不透明さや複雑さ。何を考えてるのかいまいち見通せないんだけれど、とりあえず大介のことを気に入っているのはどうも間違いないようで、彼が来訪しないとなんだかすねちゃったりしてるみたいな感じになってしまったり、なんだかんだと彼の頼みごとを聞いてしまっていたり、彼に言われた言葉が自分だけに言ってくれた言葉じゃないと知ってそこはかとなく不機嫌になったり、と。不鮮明なキャラクターが、大介、そして後々ではまりんを通すことで段々と浮き彫りになってきてるんだけど、やっぱり何考えてるか分からない正体不明なヤツという……濃いような薄いような、とにかくこのキャラは面白い。
 予想外だったのがまりんの方で。この配置の幼馴染って、展開からしてかなり不遇な場所に追いやられるのが良くあるパターンなんだけど、この子は思いもかけないところから「えいやっ!」と話の本筋に切り込んできたので、びっくらこいた。歩から成り金、みたいな。いやさ、話の展開もあるんだろうけど、それだけキャラクターに話の中心に入ってこれるだけの余地というか、存在感の強さみたいなもんがあったんだろうねえ。

 いやまあ、とにかく期待していた以上のものを引っさげて、七尾あきら氏が戻ってきてくれたのを諸手を挙げて歓迎したい。喝采したい。
 また、楽しみな楽しみなシリーズが増えたわけだ。2007年は一月からええ本がたくさん読めて絶好調である。