赤朽葉家の伝説
【赤朽葉家の伝説】 桜庭一樹


 大作だ。これは、確かに大作としか言いようがないわ。
 赤朽葉家の女三代記。スゴイよなあ、ちゃんと最後は現代に着地したよ。いや、これは本当にすごい。50年近い年月が流れていく様子を――これは『目撃』してしまった、としか言いようが無いような。
 いや、凄いわ。
 この感覚は、ちょっと例えようがない。
 過去を振り返っての五十年じゃなくて、一緒に歩いた五十年? 今という視点のままで、五十年を付き合ってしまったような、なにこの酩酊感は。
 なるほど、これは確かに神話で、伝説で。でも、最後はちゃんと現代に着地している。すごい。
 連続しているというのもおこがましいくらいに、万葉の時代から瞳子の時代まで繋がっている。少女万葉が、年を経ておばあさんになるまでの歳月を、一緒に体験してしまったこの感覚。
 まいったねえ。こりゃあ、参った。
 なんかねえ、自分が生まれた時から祖母はおばあちゃんだったわけなんだけど、そのばあちゃんだって生まれた時からばあちゃんだったわけじゃないんですよねえ。ありふれたフレーズだけど、今回はちょっと自分のばあちゃんが生きてきた歴史にまで想いが飛んでしまった。そのぐらい、深くするりと意識に浸透していく柔らかいお話。
 桜庭一樹って、元々柔らかい話家だと思ってたけど、今回のこれは生理食塩水並みの浸透度だな、こりゃあ。
 いや、圧倒的とか衝撃的という単語とは程遠いけど、じっくり振り返り考え込んでみると、なんともすごいという言葉しか出てこない、実になめらかにすごい話だった。