暗闇にヤギを探して 2 (2)
【暗闇にヤギを探して 2】 穂史賀雅也/シコルスキー MF文庫J

 グラシアス! 思わずスペイン語でありがとう!と喝采したくなるほどグラシアス!
 内容に入る前にだが、この表紙はすこぶる素晴らしいね。グラシアス。思わず特大版を貼り付けたくなるくらいに。実は、挿絵の方もこれ、構図がなかなか面白くて、興味を引かれた。この間の【神様のおきにいり3】の挿絵もなかなか面白いつくりをしていて感心したんだけど、こっちはどうなんだろう。絵師のセンスなのか、それとも編集部の方針なのか。

 西尾維新の【化物語】など、その辺り顕著だったのだけれど、恋愛なんてものはグズグズしていたら負けなのである。自分の気持ちを弄んでいるのは楽しいかもしれないけれど、悠長に構えているうちに横から掻っ攫われてしまう。というのは案外よくありそうなケースなのだけれど、逆にあんまりなかったりする。当事者の気持ちをはっきりさせずにグズグズと引っ張るのは定番の構成なのかもしれないけれど、なんだかんだとあんまり気持ちのいいもんじゃない。
 その点、この暗ヤギはスッパリ切り込んできた。
 修・羅・場・キターーーーー!!
 あのまひるという新キャラは、劇物のような扱いの難しいキャラだったと思うけれど、ここでは見事に話の展開に科学反応を起こしてくれた。はっきりいって、途中までこの強引で自分本位で夜郎自大な性格は見てて不快だったのだけれど、そのへんは正体が明らかになった途端にきれいさっぱり拭われてしまいましたとさ。いやあ、年上だと思うとむかつくけど、実際はあれだとあのわがままさも何故かそういうものかと納得(苦笑
 とはいえ、まひるの投入は、今の位置に安穏と胡坐をかこうとしていた先輩と、不貞腐れながらも現状に甘んじようとしていた風子を問答無用で舞台に上がらざるを得なくしてしまったその一点だけで、喝采をあげたくなった。
 真っ向勝負である。
 まさか、一巻のあの雰囲気からそのまま直球恋愛ものにスライドするとは思ってもいなかったので、ビックリした。作者のふわふわと柔らかで独特のテンポと視点から登場キャラの交流を浮き彫りにしていく筆致からは、こうした展開は予測できませんでした。ほんと、意外なほど真っ向に切り込んだなあ。
 主人公がこの手の平均よりもさらにはっきりしない輩だけに、先輩の自分の気持ちに対する向き合い方。その扱い方には非常に清々しさを感じました。というか、各人に対して作者が辛辣。筆致が淡々としているだけに、余計にそれぞれの至らない部分、不甲斐ない点、はっきりしないところへの指摘がかなりズバズバと容赦がないように見える。そこまで言われちゃあ、みんな各々自分のキモチと現状に向き合わなきゃならなくなりますわな。
 こりゃあ、次で完結かしら。